アレースとお出かけ
「タケゾウ。
どこか行ってみたい場所はあるですか?」
「うーん…。
特にはないかな。
あ、そうだ!
ギルドに行きたい!」
タケゾウとアレースは現在二人で街に来ていた。
「わかったです。
そういえばステラさんのこと
わたくしもヘイズさんに謝らないといけませんから
わたくしも行きたかったところです。」
「あれはほんとに事故だったんだよアレース。
ごめんなさい。」
「いえいえ。
タケゾウのこともありますが
昨日のこと全体を少し謝罪したかったのです。
気にしないでです。」
「そういえば
ステラはいつの間に帰ったんだ?」
「朝早くにお帰りになったと聞いてるです。
なんでも髪をしっとりとさせる物を
取りに行くとかなんとか言っていたようです。
きっとルーナが教えたです。」
「ああ。
なるほどな。
あいつ気にしてたんだな。
今度会うときが楽しみだ。」
二人は仲良く会話しつつ
街の人に呼び止められつつ
ギルドに向かい歩いていた。
「あの二人…何話してるんだろ…。
マルース!見失ったらそこで終わりだからね!」
「シー!
ルーナさん声が大きすぎます!
もう少し静かにしないとバレてしまいます!
サリースを見習ってください!」
「ぐおん。」
そんな仲良く歩く二人を
ルーナ、マルース、サリースは尾行していた。
この世界の尾行は
トレンチコートとハンチングがお決まりなのか
そんな格好をして尾行をするルーナとマルース。
サリースは我関せずと行ったところで渋々ついてきているようだ。
「そもそもなんで二人っきりで行くのよ!
あたしも一緒でもいいじゃない!」
「姉様が断るなんて珍しいです…。
余程二人で行きたかったということなんですかね…。
まさかあの奥さんになる的な宣言はほんとだったのでは…。」
「それだけはダメ!
必ず阻止しなきゃ!」
「けど…姉様が幸せになれて
タケゾウさんがお兄ちゃんになるならそれでも私は…。」
「マルースはほんとにそれでいいの?」
「私は姉様が幸せならそれで…。
でもどうしてでしょうか…。
それを考えると胸が痛いです。」
マルースはその未来を想像しながら悲しそうに俯いた。
「マルース。
その気持ちがなんなのかわからないのはいいよ。
けどそれって嫌だって思ってるってことなんじゃない?
その気持ちにだけは嘘をついてはダメだよ。」
ルーナは過去の自分のことを思いながら話した。
『嫌…なのかな…
けどなんでか悲しい気持ちになる。
なんでか…なんて…そんなことわかってる。
でも…わかんないよ…。
私は…タケゾウさんのこと…。』
マルースは戸惑っていた。
この気持ちはマルースにとって初めてのもので
どう受け入れればいいか
わかっているけれどわからない。
そんな気持ちはマルースの中で
どんどん大きなものとなっていった。
その気持ちの名前に
思い当たるところはあっても
過去に自分がしたことや
自分を卑下してしまうところが
きっと邪魔しているのだろう。
「ライバルだって思ってたけど…
どうやらあたしの勘違いだったみたいだね。
あのときの負けないって宣言も嘘だったんだね。」
ルーナはマルースの悩みをわかった上で
あえて少し強く言った。
大切な友人として
マルースには気付いてもらいたいと
ルーナも思っていた。
その気持ちは自分を幸せにしてくれるものだと
知っているからだ。
「あ、あのときはつい…楽しくて…
私は…まだ…わからなくて…。」
マルースは困惑しながら
まるで自分に言い訳するように
ルーナに言った。
そのとき、タケゾウとアレースがギルドに入っていってしまった。
「あ!まずい!
行かなきゃ!
…マルースはどうするの?」
「私は……。
その…。」
マルースはうつむき少し考えた後に
勢いよく顔を上げ言った。
「い、行きます!
このまま帰ったらモヤモヤしちゃいます!」
「うん。
それでいいと思う。
マルース。
この気持ちにだけは
素直になってしっかりと向き合ったほうがいい。
自分本位に考えていいのよ。」
ルーナはマルースの頭を優しく撫で
微笑みながら言った。
ルーナもタケゾウと出逢うまでは
色々なことを抑制して生きてきたところがあるので
マルースのこの決断が素直に嬉しいようだ。
「サリースも行くよ!」
「ぐー。ぐおん…ぐおん。」
「え!?帰るの!?
