女達の球技
「じゃルールを話すねー。
この球をタケゾウに一番先に当てた人の勝ちね。
それで魔法も制限解除も使っていいよ。
それでいいよね?」
「うむ。
構わん。
アレース、マルース。
焼き払ってしまいなさい。」
「ちょ、待てって!
それ死んじゃうからシレーヌス!!!」
騒ぎを聞きつけ
シレーヌスも城から出てきた。
そして事情を聞いたシレーヌスはタケゾウを
少し睨むと
魔法の使用許可を出した。
「それじゃ使う球はこれね。」
そう言うとニチカはかごに入った球を持ってきた。
それはバレーボールほどの大きさで
どうやらゴムでできているようだ。
「これってもしかしてゴムか?」
「そだよー。
特定の木の樹液で作れたの。
結構ゴムって感じでしょ?」
「すげーな。
やるじゃんか。」
「ということでこれをタケゾウに当てたら勝ちね。」
「どの程度の範囲で動いていいのですか?」
マルースがニチカに質問した。
「この城の庭にしよっか。
タケちんもそのほうが逃げやすいだろうし。」
「観衆に当たったらまずいんじゃないのか?」
「それは大丈夫じゃない?
みんながどれだけ本気で投げるかもあるけど
きっとこのゴムが耐えられないだろうし。」
「ねぇ、少し投げてみてもいい?」
「わたくしも投げてみたいです。」
そう言うとルーナとアレースが
球を手に取り
空高く飛び上がった。
そして庭に向け二人とも二人とも振りかぶった。
「いっくよー!!!」
「ではいくです!!」
二人とも力を込め球を投げた。
その球はものすごい勢いで地面に激突すると
球は木っ端微塵に飛び散ってしまった。
地面は少しえぐれていた。
そして二人がゆっくりと降りてきた。
タケゾウは開いた口が塞がらない。
「ふーん。
この程度しか耐えられないのね。」
「あのなルーナ。
あれを受けるの俺なんだぞ。」
「そうです…。
あの程度しか耐えられないのなら
避けられるかもです。」
「待て待て。
あんなの避けられないからね。
アレースさん?
さっきまでの優しさどこに置いてきた?」
「その辺は発想の転換とかすればいーんじゃん?
何も投げるだけが当てる手段じゃないでしょ?」
「そうですね。
とにかく当たればいいのですよね?
では動けないようにまずは手足を…。」
「そうそう。
動きを封じるには手足をね…。
こらマルース!
手足をどうするつもりだ!
ステラも発想を変に転換しないでね!
みんな目が本気すぎだよ!
落ち着いて!」
「「「「タケゾウ(さん)は黙ってて(です)」」」」
「は、はい。」
全員がルールをしっかりと確認し
タケゾウに怒号を浴びせると
それぞれが作戦を練り始めた。
「な、なあニチカ…。
俺死なないかな?」
「大丈夫でしょ?
そんなに不安ならタケゾウは武器でも使う?」
「…。
使っていいのか?」
「いいんじゃん?。
そのかわり魔法禁止にしてあげる。」
「なんでだよ!
それこそ死ぬわ!」
「あはは。
シレーヌス。
タケゾウの魔法の使用許可出した?」
「いや。
タケゾウ殿は魔法の使用を禁ずる。
己が体と制限解除のみで戦うのだ。」
「いやいやシレーヌス。
俺死んじゃうから。
それ死んじゃうから。」
「ふん。
タケゾウ殿の生死より
娘達の将来のほうが心配だ。
諦めなさい。」
シレーヌスはそう言うと
ニンマリと笑った。
最初の印象とは打って変わって
親バカ全開である。
とりあえずタケゾウは愛刀朔夜を部屋に取りに戻った。
「ってことだから
みんないいー??」
「いいわよ。」
「私も大丈夫です。」
「わたくしも問題ありませんです。」
「私もいーぞ。」
全員がタケゾウを囲むように準備し
戦闘態勢に入った。
「お、おい。
みんなお手柔らかに…。
制限解除。」
「じゃいっくよー。
よーい…ドン!」
ニチカの合図により一斉にゴム球が放たれた。
タケゾウは予想していたので
真上に飛び上がったが
ゴム球が四方よりぶつかり破裂して
その勢いで空中での態勢を崩された。
「うわ!
