神社
タケゾウは男に
建物の中に通された。
敷地も広く、いくつかの建物があった。
その造りはタケゾウの知っている神社そのものだった。
タケゾウは懐かしさすら感じていた。
「さてさて。
まずは自己紹介からですね。
私はタマキといいます。」
「俺はタケゾウ。
ここはどこだ?」
「知らずに来たんですね。
ここは獣人の国『ナリミノ』ですよ。」
「そうなのか。
ってことはあんた神だろ?」
「えぇ!!?」
タマキはものすごく驚いてみせた。
まさか見破られるとはといったところだ。
あまりの動揺ぶりにタケゾウも驚いた。
探るつもりで言った言葉にこんな簡単に
ひっかかってくれるとは思ってなかったようだ。
タマキは色白でひょろ長く、髪は七三分けできっちり
分かれていて、眼鏡と相まって
頭が良さそうだなとタケゾウは思っていた。
だが、この駆け引きすらできない
動揺ぶりなどを見て
拍子抜けしたのであった。
「な、なんでそう思うんです?!」
タマキは動揺を一切隠せずタケゾウに聞き返した。
「あんたのかけてるその眼鏡を
俺はこの世界に来てから一度も見てない。
そして獣人の国ってのとこの神社。
まさに神のいるところじゃねーかよ。」
「な、なるほど。
うんうん。
中々に良い推理ですね。
ん…今この世界に来てからと言いましたか?」
「ああ。
俺もあんたらと同じ世界から来た。」
「えぇええ!!!?」
タマキはさらに驚いてみせた。
タケゾウはめんどくさそうにこの世界にきた経緯と
今まで起きたことを割愛しつつ説明した。
「なるほどなるほど。
タケゾウさん…大変でしたね。」
まるで自分のことのように落ち込んでいるタマキ。
「大変?
そんなもんじゃなかった。
ってあんたに言っても仕方ないか。
それにあんたも苦労したろ?
お互い様だ。
つーわけで俺は
魔法が必要なんだ。
くれないか?」
「それは…できません。」
タマキは下を向きながら言った。
「そうか。」
タケゾウはそう言うと
脇に置いていた刀に手をかけた。
その瞬間、三人の者が一斉にタケゾウに斬りかかった。
「エウロパ!ガニメデ!カリスト!」
タマキが叫び、その刀は止まった。
タケゾウは瞬きせずにその刀を見ていた。
三人は刀を引き、タマキの後ろに座った。
「やっぱり隠れてたか。
てか、さっきのやつもいるな。
それで?
ダメな理由も色々あんだろうけど
どうしても必要な理由は話したよな?
あんたもサクヤの友達なんだろ?」
「はい…はい。
私も付与したいと思いますが
それは私一人では決められないのです。
獣人のことはご存知でしょうか?」
「いや。」
「そうですか。
簡単に言うと私以外に獣人には
もう一人神のような人がいます。
それは耳長人…タケゾウさんも聞いたことのある
名前だとエルフといいます。」
「それでそいつにもいいですかって聞くしかない
ってことか?」
「うんうん。
全くもってその通り。
ということでそのエルフの長を説得しないと
いけないんです。」
「へえ。
それでそいつは今どこにいるんだ?」
「会ってもらえるかはわからないですが
行ってみましょう。」
タケゾウはタマキと三人に連れられて
違う建物に向かった。
そこは神社の真ん中に位置し
明らかに本殿という造りだった。
「さてさて。
ではここで待っていてください。」
「ああ。」
本殿に通されたタケゾウは
通された場所に腰を下ろした。
その後ろにエウロパ、ガニメデ、カリストが座った。
数分後、タマキが戻ってきた。
「すいませんねお待たせして。
今来ますので。」
タマキがそう言うと狩衣姿の金髪の
エルフが現われた。
エウロパ、ガニメデ、カリストが
頭を下げ出迎えた。
「初めまして。
私はエルフの長、ユーピテルといいます。」
「どうもタケゾウだ。」
そうタケゾウが言うとタケゾウの後ろでガタガタと
物音がした。
ユーピテルは手で合図を出し
その物音は静まった。
「話はタマキから聞きました。
皆、タケゾウと少し話をしたい。
席を外してくれ。」
ユーピテルがそう言うとタマキを含めた四人は
外に出ていった。
「少しついてきていただけますか?」
「ああ。」
そう言われタケゾウはユーピテルの後についていった。
ついていくとそこには日本庭園のような
美しい中庭があった。
そこにある椅子に座っている者がいた。
乱れた金色の髪に
虚ろで憂いを帯びたエメラルドのような瞳。
特徴的な長く尖った耳。
色白で線が細く
皆と同じような狩衣を纏っていた。
そして肌が見えるところからは
包帯が見えていた。
「私の娘でジュジュというんです。」
「ふーん。
それで?
つーか少し様子が変じゃねーか?」
「これでも良く…なったのです。
外に出て、体を動かすようにはなったので。」
「…。
なんかあったんだな。」
「はい…。
ジュジュは…大切な人を
失いまして…。
そして兄のように慕っていた者と
離れ離れになってしまいまして。
それ以来塞ぎ込んでいたのですが
いつからか部屋から
出てくるようにはなったんです…。」
「それならいいじゃねーか。
何が問題なんだ?」
「あ、娘が移動するようです。
行きましょう。」
「?
