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目覚め

「…そうか。

本当に生きていたんだな…俺。」


タケゾウは目を覚ました。


部屋は真っ暗で、窓から月明かりが差し込んでいる。

タケゾウは上半身を起こし、部屋を見渡すと


マルース、ステラがソファに腰をかけたまま眠っており

ゼニスは床に雑魚寝していた。


「みんな…

ほんとに看病してくれてたんだな…。

疲れてんのに…。

俺が…もっと…。

ルーナとサリースはどこに…?」

「ん?

お、タケゾウ。

目が覚めたか。」

「シーっ!

みんなが起きちまう!」

「あ、ああ。

そうだな。

立てそうか?」

タケゾウはゆっくりと立ち上がったが

フラフラとしてしまい

ゼニスに肩を借りて部屋の外に出た。

二人とも連日の疲れで

ぐっすりと眠っている。

そのまま庭まで行き

適当なところに

腰を下ろした。




「ゼニス…悪い…。」

「かはは。

肩貸すくらいなんてことねーよ。

よく生き返ったな 。」

「ああ。

…その…アレースは…。」

タケゾウはその名前を口に出した途端

唇を噛み締めた。

溢れそうになった涙を

痛みとともに押し込める。





「アレースは…攫われたよ。」

「そう…か…。

あいつら…。

ルーナとサリースとヘイズは?」

「魔王なら先に帰ったぜ。

セバスとか言う奴に連れられてな。

大変だったんだぞ。

お前のところに残るって騒いでな。

ただ、セバスってやつが耳元で何か言ったら

速攻帰ったけど。

あとなんでかはわかんねーが

サリースもそれについていったぞ。

兄貴は今、民の避難誘導で

きっと寝ずに働いてるよ。」

「そうか。

ルーナ…何かするつもりなのか…。

避難ってどこに向かってるんだ?」

「ツキヨミの王都だ。

夜は魔物が多いからな。

ギルド総出でやってるよ。」

「そうか。

シレーヌスはどうしてる?」

「安静にしてろって

マルースに言われてたみてーだけど

率先して避難の手伝いしてた

みてーだな。

その辺はさすが王って感じだ。」

「そっか…。」

「かはは。

それにしてもタケゾウ。

随分と落ち着いてやがるな。」

「そんなことはない…つもりだけど…。」

タケゾウは眠っていたときのことと

これまでの神との話を

ゼニスに話した。






「はぁーん…。

神ねぇ…。

ま、話では聞いたことあるが

本当にいるとはな…。

そいつが言ってることが

今の所嘘が無いなら

人族は攻めてくるな。

この絶好の機会を逃すはずがねーわ。」

「俺もそう思う。

今度こそ…。

もう奪わせてたまるか…。」

タケゾウは固く口を結び

拳をギュっと握った。

『もう嫌だ。

ようやく覚悟はした。

絶対に奪わせない。

殺すことになっても…。』

そんなタケゾウを見たゼニスは

ふぅと一息つき

タケゾウに声をかけようとしたその時に

後方から二人の足音が迫ってきた。






「う…うう。

タケゾウ…さん?

…う…うう…ダゲゾウざん!

ダゲゾウざーん!!」

マルースがタケゾウに飛びかかるように抱きついた。


「お、おお。

マルース…。

無事で…無事で良かった。」

「ダゲゾウざん!ダゲゾウざぁん!

ダゲゾウジャーン!!!

うううぅぅ。

なんで勝手にいなぐなっでるんでずが!!!!

もう起きないんじゃないがっで…ほんどにじんばいじまじだぁああ

うわぁぁあぁああ!!」

マルースはタケゾウに抱きつき、盛大に泣いた。

「ダゲゾウ…ぐず…ほんどによがったーー」

ステラはタケゾウの目の前に行き

タケゾウの顔を見た途端に尻餅をつき

これまた盛大に泣き始めた。

「ステラ。

悪かった。

その…心配かけたな…。」






その後二人がまるで豪雨のごとく泣き

それが止むまでに

結構な時間がかかった。

ゼニスはその二人を見るタケゾウの顔が

先ほどとは違い

優しくなっていくのを感じた。

そして二人がようやく泣き止んだ。





「かはは。

こりゃいいな。

な、タケゾウ。」

「ん?

どういうことだよゼニス?

心配かけたことが良いってことか?」

「ぐず…ゼニス兄?」

「ひぐっ…どういうごとでず?」

「かはは。

タケゾウ。

神の言うこともよ、一理ある。

一理つーかむしろそのまんまな気もする。

怒りも憎しみも

タケゾウの中にはあるだろ?

それこそ殺してやりたいくらいに。」

「…。」

「な。

今タケゾウはよ。

失って辛くてそればっかに目が言ってんだよ。

けどな。

目の前を見てみろ。

これはお前が最後まで

自分の命を賭して

守り繋げた命だ。

お前が諦めたら

二人とも死んでいたろうよ。」

「そうだぞタケゾウ!

私はあの時もうダメだって思ったんだ!

あの時にタケゾウの再生のあの温もりを感じるまで

本当に絶望しかなかったんだ!

タケゾウが助けてくれた!」

「ぞうです!

ひぐっ!

タケゾウざんがいなかったらステラさんも

私も死んでいました!

あんなに…怪我して…

こんなに…ひぐっ…寝込むほどの力を

私達に使ってくれて…ひぐっ

ありがどうござい…ううう…うわぁぁぁん。

タケゾウざんがじななぐてほんどによがっだー!!!」

マルースはまた盛大に泣き始めた。

きつくきつくタケゾウを抱きしめて。

ステラもそれにつられるようにまた

泣き始めた。





「お、おい二人とも…。

俺…アレースも守れなくて…

弱くて足手まといで…

みんなを守ってやれなくて…

ぐず…ひぐ…う…ひぐ…。」

タケゾウは皆に肯定され

途端に涙が溢れてきた。




するとマルースがいきなり立ち上がった。

「ひぐっ!