なんで!?」
「ぐぉん…ぐおお、ぐおぐおお、ぐおん。」
「ああ…まあギルドだしね。
わかったわ。
気をつけて戻ってね。」
「ぐおん。」
そういうとサリースはひとっ飛びで建物の上に飛び
建物の上を渡りながら人目につかないよう城に戻った。
「ルーナさんサリースはなんと言っていたのですか?」
「ん?ここは血の匂いがしてあまり落ち着かないから
戻るって。
確かにギルドだから仕方ないかもね。
じゃマルース行こう!」
「そうですか…
行きましょうルーナさん!」
ルーナとマルースはギルドに潜入した。
タケゾウとアレースはヘイズの部屋に来ていた。
「ヘイズさん。
お久しぶりです。」
「アレース様。
お久しぶりです。
タケゾウさんは昨日ぶりですね。
依頼を探しに来てくれたのですか?
そういえば登録がまだでしたね。
下の者には言っておいたので
今日して行ってくださいね。」
「ああ。
わかった。
アレースは…その…なんだ…。」
タケゾウがアレースの横で
もごもごしているとアレースが本題を話し始めた。
「昨晩はタケゾウ、ルーナ、マルースが
大変ご迷惑をおかけしたです。
ステラさんには大変お世話なったみたいで…
申し訳ありませんでした。
あの者達を代表して謝罪するです。」
アレースは深々と頭を下げた。
タケゾウもアレースを見て深々と頭を下げた。
「お二人とも頭を上げてください。
ステラはルーナ様とマルース様が
友達になってくれて大変喜んでいました。
今はなんと髪の手入れのために髪油を作って
髪の手入れをしているんですよ。
兄としてむしろお礼を申し上げます。
皆様には本当に感謝しています。」
今度はヘイズが深々と頭を下げた。
「ヘイズさん。
それは良かったです。
今後もマルースはよく城にいますので
気兼ねなく遊びに来てくださいと
ステラさんにお伝えくださいです。」
「ありがとうございます。
ステラもさぞ喜ぶことでしょう。
タケゾウくん。
本当にありがとう。」
ヘイズは親のような愛情に満ち溢れた顔で
タケゾウとアレースに礼をした。
もしよければということで
二人は二階で飲み物をいただくこととした。
ヘイズは緊急の大きな依頼のため
ここで二人と別れた。
「ヘイズさんいい人でほんとよかった。」
「ええ。
本当に昔から妹思いの優しい人です。」
「アレースは昔からの知り合いなのか?」
「はいです。
小さい頃からの知り合いで
よく城の庭で遊んだです。
まさかヘイズがギルドマスターになるとは
あの頃では想像もできませんでしたが…です。
ほんとに虫も殺さない優しい子どもでしたのです。」
「へぇ。
確かに虫も殺さないような男には
今でも見えるからな。
俺の勝手な想像だけど
ギルドはもっと屈強な男ばかりのところだと思ってたよ。」
二人が話す席の隣にはルーナとマルースが陣取り
二人の話を盗み聞きしながら座っていた。
ルーナとマルースの服装が
ギルドにとってかなり浮いている服装なので
周りから不信感の視線を向けられているが
そこはさすがのタケゾウとアレース。
まったく気付く様子がない。
「あの二人…特にタケゾウ。
あたし達がこんなに近くにいるのに気付かないなんて…
なんで気付いてくれないのよ!」
「あ、あのルーナさん…変装しているからでは…。」
「変装なんて言っても、ただ服を着てるだけじゃない!」
「ま、まぁそう言われるとそうなんですが…
けど確かにタケゾウさんに気付いてもらえないの…
なんか嫌です!」
「そうよね!
ほんとイライラする!」
「あ、タケゾウさんが動きます!」
マルースとルーナが隣でそんな会話をしている
など全く知らないタケゾウは
一階にある掲示板に目を通しにいった。
『ふーん。
依頼ってほんとに色々あんだな。
てか登録しろって言ってたな。
聞いてみるか。』
タケゾウはカウンターに行き、係の人らしき男に
声をかけた。
「あ、すんません。
働きたいんすけど。」
「わかりました。
あれ?
もしかしてタケゾウさんですか?」
「あ、はい。
そうです。」
「マスターから話は聞いています。
適正試験は免除でとのことですので
この首飾りをどうぞ。」
タケゾウは男から首飾りを渡された。
ドックタグのような首飾りには
何も記されていない。
「ではそれに得意な魔法を使ってみてください。」
「ん?こうすか?」
タケゾウは再生をドックタグにするつもりで魔法を使った。
するとドックタグに文字が刻まれた。
「おお!なんだこれ!
っすげーな!」
「私も初めて見た時はびっくりしました。
タケゾウさんで間違いないですね。
これは名前が刻印され、身分証明としても
お使いになれますので
無くさないようにお願いします。」
「すげー!