わかった。」
タケゾウは疑問が疑問のまま
ジュジュにバレないようこっそりと
ついていった。
ジュジュは中庭から本殿に戻り
外に出て行った。
そしてエウロパ、ガニメデが
ジュジュの前に現れた。
「姫。
本日もやらなくてはなりませんか?」
「はい。」
「姫。
もうやめましょう。」
「いいえ。」
そう言うといつの間にか持っていた
刀を抜き、鞘を投げ捨てた。
仕方ないと諦め
エウロパ、ガニメデも
刀を構えた。
「おい。
三人とも真剣じゃねーかあれ?
止めなくていいのか?」
「これが今の問題なのです。
娘は部屋から出てきた後に
修練をしたいと言ってきたので
それは良いことだと皆が相手することに
したのです。
ですが…娘が持ってきたのは
木刀などではなく真剣だったのです。
皆が戸惑い、やめるように言うと
いきなり自分の足を斬り裂きまして…。
それからも皆が本気でやらなかったり
木刀を使ったりと
文字通り真剣さが足りない
と娘が感じた時に
娘は自らを斬りました。
本気でやれと叫び
もはや狂人と呼んでもおかしくない
ような状況がいつの間にか半年は
続いています。」
「そりゃ大変そうだな。
で、俺になんとかしろってか?」
「なんとかしろ…とできることなら頼みたいと
思っているのは事実です。
ですが、そう簡単なことではないでしょう。」
「そりゃな。
あんたらで無理なら部外者の俺に
できることなんて何もないだろ。」
「そんなことはありません。
兄と慕っていた者はとても歳が近い者でした。
ですのでタケゾウさん。
お願いがあります。
娘の友達になってあげてください。」
ユーピテルは頭を下げてタケゾウにお願いをした。
追い込まれているのだろう。
タケゾウはそう感じた。
歳が近い兄が慕われていたという点で
共通点としては歳が近いくらいしかないからだ。
大切なものを守りたいという気持ちが
ユーピテルから伝わってきた。
「俺が仮に友達になっても
何も変わらない可能性のほうが多い
と俺は思うが…。」
「それでも…それでも何か
きっかけになれば
何かが変わるかもしれない。
娘が自分を傷つけなくなるかもしれません…。
情けないお願いですいません。
友達になっていただけるのであれば
先に付与を済ませていただいても構いません。」
「俺は逃げるかもしれないぞ?」
「それは…困りますが…。
ですが、こんな情けないお願いをするからには
私達も誠意を見せなければ…。」
「はぁ。
ユーピテル。
期待はすんな。
俺も自分が貰う側で対価を
何か出す必要があるくらいの常識はあるつもりだ。
とりあえずだが…やってはみる。」
「タケゾウさん。
ありがとうございます。」
ユーピテルは深々とまた頭を下げた。
タケゾウは頭をかきながら
正直なところ困っていた。
まさかこんな曖昧なお願いをされるとは
思ってもみなかったのだ。
『救ってくれ』『立ち直らせてくれ』
などというお願いならわからなくもないが
『友達になる』というのは
お互いが友達だとでも言えば
それで終わりなのだ。
それでもユーピテルや他の皆は
何かのきっかけになるなら
ジュジュが良くなるならと考えているのだろう。
そのために自分たちの魔法が必要なら
差し出す覚悟すらあるということだ。
タケゾウはそんな藁にもすがるような思い
をどうしたらいいのかと考え始めた。
「んじゃま…やってみるか。」
タケゾウはその修練をとりあえず見学することにした。
「…。
確かに危なっかしいけど
本気でやる修練だし、良い経験にはなるな。」
タケゾウは三人の修練を見ながらそう思った。
そこにカリストがやってきた。
「ん?
あんたはやんないのか?」
「今日はあの二人にお願いしているので。」
カリストは忍者のような格好をしており
目と頭巾から出ている獣の耳以外は
特徴がわからなかった。
「協力してくれるのか?」
か細い声でカリストはタケゾウに聞いた。
「一応な。
俺にも欲しい物があるからな。」
「そうか…。」
カリストそう言うとたどたどしく話始めた。
元々ユーピテルのそばには獣人の四天王がいたそうだ。
その四天王が小さい頃から面倒を見てきたのだとか。
そしてその四天王の一人が
国を裏切り、ユーピテルの妻、ジュジュの弟を殺し
出て行ってしまったのだとか。
そしてその日から
ジュジュは塞ぎ込んでしまったらしい。
というのもその四天王の一人と
歳が近くとても仲が良かったからだそうだ。
四天王の一人とは兄妹のような関係だったとか。
「友達、裏切り、喪失…か。
…。
その四天王の一人はどんなやつだったんだ?」
「中性的な顔立ちでとても優しい。
姫も兄のように慕っていた。
名をイオという。」
「あーそうくるか。
なるほどね。」
「知っている?」
「ああ。
戦ったことがあんだよ。
あいつはつえーよな。
どうしたもんかな。
…とりあえず風呂入りてー。」
「は、はい?」
「いやだから、風呂入りてーんだけど
貸してくれ。」
「わ、わかった。」
タケゾウのいきなりのお願いに
カリストはタケゾウを風呂に連れて行くことにした。
金髪の姫は
そんなタケゾウを横目に
修練を続けた。
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