乙女の涙と旅の始まり
タケゾウは昨夜のうちに星から人に戻り風呂に入った。
ボロボロの体を再生しゆっくりと考え事をした。
そのうちに眠ってしまっていた。
「おい。タケゾウ。
起きんか。おい。」
ベル爺が起こしに来てくれたようだ。
「ん…ベル爺……。
もう朝か?」
「そうじゃ。
寝ぼけておらんで早よ顔洗ってこい。」
「わ、わかった。」
タケゾウはある程度身支度をし
ベル爺と皆の集まっている部屋に行く。
「遅いよタケゾウ。」
「すまん遅れた。」
ルーナに注意されたタケゾウ。
心なしかルーナの機嫌が悪いと感じたタケゾウ。
「さて揃ったのう。
じゃセバス。皆に説明を頼む。
「承知致しました。
この度のタケゾウからの情報を元に今後の動きをご説明致します。
まず人族。
魔国を滅ぼすため龍の国を二、三ヶ月以内に小人族とともに攻撃してくるというものです。
そこで魔族としてはまず小人族が本当に人族と手を組んでいるのかということを調査致します。
情報収集には軍の第三部隊と第五部隊より昨日のうちに人選を行い
明け方すでに出発しております。
そして人族の動向を探るべく現在第一部隊の人選を開始しております。
また魚人族にも恐らく人族の手が伸びているだろうと予想されますので
私と政治班の者数名で直接魚人の王にお話をしに行って参ります。
龍人の国には大変申し訳ありませんがアレース様がお伝えしていただけるということで
お願い致しました。
王と月の神サクヤ様には国に残って頂きます。
サクヤ様には聖域に戻らなければならないという事情がありますが
極力城に滞在していただきたいと思っております。
警護には王とサクヤ様には零隊をつけますのでどうぞご安心を。
私が戻り次第、王には龍人族の王に会いに行って頂きます。
さて…。
タケゾウ。
貴様はアレース様達に同行するということで良いのだな。」
「あ、ああ。
そのつもりだ。」
そう前置きするとセバスはタケゾウの方を向いて話し始める。
「タケゾウ。
正直に答えて欲しい。
お前は争いに…戦争になった場合
どちらに着くんだ?」
その場にいた全員がタケゾウを見る。
タケゾウの仲間は人族とともに行動している。
情報を信じるのならその仲間が戦争に賛成し
魔族に敵意を向けていることになる。
この場に昨日食事の時にいた国のお偉いさん達がいないのはこのことをはっきりさせる為である。
「タケゾウ。
自分の気持ちに正直に答えていいのよ。
タケゾウがどちら側に居ようとあたしにとってタケゾウはずっとタケゾウだから…。」
凛とした表情をしようと心がけているルーナだがやはり悲しそうである。
この場にいはやはりどこか悲しげな表情をしている。
けれどタケゾウの決断には意義を唱える者はいないだろう。
実はタケゾウももし人族が攻めてきて
自分の仲間と相対するとしたらと考えてはいた。
もしそれが義姉なら…
もしそれが親友なら…
もしそれが少し気になる女の子だとするならば…
自分はどうするのだろうと。
「俺さ…。
サクヤに召喚されてベル爺に拾われて
ルーナに会ってたくさん修練してさ。
アレースやマルースにも出会えたし
セバスには殺されかけてさ。
フォボスとはまだあんまり話してないけど飯奢ってもらう約束したんだ…。
結構すでにみんなと『繋がり』を持てた気がしてるんだ。」
「じゃ、じゃあタケゾウは…」
「だけど…
その繋がりを何年も前から築いてきた義姉や親友達が
人族の側にいるんだ。
そして俺がこの世界に来たのは
みんなを連れ戻す為なんだ。
殺す為じゃない。」
「タケゾウ…。
そうね。私もそれを知っていてタケゾウを召喚したのだし…。」
部屋には重苦しい空気が流れていた。
悲痛な表情で皆が俯いている。
「だからお願いがあるんだ。」
全員が顔を上げる。
ほとんどの者が疑問の表情だ。
ベル爺は何を言おうとしているかわかっているようだ。
「その…さ。
助けてくんない…かな?」
「「「「「ん?」」」」」
「いや、だからさ
助けてくんないかなーって。」
「「「「「はい?」」」」」
