いざ二回戦
武闘会、タケゾウの二回戦目。
「よろしくお願いしゃす。」
「お前…人族か?」
「んー…そうとも言うかな。」
「そうか。
きひひひ。
死んでも知らない。
俺、手加減…しない。」
「ああ。
じゃないと俺も困る。」
「困る?
意味…わかんない。」
「わかんねーだろうな。
まあ、いい勝負しよう。」
「いい?勝負?
きひひひ。
勝負になればいいな。」
二回戦の相手は
魚人族第一王子のメルの弟、クーリだ。
見た目の特徴的な白と黒は
メルと一緒で髪も長い。
だが、メルと違って友好的な感じは一切しない。
姿勢が悪く
手をだらりとしていて、髪で目があまり見えない。
身長はおそらく背筋を伸ばすと
メルより大きいのでないかと思われる。
「では両者、いいな?
二回戦、始め!」
「あれ?」
開始の合図とともにクーリは距離を取った。
タケゾウもまさか距離を取られるとは思っていなかった。
『なんだあいつ?
こっちの出方を見てるのか?
観察されてるみてーだな…。
髪で見辛いがあの目…
確実に集中してやがる…。
でも時間をくれるなら好都合だ。
これなら出来る…。
円!』
タケゾウはクーリが距離を取ったことを好都合と判断し
円を使うことにしたのだが…。
『きひひ。
あれか。
メルはなんでこんなやつ…気にしてる?
いいか。
これで…もう殺していい…あれ?
どうだったっけ?
きひひひ。
いーや。
殺そう。』
タケゾウの周りに魔力が霧のような形で漂い始め
スっとタケゾウの体に入っていった。
そしてクーリの口が三日月のような形になり
その不気味な雰囲気をさらに不気味に変え
タケゾウに殺意を向けた。
そしてタケゾウは一気に間合いを詰め
クーリの顔面目掛け拳を繰り出した。
クーリはなんとその拳をそのまま顔面で受けた。
「きひひひ。
痛い。
けど…弱い。」
「んなっ!?」
そしてクーリも同様に拳を繰り出す。
「っぐ!!」
タケゾウは頬を殴られたが
首を衝撃に沿って逸らし、威力を半減させ
そのまま回転し、裏拳をお見舞いした。
クーリはそれをまたも顔面に受け
今度はそのまま横に二メートルほど飛ばされる。
『こいつ…さっきからわざと殴られてやがる…。
どういうつもりだ?』
クーリはゆっくりと起き上がり
頬から出ている血を舌で舐めた。
タケゾウはその不気味な姿に寒気を感じた。
「きひひ。
お前…それどんな力?
もっと見せてみろ。
きひひ。」
クーリはふらっふらっとタケゾウに歩み寄る。
「はは。
気味悪いやつだなお前。
んじゃま、もっともっとやってみるから受けてくれよ?」
タケゾウがそう言うと
また魔力が具現化しタケゾウの周りに漂い始めた。
『違うな…。
もっと強く、もっと。
倒すだけの力が欲しい…。
どこまで強くなれたのか知りたい!』
倒すということに集中し、タケゾウは息を吐き、瞑想し始めた。
「きひひ。
待っててやる。
ほら早く。
待っててやるから。
きひひひひひ。」
クーリは歩みを止めタケゾウの周りに集まる魔力を観察し始めた。
そしてタケゾウの周りにあった魔力はさらに濃くなり、球体のようにタケゾウを覆った。
「きひひひ。
なんだそれ。
きひひひ。
ヤバそう。
面白い。」
「待たせたな。」
タケゾウがそう言うと
タケゾウの周りにあった魔力が
タケゾウの体に吸い込まれるように消えた。
タケゾウは一歩ゆっくりと踏み出し
前かがみになりながら拳を強く握った。
「きひひひひひ。
来いよ、すげーの来いよ?」
「ああ、今行くよ。」
タケゾウがそう言った瞬間
タケゾウのいた石畳は割れ
クーリがものすごい勢いで吹っ飛んだ。
「ぎひひひ!
