膝枕
「いてて…。
あいつら手加減ってもんを知らねーよな相変わらず。」
タケゾウは星になり、夜空に輝いた後
無事?に地上に墜落した。
うまい具合に城の庭に着陸したようだ。
「変な音がしたから来て見たけど
タケちんだったのか。」
ニチカが外の異音に反応し
自宅兼聖域から出て来た。
「悪かったな俺で。」
「ところで、街で結構派手に暴れたんだってね。
ニチカも見たかったなー。」
「別にそんな派手に暴れてねーよ。
あれはあいつらがマルースに嫌な思いさせたからだ。」
「ふ〜ん。
タケちんマルースのこと好きなの?」
「友達として好きだよ。
一人の女性としては…
まあ好きってのがわからんからなんとも言えないな。」
「好きじゃないとは言わないんだね。
ふふ。
タケちん。
マルースのことありがとね。
あの子すごく、すごく楽しそう。
きっとタケちんが受け入れてくれたおかげ。
ありがと。」
「なんで俺がお礼言われるんだよ。
そんなん俺以外の周りがいつもマルースを支えたり
大切に思ってきたからだろ。
ニチカはカウンセリングしてたんだろ?
そのおかげだろうが。」
「ふふ。
じゃそうかも。
それでもありがと。
ところで強くなったタケちん?」
「ああ。
あの頃より随分強くなった。
約束忘れんなよ。」
「わかってるよ。
けど待ってるの面白くないなー。
今、ニチカに勝ったら認めてあげてもいいよ。」
「そりゃ願ったり叶ったりだ。
いいぞ。
やるか。」
「いいねタケちん。
その潔さは好き。
じゃ魔法無しの決闘形式でいこうか。
勝利条件は参ったか気絶とかでいい?」
「ああ。
じゃいこうか。」
まさかのいきなりのチャンスにタケゾウは決闘を快諾した。
ニチカの性格のおかげである。
「じゃ、いっくよー!!」
ニチカの掛け声とともに決闘が開始された。
すかさず両者が距離を詰め
お互いの顔目掛けて拳を放つが両者ともに逆の腕でガードする。
タケゾウは一旦距離を置き、魔力を具現化する。
「きゃー。
それが噂のやつね。
初めて見たときより…馴染んで見える気がするー。
わくわくしてきたー。」
あからさまにテンションが上がっているニチカ。
タケゾウはそんなことは御構い無しに
魔力をさらに具現化していく。
『もっと…もっとだ。
あいつに…ニチカを超える力を貯める…。』
タケゾウの周りにどんどん魔力が具現化していく。
ありとあらゆるところから
魔力をかき集めていこうとするタケゾウ。
その量はかつてないほどに膨大に膨れ上がる。
「きゃは。
けどこれは少しヤバそうだから待ってあげるのやめたー。」
ニチカはその膨れ上がる魔力にほんの少し危険を感じ
また一気に距離を詰め、中段蹴りを放つ。
タケゾウはしっかりと腕でガードした。
ニチカは一旦距離を取る。
『う〜ん…。
今のは結構強く蹴ったのにな。
噂では魔力が体内に入ってからが本番だと思ってたけど…
そうでも無さそう。』
そう考えていたニチカをよそに
膨れ上がった魔力が一気にタケゾウに流れ込む。
「行くぞ!!」
タケゾウは急加速し、一気に攻撃を仕掛ける。
「え!!うそ!!」
そのあまりの速さを
ニチカは予想すらできておらず、反応が遅れ
もろにタケゾウの蹴りを
わき腹に食らって吹っ飛ばされてしまう。
「くはっ!!」
そのチャンスを逃すはずもなく
タケゾウは追撃に飛び蹴りをニチカに食らわせ
さらに吹っ飛す。
ニチカは空中で体制を立て直すも
そこにさらにタケゾウが追撃を仕掛ける。
タケゾウの放った拳がニチカの腕越しに
またわき腹に衝突し、庭にある一本の大木をなぎ倒し
塀まで飛ばされようやく止まったニチカ。
『ぐ…まずいね。
こりゃあばらと…ぐっ!腕はイってるかな…。
油断しすぎた…。
けど…最低ラインは超えた…かな?
これなら…なんとか…。』
その分厚い塀に
まるで十字架に磔になったように
埋まったニチカは冷静に体の状況を
素早く把握したが
少し考え事をした。
そして動こうとするも
そこにはすでにタケゾウが間合いを詰め
さらに拳を腹に突き刺した。
その一撃は意識を刈り取るのに充分な一撃だった。
「おーい。
起きろニチカ。
おーい。」
「ん…もしかしてニチカの負け?」
「もしかしなくてもお前の負けだ…お前…」
「あはは。
まさか負けるとはね。
油断しすぎた。
タケちん。
あれはどんな力なの?」
タケゾウはニチカが気絶した後
横に寝かせ再生をし傷を治しておいた。
ニチカは自分の怪我が治っていることを
理解しタケゾウの言葉に被せるように負けを認めた。
「あれは何なんだろうな?
