マルースの告白
「私が産まれ少しして、母が亡くなりました。
私にはご存知の通り姉様がいて私は母がいないのもありましたが姉様を母親のように慕って育ちました。
物心ついた頃から私は姉様と比べられているということに気付きました。
これはおそらくどの家庭でもあることだし
生きている以上、誰かと比べられて生きていくことになるので、本来あまり気にしないことなのかも
しれません。
ですが、姉様はものすごく色々なことが出来る人でした。
幼い頃からすでに周りの大人よりも頭がよく、武術にも長けていました。
龍人は強いことが一番ですので
そんな姉様と比べられて生きているのがとても苦痛でした。
これほどたくさんの人に慕われ、頭もよく、強い姉様が私には誇りであり
大きな障害でもありました。
本当に悩みました。
姉様に恥じぬよう生きるにはどうしたらいいのか。
王の娘としてどうやって生きていけばいいのか。
私は必死に頑張りました。
勉学も武術も姉様に負けぬほど努力しました。
ですが…結果はいつも姉様のほうが上でした。
タケゾウさんが出る今度の武闘会、私も出たことがあるのですが私は準優勝でした。
その時の優勝は姉様なのですが、決勝で姉様は手を抜いていました。
私が怪我をしないよう
私がぼろ負けしないよう
周りにはバレない程度に。
優しい姉様らしい戦い方でした。
私は何一つ、何一つ姉様に勝てなかった。
いつからか私のあだ名はアレースの劣化版と呼ばれ始めました。
街では愛想のない姉の劣化版なんて呼ばれていたんです。
先ほど街で言われたのが…まあそのままと言ってとこですかね。
姉様の存在が疎ましいと思ったこともありました。
最低な話です。
能力がないのは自分なのに…。
それから表に出ることを辞め、裏方のようなことで姉様を支えようと決めました。
身の回りのお世話だったり、姉様が迷わぬよう道案内だったり。
雑用も全部自分がやらなければといつもどこか張り詰めていました。
ですがそんな私にも友達がいました。
その友達は私にとって救いその物でした。
その友達は誰とも私を比べず、私を私として見てくれていました。
疲れてしまったり、耐えられなくなるとよくその子と遊んでいました。
その時ばかりは私も張り詰めた気持ちを放り出して
過ごすことが出来ました。
その日もいつものようにその子のところに遊びに行きました。
日が暮れるまで遊び、帰っているその途中で
『マルースちゃん、お父さんの仕事で今度違う国に引っ越すことになってしまったの
だから明日から今みたいに遊ぶことが出来なくなってしまうの。
ごめんね。』とその子は言いました。
私は城に戻ってからわんわんと泣きました。
とても悲しかったのを今でも覚えています。
今まで心の支えとも言えるほどの友達が遠くに行ってしまう。
そんな悲しみを忘れるために私は今まで以上に姉様のお世話や武術、勉強に没頭するようになりました。
それから数ヶ月経ってからのことです。
姉様を邪魔に思っている者たちが姉様を暗殺しようとしていると聞きました。
もちろん城をあげての警備体制を取り、姉様を警護しました。
ですがその厳重な警備を突破され、その魔の手が姉様に及びそうになりました。
不思議ことに私にはその者達がどこにいて、城のどこから侵入し
どの経路で姉様のいるところにくるのかが『見』えました。
城にはさすがに私のほうが詳しかったので先回りをしました。
………。
そして私はその者達を皆殺しにしました。
姉様に危害が及ぶ前に。
私が姉様に勝てることがそこで見つかりました。
体質得意としての能力『千里眼』と殺すことを躊躇なくできるということです。
体が震えるほど嬉しかったとのを今でも覚えています。
千里眼は元々私達王家の血筋にのみ開眼する可能性のある能力なのですが
今までで二人しか開眼したことがないそうです。
私の千里眼は直近の未来を見ることができる能力で
断片的にそれが映像として『見える』というものです。
ただ…私のはものすごく不安定で未だに自分の意思で見ることができません。
ちなみに昔、開眼した二人のうち一人は全てを見通し
自分の意思でその未来を完璧に見ることが出来たそうです。
今の私達の血筋が繁栄出来たのはその人のおかげだと聞いています。
そしてもう一つが殺すということ。
私は何の躊躇も無く、人を殺しました。
姉様が危ないという大義の元、簡単に。
私はその者達の屍の上に立って笑っていました。
今考えればあの時はどんな風に笑ったのか…。
姉様を守れたという安堵…ではなかったように思います。
自分をバカにしている者達を殺した快感や
自分が姉様より優れているものを見つけた幸せで私は笑ったのではないかと思います。
ただの異常者だったんです私。
姉様の劣化版どころかただの粗悪品でした。
すでに心がねじ曲がっていたのです。
命を簡単に奪う。
タケゾウさんは命というのをすごく大切にしていますよね?