ベル爺はすでに笑いを堪えている。
「いやだってさ。
あのクソ野郎言ってたけど楽しいならいいとかまぢふざけてるじゃんか。
クソ野郎の思う通りになるの嫌だしさ。
俺の仲間が戦争に賛成とかいうのも動揺させて楽しんでるんじゃないかとすら思うんだ。
で、魔族側で戦おうってのは決めてるんだけど
いざ義姉とか来たら確実に殺せないと思ってんだよね。
ということで生きて捕獲?捕虜?みたいな感じで捕まえて話してーなと思ってんだけど
みんなにはできれば協力して欲しいなーって。
俺一人であのクソ野郎にはまだ勝てないだろうし
捕虜にするならやっぱみんなにも協力してもらわないとうまく捕まえられない気がするんだよね。
義姉すげー強いからさ…。
だからこれからもっと強くならなきゃいけない。
その強くなるのもみんなに協力してもらわないとなれないし。
アレースとマルースに案内してもらったり、火の魔法のこと詳しく教えてもらったり
ベル爺やルーナにだってまだ魔法のこと教わり足りてないし。
サクヤにはクソ野郎のことまだ聞いてないし約束もあるし。
セバスとはまた手合わせしてもらいたいし。
フォボスに飯奢ってもらいたいし。
俺、この世界に来てほんと痛感したけど何にも一人じゃ出来ないんだ。
だから頼む。
力を貸して欲しい。
もっと強くなって必ず役に立つように頑張るから!」
タケゾウは深々と頭を下げた。
「くくく。
素直に話せと言われた時からお前さんなら変な話を
始めるのではと思っておったが…
想像の上を行くアホじゃわい!
あーははは!愉快愉快!!」
ベル爺が豪快に笑った。
セバスは近ずいてきてなぜか腹にパンチをお見舞いされる。
「貴様というやつは…
本当に面白いやつだな。」
セバスがクスクスと笑っている。
そして女性陣は…
「「「「タケゾウ(さん)!」」」」
一斉に抱きついてきた。
その表情は安堵し泣く者、笑う者と様々。
ポコポコ殴られたりしがみつかれたりと大騒ぎである。
「う〜。よかったです〜。ほんとよかったです〜。」
「前置きが長すぎタケゾウ。ほんともう。」
「よがったよー。タケゾウとお別れしなくてよがったよー。」
「よ、よかったです。うん。ほんとによかったです…。」
全員がタケゾウと別れを覚悟していたのだろう。
そして自分の前に、もしかしたら敵としてやってくるのかもしれないと…。
もしかしたら自分の手でタケゾウを殺さなければならない日がくるのかもしれないと。
それを回避できた事に全員が心底安堵しているようだった。
それから少しして皆が落ち着きを取り戻した。
タケゾウの顔はなぜか腫れている。
恐らく何度か叩かれたのであろう。
『グスっ。タケゾウがいなくならなくてよかった。
だけどあたしが今考えていた恐怖にタケゾウは立ち向かうって決めたんだ。
殺せないって言っていたけど刃を向ける覚悟はしているのねタケゾウ。
大切な人に刃を向ける…。
決めた。必ずタケゾウの大切を守る!』
『タケゾウ。
きっと私との約束を守ることもこちら側にいる理由になっているんだろうな。
大切な人から敵意を向けられそれに刃を向ける。
そんな覚悟をしたんだねタケゾウ。
必ず私がタケゾウの大切を守ってみせる。』
『うぅうぅう。
よかったですー。
けどタケゾウはわたくしたちが今恐れていたことをやろうとしているんですね。
タケゾウ一人に背負わせたりしない。
タケゾウが必要としてくれたのだから必ずタケゾウの願いを叶えてみせる!』
『ほんとよかったです。
タケゾウさんとはまだ付き合いは浅いですが
女たらしで…昨日の夜のことは忘れよう!
けれど皆が慕っているそんな人が助けてと言っている。
私のことを必要としてくれている。
たくさん火の魔法教えてあげなきゃ。
必ず力になってみせる!』
「タケゾウ。
辛い決断をさせたな。
約束しよう。
お前の仲間を助けると。
協力させてくれ。」
「セバス…すまん。
恩に着る。」
「ということで早速手合わせでもするか。
貴様が弱いなんて話にならんからな。」
「ちょ、ちょっとセバス!
