深々と降る雪は
朝、タケゾウは寒さで目を覚ました。
「今日は随分冷えるな。」
部屋の障子を開けると外は雪が降っていた。
「おお。
こりゃすげーな。」
膝まではこないが
雪がどっさり積もっていた。
そして未だに雪が降り積もっていた。
「タケゾウさん起きてますか?」
「おう。
起きてるぞ。」
タケゾウは襖を開けタマキに
『おはよう』と挨拶をした。
「雪が結構積もってしまったので
朝食ができるまで
雪かきを手伝っていただけませんか?」
「ああ。
そりゃもちろん。」
タケゾウはタマキから上着とスコップを借り
雪かきを始めた。
そこにカリストがやってきた。
「おはよう。」
「…。」
カリストは会釈をすると
スコップを手に雪かきを始めた。
タケゾウもそれに習い
雪かきを始めた。
『上の方の雪は良いけど
下の方は結構凍ってるな。』
タケゾウは上からザクっとスコップを刺し
スコップいっぱいの雪を投げ飛ばす。
『お。
結構コツ掴んできたかもな。』
タケゾウがそう思い、調子に乗り始めたのを
カリストは横目で見ていた。
「あ…あの。
…。」
「ん?
どうした?」
「…使い方が危険。」
「使い方が危険?
怪我するってことか?」
タケゾウはカリストの話を聞きながら
雪かきを続けた。
「怪我は…しない。
その…そのやり方だと…。」
「うん…?」
タケゾウは話を聞きながら
雪かきを続けたが
あまりにはっきりしない物言いに
少し慎重にスコップを使い始めた。
「つまりどういうことだ?」
「つまり…その…スコップが。」
「スコップが…?」
その時であった。
タケゾウが持ち上げた拍子に
スコップが折れてしまった。
「あ…。」
「うわ!
こういうことか!」
「あちゃー。
タケゾウさんやってしまいましたね。」
タマキが後ろからやってきた。
「わりー。
カリストもすまん。
手、止めればよかったわ。」
「人の忠告を聞かないからですわ。
スコップを折ってしまうなんて
初歩の初歩ですわ。」
カリストの後ろから今度はジュジュがやってきた。
「だからごめんって。」
「私も…うまく言えなかった。」
「カリストって口下手なんだな。
結構ハキハキ話すときは話すのに。」
「おやおや。
カリストは人見知りですからね。
二人きりで緊張していたのでしょう。」
カリストがタマキの言葉に
ものすごく頷いた。
「さてさて。
少し待っていてくださいね。」
タマキはそう言うと
少し太い木の角材を持ってきた。
「タケゾウさん。
魔法の修練を兼ねて
これでスコップを作って見てください。」
「木の魔法でこれの形を変えることが
できんのか?」
「そうそう。
その通りです。
習うより慣れろとよく言いますので
まずはやってみてください。
…カリスト。
見ていてあげてくださいね。」
「御意。」
タケゾウは早速初めてみた。
だが…。
「あちゃー。
なんだこれ。」
スコップの大切な先端部分が無く
スコップの柄だけが作れてしまった。
「…想像する…とうまくいきます。」
「と思ったから想像して見たんだけどな…。」
「…また材料持ってきます。」
カリストはさらに数本角材を持って
タケゾウの元に戻ってきた。
「悪いな。
頑張ってみるよ。」
その後もカリストが持ってきてくれた
材料の全てがスコップの柄となってしまった。
その大きさも大小様々なものとなった。
「その程度もできないくせに
一人で何ができると言うんですの?」
ジュジュがタケゾウの作ったスコップの柄を
手に取り、タケゾウに嫌味のように言った。
「確かに姫さんの言う通りだな。
こんなんじゃどうしようもねえわ。
コツとかはないのか?」
「明確にその物を頭の中で
想像することが大切ですわ。」
ジュジュはそう言うと
あっという間に
タケゾウの作った柄にスコップの
先端を作り出した。
「こんなものですわ。」
「さすが言うだけはあるな。
勉強になった。
ありがとな。」
「そんなことより早く雪かきを
手伝って欲しいですわ。
まぁ…精々頑張ることですわね。」
ジュジュは作ったスコップを
雪に突き刺すと
そのまま雪かきに戻っていった。
「あいつ結構優しい奴なんだな。」
「姫は!!