ルーナ様達にタケゾウさんのこと色々と聞いていましたが
森で私が殺した巨大生物とサリースのことで一層そう思いました。
……。
私は、タケゾウさんが嫌悪する存在なんです。
そして味をしめた私はこの能力がもっとも適している
護衛と暗殺という仕事をするようになりました。
父様や姉様には止められましたが、その意見を無視し私はやりました。
王政に歯向かう者、反乱分子、他国の暗殺者…
たくさんの命をこの手で奪いました。
気づけばもう元には戻れぬほどの命を私は奪いました。
そして姉様を暗殺しようとした者達の関係者を殺すという仕事をすることになりました。
要するに家族などを根絶やしにするということです。
その者達は、龍人の国と小人の国の国境近くの森に身を潜めていることがわかりました。
私達は部隊を編成し、その者達のいる国境近くに行きました。
そして…
そこにいた全ての者達の命を奪いました。
その中に…親友がいました…。
その親友は私が殺しました。
足を灰にし、動けなくした後、持っていた剣で心臓を貫きました…。
その時、ローブがとれて顔がはっきりと見えました…。
私は言葉を失いただ、ただ立ち尽くしていました。
そんな私に親友は命が消える際に言いました。
『お父さんを返して…全てマルースちゃんに奪われた…呪ってやる』と。
私が辛いとき支えてくれた親友を私は快楽殺人者のように痛ぶって殺したのです。
……。
ひどい話ですよね。
私を支えてくれた人の全てを私は奪いました。
それから私達は城に帰り、さらにもう一つの仕事をしました。
それはこの司令を出した者を殺すことです。
お気付きかもしれませんが
城の厳重な警備をかいくぐり
姉様のいるところまで敵がどうやって侵入してきたのか…
それは内通している者がいたからです。
そして問いただすとやはりその者が主犯でした。
もうその者をどう殺したか私は覚えていません。
ただ簡単には殺しませんでした。
抑えきれない感情の全てをぶつけたような気がします。
その後、寝込みました。
何日も何日も。
体調が少しずつ回復し、部隊の者達と顔を合わせましたが…
全員が私を気味悪がり距離を取っているのがわかりました。
仕事が仕事なので特に問題はありませんでしたが…
やはり辛かったです。
今もその部隊には所属していますが…仕事が回ってくることは無くなりました。
そして少しずつ時は流れ、タケゾウさんに出会い、今に至ります。
…。
タケゾウさん。
これが私が過ごしてきた時間です。
もう戻れないんです。
私はもう。
だからタケゾウさんが私を守ったりしなくていいんです。
私はもう普通ではありません。
だけど…だけど…
本当に、今日はすごく楽しかったです。
こんな私を王の娘とか姉様の妹とかそんな見方をせず見てくれて。
本当に嬉しかった。
私の手を取って歩いてくれて。
私のことを気味悪がったり、他の誰かと比べたりせず見てくれて。
私…もっと早く…タケゾウさんに会いたかったな………。
変になってしまう前に、もっと早く…。
タケゾウさん。
今日は本当にありがとうございました。
けどこんな話をしてはもうこの関係も終わりですかね…。
ぐすっ。やだな…。ひぐっ…。もっとタケゾウさんに見て欲しかったな。
けど騙すようで…
それだけは…私できません。
これが私のしていること…私のしてきたことです。
きっと今日のデートも姉様に頼まれて来たのですよね?