みんな本気すぎだ!」
「よそ見するなんて随分余裕です。」
「その通りだ!」
空中に一気に攻めこんできたのは
アレースとステラだった。
「あぶね!」
二人はゴム球を両手で持ち
直接タケゾウに当てようとしたが
タケゾウは態勢をわざとそのまま崩し
なんとか避けた。
そこにゴム球がさらに下から飛んでくる。
「もらったわ!!」
「そうはいかないですルーナさん!
炎行進!」
ゴム球をマルースが放った数個の炎の球がかき消す。
「な!
マルース!やるじゃん!」
「誰にもタケゾウさんは渡しません!」
タケゾウはその間に着地し、全速力で逃げた。
それをルーナがゴム球をカゴごと持ち
投げながら追撃する。
「ちょ、ま、って!
ルーナ!
それ、はかわ、しきれない!」
タケゾウはたまらず抜刀し
ゴム球を切り捨てる。
「やるじゃんタケゾウ!」
「こんなん当たったらほんとに死ぬ!」
「ルーナ!
負けないです!
炎城壁!」
タケゾウとルーナの間にアレースが
炎の大きな壁を作って割って入る。
「く!
アレース!
絶対に負けないんだから!」
「それはこっちの台詞です!」
ルーナは一気に壁の上空まで飛び上がり
アレースもそれを阻止するべく
上空に飛び上がった。
「今のうちに…。」
タケゾウはそれを見ると一目散に逃げようとしたが
そこにはすでにステラとマルースが待ち構えていた。
「タケゾウさん!
大人しく当たってください!」
マルースはそう言うと
ものすごい勢いでゴム球を投げた。
ステラは投げず距離を詰めた。
「あぶね!
マルース!
もう少し優しくして欲しいっていうか
くそ!」
タケゾウに話す暇を与えずステラがゴム球を
近距離でタケゾウに投げた。
「おいステラも!
近距離でそんなに力入れなくても!!」
「ふ、ふん!
別に手加減してやる義理はねーっての!」
「ステラさん!
やらせません!
こうなったら…。」
マルースはそう言うと
炎の球を無数に作った。
そして…。
「炎大行進!!!」
そう言うとステラ、タケゾウめがけて
無数の数の炎の球を放った。
「これはヤバすぎる!!」
「私もかよ!!」
二人は何とかそれを回避しようと
横に全力で逃げた。
だがマルースの標的はその後ろにいた
アレースとルーナだった。
「ちょ!これはヤバすぎるわよ!
反射盾!」
「マルース本気なのですね!
ではさらに炎城壁!!」
ルーナは前方にに反射の盾を展開し
アレースは先ほどの壁をさらに巨大化した。
ルーナはその盾で何とか防いだが
アレースは壁を数発貫通され
さらに小規模な壁を出しなんとか防いだ。
「はぁ…はぁ。
お二人にはこれでも届きませんか…。」
「ふぅ。
マルース本気なんだね。
さすがにちょっとヤバかった。」
「はぁはぁ。
マルース…腕を上げたです。
やるです。」
三人は地上で少し睨み合うと
すぐさまゴム球を取りに戻った。
『あいつら…。
あんなに強いのか…。
俺は…まだまだ…。」
タケゾウはその規模の違う戦いに
度肝を抜かれていた。
そして自分の弱さを痛感したのであった。
「隙あり!」
「うわ!」
そんなことを少し考えていると
ふわっとゴム球が飛んできた。
タケゾウは意外に遅いゴム球を
横一線に切り捨てた。
『いきなり遅いな…。
ステラのやつ何を…。
なんだこの黒い粉…。』
「へへ。
やっぱり切ると思ったぜ!
食らいな!
