祭りでデート?
「す、すげー人だな。」
祭りのメインになっている通りについたタケゾウは驚いていた。
たくさんの人でものすごく賑わっているのは良いのだが、身長が大きな人がたくさんいて
まるで自分が小人のような感覚になったからだ。
『あ、でも大きくない人もいるんだな…。』
男の人は比較的に小さい人が少ないが女の人はそこまで大きくない印象だ。
また、他の種族の者も結構目にする。
「そうですね。
祭りは月に一度の楽しみなので皆今日ばかりは仕事も勉学も置いておいて
この祭りを楽しみます。
飲食店は書き入れ時ですのでほとんどの店が出店を出してますし。」
と話ながら人混みを進んで行く。
「きゃっ。」
マルースの声が聞こえ、後ろを振り返るとマルースの姿が人混みに紛れ消えていた。
「マルース?!」
「は、はい。いますよ。」
人混みをスルスルと避け、マルースはタケゾウの元に戻ってきた。
「大丈夫か?」
「何がですか?」
「さっき悲鳴のようなものが聞こえたからさ。」
「あ、さっきちょっとぶつかってしまって。
次はちゃんと避けて進みますので大丈夫です。
はぐれないようにしますので。」
鼻から強く息を吐き、両腕を曲げ拳を握り、頑張るぞというポーズをしたマルース。
「……。」
タケゾウはそれを見て思った。
この子は何事もミスがないように
失敗しないように
しっかりやる
ちゃんとするということをまるで自分に義務のように押し付けているのかもしれないと。
それだけなら責任感の強い子となるのだが
森でのことを考えるとそれ以外の何かがあるような気がしてならないとタケゾウは思った。
「タ、タケゾウさん?」
考え込むタケゾウにマルースが首を傾げながら問い掛けた。
「悪かったなマルース。
先を歩いていた俺がもう少し気を使えばよかった。
こういうの初めてだから許してくれ。」
そういうとタケゾウはスっと手を差し出した。
「え?」
「嫌じゃなきゃ手を繋いで今度は並んで歩こう。
はぐれないようにさ。」
「は、はい。」
マルースはタケゾウの手をよそよそしく握った。
少しぎこちなく手を繋いだ二人。
「じゃ、行こっか。」
タケゾウはマルースに優しく微笑みかけた。
「は、はい。」
マルースは少しうつむきながら、タケゾウは周りの人を避け、マルースが歩きにくくならないように
祭りの通りを歩いた。
「お、あれもしかして肉詰めかな?」
「あ、はい。
あれ美味しいですよね。
食べますか?」
「めっちゃ食いてー!
マルースあれ食いたい!」
タケゾウは子供のようにはしゃいでまるで子供がおねだりするようにマルースに言った。
「ふふ。
タケゾウさんってほんと子供みたいですよね。
笑い方とか。
いいですよ。
肉詰め食べましょう。」
「そ、そんなことねーだろ。
それより早く行こう!」
タケゾウはマルースを引っ張って肉詰めを買いに屋台に並んだ。
「おじさん二つくれ。」
「あいよ。」
あの肉詰めの食欲を駆り立てる匂いが鼻に届く。
「あい。二つね。
そっちの可愛い彼女にはタレ、サービスしといたから。
…あれ?
もしかしてマルース様かい?
雰囲気が違うからわからんかったわ!
もしかしてデートですかい?
ふふ。
マルース様も大人になったんだな。
オッチャン嬉しい。
もう一つサービスしときやす。
デート楽しんでなー。」
「お、おお。
ありがとな、おっちゃん。」
『か、かのじょだなんて…っそっそれにデート…。は、はずかしい!』
「なんかすげーインパクトのある…親切なオッチャンだったな。」
タケゾウは肉詰めを三つ乗せた木の皿と箸を手に持ち、屋台から少し離れマルースに言った。
「…ん?マルース?」
タケゾウは返答がないので振り返ると
そこには夕焼けよりも真っ赤な顔のマルースが立っていた。
「どうした?
具合でも悪いのか?」
「な、なんでもありません!」
「こんな赤くなってそんなはずないだろ?
とりあえずどっか座ろう。」
屋台と次の屋台の間にちょうどよくベンチがあったのでそこに二人で座った。
「ほんと大丈夫か?
もしかして熱でもあるのか?」
タケゾウはそういうと手のひらをマルースのひたいに当てる。
「ひゃっ!」
なんとも言えない甲高い声を出してしまったマルース。
『し、心臓が…飛び出そう…。』
「わ、わるい。
熱いけど熱は無さそうだな。」
タケゾウは自分のひたいにも手を当て、確認した。
「は、はい。
だ、大丈夫ですので。」
「それならいいんだけど…無理しなくていいからな。」
タケゾウが手を退け、マルースは恥ずかしいのを隠そうとしているのか
自分の額に両手を当て少しさすり、ふぅと息を吐いた。
「はい。
無理はしてませんから。
それより食べましょう。
冷めてしまいます。」
「マルースがそう言うならそうなんだよな。
変なこと言って悪かった。
じゃ、食べよう!」
二人とも一口肉詰めを頬張った。
「んーまい!!
