血飛沫と降り注ぐ炎
「このくそが!!!」
血飛沫の中にいるイオに向かって
タケゾウは拳を思い切り突き出した。
だがそれはいとも簡単に止められる。
そこにルーナが
ものすごい速さで飛び蹴りをした。
イオはかなりの勢いで飛ばされる。
そこに追随するように
炎弾がイオに無数に降り注ぐ。
アレースは腹部からものすごい量の
血を流してしまっていた。
アレースの周りを魚人族の兵士
魔族の兵士
龍人国兵士が取り囲む形となった。
その外側でゼニスとステラが
戦闘態勢を整えた。
シレーヌスがアレースを抱き抱え
ルーナが再生を施す。
魔族の兵士もそれに加わった。
タケゾウがルーナに怒鳴るように声をかける。
「ルーナ!!
アレースは無事か!?」
「大丈夫!
まだ息はある!
必ず治してみせる!!」
「わかった!」
「アレース!しっかりするのだ!アレース!」
そしてタケゾウの周りには大量の魔力が漂い
一気にタケゾウの体内に入る。
『これじゃ足りない!
制限解除!
円!
もっと、もっとだ!』
タケゾウはさらに制限解除、円を使った。
その上空をさらに炎弾が走っていき
それに続きマルースがものすごい形相で
イオに接近していった。
炎弾が着弾した場所は炎に覆われ
さらに火の粉、煙で視界が悪くなっていた。
「よくも姉様を!!!!
よくも!!!!!」
マルースはすでに我を忘れ
その炎の中心に炎弾を打ち込む。
「マルース!!
まずい!!
く…こんな時にめまいかよ…。
情けねー。
よし…魔力も充分な気がする。
行くぞ!!」
タケゾウは一気に加速し
その炎の中心に突っ込んだ。
『あちい…いねーのかよ。
どこ行きやがった?
あいつは目には見えない速さで動くからな…。』
タケゾウは炎の中から飛び上がり
一旦周りを見渡した。
『なんでいなくなった?
上にも周りにもいない…。
まさか下か?」
そんなことを思いながらそのままマルースの元に行く。
「マルース落ち着け。
あいつが消えた…。
どこから来るかわかんねーぞ!」
「タケゾウざん…姉様が…姉様が…。」
マルースは泣きそうなのを我慢しながら
タケゾウに訴えるように言った。
「大丈夫だ!
ルーナが今治してくれてる!
それにアレースは強いからな!」
「う、うう…うう。」
「マルース!集中しろ!
アレースは死なせない!」
タケゾウとマルースは背中を合わせ
戦闘態勢を維持しつつ
アレース達のいる場所に向かった。
「アレース!しっかりして!」
『どうしてこんなに再生しないの!?
まさか毒か何か!?』
ルーナは必死にアレースに再生を施すが
全く傷が良くならない。
そこにメルが声をかける。
「これはひどい…。
もしかして再生が効かないのかな?」
「そうなの!
何かいい薬は持ってないの!?」
ルーナは焦りながらまくしたてるように聞いた。
「わかった。
では僕に任せて。」
そう言うとメルはアレースを抱き抱える。
そして薄っすらと微笑むとなぜか元いた席とは逆側の石畳のほうに
スっと飛んで着地した。
「え?」
ルーナやシレーヌス
ステラにゼニスも
その場を取り囲んでいた
皆が頭に疑問符を浮かべた。
「ははははっは!
手に入れたぞ!
未来を見ることのできる力
千里眼を使える女を!!」
「!!??」
ほとんどの者が今の状況を理解できず
その場に立ち尽くしてしまった。
その時、メルが立っている石畳の横が大きく崩れ、穴が開いた。
そこからはイオともう一人、獣人のような者が現れた。
「アレース!!」
タケゾウはその中でいち早くメルのいるところに向かったが
イオがタケゾウに攻撃を仕掛けた。
タケゾウはその攻撃で
足を止められ
アレースに近づけなかった。
「ぐ、くそ!