魔力で弱いとこ補ってるって感覚かな。
とりあえず今までで一番濃くなった気がするわ。」
「そうなんだ。
とりあえず負けは負けだし、火の魔法と加護を付与するね。」
そういうとニチカはタケゾウの額に手をかざし魔法と加護を付与した。
「これで…よし。
ところでタケちんはこの力を集めてどうするつもりなの?」
「守りたいもんを守る。
今は遠くにいるんだけどさ。
それと約束があるからそれをついでに何とかしてくる予定だ。」
「そうなんだ。
守りたいものを守るか…それはとても大変なことな気がする。
ま、頑張れタケちん。
ニチカからも一つお願いがあるんだけどいい?」
「お願い?
俺でいいなら聞くぞ。」
「…ありがと。
マルースのこと…頼めるかな?」
「ん?どういうことだ?」
「そのままの意味だよ。
これからも友達でいてやって欲しいんだ。」
「そんなの頼まれるまでもねーよ。
この先も死ぬまでマルースは俺の大親友だ。
何があっても見捨てたりしない。」
「あはは。
マルースはこの先大変だ。
じゃ頼むよタケちん。
ニチカ、少し休まないと…死ぬかも…。」
「お、おい。
家まで運ぼうか?」
「いや、いーよ。
タケちん。
約束ね。」
「あ、ああ。
任せておけ。
ありがとな。
ゆっくり休めよ。」
ニチカは弱々しい足取りで家に戻っていった。
『ニチカ…なんか変だったな。
マルースのこと心配してるんだなきっと。
しかし油断しすぎだなニチカ。
あんな弱いはずないのに…手加減されたのか?
まさかな。
ふぁ〜。ねみ。
風呂入って寝るか。』
タケゾウは部屋に戻ることにした。
『てか、目標達成だな。
セバスの言う調査部隊はいつ来るんだ?
ルーナに聞いて見ないとな。』
タケゾウは部屋に戻りながら
今後のことを少し整理して考えていた。
考え事をしながら廊下を曲がると
予想外な人物がタケゾウにぶつかってきた。
「うわ!」
「きゃっ!」
ステラであった。
タケゾウはとっさにステラを抱え、床に転んだ。
「な、何してるんだステラ?」
「な、あんたのせいで魔王とマルースに追われてるんだよ!
てか手!離せよ!」
「な・ん・で…タケゾウが抱きしめてんのよ!!」
そこに魔王が現れた。
「タケゾウさん。
最低です。」
遅れて天使が冷ややかにタケゾウを見下ろした。
「あ、いやこれは…。」
「あんたたちが追って来るからタケゾウとぶつかったんだよ!
私、何もしてないっての!!」
そんなこんななところにアレースが登場した。
「みなさん。
全くもう。
こんな遅くに何してるです。
もう寝る時間です。
ところでそちらの方は?」
「私か?私はステラ。
そこの怖い二人に拉致されたんだよ!」
「二人共…全くもうです。
二人が大変ご迷惑おかけ致しましたです。
今日はもう遅いのでもしよろしければ泊まっていってください。
マルース。
ご迷惑をかけているのですから部屋を用意して
しっかりとおもてなしするのです。
ルーナもちゃんと謝るのですよ。」
「姉様…申し訳ありませんでした。
ステラさん。
お部屋をご用意しますのでこちらへどうぞ。」
「ステラ…ごめん。
あたしもなんか手伝う。」
「え、ああ。
わかればいいのよ。
わかれば。」
二人は反省し、ステラを部屋に案内しに行った。
ルーナは何か考えがあるような表情に見えなくもなかったが…。
「あの二人は…
きっとタケゾウに関することなのですね…。
タケゾウ。
こんな遅くまで修練ですか?」
「あ、ああ。
ニチカと手合わせしてもらってな。
一応、目標は達成したよ。」
「そ、そうなんです?