火弾丸!」
「うわ!!」
ステラの火の弾丸がタケゾウの近くにくるや否や
爆発を起こした。
タケゾウはたまらず後方に退く。
「へへ。
私がとりあえず被弾させれたな。
この調子でこれも食らいな!」
そこにすかさずステラのゴム球か飛んできた。
タケゾウはよろけながら何とか
横に飛びかわした。
「ちっ!
球取りに行かなきゃ!」
ステラは悔しがりながら
ゴム球を取りに戻った。
『今のは…火薬か…もしかして。
くそ…再生を…
って使えないのか…。
それならあれだ。
俺ももっと頭使って工夫しないと。
これは俺の修練だ。
工夫してもっとかわすことに専念する。
もっと…もっと…。
集中だ。』
タケゾウの周りに魔力が集まり
スっとタケゾウの体に入っていった。
「それ使っても
絶対に当ててみせるんだから!」
一番に戻ってきたのは
ルーナだった。
またも片手にカゴを持って戻ってきた。
「そうはいかないです!」
次にマルースもまさかのカゴを持って戻ってきた。
「ふふ。
二人とも。
それでは動き辛いです。」
アレースはなんとゴム球に穴を開け
自らの拳をその中に入れていた。
ステラはまだ戻ってこない。
「どっからでもかかってこい!」
タケゾウは刀を構え
三人に相対した。
「じゃ遠慮なくいくよタケゾウ!!」
ルーナはカゴを地面に置くと
ものすごい勢いでゴム球を投げ始めた。
「私だって!」
マルースもカゴを置き
勢いよく投げ始めた。
『一つ一つに集中だ。
いっけー!』
タケゾウは避けた。
ひたすら避け、避けきれないと判断した物は
どんどん切り捨てた。
マルースとルーナの球が尽きると
それを待っていたかのように
アレースが近距離でゴム球の拳の連続攻撃を仕掛けたが
すぐさま距離を取り攻撃をかわした。
そこにステラが待ち構えており
ゴム球が飛んでくるも
それもかわした。
「ふふ。
なかなかやるですタケゾウ。」
「タケゾウさん…はぁはぁ。
そろそろ当たってください!!」
「そうね。
そろそろあたしの球に当たりなさい!」
「タケゾウすばしっこいな!
男らしく当たれっての!!」
タケゾウに容赦なくゴム球が降り注ぐが
間一髪のところでかわし、切り捨てを繰り返すタケゾウ。
そして四人での魔法合戦も繰り広げられた。
全く誰も攻撃の手を緩めはしなかった。
そして何と日が暮れはじめた。
タケゾウは何とかかわし続けている。
「はぁはぁ。
タケゾウも強くなってるんだね。
でも…あたしは負けるわけには
いかないの!!」
ルーナがゴム球を接近しつつ
タケゾウ目掛け投げた。
『ぐ!
でも避けて…。』
「反射球!!」
タケゾウの周りにルーナは透明な球体を出現させ
タケゾウと投げたゴム球を隔離した。
そしてその球体の中で
ゴム球は不規則に激しく動き回った。
「な!
何も無いところで跳ね返りやがった!
ぐ!
こんな速くちゃ!避け!きれ!ね!」
タケゾウはその目にも止まらぬ速さで動く球を
かわし続けたが
ゴム球は割れることなく
色々な方向から迫ってくる。
「当たれー!!」
ルーナはその大きな球体の維持に
魔力を費やした。
「この!
くそ!
おらぁあぁあ!!!」
ゴム球をタケゾウが気合いで何とか切って捨てた。
「はぁはぁはぁ…。
魔力を使いすぎた…かな…。
それでも…
負けるわけにはいかないんだから!」
「はぁ…はぁ。
やっとかよ!
いっけー!」
「ぐ…もう魔力が…。
だけど負けられない!
いけー!」
「ふふ。
みんな魔力をすごい消費したですね。
ただわたくしもそろそろ限界かもです!