今すぐはやめてちょうだい!」
「ルーナ様。
冗談ですよ。」
「ま、まさかセバスが冗談をいうなんて
明日には世界が滅ぶやもしれんな。」
皆が笑う。声を出して。
「タケゾウさん。私協力します。」
「わたくしもです。」
「もちろんあたしもね。」
「協力するわ。
私の全てをかけてね。」
「みんな…。
ほんとありがとう。
俺もみんなの役に立つよう頑張るわ!」
ルーナの機嫌が悪く感じられたのはこの質問はしなくてはいけないと
ベル爺とセバスに今朝言われたからであった。
ルーナもこのことには気付いていたがあえて触れないようにしていた。
だが結果としてとても嬉しいことになったのは間違いない。
タケゾウもこのことについては召喚当初より悩んでいた。
助けてくれた人は裏切れないが家族や友を傷つけたくない。
どっちを選んでも辛いならどっちも選びたいが皆が協力してくれない限り不可能だろうと思っていた。
なのでこの結果はお互いに今は良い結果となったのであった。
そんな話を終え皆決意を新たに部屋に戻り
各自支度を初めていた。
コンコンとノックの音とともにセバスとルーナがタケゾウの部屋に来た。
「少しいいかタケゾウ。」
「ああ。どうした?」
「私は今から魚人の国に向かう。
数日のうちに戻ってくる予定だ。
その後、ルーナ様は龍人の国に行き、龍人の王と会談をしてもらう。
そして少し遅れてとはなるが、ベルス様と第一部隊の編成による人族調査の第二陣を
出発させる予定となった。
そこでもしタケゾウの龍人の国でのやることが順調、もしくは終わっている様であれば
龍人の国にいる間のルーナ様の護衛とそれが終わり次第、調査部隊に参加して欲しい。
お願いできるだろうか?」
「ああ。そんなことくらいお安い御用だ。
けど俺なんかでもできることがあるのか?」
「貴様にしかできんことだ。
見た目はどこからどう見ても人族だからな。」
「あ、そういうことか。
そういうことなら任せてくれ。」
「そのためにはより早く貴様の用事を片付ける必要があるのだから
頑張ってくれよ?」
「そのつもりだ。
アレースにマルースも協力してくれるって行ってるから何とかするさ。」
「それであたしはその第二陣とともに龍人の国に行くから。
…。
タケゾウ。すぐには行けなくなってしまったけど必ず行くから。
その時色々手伝うから。
けど困った時はいつでも言ってね。
手紙っていう連絡手段があるから。」
「わかった。
心配してくれてありがとなルーナ。」
「ううん。気を付けてねタケゾウ。」
「アレース様達を頼んだぞ。
帰りの道中にも何があるかわからんからな。」
「ああ。
セバスにルーナも気を付けるんだぞ。」
「貴様に心配される程、弱くはないつもりだ。」
「あたしもね。」
「一言余計だアホ。」
三人は笑った。
その後セバスはすぐに出発した。
タケゾウはアレースの部屋に行き準備が済んだことを伝えた。
アレースとマルースは最後に街を一時間ほど視察した後、出発するということなので
タケゾウはその間城の図書室に行くことにした。
「うわ…全く読めない…。」
古い書物が数多くあるということだったので
タケゾウは興味があり来たのだがサクヤ達が来る前の書物も多数あり
まだ字が統一されていない書物も多かった。
「うーん。」
「どうかしましたか?」
「あ、い、いえ。」
声をかけて来たのは男の人であった。
「この辺の文献は古い物が多く、そのほとんどが字が統一されるより前の物ですので
読めない人が多いんです。」
その男はクスリと笑った。
「そ、そうなんですね。
じゃ仕方ないか。他の書物を見てみます。」
タケゾウはそういうとそそくさと違う本棚に移動した。
『あ、あぶねー。
カツラかぶって来てよかった。』
「タケゾウ。
慌ててどうしたの?」
その本棚にはサクヤがいた。
「いや、今話しかけれらてさ。
びっくりしたわ。」
「ふ〜ん?
