少女のトキメキ
盛大に笑った六人。
その後、軽い談笑をしルーナとセバスはツキヨミに先に帰って行った。
タケゾウとアレースとサクヤは刀を回収に向かい
ベル爺は家のことをし始めた。
「どの辺だったかなー?おーい朔夜ー?」
「朔夜ー出ておいでですー朔夜ー?」
「………ちょっと二人ともわざとやってるでしょう。
それやめて。」
「え?どうしてです?朔夜という刀を呼んでいるだけですよ?」
「そうだぞ。サクヤも朔夜を呼んで…ぷぷ…探してく…ぷぷ。」
「ふーたーりーとーもー。」
サクヤさんお怒りです。
やべっという顔をして二人は走り出す。
お怒りのサクヤはもうっとため息を吐いた。
『タケゾウ絶対この場面を想像して名前つけたに違いない…。いえきっとそうだわ…。』
いつか仕返ししてやると心に誓うサクヤだった。
この二人の仕返し合戦の開幕である。
そんなこんなで刀は無事見つかり家に戻る三人。
「おお。無事に見つかったのじゃな。
良かったわい。」
「おう。ベル爺は何してたんだ?」
「何かうまいこと変装できないかと思ってのう。
ワシ愛用のこれを使えないかと思ってな。」
それはカツラだった。
確かにベル爺の頭は光ってはいるが、まさかこういうのかぶるとは思ってもみなかった。
「ベル爺…頭のこと気にしてたんだな…。」
「昔は少し気にしておってのう。
七人の神のうちの一人がこれを作ってくれたんじゃよ。
かぶると少し若返った気分になれるんじゃ。」
「そ、そう。良かったわね。」
『一体誰がこんな物を…
ベル爺はいつからカツラだったのかしら…』
「まあ何じゃ、これがあれば
あまり目立つこともないじゃろう。」
人族の外見の特徴の一つに黒髪というのがあるのでそれを隠せれば服で肌も隠せるのであまり目立たない
だろうとベル爺は考えたようだ。
「よしじゃこれ借りるわベル爺。」
タケゾウは白髪のカツラをサクヤははセミロングくらいの紫髪のカツラを手にした。
「しかし結構種類あるんだな…。」
「ちょっと楽しくなってのう。たくさん作らせたのじゃよ。
だがこれはルーナにバレると怒られると思うのじゃ。
内緒にしておいて欲しいのじゃ。」
「「わかった」」
『『絶対職権乱用したに違いない』』
そう確信する二人だった。
アレースとベル爺に運んでもらい、ツキヨミの王都に向かった四人。
前と同じルートで潜入し街に出る。
「今回もうまく入れたな。
さて探すか。
ところでどんなやつなんだ?」
「えーと…
二人いるのですけど…
二人とも赤い髪をしています。
あとはえーと…服装はどんなだったでしょう?」
「それは聞かれても俺たちにはわかんねーよ。
アレースはほんと天然だな。」
「天然ではありません!忘れっぽいだけです。」
頬を膨らまし拗ねるアレース。
「説明って難しいんです。
とにかく赤い髪の二人組です。
きっとすぐ見つかります。」
「じゃ手分けして探すとするかのう。
アレースとタケゾウ、ワシと神様のペアで良いですかな?」
「わかった。じゃみんな行こう。」
全員が頷き大きい通りに出る。
ヒントが少ないためとりあえずベル爺たちは宿を
タケゾウたちは飲食店を探すことにした。
探すこと約一時間。
「うーん。中々見つからないな…。」
「そうですね。二人ともどこにも行ってしまったのでしょう…。」
「赤い髪もローブを羽織って隠していればあまり印象に残らないだろうし…。
それにしてもこの街は広すぎるよな…。」
タケゾウはがっくりと肩を落とす。
アレースは店主に尋ねる。
「あのすいません。赤い髪の二人組を見ませんでしたか?」
「おお。それならさっき来ていたぞ。
あんたと同じような質問をされたわ。」
「本当ですか?!どこに行ったかわかりますか??」
「店を出て右に進んで行ったように見えたが…」
「ありがとうございます!タケゾウ行くです!」
「お、おう!ありがとう店主さん!」
二人は慌てて外に出る。
とりあえず右に進んでみること約十分。
「あ!!姉様!!」
「マルース!全くどこに行っていたのです!心配したのですよ!」
「はぁ〜。姉様。
それはこちらのセリフというやつです。
けれど無事で何よりです。
ところでそちらの男性の方は?」
「初めまして。タケゾウと申します。」
「あ、ご丁寧にありがとうございます。
マルースと言います。姉がお世話になりました。」
「あ、いやこちらこそどういたしまして。」
ぎこちない挨拶を終えたところにもう一人やってきた。
「アレース様…
本当にあなたという人は…」
「フォボス。
こちらの男性、タケゾウさんが姉様を助けてくださったようです。」
「これは大変申し訳ありませんでした。
私はフォボス。この度のアレース様の護衛を任された者です。
ご迷惑をお掛け致しました。」
「もう二人とも!わたくしが迷惑をかけた前提で話すのは失礼です!」
拗ねてしまったアレース。
「まあまあ。
とりあえず再開できて良かったじゃんか。
みんなと合流しよう。」
アレース一行とタケゾウはベル爺たちと合流することにした。
「おーい。
二人とも。
見つかったぞー。」
宿を聞き込みして回っていた二人とも無事合流し