アレースを返せ!!」
「吠えるなよ人族風情が!
ようやく…くくく…。
ようやくだよ!
これで次の段階に進めるんだ。」
先ほどまでとは打って変わった人格が
メルの表情から見てとれた。
メルはスっと手を上げ、何かの合図を送った。
「ぐはっ!」
シレーヌスが龍人の兵士数名に剣で刺されてしまった。
そして最悪なことに会場の客席にも
何人も紛れ込んでいたようで
あちらこちらで魔法が使用され
悲鳴とともにパニックになった観衆は逃げ惑い
応戦し始めた者は傷つき、大量の血が宙に舞った。
「くっ!あなた達!何をしているの!」
ルーナの加護魔法
反射により数名の兵士を一気に吹き飛ばす。
「おいおいおいおーい!
魔王よ。
そんなことしていいんですかぁ?
アレースちゃんがどうなっても知らないよ?
他の奴らも!
アレースちゃんの命が惜しいなら動くのやめー。」
「ぐ、これじゃ…動けないじゃない…汚いやつめ!」
「何か聞き間違いしたかもしれないからもう一回言ってくれる魔王?」
「汚いやつって言ったのよ!」
「へぇ。
そういう下品な言葉を使ってはいけないなぁ。
イオ。
タケゾウくんの肩、もう一度えぐっていいよ。」
「な!やめなさい!!」
「タケゾウくん。
君はわかっているね?
動いたらアレースちゃん…死ぬかもよ?」
「ぐ…それだけはやめてくれ。」
「あーははっははっははは。
わかってるじゃないか。
さぁイオ。
やってあげなさい。」
イオはタケゾウに近づき
少し戸惑いながらも先の戦いのように肩に爪をねじ込んだ。
「うぐ…く…。」
タケゾウは痛みで意識が一瞬遠のいたが
声を上げることだけはなんとか耐えた。
「ぐ…これでいいだろ?
アレースを…離せ…。」
「タケゾウ!!!」
「タケゾウさん!!!」
「お前!タケゾウに何をしてるの!!
やるなら…やるならあたしにやりなさい!!」
「へぇ…。
そう言ってますので
ではニチカさんどうぞ。」
「「「え!?」」」
メルがそう言うと
味方だと思っていた兵士の一人がルーナに近づく。
そして兜を外し、顔があらわになる。
「ニチカ…さん??」
突然ルーナがものすごい勢いで飛ばされる。
「ルーナさん!!なんで…なんで!!!」
マルースはもう訳がわからないといった表情で
その場に立ち尽くしてしまった。
ルーナはメル達がいる方に飛ばされ、ピクリとも動かない。
「ル、ルーナ…アレース…
やめてくれ…。」
「うーんやめてもいいけどね。
そうだ。
一つ面白いことをしよう。」
メルはそう言うと
マルースにタケゾウとイオの元に来るよう告げた。
「タケゾウさん…私…。」
「マルース…。
逃げろ…。」
「あはは。
いいね。
ではマルースちゃんだったね?
イオ、タケゾウくんを降ろしてあげて。」
イオはタケゾウをソっと地面においてメルも元に行った。
「タケゾウさん!」
マルースはタケゾウの元に駆け寄る。
「マルースちゃん。
お姉ちゃん大切だよね?
返して欲しい?」
「この外道!
早く姉様を離しなさい!!」
「おお。
これはひどい言われようだ。
けれどね、これはもう僕の物だ。
返して欲しいならそれなりの対価を払ってもらわないとね。」
「対価…?」
「そう。
それはそこのタケゾウくんの命で払ってもらおうか。
君が殺して払ってくれマルースちゃん。」
「そんな…私が…タケゾウさんを殺す?」
「そうそう。
調べたところによると
マルースちゃんは殺すのが得意みたいじゃないか。
さぁ、殺してみせてよ。」
ふざけた表情でメルがマルースに言った。
マルースはタケゾウを見ながら悲痛に歪む
表情で答えた。
「そ、そんなこと…できない…できないよ…ひっぐ…。」
「さぁ早く、すぐ殺そうね。
さぁ、さぁ、さぁ!!」
メルがマルースをさらに追い込むように言った。
「ふざけるな!