どの人?」
「あの人。」
タケゾウはそういうとこっそり指でサクヤに方向を指示した。
「アウウィットね。
私も彼のことは詳しくはないけど…
確か政治を任されている人の一人だったかな?
よく本を読んでいるのを見かけるわ。」
「そうなんだ。
なんか親切そうな人だな。
ヒョロっとして暴力とか反対って感じの印象だな。」
「そうね…。
頭はかなりいいようだけど戦闘訓練とかしてるタイプではなかったと思うわ。」
「ふ〜ん。
ところでサクヤは何読んでるんだ?」
「これはこの世界の童話。
いい暇つぶしになるの。
タケゾウも読んでみる?」
「いや遠慮しておくよ。
そろそろアレース達が来る頃だろうし。」
「そう…。
行くのね。
見送りする。」
二人は図書室を後にした。
部屋戻ってみたがまだアレース達は戻っていない様だった。
「まだ戻っていないみたいだな。」
「そうね。
アレースのことだからもしかしたら少し時間がかかるかもしれないわね。」
「そうだな。」
タケゾウは椅子に腰掛けてふうっと息を吐く。
サクヤは窓辺に寄りかかっている。
「タケゾウ。
私の好きな人…。
内緒って言ったの覚えている?」
「ああ。
覚えてるよ。」
「教えてあげる。
私ね。太陽の神になった人のこと好きだったの。」
「え?!そ、そうだったのか…。
ん?好きだった?どういうことだ?」
「三百年も生きていれば変わってしまうものもあるのよ。
彼は変わってしまった。
それに私は気付いてあげられなかった…。
私達は付き合ってたの。
それがもう十五年くらい前のことかな…。
彼に別れを告げられてショックだった。
かなり辛かった。」
「そ、そりゃな…。」
タケゾウはなんと言えばいいかわからなかった。
「そんな顔しなくていいよ。
立ち直ったし。
乙女は強いんだから。
ここ最近はタケゾウ達のおかげで賑やかに過ごせたし。
ありがとうタケゾウ。」
「い、いや。どういたしまして…。」
お礼を言った少女は儚げに笑った。
綺麗な黒髪を風がそっと撫でる。
太陽の光が少女を照らしている 。
季節の終わりに感じるような胸が締め付けられる寂しさを感じさせた。
タケゾウはその笑顔に胸が締め付けられる。
「その、なんだ。
気が付くのは結構難しいことだと思うよ。
近しい人なら特にさ。」
「何タケゾウ?もしかして慰めてくれてるの?
いつの間にか気を使えるようになったのね。
お姉さん嬉しいよ。」
泣き真似のジェスチャーをするサクヤ。
ポンと頭に温もりを感じた。
「え?」
「まあ、辛いなら言えよ。
聞くくらいならできる。
前の時はどんなかわかんねーけど…
これからなら俺がいるからさ。」
タケゾウはサクヤの頭をポンポンとするとぐしゃぐしゃっと髪を撫でた。
「な?!
…もう。」
サクヤは泣き真似を続けた。
えーんえんと棒読みの効果音をつける。
外を見るサクヤ。
その頬には雫が伝っていた。
そして後ろに手を組んで笑顔で振り返る。
「もう。
タケゾウ。
惚れたら責任取ってよね。」
儚さは消え、太陽に照らされるひまわりのような笑顔。
心が温かくなる。
そんな笑顔になったサクヤ。
「な?!いきなり変なこと言うなよ!調子狂うだろ!」
「ん?満更でもないご様子?タケゾウ?」
「そ、そんなわけねーだろ。」
「けどタケゾウ。耳まで真っ赤よ」
ようやく自分が照れていることに気付いたタケゾウ。
すぐ様、背を向ける。
「はっはーん。
惚れたなおねーさんに。
可愛い奴め。」
お返しとばかりに椅子に乗り髪をぐしゃぐしゃするサクヤ。
「そ、そんなわけねーだろ!や、やめろ!
三百以上歳上に誰が惚れるか!」
「まったくもう。
乙女に歳のこと言っちゃダメ。
ほんとにもう…。」
ふわっと風が良い香りをタケゾウに届けた。
瞬間。
ぎゅっとサクヤがタケゾウを抱きしめた。
「ありがとうタケゾウ。
必ず生きて戻って来てね。
約束だよ。」
サクヤの優しい声がタケゾウの耳元で響く。
「わ、わかった。」
タケゾウがそう言うとサクヤはひょいっと椅子から降りる。
「約束だよ。タケゾウ。
二人だけのね。」
「い、意味深に言うなよ。
ったく…。」
コンコンとドアをノックする音。
「タケゾウ。戻ったです。
準備は…?