私が夜に頻繁にいなくなっているから。
きっと姉様はまた部隊で働いているのではと心配しているのですね。
最近、よくいなくなるのはニチカ様にカウンセリングという方法で心のケアをしてもらっています。
あの今日行ったパフェのお店でしてもらっています。
父様からニチカ様に頼んだと私は聞いています。
だからもう…心配しなくていいですよ。
今はもう危ないことはしていませんから。
タケゾウさんと姉様にいらぬ心配をかけてしまい申し訳ありませんでした。
ああ、タケゾウさん…。
花火…もう終わってしまいますね…。」
話終えたマルースはそう言うと、空を見上げた。
夜空には最後の花火が打ち上がった。
打ち上がった花火は夜空を彩るとゆっくりと消えていった。
タケゾウはあまりにも違いすぎる世界の話に言葉を失い、うつむいていた。
どう言葉をかけても、何を言っても説得力のないだろう
その言葉達はタケゾウの脳内で浮かんでは消え、浮かんでは消えて言葉にすることができなかった。
だがタケゾウは、このまま関係を終わりにする…
さよならするという決断をする気にはなれなかった。
今までで自分が見てきたマルースという人物が頭から離れないのだ。
今まで見てきたマルースがタケゾウの中のマルースだからだ。
だが本人はそう言っている。
そもそもその過去を知っても自分は変わらず接することが出来る。
本当にそうだろうか…。
殺人者なのだ。
だからなんだ。
それがマルースの生きる道なのだから仕方ない。
そうじゃない。
悲しい思いをしているマルースをほっといていいのか。
自分には一体何が出来る。
何もできない。
何がしたい。
そんな自問自答の中で唯一わかっている答えをタケゾウはマルースに伝えた。
「マルース。
嫌だ。すごく嫌だ。」
「そうですよね…
こんな異常者と一緒にい…」
「違う!
終わりにするのが…さよならするのが嫌だと言ったんだ。」
「はい?
話、ちゃ…」
「聞いた!!
マルースが人殺しで千里眼使えて姉様を尊敬してるって話は聞いた。
それで答えはいいえ。
終わりにしません。
さよならはしません。
以上。」
「いや、だからそのですね。」
「だからもクソもない。
嫌だと言ってるんだ。
その過去をわかったとかそんな軽々しく言えないのは重々承知だ。」
「だったらなんで…」
「姉様死んでもいいのか?」
「それは絶対嫌です!」
「じゃ俺も嫌だ!!」
「はい?それとこれとは…」
「うるせぇ!
俺からしたらそのくらい嫌なんだよ!!
マルースが今まで何をして、何を思っていたとしても
俺の中でのマルースは俺が見てきたマルースなんだよ。
今日、可愛い浴衣姿で俺とデートしてくれた。
森で姉様を助けるために必死になったり
特訓中にぐっすり可愛い寝顔で寝てたり
パフェうまいってたくさん食べたり
泣きながら俺を心配してくれたりした。
それが俺の知ってるマルースなんだよ!
俺にとってマルースはもう大切な仲間なんだ。
だからさ…さよならとか言うなよ…。」
「タケゾウさん…私…私…。
ひっぐ。
またデート、ひぐっ、してくれますか?」
「ああ。しよう。約束だ。」
「また花火、ひぐ、一緒に見てくれますか?」
「必ず見よう。」
「明日も特訓、んぐっ、一緒にしてもいいですか?」
「そんなん俺からお願いするわ。
明日も頼む。」
「私…ひぐ…私、いなくならなくてもいいですか?」
「いなくなったら地の果てまで…
どこまでも探しに行くわ!
勝手にいなくなったりすんなよ!」
「う、うぅうう。ひぐっ。
タケゾウさん…。
友達になってくれますか?」
「当たり前だ!!今日から大親友になってやるよ!!」
「タケゾウさん…ありが…ひぐっ…ありがとう…うぐっ…ひぐっ…ありがどうございます…ひぐっ。」
マルースはタケゾウの胸に優しく寄りかかった。
「辛くなったらいつでも、どんなときでもこうやって寄りかかっていいんだぞ。
マルースの過去を背負うとかそんなかっこいいこと言えるくらいの経験も強さもないけどさ。
支えるくらいなら、俺にだってできるはずだ。
もう嫌なこと、辛いこと、一人で抱えるなよ。
マルースにしてみれば少し遅かったかもしれないけど…
これからなら俺がいる。」
「う…うぅう…うああぁあん。」
マルースはタケゾウを抱きしめると堰を切ったように泣き出した。
タケゾウはただ、ただ優しく頭を撫で、強く抱きしめた。
「マルース様!!貴様一体何を!!」
「泣き疲れて寝ちまっただけだよ。」
「貴様!泣かせたらタダじゃおか…
いや、失礼した。
そういえば、嬉しくても泣くんだったな。
ありがとう。」
タケゾウはマルースをおんぶして門の塀から降りてきた。
そのマルースの寝顔はとても安堵している子供のような寝顔だった。
門番はそれを見てタケゾウにありがとうと礼をした。
城まで戻るとアレースが門の前でそわそわとタケゾウ達の帰りを待っていた。
「タケゾウ!何があっ…。
ふふふ。
きっといいことがあったのですね。」
マルースの天使のような寝顔を見るとアレースは優しくそう言った。
「いいことかどうかはわからんがな…。
アレースがどうして強くなり
強くあろうとするかもちょっとわかった気がしたよ。
つーか夜のこととかほとんど知ってやがったな。」
「…。
ではやはりマルースの過去を聞いたのですね。
タケゾウ。
ありがとう。」
アレースはタケゾウに深く頭を下げた。
「まだ、何もしてねーよ。
こっからだ。
しかし、肩が少し冷たいな…。」
「あ!マルースよだれ垂らしてです。
でもとても幸せそうです。
タケゾウ許してあげてです。
マルース、よだれ垂れてるですよ!」
アレースがマルースのおでこを指でツンっと押しマルースが気付いた。
「あ、あれ?ここは?