これで当たれーです!」
四人が一斉にゴム球を投げた。
『ぐ、制限解除とあれを
使いすぎた。
うまく調整できなかったから
体が…。
ぐ!またきた。』
タケゾウはその四方から飛んでくる球を避けたが
それでも球は飛んでくる。
タケゾウはそれもなんとか避けたが
その拍子に足を滑らせ転倒した。
そして四人がゴム球を投げた。
「はぁはぁ…いけっ!」
「はぁはぁ…いくです!」
「ぐ…届…いて!」
「はぁはぁはぁ…いけ!」
そしてその球はついにタケゾウに当たった。
観衆からは大きな声援が上がった。
「ぐ…もう限界…だ。
くそ…全部当たったけど…
誰のに当たったんだ?」
「うーん。
見てたけど全部ほとんど同時だったかなー。
ということで勝者みんな!!!」
ニチカが勝者を告げると
「あはは。
はぁはぁ…これで阻止…かな?」
「はぁはぁ。
なんとか独占させるのは…阻止でき…ました。」
「ふふ。
みんな…本気だったです。
はぁはぁ…。」
「あーまあ…これなら上出来だよなー。
はぁはぁ…。」
「くそ…どうせなら全部避けたかったけど…
再生使えないとやっぱ限界が…。
ふぅぅぅう。
とりあえず…。」
「「「「「おなか、すいたーーーーー(です)」」」」」
そして五人は互いに顔を見合わせ盛大に笑ったのであった。
「ま、これならいい終わり方だったんじゃん?
ね?」
「う、うむ。
まさか娘達が…特にマルースがこんなに本気で
この球技をやるなんて思ってもみなかった。
これもタケゾウ殿のおかげなのか…。
とりあえずこれにてこの球技を終了する!
民の皆も気をつけて帰るのだぞ!」
シレーヌスがそう言うと歓声とともに
民が帰っていった。
「じゃみんなーとりあえずご飯にしよー。」
ニチカが談笑している五人に声をかけ
皆が食堂に移動した。
「本日の球技、見事だったぞ。
民も喜んでくれた。
皆、お疲れだろう。
たくさん食べてくれ!」
食堂にはすでに料理が所狭しと並んでいた。
「うまそー。
いただきまーす!」
「タケゾウさん!まずは手を洗ってからですよ!」
「ふふ。
マルースはほんとにタケゾウの世話、好きですね。」
「マルースってほんと世話焼きなんだから。」
「世話焼きってレベルじゃねーって!
今日の球技からは本気すぎる何かを感じたぞ。」
「確かに。
けどステラだって…。」
そんな談笑を皆で食べながらした。
そして食べ終わる頃には…。
「やれやれ。
これでは賞品の意味がないな。」
「あはは。
みんなほんとに全力だったもんね。
こうなるのも当たり前だよ。」
食事を終えた皆はそのまま眠ってしまったのであった。
アレースとマルースはソファで
ステラ、タケゾウ、ルーナの順番に
三人はテーブルでスヤスヤと眠ってしまっている。
「まぁこれも賞品といえば
賞品かな?
一晩過ごせるだろうし。」
「このまま皆が朝まで眠ることが大事だな。
おい、この者達に何かかけてやれ。
片付けは静かにな。
私も手伝う。」
シレーヌスがそう言うと
執事とメイドが皆に優しく毛布をかけた。
「まったくこの男はなんと贅沢な。」
「じゃここで寝たら?」
「そうはいくまい。
これは戦ったものへの賞品なのだから。
今夜はこれで退散する。」
「そーね。
ふぁああ。
私も帰ろーっと。
じゃーねみんな
おやすみ。」
片付けを終え、シレーヌス達は
静かに部屋を出ていった。
皆の幸せそうな寝顔を見ながら。
曇っていた空はいつの間にか晴れ
月明かりが食堂に差し込んだ。
その風景はとても忘れがたく
ニチカにとって居心地が良くなるものだった。
これがいつまでも続けばいいなのなと
ニチカは一人思い
静かに部屋を後にした。
なんとか書き上がりましたが
日付を越えてしまいました。
遅くなり申し訳ありません。
読んでいただきありがとうございます。
明日は二十二時頃投稿します。
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