すげーすげー!」
クーリは飛ばされながら笑った
そして体制を立て直し
タケゾウを視界に収めようと
飛んできた方向を見たが
「おせーよ。
もう終わりだ。」
タケゾウはすでにクーリの眼前におり
クーリの顔にさらに拳をめり込ませた。
「ぎはっ!!」
クーリはそのまま場外に飛ばされ
試合は終了した。
「おい。
全然本気出してねーじゃんか。」
タケゾウは石畳の端まで行き
クーリに声をかけ、手を伸ばした。
「ぐ…ぎはは
その力…すげー。
立てそうに…ない。」
クーリはタケゾウを見ながら上半身を起こそうとしたが
そこで気絶し、ドサっと倒れた。
「みんなー勝ったぞー。」
タケゾウは皆がいる席に戻った。
「タケゾウ!おめでとう!」
「タケゾウさんおめでとうございます!」
「タケゾウすげーな!」
「タケゾウすごいです!」
そこにメルがやってきた。
「いやーすごいねタケゾウくん。
まさかクーリに勝ってしまうなんて。」
「いや。
すごくはないだろ。
全然攻撃してこなかったんだから。
何が狙いだったんだ?」
タケゾウは少し不服そうに
メルに言った。
「あはは。
さすがにあのやり方じバレてしまうよね。
一回戦で見せたあれ…。
先日もタケゾウくん街で暴れたろう?
その得体の知れない力が実は結構噂になっていてね。
是非知りたいと思ったのさ。」
そこにもう一人、男がやってきた。
「メル。
この人がそうなのかい?」
「父様。
この方で間違いないと思いますよ。」
「君は確かタケゾウくんと言ったかな。
初めまして。
メルの父で魚人族の王
オウルと言います。」
「あ、どうも。
タケゾウです。」
「この度は試すようなことをしてすまなかったね。
一回戦で見て、目を疑ったよ。
しかし、今まで私も見たことがない力だ。
一体どういう力なんだい?」
オウルはメルととても雰囲気が似ていて
容姿も明らかに血縁だろう容姿をしている。
メルが歳を取ればこうなるだろうなと思うほどに
親子として似ている。
そしてオウルとメルは
タケゾウに興味津々だ。
「この力は実は俺もよくわかんねーんだよな。
気付いたら使えてただけなんすよ。」
「そうなのかい?
今まで魔力が具現化したことなど見たことがなかったよ。
視認することなどないと思っていたものだからね。」
「そうですね父様。
不思議としか言いようがありません。
そういえば名前は決めたのかい?」
「円って名前にしたよ。
ニチカに付けてもらったんだ。」
「おお。
そうなのかい。
名前を付けてみて使ったら
どうだったんだい?」
「確かにイメージがしっくりきたよ。
制限解除の強化版って
感じだった。」
「なるほど。
やはり名前というのは
大切だね。」
「その通りだ。
名は体を表すと言うからな。
ではタケゾウくん。
次も頑張ってください。」
オウルとメルは納得したのか席に戻っていった。
そしてそんな話をしているうちに石畳の修復が終わり
タケゾウが呼ばれ、三回戦目が始まろうとしていた。
「ステラどうしたの?
そわそわして。」
「ステラさんどうしたんですか?」
ルーナとマルースが
ステラの様子の変化に気付いた。
「あ、その…次の対戦相手なんだけどさ。」
ステラが説明しようとしたときに
三回戦が始まった。
「お願いしゃーす。」
「あんた、さっきのすげーな。」
「ん?そうか?」
「俺もあの状態のあんたと戦いたいんだけどやってくれるか?」
「あ、ああ。」
「よし!じゃ待ってるわ!」
『なんだこいつ?
さっきから変なやつばっかりだな。』
その男は赤紫色の髪をしていて、
主の伸びかけのような髪型に
目鼻立ちがくっきりし
青い瞳をしている。
身長は武闘会で戦った者達よりは低く
百八十センチくらいだろうか。
龍人の国ヨンヤラで流行している服装をしている。
「では両者…いいか?
では…始め!!」
タケゾウは一旦距離を取ったがその男は本当に動かない。
『なんなんだよほんとに。
強いやつは変な奴ばかりなのか?
くくく。
まあ本気で来いよってことなんだな。
んじゃま、やるか!』
タケゾウは円を使った。
「待たせたな。
準備できたぞ。」
「おー。
こりゃほんと強そうだ。
ギルドで聞いた通りだな。」
「ん?誰に聞いたんだ?
あの失礼三人組か?」
「かはは。
そりゃいいな。
そうだ。
その失礼三人組にだよ。
じゃやるか!」
「おう!
待たせたお詫びにこっちから行くわ!!」
タケゾウは一気に間合いを詰め
拳での連続攻撃を繰り出した。
その男は『すげー!』といいながら
その拳を綺麗に捌いた。
タケゾウはまさか全弾捌かれるとは
思っておらず思わず距離を取った。
「お?終わりか?
なんか聞いてたのと
少し違う気もするんだけど
こんなもんか?」
「まだまだ。
それにしてもお前強いな。」
タケゾウは笑いながら
男に言った。
「俺か?