姉様?あれ?タケゾウさん?
あ、あれ?
あ!ごっごごごごめんなさい!
あ!肩によだれが…あ、ああ…。」
「あはは。気にすんな。
可愛い寝顔だったよ。」
「そうです。
誰よりも幸せそうに寝てたです。
もしやマルース…タケゾウに惚れ…」
「てません!!
あ、ああタケゾウさんほほんとにすいません!
おろしてください!」
「やだよ。
どっか行きそうだし。」
「そ、そんな…もうあんなこと言いませんから…。
もう…。」
マルースはそう言うとタケゾウの背中に嬉し、恥ずかしそうに顔を埋めた。
そこに思ってもない人物が登場した。
その美しい見た目とは裏腹に、どす黒いオーラを放ちながら三人に近づいてきた。
「マ・ルー・ス。
な・に・を・し・て・い・る・の・か・な?」
「えぇ!?
ルーナさん何でここに??」
「ルーナ?なんでいるんだ?」
一人は驚き、ものすごく焦りながらその落ち着く背からおり
もう一人は疑問の表情を浮かべていた。
「何タケゾウ?
いちゃ悪いの?
祭りデートなんて…うらや…こんな時に呑気にそんなことして!!
だいたい目を離すとすぐ女の子口説いて…タケゾウは修練ちゃんとやらなきゃいけないでしょ!」
すごい勢いでタケゾウに迫るルーナ。
「いや、ちゃんと修練…というか特訓!特訓してたぞ!
マルースが付きっ切りで見てくれていたから強くなったし
マルースのおかげでようやく制限解除を使えるようになってきたし。」
その話を聞いたルーナの鋭い、鋭い、鋭い、その眼光はマルースに向けられる。
「ほー。マルースちゃん。
付きっ切りでねぇ。
祭りデートもして、おんぶしてもらってねぇ。
まさか、手なんて繋いでないよね。」
その笑顔、見た目の優しさと美しさの中に魔王が住んでいる。
「手、てて、手なんて繋いでなんて…。」
「ん?繋いだぞ?
人が多くてな。
俺はデートしたことなくてさ。
はぐれないようにするのはそれしか思いつかなかったんだ。
隠すってことはやっぱり嫌だったんだなマルース。
ごめんな。」
「そ、そんなことないです!すごく、すごく嬉し…
あ…ルーナさん…ち、ちが…。」
「ふ〜ん嬉しかったんだ。
そうなんだ。
ふ〜ん。
へぇー。
そう。
マルース。
もう譲ってなんてあげないから。
今日からマルースはライバルです。
明日からあたしも特訓に付き合うから!!!!」
「え…いやそんな…ライバルだなんて…私は…」
「よかったなマルース。
今日で姉様の他に大親友と何のライバルかはわかんないけどライバルができるなんて。
これでさらにどこにも行けなくなったな。」
タケゾウはマルースにいじわるそうに笑った。
「は、はい…でも私なんて…ルーナさんのライバルに…?」
「あぁ??
それだけのことしておきながら、まさかとは思うが逃すとでも思ってるのマルース?
ところでまさかとは思うけど…
頭撫でられたり、抱きしめられたりなんてとこまでは進んでないよね?」
「あ、え、えーと…。」
マルースは赤くなり少しもじもじした。
その姿が答えと悟ったルーナ。
「マルース!!いくらなんでも早すぎだよ!!