どうしたのです?顔真っ赤ですよ?」
「あ、いやこれは別に…」
「ふふふ。タケゾウは今私に惚れてしまったとこなのアレース。」
「ええ!一体何があったのです?」
「ふふふ。」
「タケゾウさん。
戻り…どうしたんですか?
顔が…。」
「マルース。それはね…」
「サ、サクヤ!意味深なこと言うなって!
何でもないから!
俺も準備出来てるから行こう!」
荷物を持って出て行こうとするタケゾウ。
「タケゾウ!」
「な、なんだよ。」
「いってらっしゃい。」
「あ、ああ。
いってきます。サクヤ。」
「うん。帰りを待ってる。」
タケゾウは部屋を後にした。
続いてサクヤに二人とも挨拶をし門の前で合流した。
「さ、さて行くか。」
城を後にして街の外に出る門に向かう三人。
途中アレースが呼び止められ食料を少し購入するなどがあったが
結構スムーズに街の外の門に到着した。
そこにはベル爺とルーナが待っていた。
「タケゾウ。
ようやく来たのう。」
「見送りなんていーのに。
サクっと行ってすぐ帰ってくるよ。」
「そうしてくれると助かるわい。
うちの孫が飛び出して行く前に帰って来てくれ。」
「な!ベル爺ちゃん!
変なこと言わないで!
ところでタケゾウ。
顔が少し赤いみたいだけど体調悪いの?」
ルーナがタケゾウに問いかける。
ルーナさん鋭いです。
「そ、それがサクヤと何かあったみたいです。
部屋に迎えに行った時はこの三倍は赤かったです。」
「姉様。五倍は赤かったかと。
その後の二人のいってらっしゃいといってきますという言葉には
何か凄く良い雰囲気を感じました。
幼い私でもわかるほどの…。」
マルースはとても冷静に話した。冷たく静かに話した。
『サクヤさんと何かあったのね…まさかサクヤさんが仕掛けてくるなんて!
油断していた!』
「タケゾウ…。」
「ん?あ、いやこれには色々あってさ。
ルーナは城に残るんだよな?」
「ええ。そうよ。」
「サクヤのこと…頼むな。」
「…わかった。任せて。」
『絶対に先に何かしたのね!!!サクヤさんめーーー!!!』
「タケゾウ。ワシもおるからその辺の心配は無用じゃ。
そんなことより自分の修練をおろそかにするでないぞ。」
「そ、そうよ!タケゾウ!ちゃんとサボらないのよ!」
「わかった。
じゃいってくるわ。
ルーナは龍人の国に来るんだよな?」
「う、うん。すぐに。
すぐに行くから。」
「そんな焦らなくてもいいよ。
もしかしたら俺が戻ってに来るほうが先かもしれないし。
じゃいってきます。」
「おお。気を付けてのタケゾウ。
アレース、マルースも気を付けての。」
「いってらっしゃい。みんな気を付けてね。」
「「はい。ありがとうございます。」」
「ああ。行ってくる。」
三人は街を後にした。
『ぐぬぬぬぬぬぬ。
何か負けたような…そんな気がする…。
ぐぬぬぬぬぬぬ。』
「ルーナよ。表情に出ておるぞ。
お前さんにもやることはあるのじゃ。
タケゾウに負けんようしっかりのう。」
「そ、そうね。
やることをやらないと!
まずはサクヤさんに何があったのか事情聴取してくる!!!」
「あ、いやその、そっちじゃなくて…」
すごい勢いで城に飛んで行ったルーナ。
『やれやれじゃ。』
ベル爺は肩をすくめた。
「ごめんな二人とも。
飛んで帰ったほうが早いのに…。」
「いえ。そんなこともありません。
変わっても一日くらいのところです。」
「そんな変わるのか…。
あー俺も飛べたらなー。」
タケゾウが頭をぐしゃぐしゃと掻く。
「姉様。
それでしたら二人で交互にタケゾウさんを運べばいいのではないでしょうか?