タケゾウさん!

何を言ってるんですか!

姉様を助けられなかったのは私のせいです!

あの状況で

この場にいる人以外を

信用した私の落ち度です!」

「ぐす!

マルース様!

それを言うなら私だってそうだ!

あの時に気付けなかった私の落ち度だ!」

「ぐす…いや二人とも…

あの時に…」

「「タケゾウ(さん)は黙って(ください)!!!」」

二人はタケゾウの会話の参戦を許さなかった。

そして二人は互いに顔を睨み合い

話し始めた。






「ステラさん!

何を勝手に自分の責任とか思ってるんですか!

自意識過剰なんですか?」

「は?

マルース様こそ

ガキのくせに

何を一人で私の責任とか言ってんだ?

あんなのガキなら信じるに決まってんだよ!」

「ガキガキうるさいです!!

ステラさんこそ髪ボサボサで

タケゾウさんのこと意識してから

ようやく女らしくなったけど

話し方はまだガサツで

全然女らしくないです!!

そんな人がタケゾウさんのお嫁さんなんて

何をバカなこと言ってるのか

滑稽の極みです!!!!」

「それとこれとは今関係ないだろ!

そういうところがガキだって言ってんだ!

あーお子ちゃまと話すのは疲れるわ。

そんなお子ちゃまには

タケゾウは似合わないな。」

「な!私だってもう少しすれば

姉様のように…」

二人がものすごい勢いで喧嘩を始めた。

それを圧倒されるように

聞いていたタケゾウとゼニス。

タケゾウはいつの間にか会話から追い出され

次第に涙が止まり

ゼニスと顔を見合わせた。

そして…。





「「ぷ…はははははははははははは!」」

盛大に笑った二人。

それを睨む女性陣。





「かははは。

二人とも仲良くなったもんだな。

お前が守ったこいつらが

きっとお前を笑顔にしてくれる。

タケゾウ忘れんなよ。

今あるこの大切なもんを。

お前は独りじゃないし

同じような悩みをみんな持ってんだ。

今の聞いてわかったろ?

みんな自分を責めてんだよ。

あの時こうしてれば

ああしてればとかな。

憎しみも怒りもみんな持ってる。

それでもそれに支配されたら

きっとここにいるみんなが

悲しむんだ。

タケゾウ。

そんなもんに負けんなよ。

そんな時は俺がぶん殴ってやるからな。」

「ゼニス…。

ああ。

わかったよ。

俺さ…正直アレースを奪われたのが

ほんと許せなくてさ…。

自分が弱いことに心底嫌気が差した。

考えてるうちにさ…

アレースを傷付けた奴らを殺したい

って気持ちが出てきて…。

このままみんなが気付かせてくれなかったら

わからなかったと思う。

みんなありがとう。

今度こそ俺、強くなるよ。」

「タケゾウさん…。

私も絶対強くなります!

一緒に姉様を取り返しましょう!!!」

「その通りだタケゾウ!

私も強くなる!

もうタケゾウにそんな思いはさせないから!」

「かはは。

すげーいい仲間ができたなタケゾウ。

俺ももちろん協力すっからよ。

魔王は多分だがすでにそのために

動いてるんだろうな。

それ以外のことかもしんねーけど…。

何にしてもタケゾウがすぐ動けるように

魔王はやってるんだろうな。」

「ルーナ…。

じゃ何にしても起きたからには

俺もすぐ動かないとな。」

タケゾウがそう言うと

間髪入れずマルースとステラが口を開いた。

「タケゾウさん!

今日のところは休んでください!!!」

「タケゾウ!

今から修練とか絶対許さないからな!!!

まだ病み上がりなんだから飯食って寝ろ!」

「そうだな。

それは俺も賛成だ。

俺はサボってたし、今から朝まで

ちょっと用足ししてくるわ。

しっかり休めよタケゾウ。」

「ちょ!ゼニス兄!

私も手伝う!」

「ステラも寝てろ。

寝てねーだろ?」

「さっき寝た。

マルース様ほど働いてないから大丈夫!」

「ったく仕方ねーな。

帰ってきたら休むって約束できんのか?」

「わかった!

約束する!」

「じゃ俺はステラと行ってくるわ。」

「マルース様!絶対タケゾウに無理させないで!」

「そんなのステラさんに

言われなくてもわかってます!

心配せず行ってください!」

「かはは。

じゃ行ってくるわ。」

二人はそう言うと城の外に出て行った。




「マルース…。」

「はい?

なんですかタケゾウさん?」

「アレースを…」

タケゾウはマルースに謝ろうとした。

だが…。





「…一緒に取り戻そう!」

タケゾウはマルースにそう言った。

「はい!

でもタケゾウさん!

今日は休息ですよ!

そういえばご飯食べますか?」

「ああ。

…。

ああ。

食べよう。

マルースもしっかり食って

休もう。」





自分と同じことで悩み

辛い思いをしているこの小さな女の子は

その上で自分を心配してくれている。

そんな女の子に口が裂けても謝ることなど

もうできない。

タケゾウはそう思ったのであった。




そしてタケゾウとマルースは食堂に

ゼニスとステラはゼニスの用足しに向かった。





それぞれの決意と覚悟を胸に

それぞれが進みだした。


読んでいただきありがとうございます。

師走のせいで

投稿が三日に一度くらいになるかと思います。


よろしければブックマーク、評価をお願いします。

楽しんでいただければ幸いです。

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