守りたいもの
「タケゾウくん!目を覚ますんだ!」
「わけわかんねーこと言ってんじゃねーよ!
反射盾!!」
タケゾウは反射盾により
その人族の三方向に壁を作り
逃げられないようにし
正面から突っ込んだ。
鞘にしまった刀を抜くフェイントをいれ
ガラ空きになった足に蹴りをいれ
地に転がした。
「ぐ!
反射なんて!
ぐはっ!!」
タケゾウは仰向けで転んだ人族の者に
そのままかかと落としを食らわせた。
そしてその反射の壁をさらに前方に作り
炎の玉を投げつけた。
そこからは軽い火柱が上がる。
タケゾウは着地し、反射を解いた。
そこには盛り上がった土の大地しかなく
人族を見失ってしまった。
「くそ!どうやって逃げたんだ?」
タケゾウは辺りを見渡したが
見当たらなかった。
そして目に見えたのは倒れているサヤとキヨトだった。
「サヤ!キヨト!」
名前を叫んで、二人の元に行こうとした
タケゾウの太ももに激痛が走る。
「ぐあ!」
タケゾウはあまりの痛みに倒れた。
足を確認すると
剣が貫通していた。
「いやぁ危ない危ない。」
後ろから聞こえた声にタケゾウは
苦痛に歪んだ顔で振り返った。
「土の魔法で隠れたんだよ。
危なく焼けてしまうとこだったよ。」
人族の者はそう言うと肩についた土を
手で落とした。
「再生もその剣が抜けないと使えないでしょ?
そういえば自己紹介がまだだったね。
私はアドアリス。
皆にはアドと呼ばれているよ。
タケゾウくん。
私達と一緒に戻ろう。
みんな君の帰りを待っているよ。」
人族の者はそう言うと
ローブのフードを取り、顔を見せた。
黒い短めな髪に黒い瞳。
背中には背負っている剣とは
似ても似つかない優しい顔をした
人物だった。
歳はおそらく二十代前半といったところだろう。
アドアリスはタケゾウにそっと手を差し伸べた。
その腕にはたくさんの傷があった。
その顔には傷も似合わない。
タケゾウはそんな印象を受けた。
「うぉおお!!!」
タケゾウは痛みに耐えながら大声で剣を引き抜いた。
そして再生を使い、傷を塞いだ。
「良い根性だ。
しかし、魔法を使いすぎじゃないかい?
そんなことでは魔力が…。
タケゾウくん。
せめて話を…」
「うるせぇ!!!」
「おっと。」
タケゾウは炎の玉を投げた。
それをアドアリスは簡単に斬って落とした。
「こんな近くでそんな物投げたら危ないじゃないか。
他の人にはしてはいけないよ。」
「剣で炎を斬っただと!?」
タケゾウは牽制になるだろう程度で
投げ、距離を取ったが
まさかこんなあっさりと斬られるとは思ってもみなかった。
「あらあら。
アド。
ローブのフード取ってしまったのね。」
「ああ。
一緒に来てくれと言っているのに
顔も見せないなんて失礼だしね。
…腕、あとで治療しよう。」
もう一人の人族は腕に添え木をして
布で縛り、タケゾウの前に戻ってきた。
「タケゾウくん。
あなたの魔法程度ではこの剣神
アドアリスには勝てないわよ。」
「そんなのやってみないとわからないだろ!」
タケゾウはさらに炎の玉を投げた。
それをまたアドアリスは斬って落とす。
「タケゾウくん。
洗脳を解くまでやはり平行線なのか…。
タケゾウくん。
そんな魔法では私には届かない。
諦めるんだ。」
「く…じゃこれならどうだ!!!」
タケゾウはさらに炎の玉を十ほど作り
一気にアドアリスに投げ飛ばした。
「タケゾウくん…。」
そう言うと疾風のような剣さばきで全て斬って落とした。
「なんでって顔してるね。
これはね。
剣に魔力を流して、さらに魔法で活性してるんだよ。
斬れ味のね。
これ以上、無理させたくないんだ。
タケゾウくんはきっとまだ魔法を
どう使っていいかわかってないんだろ?
そんな闇雲に魔力を消費しては…」
「うるせぇ!!!!」
「あらあら。」
タケゾウは炎の玉をさらに十作り投げると
同時にアドアリスに突っ込んだ。
「…無謀だな。」
そう言うとアドアリスはさらりと剣で斬って落とし
タケゾウに斬りかかった。
「ぐ!」
タケゾウの頭部の寸前で剣は止まった。
そして簡単に足払いされてしまった。
「もうやめよう。」
「ちきしょう!!」
タケゾウは飛び起きて
そのまま距離を取る。
『くそ!
あいつの剣…この世界で見た
どの剣技より磨かれたものだ。
まさに達人…そりゃ剣の神とか呼ばれるわ。
あんなに速い剣撃なのに
まるで呼吸するみたいに斬ってやがる…。
どうしたら…。』
「タケゾウ!」
そこにルーナが駆けつけた。
「ルーナ!