自己紹介なんかをしながら城を目指す。
「皆様。
この度は大変申し訳ありませんでした。
お礼は必ず…」
「いいのじゃよ。
困った時はお互い様じゃ。」
「そうそう。
アレースといるの楽しかったし気にしないで。
しかしアレースにこんな可愛い妹がいるなんてね。
お姉さんににて美人ね。」
「そ、そんな。
姉様と比べたら私は足元にも及びません。」
「そんなことないだろ。
マルースは充分可愛いじゃんか。
なあベル爺。」
マルースは少し照れた素振りを見せたが、本心で言われていないと思っているのか
すぐに通常の表情に戻す。
『この男は…。』
サクヤは心の中でため息をついた。
マルースはアレースを小さくしたような可愛い子だ。
年齢は12歳にも関わらずしっかりしている。
髪はお団子にしてありとても可愛らしい。
身長は145センチくらいだろうか。
アレースとは違い、少し目が鋭く、愛嬌はあるがどこか冷静な女の子だ。
対してフォボスは30歳。身長は大きく190センチくらいのあるだろうか。
国ではアレースの側近のようなことをしているようで30歳にしてはシワが多い。
苦労が絶えないのだろう。
髪はえんじ色で褐色のいい肌をしている。
「この度は本当にありがとうございました。
何かお礼をさせて頂きたいのですが…。」
「私達にできることでしたら何なりとお申し付けください。」
「ではそうじゃのう…。
このタケゾウという男が今度龍人の国に行くのじゃが
その時困っていたら少し助けてやって欲しい。
良いかのう?」
「それは私からもお願いするわ。
お礼はそれにして欲しい。」
「そうなのですね。
承知致しました。
それとは別に皆様にもお礼は必ずさせて頂きます。」
「そんなに気を使わなくてもいーよ。
あ、フォボスさん。
そっち行ったら飯奢ってくださいよ。
お礼はそれで。」
「お安い御用です。」
「タケゾウずるい。
私も行きたいなー。」
そんな会話をしながら気づけば城に到着した一行。
セバスが一行を迎えに出て来た。
「皆様。
無事合流できたようで何よりです。
お疲れでしょうから先にお部屋にご案内致します。」
一行は部屋に通された。
もちろん一人一部屋である。
「お食事の準備が整いましたら声をかけさせていただきます。
ではごゆっくりおくつろぎください。」
セバスが全員を部屋に送るとベル爺とともに去って行った。
「ふー。」
タケゾウは息を吐きベットにダイブした。
『色々ありすぎて疲れたな。』
そんなことを考えてうとうとしていると
コンコンとノックの音がした。
「へーい。」
ドアを開けるとそこにはマルースが立っていた。
「ん?どしたの?」
「お休み中のところ申し訳ありません。
この度は姉様を助けていただきありがとうございました。」
「いいって。
そんなかしこまらなくていいよ。」
「そうは参りません。
皆様のおかげで姉様に大事がなかったと姉様もおっしゃっていました。
改めてお礼申し上げます。」
「いーのにそんなの。
気にしすぎだよ。
あ、そーだ。
俺、用があって龍人の国に行くんだけどよかったら道中ご一緒してもいいかな?」
「その程度お安いご用です。
差し支えなければそのご用のお手伝いもさせていただきます。」
「お。それはありがたい。
じゃお願いするね。
あとは俺にはかしこまらないで欲しいな。」
「そ、それは出来かねます。
姉様の命の恩人なのですから。」
「それは大げさだよ。
しかし妹がこんなしっかり者になるなんて…
苦労が絶えないんだな。」
「そ、そんなことは…
ただ姉様はどんな人にも平等に接してしまうのでいつの間にかどこかに消えてしまうことが
度々…いえよくある…なんて物じゃなくありまして…。」
「ぷふふ。想像つくわ。
俺も初めて一緒に街を歩いた時すげー大変だった。」
二人が談笑しているとそこにセバスがやってきた。
「マルース様お食事の準備が出来ましたのでどうぞこちらへ。
タケゾウもついてくるといい。
貴様にも仕方なく用意してやったからな。」
「んだよそれ。
ま、ありがたくいただくわ。」
セバスについて行き、大きな部屋に通されるとすでに全員が席についていた。
見たことない顔がルーナ側に四人ほどいる。
政治とかやってそうな固そうな人が二人。
体格も良くがっしりしている人が二人。
恐らくは国の偉い人なのだろうとタケゾウは思った。
「うむ。
皆揃ったようじゃのう。
では食事としようかの。
タケゾウ。
セバスがここの皆にはすでに話しておるからカツラは外しても構わんぞ。
神様ももう平気ですじゃ。」
「おう。わかった。」
タケゾウとサクヤはカツラを外した。
「おお。神様。なんと神々しいことか。」
知らない顔のやつらがザワザワしている。
「さて、ではいただこうかのう。」
食事が始まりアレース一行とルーナ一行は談笑を始めた。
タケゾウとサクヤは邪魔にならないよう黙って食事をしている。
「なんかこうしてみるとあいつらほんとに王と姫なんだな。」
「タケゾウ。それは失礼よ。」
「お前は神に見えないけどな。ぷ。」
「タケゾウ。私がローブを被らず街に出たら大変な騒ぎになるのよ?