結構強いほうだと思うぞ。」
男はニヤっと笑いながら言った。
「くく。
いいな。
では、よろしくお願いしゃす!」
タケゾウはその男に向かっていき吹っ飛ばされ
向かっていき吹っ飛ばされと
完全に劣勢。
だが悔しがりながらもタケゾウはさらに笑っていた。
『こいつほんと強い。
体術は全く歯が立たないな。
何が足りない?
何が足りない?」』
「悩んでるのか?
いいね。
もっと強くなれよ!」
「ぐはっ!!!」
タケゾウはまた吹っ飛ばされた。
『まじつえー。
俺も…当たり前だが…まだまだだな。
吹っ飛ばされても立てるってことは
俺、手を抜いてるのか。
立てないくらい力を絞り出そう。
体壊れてないってことは
まだまだ力を制限してるってことか。
やるか。
最後の一撃だ。
制限解除
…そして円!!!」
タケゾウは最後の一撃と決め
円をさらに使った。
タケゾウの周りに魔力が具現化し
それは今大会でみせた中で一番濃いものとなった。
『もっと濃く。
もっと濃く。
もっと濃く。』
タケゾウは魔力をその場にとどめ
さらに凝縮していくイメージでより濃いものとしていった。
「おーおーおー!!!
こりゃすげー。
とんでもないのが来そうだな!」
そしてタケゾウはその魔力を体内に取り込んだ。
「また待ってくれたんだな。
すまんな弱くて。
これで最後の一撃だ。」
「最後ってことは出し切るってことか。
いいね。
潔いその姿勢好きだぜ。
じゃ俺はしっかりと最後の一撃受け止めてやるよ。
力比べだ。」
男はそう言うと石畳に両足を打ち付けて固定し
両手を重ね前に構えた。
「ははは。
わかってるんだから避けりゃいいのに。」
「せっかくの武闘会なんだ。
そんなつまんねーことはしねーよ。」
「くくく。
ははっはははっは!
じゃどっちの力がつえーか勝負だ!!」
「おう!かかってこい!!」
タケゾウはその両手目掛けさらに集中し
一気に石畳を蹴る。
そしてその構えられた両手に拳を素直に差し出した。
轟音、衝撃波が会場に響き渡った。
「きゃ!!」
「タケゾウ!」
「タケちん派手にいったなー。」
「タケゾウ…。」
「タケゾウ!」
その衝撃波はもちろん近い席から順に届き、会場に波紋を広げた。
「ぐ!
やるなー!!けど負けねーぞ!!」
「まだまだまだぁあああ!
おらぁあああ!!」
石畳では拳を両手が包み形での押し合いのようになっていた。
一進一退に見えたそれもすぐに均衡が崩れた。
『ぐ!ダメだ足場が!!』
「おらぁあぁあああ!!!!」
男は踏ん張るために足を石畳に突き刺していたが
その足場の石畳が割れ
そのまま場外まですごい勢いで吹っ飛んでいった。
そして石畳の上にはタケゾウが一人立っていた。
会場からは割れんばかりの声援がタケゾウに送られた。
「へへ。
俺の勝ちだな。
一応。」
そう呟くとタケゾウはその場に尻餅をついた。
突き出した拳の皮は敗れ
腕の骨が砕け
踏ん張っていた足の指などいたるところの
骨、皮膚、筋肉が
壊れてしまっていた。
そこにルーナ、アレース、マルース、ステラが駆け寄ってくる。
「タケゾウ!再生使って!!」
ルーナはタケゾウに手をかざし再生を始め、タケゾウも自身の体を再生させていく。
「タケゾウさん!しっかりして!!」
「タケゾウ!しっかりするです!。」
「タケゾウしっかり…!
…。」
五分ほどしてタケゾウがゆっくりと立ち上がった。
「わりーなルーナ。
手間かけさせた。」
「それはいいよ。
けど無理しすぎ。
体術で完全に負けてたし
相手があんなことしてくれなきゃタケゾウの負けだったんだからね。」
「はは。
まったくその通りです。
すんません。」
「そうですよ!!