歩くよりは速いのではないかと思います。」
王都を出て一時間。
三人は現在森の中を徒歩にて移動中である。
「タケゾウ。
気にすることではありません。
マルースの言う通り飛んでいけばいいんです。
交互にタケゾウを運べば負担も減らせます。」
「そうですね。
ではどこを持ちましょうか。
やはり鞄ですか姉様?」
「そうですね。早速わたくしがやってみるです。」
そう言うとアレースは翼を出し浮き上がる。
そのままタケゾウの鞄を持ち空に向かう。
「中々持ちやすいです。
タケゾウ。
落ちないように気をつけてください。」
「わ、わかった!」
タケゾウは鞄にしっかりとしがみつく。
『落ちたら間違いなく死ぬ。しっかり捕まらないと。』
そんなこんなで結構な距離を移動した三人。
アレースとマルースが交互にタケゾウを運ぶ。
「タケゾウ。これなら思っていたより早く着きそうです。」
「あ、ああ。ほんとお荷物になってすまん。」
空中でのタケゾウは側から見てもお荷物に見える。
まさに運搬という言葉がぴったりだ。
「あれ?
アレース!持ってるとこほつれて…。
うわ!」
鞄の肩にかけ背負う部分がほつれ、切れてしまった。
タケゾウは落下を始めた。
「タケゾウさん!」
マルースが必死に追いかける。アレースもその後を追う。
「マルース!」
さすがは龍人。落下の速度など物ともせずタケゾウを追い抜き
マルースはタケゾウの下に回り込むとタケゾウを抱き止める。
「タケゾウさん。大丈夫ですか?」
「あ、ああ。ほんと助かった。
マルースには助けられてばかりだな。
ありがとうマルース。」
「い、いえ。」
「マルース。さすがです。
一旦そのまま下に降りましょう。
しっかりとタケゾウを離さないんですよ。」
「は、はい!」
三人はそのまま下に降り始めた。
『う、うぅうぅうう。
落とさないように落とさないように。
は、離さないようにしなきゃ。
き、緊張…する。』
『あれ?な、なんか苦しい…。
う、ぐ!肋骨が …お、折れる!』
三人は地上に降りた。
一人は顔を赤くし息を切らしていた。
もう一人は肋骨が折れていないか確認し息を吐いた。
もう一人は何をやっているのだかとため息を吐いた。
日も暮れてしまっているので今日はここで野営することにした。
食事はルーナ。タケゾウは寝床の作成。マルースはタケゾウの鞄の修繕を始めた。
「ふー。寝床はこんな感じかな。」
近くにあった大きな棉がついた植物を集め木の下に置き、それを大きな布で覆う。
さらに木の枝に布を結びつけ即席の屋根を作った。
「タケゾウさんすごいですね。
鞄直りましたよ。」
マルースがタケゾウの元に直った鞄を持ってきてくれた。
「すごいな!完璧じゃんか!
マルースはほんと何でもできるんだな。」
「そんなことありませんよ。
私は姉様の劣化版ですから…。」
「マルース?」
「きゃっ!」
「アレース?!」
「姉様!」
突如アレースの叫び声がした。
二人は急ぎ木の反対側で調理しているアレースの元に向かった。
「どうしたアレース…狼?」
「か、可愛い。」
体調一メートルもない狼のような獣がそこにはいた。
どうやら足に怪我をしているようだ。
「タケゾウ!違います!
森の中です!」
アレースが叫ぶ。
「森の中?」
タケゾウは目を凝らして見てみるが暗いためよく見えない。
突如狼が唸り始める。
狼が唸りを上げ見つめるその先にタケゾウも目をやる。
何かが動いているのが見える。
タケゾウはその場にあった木に調理に使っている火をつけ森に投げる。
「お、おい。嘘だろ…。」
タケゾウが見たのは巨大バッタだった。
体調は五、六メートルはあるだろう。
突如、巨大バッタは飛び上がり落下の勢いを利用し攻撃を仕掛けて来た。
地面が割れ、土煙が舞う。
全員がその攻撃を交わし臨戦態勢となっていた。
バッタを囲むように陣形を取っている。
巨大バッタとの戦闘が始まった。
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