ちなみに階級とかそーいうのはあるんすか?」
「階級はその刻印の下に出ます。
星が刻印されるんですが
その星の数が階級となります。」
「星はどこまで増えるんすか?」
「星は五つまでです。
星の刻印はこちらで行います。
依頼の達成率や難度などを考慮し
こちらで判断します。」
「なるほど。
じゃ依頼ってのはその星の数で受けてるのが
決まるんすか?」
「いえ。
原則自由です。
ですが、星の数を指定する場合や
適正のある人を募集する依頼もありますので
その辺はご注意を。」
「なるほどな。」
タケゾウは思った通りのシステムに
感動していた。
男としてはやはり星五つの状態にしたいと
密かに思ったのであった。
「そうなんすね。
じゃとりあえず受けたいんすけど。」
「わかりました。
それでしたら…草むしりの仕事がありますがどうですか?」
「く、草むしり!?」
「はい。
初めてにはとてもいいかと思いますが…。」
「もう少し違うのって無いすか?」
「うーん…。
ではこの配達の仕事どうですか?」
「は、配達…。
うーん。」
「タケゾウさん。
どれもお金をもらう大切な仕事です。
確かに選びたくもなりますが…
初めからその感じですと
あまりこちらとしても仕事を出したく無いです。」
「う…。
そうすよね。
困ってる人がいるから依頼があるのに…。
すんませんした。
じゃ草むしりの仕事お願いします!」
「はい。
承知致しました。
この仕事の期日は一週間となりますので
ご注意ください。
ではお願いします。」
男に頭を下げ謝罪したタケゾウは
草むしりの仕事を受注した。
憧れと期待が一瞬で壊される依頼に
躊躇してしまった。
理想と現実はそううまくはいかないものである。
タケゾウは依頼書に受注のハンコをもらい
アレースの元に戻った。
「タケゾウ。
何かいい仕事はあったです?」
「ああ。
草むしりの仕事をしてくるよ。
明日はこの仕事をする。」
「いい仕事ですね。
どの仕事も依頼者が困って出してきたものばかり
だと思うです。
タケゾウ。
頑張るです。」
「あ、ああ。
…その気持ち忘れないようにしないとな。」
タケゾウは期待に胸躍らせていたことを反省し
この依頼をしっかりとやろうと決心したのであった。
「タケゾウ…
明日は仕事するんだな…。
お金ならあたしが用意してあげるのに。」
「ル、ルーナさん。
それじゃタケゾウさんが
ダメな男性になってしまいます。」
「べ、別に甘やかしてるわけじゃないもん!
タケゾウにはやることがあるだろうから
あたしが支えになりたいだけで…。」
「そ、それはその通りですが…。
よし!じゃ私は明日の仕事用のお弁当作ります!」
「な!
さっきまでウジウジしてたのに急に!
それはあたしが作るもん!!」
「ルーナさんはお金渡すんじゃないんですか?
私は私の気持ちがよくわからないので
考えこんでしまうだけで
それとこれとは別です!
私はタケゾウさんのお世話をしなくてはなりませんから
このくらいは当然のことです!」
「ぐぬぬぬぬ!
ってあれ?
二人がいない!」
「あ!あそこです!
行きましょう!!」
「わかってるわよ!!」
そうこう話している隙に
タケゾウとアレースはギルドから出て行った。
「アレース。
俺の用事は済んだし
アレースが行きたいところどっかないのか?」
「では…タケゾウ。
少し付き合っていただいていいです?」
「ああ。
もちろん。」
そういうとアレースはゆっくりと歩き始めた。
タケゾウもアレースの後に続く。
「二人はどこに行くんだろう?」
「この先にも結構お店があるので…
そのどこかに入るのではないでしょうか?
もうすぐ昼食の時間といえば昼食の時間なので。」
「ここからが本格的なデートってことなのね。
マルース。
しっかりと聞き逃しがないようにしようね!
ここからが本番だよ!」
「はい!」
ルーナとマルースもその後に続いた。
「ん〜?どこの店にも入る気配がないね。」
「そ、そうですね。
姉様…どこに向かっているんでしょうか?」
ルーナとマルースは二人を尾行して
結構な距離を歩いたが、どの店にも入る気配がない。
マルースはこの先にあるアレースが
もし行くとすればという場所を考えながら尾行した。
「ルーナさん…もしかしたら姉様…
母様のお墓に…行くのかもしれません。」
「え!?
墓地はこの先にあるの?」
「は、はい。」
「墓地…か。
なんでまたそんなところに…?」
「わからないです。
母様に紹介したいのでしょうか…?」
「親に紹介…ってまさかほんとに
奥さんになるつもりじゃ!?」
「うーん…自分で言っておいて
あれですが…とにかくついていってみましょう!」
「そうね。
アレース…。」
タケゾウとアレースは
どんどん進んで行き
予想通り墓地へと到着した。
ルーナとマルースも墓地へと
忍び込んだのであった。
読んで頂きありがとうございます。
少し遅れてしまい申し訳ありませんでした。
明日の二十二時くらいに投稿したいと思います。
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