崩壊
ザク、ザクと土を掘る音が
森に静かに響く。
タケゾウは穴を掘っていた。
遺体の形が残っている三人の
眠るための墓穴を
手でずっと掘り続けた。
タケゾウは円を自然に使い
再生を常に使えるようになっていたため
すでに無意識で軽微な怪我を治すことができた。
それはタケゾウにとっていいことなはずなのだが
血一つでない泥で汚れた手に
少し苛立ちを感じていた。
何日掘り続けたかわからないほど
タケゾウは掘り続けた。
そしてようやく三つの穴を掘った。
そこにルーナ、アレース、ハルを埋めた。
そして簡単に小さく掘った穴に
サヤ、マルースの灰を別々埋めた。
そして結論を出したのであった。
穴を掘り始める前に
タケゾウはひたすらに泣き叫んだ。
『なぜ!どうして!』と
受け入れがたい現実にひたすらに心が
争っていた。
そして以前、タケゾウに芽生えたあの感情が
タケゾウを支配し始めた。
そしてそれに抵抗するように立ち上がり
皆の墓穴を掘った。
そして掘りながら延々と考えた。
怒りや憎しみや恨みといった感情と
葛藤しながら
懸けたはずの命が無傷で
何もかも失ったという喪失感。
穴を掘るたびに
色んな感情がタケゾウの葛藤を他所に暴れた。
それはタケゾウを内側から破壊していった。
そして一つ掘り終わった頃から
一つの考えが芽生えた。
『原因、根本はなんだ?
誰がこんなことを始めた?』
誰かが、何かしたからこんなことに
なったんじゃないかと考えた。
『サヤとハルは本来この世界に来る必要なんて
これっぽっちもない。
ルーナがサヤに殺される必要もない。
ハルがアレースに焼かれて死ぬ必要がどこにあった?』
結果に対しての意味を考えた。
『どこにもない。
そんな必要、どこにもない。
そしてマルースが姉を失う必要も
友を失う必要もなかった。
この世界が争っているから…
人族が召喚なんてしたから
こんなことになったんだ。
悪いのはこの世界が
争いなんてことしてるからじゃねーのか?
人族が召喚なんてしなきゃ
別に関わる必要もなかったんだ。
みんないいやつなのになんでこんなことに
ならなきゃいけないんだ。』
タケゾウは二つ目の穴を掘り終えた。
その頃には
あの白髪オールバックの言葉を思い出していた。
『信念の元、ふるわれる力を人は正義というんだったな。
くくく。
ってことは全員自分の正義を掲げ
それをやった結果ってことか。
あはは。
それで俺の全てを壊したわけだ。
なんで墓なんて掘ってやったんだ?
全員、自業自得じゃねーか。』
どんどんと卑屈な考えが出始めた。
『その全員の理由が俺だって言うんだから
笑えてくるよな。
くく。
つまりみんなの正義は
俺のことだったわけだ。
ははは。
結局俺がいなきゃこんなことにはならなかったんだな。
うざ。
もういいわ。
何がどうとか理由とか
考えてももう無い。
壊してやる。
俺が今、やりたいことはそれだ。
殺すとかそんな生易しいもんじゃ済まさねえ。
ルーナを迫害した仲間も
アレースを奪っていったあのクソどもも
マルースを差別した龍人達も
サヤとハルだけでこんなところに
向かわせた人族も
こんなことに巻き込んだこの世界も
全てだ。
この全てを壊してやる。
……
…。
壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して 壊して壊して壊して壊して壊し
………
壊して…やる。』
タケゾウの精神は崩壊した。
まず一番先に壊したのは自分というものだった。
大切な者が目の前で殺しあった。
そして最後に残された者が
恨みをタケゾウにぶつけ
目の前で自害した。
そんな衝撃を受けて
誰が正気でいれるのか。
そんなことができる人間がいるのなら
それは人間とは呼ぶことのできない生物だろう。
そんな者からはおおよそ知能も感情も
感じることができないだろう。
そしてタケゾウは三つ目の墓穴を掘り終えた。
ここでタケゾウの精神が再生を始めた。
生命の維持に関わるとタケゾウの体と魔力が判断したのだ。
この頃にはタケゾウは意外な程に冷静だった。
『精神って再生できるのか。
ま、魔法が使える世界だし
そんなこともあるか。』
それはすでにタケゾウが
以前のタケゾウでは無くなったことを示していた。
その様子はすでに狂気などという
生ぬるい表現では到底収まることのない
状態であった。
『俺の正義ってなんだ?
俺はほんとは何がしたいんだ?
…ずっとヒーローになりたかったんだよな。
一番強くて…それで…
俺は…誰かを守って…
感謝されて…
そうだな。
ずっと憧れていたんだ。
それも救えなかった家族のことから
始まったんだよな。
俺だけ生き残った。
そして今もそうだ。
くくく。
俺の始まりはいつだって
失って初めて
目指すんだ。
最強に…そして英雄になろう。
この世界をぶっ壊してやる。
信念の元に。
この世界は俺の大切な物を奪っていった。
それは争いなんてもんがあるからだ。
その争いに終止符を打ってやる。
自己満足とかそんなもんだってのは
わかってる。
復讐って名前でも
正義って名前でも
やることはかわんねえ。
あはは。
ほんとに笑えてくる。
いつだって始まりは
残酷なもんなんだ。
無くならないと始まらない。
痛みだけがそれを教えてくれるんだ。
まずは時間もたくさんできたし。
強くなるか。』
そして灰になった二人を別々に埋めると
おもむろに立ち上がり
体の至る所を斬り始めた。
そして再生を使い、どんどん再生していく。
「んん!!!