そう…ですか。
そういえばタケゾウ。
お礼をしたいといったこと覚えていますです?」
「ああ。
覚えているよ。」
「では明日、わたくしに付き合ってもらってもいいです?」
「ああ。いいよ。」
「ありがとです。
ではまた明日。
おやすみですタケゾウ。」
「ああ。
おやすみ。」
タケゾウは明日、アレースに付き合うと約束し別れた。
『そういや飯…食ってないな。』
何か食うものあるかなと食事をする部屋を探した。
『食堂どこだったかな?』
タケゾウは廊下で軽く迷子になった。
「あれ?マルース?」
廊下でまたマルースに会った。
「タケゾウさん。
どうしたのですか?」
「飯食いたいなと思ってさ。
マルースは何してるんだ?」
「姉様に怒られてしまったので少し反省の意味を込めて
今から修練でもしようかと思いまして。」
「ほんと真面目だなマルースは。
こんな遅い時間にやらなくてもいいのに。
ところでルーナは?」
「ステラさんの部屋にいます。
仲良くなったようで今日はステラさんの部屋で寝るそうです。」
「そりゃよかった。
マルースも一緒に寝ればいいのに。」
「わ、私なんかいても邪魔者なだけなので…。」
「そんなこと絶対ないよ。
ま、人見知りだから
俺もなんとなくそういうとこあるからわからなくはない。
けど自分のこと自分で下げる必要なんてねーよ。
そうだ!マルースお願いがあるんだけどいい?」
「な、なんでしょうか?」
「おなかすいた。
なんか作ってくんね?」
「あ、え、えーと…はい。
ふふ。
全くもう。
タケゾウさん子供見たいですね。
じゃ何かお作りしますね。」
子供のような言い方をしたタケゾウに微笑んだマルース。
二人は食堂に向かった。
「こんな物しか作れませんでしたが…どうぞ!」
マルースは可愛いエプロンをして料理を作ってタケゾウに出した。
それはタケゾウの好物の肉詰めだった。
「うわーうまそう!
マルース!ありがとな!
ご飯もあんのか?」
「はい。
あとはこちらも良ければどうぞ。」
テーブルには肉詰めとご飯に、スープが出された。
「このスープ…なんか懐かしい匂いが…もしかして…頂きます。」
タケゾウはスープを一口飲んだ。
「あー。
これな。
うまい。
味噌汁だ。」
「ニチカ様に教えていただきました。
タケゾウさんの世界の飲み物ですよね。」
「ああ。
落ち着く。
これ、ほんとうまいわ。
ありがとなマルース。」
そういうとタケゾウは味わいながら食事を一瞬で食べてしまった。
「ふふ。
そんなに味わってうまいって言ってもらえて嬉しいです。」
マルースは食堂のソファーに腰掛け、タケゾウの食事を見ていた。
「あーまじ食った。
腹一杯だ。
ほんとありがとマルース。
ご馳走さまでした。」
タケゾウは食器を流しに入れ、マルースが座るソファーに腰掛けた。
「い、いえ。
こんなものしか作れ…え!ええ!?」
マルースがうつむきながら話しているとタケゾウがマルースの肩に頭を置いた。
『な、ななな、何!?』
「タ、タケゾウさ…ん?」
タケゾウはすでに寝息を立てていた。
「そ、そういうことかー。
疲れているんですもんね。
ふふ。
食べてすぐ寝るなんて子供見たいです。
タケゾウさん!
こんなとこで寝たら風邪引きますよ!」
マルースが起こそうとタケゾウの肩に手を乗せ
少し揺さぶるとタケゾウは
そのままずり落ち
マルースの膝に頭を置いてしまった。
それでも起きないタケゾウは
マルースの膝で寝息を立てている。
『な、ななんな何でこんなことに!?
ああ…これは不可抗力であってこんなつもりは…』
マルースはポフュっと気の抜けたようなキノコ雲を頭から出し
膝の上のタケゾウを見つめた。
『結構癖っ毛なんだなタケゾウさん。
けど柔らかい髪…
ほんとぐっすり寝てる…
寝顔…可愛いな…。』
そんなことを考えているとマルースは
なぜかとても安心してしまい、睡魔に襲われソファーの肘掛に
腕と頭を乗せウトウトしながら
タケゾウを見つめた後、眠ってしまった。
「あらあらです。
ふふふ。
ルーナが見たら発狂物です。」
アレースが食堂にやってきた時には二人共熟睡していた。
アレースは二人に別々に毛布をかけてあげた。
「タケゾウ。
マルースを頼みますよ。」
タケゾウの耳元で静かに呟くと二人に優しい微笑みをかけ
アレースは食堂を後にした。
翌朝。
ルーナにバレる前にマルースが起き、二人は各自の部屋に戻り
ルーナが発狂することはなかったが
皆で食事の際、終始マルースの顔が赤く
タケゾウと目を合わせれなかったのは言うまでもない。
起床からこの時までのマルースの心境はご想像にお任せする。
『むむ…。
マルースがなんか変…。
さてはあの後またタケゾウと何かあったんじゃ…。
ぐぬぬぬぬ。』
ルーナのタケゾウハプニングセンサーは敏感に反応を示し
食事中、視線はマルースに絶えず注がれた。
そんなことを知る由もないタケゾウは本日
アレースと出かけるのであった。
読んで頂きありがとうございます。
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