みんなは?」
「無事…と言って良いかはわからないけど
こっちはもう全部終わった!」
タケゾウが振り返ると
後ろでは人族達は倒れ、あのモーティアさえも地に伏している。
龍人達はけが人などの治療にあたっていた。
「あらあら。
さすがは魔王ってとこかしら。」
「そうだね。
これではあまりに不利だ。」
「その通りだ。
降参してはどうかね?」
「龍人の王まで来たか。」
ルーナに少し遅れ、シレーヌスもタケゾウの元に
駆けつけてきた。
「本当に不利な状況になってしまったね。
サヤとキヨトとハルを頼む。」
「あらあら。
二人も相手にしたら
さすがの剣神も負けてしまうんじゃない?」
「時間を稼ぐくらいはできるさ。
じゃ行こう!!!」
アドアリスはそう言うと
真っ先に治療中の龍人達の方へと走り出した。
「な!」
「させぬ!!!」
アドアリスを追ってすぐさまシレーヌスとルーナ
が攻撃を仕掛ける。
タケゾウもアドアリスに攻撃を仕掛けようとした。
その時であった。
「隙だらけよ。」
タケゾウの腹部を冷たく鋭利な物が
貫通していく。
「ぐぁああぁぁあああ!」
タケゾウは突如腹から出てきた
剣を掴んだ。
だがそれはゆっくりと
さらにタケゾウの背から入ってくる。
「タケゾウ!!!」
「タケゾウ殿!」
「はは。
やりすぎだ。
でもこれで隙ができた!」
ルーナとシレーヌスがタケゾウに気を取られ
隙が生じ、その間にアドアリスが
キヨトとサヤの元に向かった。
「動かないでね。
でないと…。」
「ぐあぁあぁああ!!!」
タケゾウの体に嫌な音とともに剣がさらに入り込む。
「お前!!!」
「あらあら。
怖い顔。
せっかくの美しい顔が台無しよ
魔王。」
「時空扉!」
アドアリスがキヨトとサヤの前に
歪んだ空間を生み出した。
そして二人をその空間に入れるとその空間を
移動させながら次々と
人族をその中に入れて行く。
「モーティア…よくがんばったな。
お前も帰ろう。」
倒れていたモーティアもそのゲートに吸い込まれるように
入っていった。
「サヤ!ぐ…また…返せよ!!
ぐ…サヤを返せ!」
「タケゾウ!」
「タケゾウ殿!」
タケゾウはその剣を押し戻そうとしたが
ビクともしない。
「あらあら。
そんなに暴れては痛いだけなのに。
闇雲に魔法を使い、状況の判断もできず
最後には人質になって足を引っ張る。
それなのにたくさんの人を守りたいなんて
傲慢なのね。
怒りに任せれば
覚醒するなんて思っているの?
ふふ。
おこちゃまね。」
「ぐぁああ…返せ…返せよ!!!」
「あらあら。
叫び、怒れば自分の意見が通るとでも
思っているの?
やっぱりお子ちゃまなのね。
何かを成したいなら
強くなりなさい。
坊や。」
「ぐあぁあああぁああ!!!!。」
「タケゾウ!!!!」
人族の者がそう言うとタケゾウに突き刺した剣を
ぐいっと横にひねった。
そこに皆の避難を済ませたアドアリスが
戻って来た。
「はぁはぁ…。
神具に溜まっていた魔力がつきそうだ。
ハルは二人の後に送る。
先に戻っていてくれ。
時空扉!!!」
「やめろ!!離せ!!!」
アドアリスがその時空扉
を出したその時、ルーナがタケゾウに抱きついた。
「な!!」
「あら。」
タケゾウに抱きついたルーナの腹部を剣が貫通した。
「お前らの…思う通りにはさせる…
わけないでしょ!!!!」
タケゾウを抱きしめたまま、ルーナはタケゾウの
背後にいた人族の者に前蹴りをぶちかました。
人族の者は折れた腕でガードするも
ものすごい勢いで剣を握ったまま吹っ飛んだ。
「再生!!」
ルーナはタケゾウを抱きしめたまま再生を使い
タケゾウと自分の傷を即座に治した。
「ありがとルーナ!!
こいつらを捕まえたい!!
頼む!!!」
「タケゾウ!任せて!」
ルーナは抱きしめていたその手をほどき
タケゾウとシレーヌスがアドアリスと
人族の者にはルーナが対峙した。
「よくも…よくもあたしのタケゾウに
こんなことしてくれたわねぇええぇぇぇえええ!!!!!」
ルーナの怒りは沸点をとうに超えていた。
そう叫んだルーナからはものすごい殺意が放たれた。
「あらあら…。
震えてる?
恐怖かしら?こんなの初めてだわ。
ゾクゾクする!!」
その殺意を受けた人族の者が
ルーナに斬りかかった。
「うるぁああああ!!!!」
ルーナはその自分に降ってきた剣を
まるでそんなもの関係ないと言わんばかりに
剣ごと人族を殴った。
「ぎゃあ!!」
剣をへし折り、その拳が顔面に到達するその瞬間に
折れた腕ともう片方の腕で人族の者がガードする。
だがそれすら御構い無しに
ルーナは殴った。
激音とともに両腕を粉々に折れた音がした。
そして人族の者はゴロゴロと地を転がり吹き飛んだ。
「あ…ら…こんなに強いなんて …
反則…ね。」
仰向けに倒れたその上にルーナが
また拳を突き立てた。
「ぐはっ!!」
人族の者は気を失った。
「タケゾウに感謝するのね。
捕まえたいって言ったから殺さないであげる。」
まさに圧倒的勝利だった。
「タケゾウ!!」
ルーナはすぐさまタケゾウの元に駆けつけた。
そこでは剣撃が宙を舞い、それを援護するように
炎が踊っていた。
とても遅くなりました。
師走も終盤にさしかかかり激務です。
皆さんはよいクリスマスを過ごせていることを
願います。
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楽しんでいただければ幸いです。




