お風呂回ツーです!!
タケゾウは一歩ずつ
ジュジュ達に歩みを進めた。
その恐怖から誰も逃げることができずにいた。
カリストが自らの足を叩き
なんとかジュジュの前に出ると
すぐさま膝をつき
頭を地面につけ言った。
「申し訳ありませんでした。
どうかこの場は私の命で
許してはいただけませんか?」
カリストはタケゾウに頭を下げ
懇願した。
「なんだよいきなり。
謝る必要なんてねーだろ?
修練なんだし。」
タケゾウから殺意が消えた。
「い、いえ。
姫の言葉でタケゾウ殿が少し不快感を
感じたように見えましたので。」
カリストは頭を地面につけたまま
なんとか言葉を発した。
「…まあ…確かに少し頭にはきたけどさ。
そんな謝るなよ。」
タケゾウはどこかバツの悪そうな顔をして
頭をかきながら言った。
「じゃ姫さん。
残念だけど今日はやめるか。
せっかく面白くなってきたのにな。
本気でやろうと思ったのに。
そういやさっきの俺がここにいる…っておい!!」
「「「姫!!!」」」
ジュジュは死の恐怖と絶望から解放され
気を失ってしまった。
三人は急ぎジュジュを運んで行ってしまった。
「はぁ…悪魔…ね…。」
「これはこれは。
大変でしたね。」
「ん?見てたのか。
大変ではなかったよ。」
タケゾウの後ろからタマキがやってきて
声をかけた。
「友達にはなれそうですか?」
「一応悪魔にはなれたみたいだぞ。」
「それはそれは。
よろしければ少し我が家で
休みませんか?」
「ああ。
その前に風呂にでも入るかな。
服もボロボロにしちまった。
わりーな。」
「いえいえ。
気にしないでください。
替えの服もお持ちしますよ。」
タマキはそう言うと
服を取りに戻っていった。
タケゾウは風呂に向かった。
「ふあー…。」
タケゾウは湯船に映った自分の顔を見た。
『俺はどんなふうに笑っていたんだろう…。
はは。
なんかダメだな。
きっとジュジュの前に出たカリストを見たからだな。
俺を助けてくれた兵士達に似てる。
そして…姫は…俺に。
そして俺は…あいつに…。』
タケゾウは天井を見上げ
また、ため息をついた。
『は。
だからなんだと言うんだ。
悪魔だろうが天使だろうが
それは見る立場による。
みんなそれぞれの正義を抱えてるんだ。
当然だ。
こんなくだらないことどうでもいい。
やりたいことは変わらない。
こんなことくらいで揺らいでどうする。
全部引っ括めてぶっ壊す。
それだけだ。
そのために今は力がいる。
それだけだ。
悪魔?
上等じゃねーかよ。
もう他人にどう見られてるかなんて関係ねえ。
俺は俺がなりたい俺になる。
それが他人から見ればあの
クソ魚人王子みたいに見えてもだ。
くふふ。
待ってろよ全て。
俺がぶっ壊してやるからな。』
タケゾウは昔の自分の状況と
それを重ねて見てしまっていたが
すでに吹っ切れていた。
湯船からザバァと音を立て上がると
タマキが用意してくれた新しい小袖に着替え
タマキの家に行った。
「わりーな。
また服貸してもらって。
破れちまった服なんだが…」
「それはもう大丈夫ですよ。
気にしないでください。」
「すまんな。
ところでここは一体どんなとこなんだ?
一応聖域なんだろ?」
「はいはい。
ここはまさに聖域です。
さてさて。
そろそろ疑問が出ている頃でしょう。
ずばり!
なぜ自分は余所者なのに聖域に入れているのか!
そして大切な姫様の友達役にえらばれたのか!
当たっているでしょう?」
タマキは得意げにメガネをクイっと上にあげ
とても自信満々に言った。
「確かに姫さんのことは疑問には感じたが
そこまで深く考えてなかったわ。
それに聖域って誰でも入れるんだろ?
ニチカのとこもサクヤのとこも
割りかし簡単に入れてもらったぞ。」
「な!!!
あの二人は…まったく何も考えていないんだな。
…では説明の必要も特にないでしょう。」
とタマキは残念そうに肩を落とした。
「あ…すまん。
姫さんについては少しカリストに
聞いたけど…あのユーピテルってやつは
どうなんだ?
娘のためにとは言っても
魔法ってそんな簡単に渡して
いいもんじゃねーだろ?
それに友達になるっていう曖昧な…」
「それには!!
…それには訳が…あるんです。」
「訳って?」
タマキは少しの沈黙の後
ゆっくりと話し始めた。
「カリストから聞いたとは思いますが
妹と母親を亡くしたというのは聞きましたね?」
「ああ。
四天王で兄のように慕っていたイオってやつに
殺されたんだろ?」
「…。
一応表向きはそういう話になっています。
イオの裏切りという話に。」
「表向き?」
「姫様の…ジュジュの母は自害したのです。
とは言っても重症だったので
遅かれ早かれきっと…。
先ほどの修練で
木偶乃坊は見ましたね?」
「ああ。」
「あれは木の魔法の加護で
簡単に言うと木に意思を与えることができます。」
「ほー。
それはすげーな。」
「はいはい。
そうなんです。
ちなみに土の魔法の加護でも同じようなこと
ができます。
結論から言いますと
タケゾウさんの会ったユーピテルは
ジュジュの母親です。」
「ん?