…姫はとても優しい人。
いつも誰かを気にかけている。
だが…あの時から変わってしまった。
少しずつ…。
よくはなっている…。
今日も割と機嫌良い方。」
「ふーん。
ま、俺と似たような経験して
今、前に向かってるだけ
すげーと思うよ。
そんなことより俺は修練の続きだな。」
「…あ…。」
タケゾウは修練を再開した。
カリストは何か言いたそうにしていたが
そのまま口を閉じてしまった。
そして気づけば日が落ち
タケゾウの修練に費やした一日が終わった。
翌日。
外は昨日と同じく雪。
音もなく深々と降り積もっていた。
「タケゾウさん起きてますか?」
「ああ。
起きてるぞ。」
タマキが襖を開け、入ってきた。
「こんなに雪が降るとどうしようもないので
雪かきの道具を買ってきてはいただけませんか?」
「ん?そんなの木で作ればいいだろ?」
「雪かきにはやはり木だけでは向いていないのです。
タケゾウさんも
雪かきの道具を想像すると
先端部などはやはり鉄ではないですか?」
「あー確かに。
そうかもしれないな。」
「はいはい。
後はプラスチックの物なんかも
ありますが…下がこれだけ凍ってしまうと
どうしても鉄の方が楽なので。」
「そうだよな。
じゃ買いに行ってっくるよ。」
「お願いします。
他にもっと良さそうな物があれば
それでも構いません。
私とカリストで一日かけて
雪かきはしておきますので。
ジュジュを誘って行ってください。」
「あ…ああ。」
「タケゾウさん。
約束は約束ですよ。
友達になる努力はしてください。」
「わかってるよ。
誘ってみるわ。」
「うんうん。
もし、ダメだった場合は
カリストを付き添いに付けますので
言ってくださいね。」
「わかった。」
タケゾウは上着を羽織ると
ジュジュのいる本殿へと向かった。
「姫さんいるか?」
本殿に入って歩き回り
適当に探しているタケゾウ。
『どこにもいねーな。』
と言いつつもジュジュの部屋より
遠い場所ばかり探している。
『覚悟決めて行くしかねーか。』
広間を抜け、中庭のある廊下に出たタケゾウ。
そこではジュジュがユーピテルに扮した
母親と廊下に腰をかけ
中庭に雪が降り積もっていくのを見つめていた。
『あいつら…。
今は邪魔になるかな。』
タケゾウが振り返り帰ろうとした時。
「あら。
何か用ですの?」
ジュジュがタケゾウに気付き声をかけた。
「あ…いや用って程のことじゃねえよ。
邪魔したな。」
「何に気を使ってるんですの?」
タケゾウは振り返り頭を掻きながら下を向いて言った。
そしてジュジュがそう言ったので
顔を上げジュジュを見た。
『こいつ…。』
ジュジュは初めて見た時のような
表情をしていた。
ジュジュは少し目をこすりながら
タケゾウの方に向かって歩いてきた。
「そのなんだ…。
雪かきの道具を買ってきてほしいとタマキに
言われてさ。
そんで姫さんと行って来いってことで
誘いに来たんだが…。
取り込み中に悪かったな。」
「一応の気遣いには感謝しますわ。
…母といると…いえ。
なんでないですわ。
私も街に同行しますわ。
今、準備しますので
外で待ってて欲しいですわ。」
ジュジュは言おうとしたことを辞め
出掛ける準備を始めた。
タケゾウは言われた通り
外に出た。
『同情したのか…共感したのか…。
とは言っても俺にはまだ少しの希望がある…。
その点では結果の出てるあいつの方が…』
タケゾウはジュジュのことを考えていた。
カリストの話では『良くなった』と言っていたが
あれを見る限り良くなったのか
どうかわからない。
それにこの世界を壊したいという
自分の意見に賛同したことを
考えると、行動に出たのは良いこととしても
本質的に良くなったと考えるのは
どうなのかとタケゾウは思った。
「ま、その点は俺もそうだろうな。
良い方向ってのがよくはわかんねーけど。」
「何がわからないんですの?」
「お、準備出来たのか。
じゃ行くか。」
「おやおや。
誘うことには成功したようですね。」
そこにタマキが歩いてきた。
「姫。
雪深くなっていますが
今ならまだ歩けるでしょう。
気を付けて行ってきてください。
タケゾウさん。
お金と丸薬です。
せっかくですので獣人の街を
ゆっくり見てきてください。
では行ってらっしゃい。」
「ああ。
行ってくるよ。」
「ええ。」
タケゾウとジュジュはタマキに見送られ
街に向けて出発した。
「姫…。
行くことにした。」
「ええ、ええ。
きっとタケゾウさんの中に
何か感じるものがあったのでしょう。」
「それは良いこと?」
「さてさて。
それを決めるのは本人達次第です。
とはいえ、少し心配ですね…。
カリスト。
バレないように後をついて行ってください。」
「御意。」
カリストは音もなく
雪景色の中に消えて行った。
「うんうん。
しかし雪かき一人では大変ですね…。
怪我人に無理でもさせますか。」
タマキはそう言うとガニメデとエウロパを
起こしに向かった。
雪は未だ深々と降り積もり
気が付けばそこに誰もいなかったかのように
皆の足跡を消していた。
読んでいただきありがとうございます。
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コツコツ投稿出来たらなと思っています。
楽しんでいただければ幸いです。