ふぅふぅ…んあぁああぁああああ!!!」
激痛にタケゾウがひたすら叫び続けた。
「ぐ…はは…あははは。
斬って治してを続ければ
このまま筋肉は太くなるだろうし
再生もかなりうまくなるだろう。
そうだな…自動再生とかでいいか。
やっぱり英雄になる主人公とかって
特殊能力あるもんな。
俺はこの円くらいだし
その辺を鍛えるしかねーわな。
どんな傷も一瞬で治っていく相手なんて
想像するだけでやべーわ。
くくく。
んじゃま…さらにいきますか。」
こうしてタケゾウの断末魔のような叫びは
何日と森に渡り続けた。
「はは。
何回気絶したんだ俺。
だが…もうどんな傷も怖くないな。
おら!!」
タケゾウが自分の指をへし折った。
そしてそれは一瞬で元に戻る。
「へへへ。
筋肉もかなり発達したし
骨もかなり丈夫になったな。」
タケゾウはどんな傷すらも治せるようになった。
それはきっと積み重ねがあったからだろう。
今までの経験と知識がタケゾウを
どんどん強くしていった。
「だが…。
これでも首飛ばされたりしたら
確実に終わりだな…。
となるとやっぱりみんなみたいな
必殺技が必要だよな。
だいたい漫画の主人公もこんな感じで
必殺技考えるもんな。
うーん…。」
タケゾウは色んなポーズをとってみた。
「…。
そうだ。
刀に使うか。
前にやっても特に何の変化も
なかったけど
今なら明確にイメージできるもんな。
消滅させるイメージ。
んじゃま…やるか。」
こうしてタケゾウは火の魔法を
刀に宿すことにした。
とはいえそう簡単にうまくいくことはなかった。
「うーん。
一振りで簡単に消えてくな。
そもそもこんなに斬れ味のいい刀に
炎って必要なのか?
刀と炎…うーん…。
朔夜と炎…。
月と炎…。」
タケゾウの試行錯誤は続いた。
その試行錯誤や修練、肉体改造にどれ程の時間を
使ったのだろう。
そしてさすがに空腹に限界がきた。
「もう何日食ってないかわかんねーな。
再生と円のおかげで死ぬことは
ねーってのはわかったけど
さすがに限界だな。
どっかにまたきのこないかな?」
タケゾウはあのうまいきのこを探し始めた。
幸運なことにすぐ近くの木の根元で数本生えていた。
それを全て取り
焼いて食べたタケゾウ。
「ほんとうめーなこれ。
これなら何本でも食えるな。
さて。
再開すっか。
にしてもやっぱ敵いねーと
実験も何もできねーな…。
少し歩いてみるか。
ここにも…結構長くいたしな。
みんな。
俺、行ってくるよ。
ぶっ壊したら戻ってくるわ。
そん時、俺も眠ることにするよ。」
タケゾウは自分で作った墓に
そう言うと、すぐに歩き始めた。
変化はすぐに訪れた。
「お、こりゃいーね。」
タケゾウの周りを囲むように
その薄気味悪い森にとても似合う
人が骸骨になった見た目の
武装した兵士のような魔物が現れた。
「ゾンビっていうかスケルトンってとこだな。
いーね。
んじゃま、実験台になってもらうぞ!!」
タケゾウは刀を抜き、そこに炎を宿した。
「月炎・三日月!!」
囲んでいたスケルトンに向かい
タケゾウの放った炎が三日月の形をして
スケルトンに直撃した。
それはスケルトンを斬り裂いたかと思うと
その傷口が発火した。
そしてボロボロとスケルトンは灰となり
消えていった。
「あはは。
いーなこれ。
でもなんか仕留めるときには
ダメだな。
燃えられたら食えねーわ。
お、いっきにかかってくるとか
考えてるな。
じゃ、もう一つ。
月炎・炎月花!!」
そう言うとタケゾウは刀で円を書いた。
するとそこを辿るように
炎が円を宙に書いた。
その炎は所々青白く燃えている。
スケルトンが三体、タケゾウに一斉に斬りかかり
まんまとタケゾウが書いた炎の円にぶち当たる。
その瞬間、青と赤の火花とともに
反動で後方に弾かれたスケルトン達。
倒れたスケルトンがさらに
炎に喰いつくされ、灰となって消えていった。
「あーははは。
成功だ。
真ん中は空洞だと思ったろ?
その中は反射を使ってるんだよ。
だからそれに当たった瞬間、弾かれたんだ。
そしてこの温度を上げた炎が
お前らについていって燃えちまうってことだ。
ぶつかったときに出る火花が綺麗だろうなって
思ったけど、思った通りだったわ。
いい名前だろ?
なあ?」
タケゾウは残ったスケルトンに話しかけるも
スケルトンは何の反応も示さなかった。
「つまんねーやつらだな。」
タケゾウはそう言うと制限解除を
足を重点的にさらに使った。
そして一体に素早く斬りかかり、首を斬って落とす。
振り向きざまに隣にいたスケルトンの胴体を真横に真っ二つに
斬って落とすとその横にいたスケルトンには月炎・三日月を放った。
こうしてその場にいたスケルトンをあっという間に
倒してしまったタケゾウ。
「はあ。
一人になっちまった。
ん?」
そう言いながらタケゾウは刀を収めると
足元に転がっているスケルトンに目をやった。
そこにはメルが斬って殺したはずの兵士が
同じ状態で横たわっていた。
そしてその兵士がタケゾウに話し始めた。
読んでいただきありがとうございます。
気付けば五十話目です。
まだまだ書いていけたらなと思っています。
楽しんでいただければ幸いです。