じゃあれも木の人形だってことか?」
「その通りです。
これはジュジュの母親の体質得意
との合わせ技のような物で
その木の人形に
好きな姿形と命を与えるというものです。」
「そりゃすげーな。
でもなんでそんなことになってるんだ?」
「…。
少し、昔話にお付き合いください。
獣人族の国『ナリミノ』には
とても仲の良い姉妹がいました。」
タマキは姉妹のことを話し始めた。
「あ、興味ないからいいわその辺。
妹死んで姉が自傷行為始めた。
母親は命が尽きるその時に
体質得意の力を使った。
それで親父の姿形になったのには
その方が都合がいいんだろ?
で、その木偶人形にあんたが
指示を出して
この展開にした。
父親に関しては国の統制とか
そんなんで付きっ切りになれないとか
そんなとこだろ?」
「はぁ。
元も子もないですねタケゾウさん。
話くらい聞いても損はしませんよ?」
「いいよ。
他人の事情は。」
「そうですかそうですか。
ふう。
そこまで簡単な話ではないですが…
簡単にまとめると
カエルスという組織にジュジュの妹が入っていて
実の母親と父親のユーピテルと姉のジュジュを幹部とともに暗殺に来た。
カエルスに入っていることを事前に
掴んでいたユーピテルと母親は
イオを潜入調査員として
潜り込ませていた。
そして事件の日
幹部は母親を襲撃。
妹はジュジュを。
それをイオが止めて
その際に妹が死亡。
ユーピテルが駆けつけた時には
すでに母親は重症だった。
そしてイオはそのまま潜入を続行。
カエルスとの戦争が始まったという
ことになります。」
「へえー。
そうなんだ。
ま、だいたい合ってんな。」
「そして病んでしまったジュジュが
今に至るということです。
そしてジュジュをタケゾウさんにお願いしたのは
サクヤの見込んだ男なのだろうと思ったからです。」
「俺のことサクヤに聞いていたのか?」
「いえ。
ただサクヤがタケゾウさんを呼んだという事実だけで
私は期待しました。」
「サクヤも信頼されてんな。」
「それはもちろんです。
私達にとってサクヤは大切な仲間ですから。
それに私はサクヤを愛していましたし。」
「え!?
そうなのか!?」
「はい。
物の見事にフラれていますが
今でもその気持ちが揺らぐことはありません。」
「へえ。
そんな長生きしてんのに
物好きだなあんた。」
「いえいえ。
それほどでもありません。
ははは。
ということなので
友達になってあげてください。
きっと少しでも日常の普通ということに
触れれば、ジュジュも心の傷と闇を癒すことが
できると思います。
少しの変化を姫様に。」
タマキは深く頭を下げた。
「俺は力が必要だからやるよ。
時間もたくさんあるからな。
もう急ぐこともねーからさ。」
「そうなんですか?
…タケゾウさんもきっとここに来るまで
たくさんの何かを失ってきたのでしょうね。
タケゾウさんの内側にいるジュジュのいうところの
『悪魔』は私達も経験があります。
あの修練で見えた部分…。
幾千もの修羅場を潜り抜け
失い、傷付いた者に
宿る本当の『悪魔』は
あまり気持ちのいいものではないですよね。
ですがきっとタケゾウさんには
まだ何か残っているんじゃないですか?
だから力を欲している。
それは復讐のためにと
思っていても
その復讐をする理由はきっと
大切なもののためでしょう?
もしくは譲れない約束のためか。
その気持ちを受け入れてもいい。
だけど、飲み込まれてはダメですよ。
根本の大切なものを大切に思った
その気持ちを忘れてはいけません。
あ、なんか偉そうにすいません。
では今日はもうお休みください。
あの奥にある部屋を自由に使ってくださいね。
食事は部屋まで運ばせますので
ゆっくりと休息を取ってくださいね。
私は姫様を見てきます。」
タマキはそう言うと
出て行った。
タケゾウは言われた部屋に行き
敷いてある布団に身を投げた。
『あいつ…タマキもきっとたくさん失って
生きてきたんだろうな。
タマキは今の俺の気持ちをきっと見抜いてる…
それか経験があるんだろうな。
飲み込まれる…か。
は!
逆に飼い慣らしてみせるさ。
…。
残ってるもの…か。
サクヤとの約束くらいは
守り…てーな…。」
タケゾウはそのまま
布団の上で
意識をゆっくりと沈めていった。
『偉そうに話してしまった…。
私としたことが…。
そうそう。
そういえばタケゾウさんが
どうやってここにたどり着いたか聞くのを
忘れていた。
サクヤが森について教えていたのだろうな。
でなければ精神を保ったまま
森からここにたどり着いけるはずもない。
万が一ここについても
それはもう人ではない何かになっているのだから。
うんうん。
さすがサクヤ。
しっかり教えてあげたんだな。
でもタケゾウさん…知らずに来たって言っていたような?
あ、こんなとこで考え込んでいる場合ではなかった。
ジュジュのところに行かなければ。』
タマキは考えるのを止め
本殿に小走りで向かって行った。
太陽は沈み
月が出て
タケゾウの一日は
月明かりを浴びながら
終わりを告げた。
今夜も月は
変わる事なく
あたりを優しく照らしていたのであった。
読んでいただきありがとうございます。
コツコツ書いてます。
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楽しんでいただければ幸いです。