けど…それでも諦めなかったタケゾウさん…かっこよかったです。」
「そうです。
タケゾウすごくカッコよかったです。
けれどもう無理はしてはダメです。」
「な!!二人とも抜け駆けして!!」
「「ふふふ(です)」」
「ルーナさん、さーせんした。
二人とも…そのありがとな。」
『ぐぬぬぬ…さんつけられた!あたしも褒めていれば…』
そんなにこやかな会話をしながらタケゾウ達は石畳の端まで歩いていった。
「おい。
大丈夫か?」
「ああ。
さっき魔王さんのお仲間さん達が治してくれたよ。
とは言っても骨折しまくりで、骨繋ぐのが精一杯だとさ。
体中動かすたびに軋むよ。
しっかし聞いてた通りだなその力。
よっと。」
男は石畳にふわっと飛び乗った。
本当に体が軋んでいるのか疑問に思うほどの軽やかさだ。
「あんたの体術に比べたら俺の力なんて大したことないよ。
俺はタケゾウ。
あんた、名前は?」
「ん?俺か?
俺は…」
そこに会話を遮るようにステラが走ってきて
男に飛び蹴りをかました。
「いで!」
ステラはタケゾウと男の前に割って入った。
「タケゾウに何してんの!!」
「いてて…。
ステラ!
何すんだよ!」
「アイタっ!」
男はステラのおでこに手刀を
あびせた。
「ステラ?
いきなりどうし…」
「ゼニス兄!
いくらなんでもタケゾウにあんな怪我させる
くらいやらなくてもいーじゃんか!」
「そりゃお前な。
お前が惚れた男を
見定めるのは
兄として当然の…」
「うるさい!」
「いて!」
ステラはローキックをお見舞いした。
「わかった!俺が悪かった!
タケゾウ悪かったな。
それと…。」
ゼニスはそう言うと
石畳あぐらで座り
両の拳を石畳に突き刺した。
そして石畳に額を付けタケゾウに言った。
「俺はゼニス。
ステラの兄だ。
タケゾウ。
ステラの目を
見えるようにしてくれて
本当にありがとう。」
ゼニスのその心のこもった言葉に
ステラも怒るのをやめた。
「いいよ。
それは散々ヘイズにも
ステラにも言われたから。
顔上げてくれ。」
ゼニスはそう言われ
顔を上げた。
そして満面の笑みで
タケゾウに言った。
「かはは。
得意げにならず潔もいい。
腕っ節に関しては
これからもっと強くなりそうだし問題ねぇ。
ステラ。
良い男を見つけたな。
タケゾウ。
お前なら大歓迎だぜ。
いつ婿になるんだ?」
「「「ならない(です)!!!」」」
ルーナ、アレース、マルースが全否定した。
「かはは。
こりゃ間違えたかな。
ステラ。
友達までできたんだな。
本当に良かった。」
「ゼニス兄…。
その…ありがと。」
ステラは少し赤い頬を隠しながら
タケゾウの隣に立つと
「ゼニス兄も認めてくれたし…
その良かったら…」
「「「させません(です)!!!」」」
「かはは。
ほんとに賑やかになったなステラ。
そうだ!ギルドには入ったんだよな?
俺と組まねーか?」
「お、いいのか?
ゼニスにそう言ってもらえるのは光栄だな。
むしろこっちから頼むわ。」
タケゾウ達は和気あいあいと
談笑していた。
「ところで
ヘイズには来てないのか?」
「ヘイズ兄は来てるよ。
一応警護の仕事中。
私も一応警護の仕事中なんだよね。
まぁこんな猛者しか集まってない
会場で襲撃なんて
ないだろーけどな。」
「そりゃ確かにな。
なんかあってもみんながいればなんとかなるもんな。」
一行は席に戻り
ゼニスとステラもその席に加わる形となった。
石畳の破損状況が思ったよりひどいため
修復完了は夕方頃になると発表があったので
皆は飯を食うことにした。
この飯の時間というのが今回の本当のイベントであり
龍人、魚人、魔族の王達は
会場に関係者以外は
入れない地下の部屋で会議をすることとなった。
『ぐぬぬぬ…タケゾウとご飯食べたかった。』
『ルーナ。
タケゾウとご飯食べたかったと思ってるですね。
ふふ。
けれどわたくしもご飯したかったです。』
ルーナとアレースは
浮かない顔をしながら『じゃ、行ってくる(です)』
とその場を後にした。
ニチカは発表のあと、どこかに行ってしまっていた。
「マルースは行かなくていいのか?」
「はい。
私にはタケゾウさんのお世話という役目がありますので。」
「ゼニスとステラも
良かった一緒に食わないか?」
「お、じゃ一緒に食うか。」
「うん。
もちろんそのつもりだよ。」
マルースとタケゾウと
ゼニスとステラは
会場にある出場者や関係者用の食堂に向かったのであった。
読んでいただきありがとうございます。
次回は27日に投稿予定です。
楽しんで頂ければ幸いです。
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