まだ国を出て少ししかたってないのに!!」
「ご、ごめんなさーい!!」
二人の鬼ごっこが始まった。
「あいつら元気だな。
ま、マルースが楽しそうだからいっか。」
「はぁあ。
タケゾウ。
気持ちってのには気付いてあげてもいいと思いますが…
そうですね。
今はマルースが楽しそうなので良しとしましょう。
ふふふ。
タケゾウ。
あとでお礼もしたいので明日にでも時間があれば私の部屋に来てくださいです。」
「いいよそんなん。
あ、肉詰め食いたいかも。」
「ふふ。
わかりました。
明日のご飯はそれにしましょう。」
「やった!頼んだ!」
二人は門の前に腰掛けて、今日のことを報告ついでに楽しそうに話した。
特にタケゾウが。
肉詰めで浮かれているのだろう。
かいつまんで話すこと数分後…。
その楽しそうな雰囲気に気付いたルーナが二人の前に突如、姿を現した。
「あ、ルーナ。
もう鬼ごっこはいいのですか?」
アレースはルーナに話しかけた。
「ええ。
あんな楽しそうにされたんじゃね。
追うきも失せたわ。」
そこに息を切らして戻ってくるマルース。
「ル、ルーナさん。許して…。」
「と見せかけてぇーー!!」
ルーナがマルースをついに捕獲する。
腕を首に回し横腹脇に抱え込む。
「いたた、ルーナさん!痛いですよ!」
「うりうり!デートで勝ったと思わないでよね!まだ負けてないんだから!」
少し手荒にマルースの頭に拳を乗せてグリグリするルーナ。
その後、グリグリから逃れたマルース。
「もうルーナさん!痛いです…へへへ。」
少し涙目で笑ったマルース。
嬉しかったのだろう。
今日は得られた関係が、今日は言われた言葉が、今の自分がここにいられるということが。
その笑顔は天使のように清らかで美しかった。
三人ともその笑顔に見惚れ、自然と笑顔になった。
ルーナは『はっ!』と我に帰り、タケゾウを見ると明らかに見惚れ
一人の女性に向ける視線をマルースに送っていることに気付いた。
『あっ』と思い、マルースを見るとマルースはルーナに高らかに、不敵に宣言した。
「今日のところは私の勝ちですね。
これからも負けませんよ?」
「な、なな…マ、マルースぅうぅううう!!!!」
二人の鬼ごっこがまた始まった。
捕まりませんよーとばかりに舌を出し、あっかんべーをしたマルースは華麗に逃げた。
翼を出し、まるで天使が舞うように。
その後ろを翼を出した吸血『鬼』の魔王が追いかける。
その二人を見ながらアレースとタケゾウは笑った。
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おまけ
「ところでさっきから二人は何のライバルになったんだ?」
「タケゾウ…それはわたくしに聞いてはいけないことです…。」
「なんで?」
「う〜ん…。
マルース!ルーナ!
この超残念なタケゾウに教えてもいいですー?」
「「だ、だ、だめーー!!」」
鬼ごっこしていた二人はアレースの呼びかけに一気に距離を詰めアレースの口をふさいだ。
「んーんー。」
「「だ、だめ」」
「はぁ、はぁ…アレース。
こういうことは本人の口から言うことだよ。」
「はぁはぁ。
そうです姉様。
それに私はまだ…その…心の準備が…。」
「つまりどういうことなんだ二人とも?」
「「あ、いや、それは…。」」
途端にもじもじする二人。
「ぷはっ!!
全くもうです。
怒ったです。
タケゾウ。
この二人はタケゾウを『友達』として好きなのでどちらがより『友達』にふさわしいか
勝負するというライバル関係ということです。
わかりましたです?」
「あ、ああ。
そうだったのか…。」
『話の流れからもしかしたらって少しだけ思っちゃったよ。
あぶねー。またやるとこだった。』
「じゃ俺は、これからは二人をしっかり『友達』として見るから。
変な勘ぐりしてごめんな。」
「「あ、ああ…そんなああ…。」」
『『この人に一度そう思われたら…きっと終わりだ…。』』
がっくりとうなだれる二人。
それを尻目にアレースがさらに追い討ちをかける。
「ということで、二人は友達を目指すならわたくしは奥さんを目指すです。
タケゾウ。
今度はわたくしとデートするです。」
「「ななな、なな、なーーーーー!!!」」
突然の宣言に二人は唖然とした。
「ア、アレース。
奥さんだなんて…。
まあ、デートくらいなら…。」
まんざらでも無さそうなタケゾウを見た二人は慌ててアレースに言う。
「「だ、だめーーーー!!!!」」
「これはお返しです。
ありがたくいただくです。
わたくしだけ仲間はずれは嫌です。
それにとても苦しかったです。とても。」
アレースは少し頬を膨らまし翼を広げ空に逃げた。
今度は天使と魔王が追いかけ始め、空を舞った。
「あいつらほんと仲良くなったな。」
見上げた夜空には、月明かりに照らされ笑い合う三人の乙女がいたのでした。
読んでいただきありがとうございます。
明日から仕事で二、三日投稿ができません。
出張前に何とかここまで投稿できてよかったです。
コツコツ書いていければなと思っています。
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