マルースにそんなことさせられるわけねーだろ!!
それにアレースはお前の物なんかじゃない!」
タケゾウは抉られた肩を抑え
ゆっくりと立ち上がった。
傷は再生を使ったがどうも治りが遅く
うまくいかないようだ。
「ひぐ…タケゾウ…さん?」
「あーははは。
対価風情がどうも勘違いをしているようだね。
きみは意見をできる立場じゃないんだ。
まだわからないのかな?」
メルはそう言うと観衆に紛れていた
仲間を二十人ほど石畳まで呼び寄せタケゾウを囲ませた。
またメルの周りにも数十人程の者が集まった。
そしてメルの隣にはニチカがともに並び立った。
「ぐ、く、くそったれ!」
「ニチカ様!!なんでですか!!なんで!!」
マルースの問いかけにニチカは一切反応を示さない。
「さて。
初めからマルースちゃんには
選べないことくらいはわかっていたから
こうするつもりだったけど…これじゃ面白くないね。
タケゾウくん。
とりあえずきみは動いたし、こちらに敵意を向けたよね?
すごく嫌な思いをした。
これはきみへのお返しだ。」
メルはそう言うと右手に大きな水の塊を作り出した。
「お、おい!まさか!や、やめろよ!やめろぉおぉおお!!!」
「雨惨劇」
そう言うと水の塊が無数の矢に変化し
一気に客席に飛んでいった。
その矢は交戦中の敵、味方関係なく
客席ごと全てを貫き、まるで何も無かったかのように
そこには赤い水しぶきだけが舞った。
「あはは。
これはきみのせいだよ。
何百という命が今失われたのはね。
まぁ、うるさかったしちょうどいいね。」
「お、お前!自分が何をしたのかわかってんのか!!」
「何ってきみのせいじゃないか。
タケゾウくんが立場をわきまえないから
こんなことになってんだよ?」
「ぐ…そんな…。」
「はは。
じゃ今度は動かないんだよ?
マルースちゃんと一緒に痛ぶってあげるから。」
「な!?
頼む…やめてくれ…
頼む…。」
タケゾウは下唇を噛みながら頭を下げた。
「あ、また勝手に動いた。
ほんと、わかんないねきみは。」
そういうとメルはアレースの腕を
いとも簡単にへし折った。
「な!!」
「反省しなきゃねタケゾウくん。
きみのせいだよ。」
その時だった。
「そんなわけ…」
「ないでしょ!!」
ステラ、ヘイズが横から攻撃を仕掛け
背後からゼニス、ルーナと
逆方向からはクーリ、オウル、魚人の兵士二名が飛びかかった。
ヘイズが周りの者を蹴散らし
クーリ、魚人の兵士の一撃はメル、ニチカともにかわしたが
体制を崩すのには充分すぎる一撃で
ゼニスはニチカに
ルーナはイオに
オウルはメルに
一撃をクリーンヒットさせた。
なんとかその攻撃を後ろに跳びのきかわした
穴を掘っているだろう獣人には
ヘイズの魔法がクリーンヒットする。
そこでステラがアレースを素早く奪還する。
「タケゾウ!
やっちまえ!!」
ステラはその場を素早く離脱
タケゾウに大きな声をかけた。
「流石だなお前ら!!」
タケゾウは一気に円を使い
マルースは一気に炎弾を作り上げる。
「よくも、いいようにしてくれましたね!