けど肉詰めだけだとあれだな。
俺、飲み物買ってくるよ。
食べながらちょっと待ってて。」
「あ、あの…私が…。」
タケゾウはそういうと小走りで飲み物を買いに行った。
『飲み物くらい私が…
タケゾウさん私なんかに気を使ってくれてるんだな…。
…………………………………………… 。
それに私たち、デートしてるように見えるんだな。
タケゾウさんに似合う女の子に見えてるかな…。
……………………………………………。
タケゾウさんの手…あったかいなぁ。
私なんかにこんなに優しくしてくれる。
ドキドキするけど…なんかすごく落ち着くなぁ。
私、今は頑張らなくてもいいのかな…。』
マルースは少し落ち着きを取り戻し、タケゾウが帰って来るのを待った。
「買ってきたぞ。
これ、どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。
あ、あの、お金…。」
「い、いいよ。
それは気にしないでくれ。
そんなことより食べよう。」
「はい。では…」
「「いただきます。」」
二人は食事を始めた。
「んーー。これほんとにうまいな。
何個でも食べられそうだ。」
そう言ってタケゾウは箸を使わず、手で持った肉詰めを二個一気に食べてしまった。
「はい。
父様もこれが好きでよく城で作らせます。」
「昨日、城で一番初めに食べたのがシレーヌスに勧められた肉詰めだったよ。」
そんな会話をしつつ、タケゾウは指をペロっと舐めた。
そして物欲しそうにマルースの肉詰めを見つめる。
「…。」
「あ、あのタケゾウさん?
…食べますか??」
マルースはその子供のような視線に答えるように言った。
「い、いいのか?」
「はい。飲み物も買ってもらってますし。
どうぞ。」
マルースは渡そうと箸で肉詰めを持ち上げた。
その時であった。
その箸で持ち上げた肉詰めをタケゾウがパクっと一口食べた。
マルースは突然の出来事に少し惚けていると
「あ、悪い。
つい待ちきれなくてさ。
かわりにこれ飲んでみてよ。
マルースのとは違うの買ってきたからさ。」
そういうと自分の飲みかけの飲み物をマルースに差し出す。
「あ、ありがとうございます。」
コップを少し見つめたあと、マルースはその飲み物を一口飲んだ。
清涼感溢れる飲み物は、さらに食を進ませる物だった。
マルースは肉詰めを取り、口に運んだ。
そして気付いてしまった。
肉詰めを差し出し、それをそのままタケゾウが食べたという
二人の間に成り立ってしまった行為。
俗に言うあーんというやつだ。
そしてコップはどこから飲んだかわからなかったが、肉詰めは…。
いわゆる間接的に口づけ…間接キスをしてしまったという事実。
先ほどのドキドキするが落ち着くという落ち着くがまるでいなくなってしまったように
心拍数が急上昇してしまったマルース。
ポシュンっと可愛い音とともにキノコ雲がマルースの頭上に登った。
タケゾウのほうをまったく見れなくなってしまった。
『ど、どどど、どうしよう!
男性の方にあーんなんて…
それにか、か、か、間接的にとは言え…くくく、キスをしてしまうなんて!』
「マルース?
どうしたんだ?
やっぱり具合でも悪いのか?」
タケゾウは心配になり、マルースの顔を覗き込んだ。
突然タケゾウの顔が急接近し、マルースは驚き
咄嗟にタケゾウがいるのとは逆の方向を向いた。
「マルース?」
「あ、あの!なんでもないですので!
大丈夫です!」
「それならいいけど…。」
「本当に大丈夫ですので。
こ、こっち見ないでください!」
「わ、わかったよ。」
そんな二人が食事をしているところにに三人組の男がやってきた。
「さっきからあいつらいちゃいちゃと…羨ましい…。」
「馬鹿野郎!
俺たちは男で回るほうが楽しいいうことで男同士で酒飲みながら見物してんだろうが。」
「そうだ!決して羨ましくはないぞ!」
どうやら二人が羨ましい様子の三人は皆、身長は大きく、だいたいフォボスくらいだろうか?
髪の色は皆違い、灰色、緑、オレンジでオレンジの髪の者が一番が体格が良い。
どうやら三人とも程よく酔っているようだ。
「し、しかしだ。
夜も遅くなるのにあんな少年少女が祭りにいては
事件になるかもしれない。」
「うむ。
その通りだな。
これは一言、注意喚起していかなくてはな。」
「つまり二人とも羨ましいんだろ?
正直じゃないな。」
「「ちがうわ!!」」
灰色髪とオレンジ髪が一斉にツッコミをいれた。
「これは治安維持の一環だ。
事件を未然に防げるのならいいことではないか。」
「お、おう。
その通りだ。
これは大切なことだ。」
「じゃとりあえず話しかけてみれば?」
見た目が明らかに普通の人より強面なのにこんな言い訳ばかりをする二人。
ようやくタケゾウとマルースに絡みに…注意喚起に行くことにしたようだ。
三人はゆっくりとタケゾウとマルースに歩みよっていった。
読んでいただきありがとうございます。
コツコツ投稿していければいいなと思っています。