炎行進!!」
あたりを囲んだ敵にマルースが炎をお見舞いした。
その炎の中をかいくぐり
一気にメルまで距離を詰めたタケゾウ。
渾身の拳をメルに放つ。
「ぐは!!」
「吹っ飛べ!!」
タケゾウの渾身の一撃でメルはさらに後方に飛ばされた。
「今のうちに撤退するのよ!」
ルーナが皆に声をかけ
撤退しようとした時
石畳に無数の穴ができ
そこからたくさんの武装した者や
木の化け物まで現れた。
「いたたた。
ひどいじゃないかみんな。
特に父様、こんな強く殴らなくても。」
「何をしているんだバカ息子!
こんなことしてタダで済むとは思っていまいな!」
「きひひひ。
兄さん…なんか企んでいるとは思ったけど
これは…ダメだ。」
「そんなこと言うなよ弟。」
「きひ…え!?」
クーリは一歩進もうと足を動かそうとしたが
動かなかった。
そこになってようやく
石畳からでた木の根に自分の足が固定されているのに気付いた。
その時にはもう遅かった。
「お兄ちゃんに逆らってはいけないなクーリ。」
メルはクーリに向け
水の矢を飛ばし、その矢はクーリの脳天を貫いた。
クーリは力なく、その場に倒れた。
「メル!!貴様!!」
オウルはすぐさまクーリに駆け寄ったがすでに命は無くなっていた。
「父様。
クーリは兄に逆らいました。
残念ではありますが…仕方のないことです。」
メルは目に手を当て、泣き真似をしてみせた。
「き、貴様というやつは…。」
「オウル様!離れて!!
撤退しなければ!
もうこの会場はダメです!!」
ルーナが遠くで叫んだ。
「ふふ。
父様もクーリの元にいかなくては悲しんでしまいますよ?」
メルはまたも水の矢を今度は無数にオウルに打ち込んだ。
「ぐは…オウル様…どうか…お逃げください…。」
「私達が…攻撃を…防ぎます…。」
「お、お前達…。」
「お早く!…メル様には私達ではかないません!」
「ぐ…すまない!」
兵士が盾となり
水の障壁を繰り出した。
だが何本かは貫通し
兵士に刺さってしまう。
「オウル様!
早く!私が後ろを守ります!」
その少し稼いだ時間で
オウルはクーリを抱え、ヘイズがその後ろを
護衛しその場を脱出した。
「タケゾウさん!!
ステラさんの護衛に回りましょう!」
「ああ!わかった!」
タケゾウとマルースはその出てきた兵士をなぎ倒し、ステラの元に急いだ。
「ステラ!!さすがだな!!」
「当たり前よ!」
「ステラさん…本当に…!?」
合流した三人の前にイオと
もう一人の地面を掘っているだろう獣人が現れた。
「くっ…お前らの目的はなんなんだよ!!
アレースをどうするつもりだ!!」
その二人はその問いかけ答えない。
『…イオって言ったかこいつ…
こいつには速さでは絶対に勝てない…。
ルーナとゼニスは…くそニチカ!
あっちはあっちで戦闘中か…あの木の化け物もいやがる…。
くそ!
考えろ!アレースを救いたい!どうしたら…』
「タケゾウ!しっかりしろ!
こいつらなんとかしないと逃げれないぞ!」
「タケゾウさん!
私が盾になりますのでそのうちに!」
「ダメだ!
こいつの速さは尋常じゃない!
ステラ…俺があのイオってやつを抑える。
マルースはこのモグラ野郎を頼む。
頃合いを見て逃げてくれ。」
「タケゾウ…わかった!
アレースは必ず私がなんとかする!」
「マルース…危険だから…やばか…」
「タケゾウさん!大丈夫です!
行きましょう!」
「…すまん。
じゃ二人とも…行くぞ!!」
タケゾウとイオの第二戦が始まった。
読んでいただきありがとうございます。
次回は28日頃に投稿できればと思っています。
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