まるでアイドルのようにもてはやされるんだからね。」
「全然信じられんわ。」
「く…この男は…
そこまで言うなら明日にでも見せてあげるわ。」
「いーよ別に。
神だろうとなんだろうと俺に取ってサクヤはサクヤだし。」
『んぐぐ…ほんとにこの男は…。』
あまりにイラっとっしたので両側の頬をつねるサクヤ。
「いででで!なにふんだひょ!」
そんな楽しそうな二人を止めに?ルーナが割り込んできた。
「ちょっと二人とも。
一応外交の場なんだからね。」
「「ご、ごめんなさい。」」
「タケゾウ。料理は美味しかった?」
「ああ。すごく美味しかったよ。」
「そ、そう。
それはよかった。
あ、これも美味しいよ?
は、はい。あ〜ん。」
タケゾウにあ〜んを始めたルーナ。
そこにアレース登場。
「タケゾウ。
こちらも美味しいです。
ど、どうぞです。」
アレースも便乗してあ〜んをしてみる。
「な、アレース!何であなたがあ〜んしにくるのよ!」
「面白そうだなと思いまして…。
これは少しドキドキします。
ということでタケゾウ。
あ〜んです。」
「うおほん!!」
セバスが咳払いをする。
「王。
先ほどご自分でここは外交の場だとおっしゃっておりましたね。
立場をわきまえてください。アレース様もですよ。」
「「ご、ごめんなさい(です)」」
怒られる二人。
場の空気が一気に和む。
『あのタケゾウという人…もしや女たらしなのでは…』
マルースは心の中で警戒心を強めるのであった。
そんな和んだ食事が終わりアレース一行は明日の打ち合わせで残るということで
タケゾウとサクヤは部屋に戻る。
「なあサクヤ。」
「何?タケゾウ。」
「サクヤは召喚されて世界を平和にしてくれって言われて最初どう思ったんだ?」
「何、急に?
…最初はこいつ何言ってんだ?みたいな感じかしらね。
普通の高校生に何言ってんの?バカなの?って思ったわ。」
「そりゃそうだよな。
俺も最初みんなが消えて異世界の話聞いた時はアホなのかと思ったしな。
けど現実はこんなだもんな、
ほんとにこんなことあるんだな…。」
「そうね…。
けど私は一人じゃなかったからなんとかなったわ。
タケゾウ…。来たこと後悔してる?」
サクヤは不安そうに聞いた。
「いや。
後悔はしてない。
望んで来たからな。
けど不安がないって言えば嘘になる。
これからみんなと離れて一人で行くってのはさ。
やっぱ不安だよ。
他にも不安なことはあってさ。
だからサクヤはどうだったのかなって思ってさ。
悪かったな変な話して。」
「…。
いいの。もし不安とかそんな話があれば話してね。
いつでも聞くから。」
「わかった。
ありがとな。」
「ううん。いつでも…言ってね。」
サクヤと別れ一人部屋に戻るタケゾウ。
ドアを開けふーと一息吐くと椅子に座る。
『すげー不安…か。
つい弱音吐いたな。
けど一人で考え込むよりはいい。
俺の悪いとこだからな。
不安といえば人族…。
あれ以来大人しいような。
魔族とは敵対してんだよな今…。
うーん…。
戦争になんのかな…。』
タケゾウが考え事ををしていると
「辛そうだな少年。」
聞いたことのある嫌な声がした。
一気に臨戦体制に入り声の方を睨むタケゾウ。
「まあ落ちつきなよ少年。
夢で会った以来だね。」
「てめぇ…また性懲りも無く現れやがって!!」
「落ちつきが本当にないな少年。
せっかく面白い情報を持って来たというのに。」
「情報?
誰がお前の言うことなんて信じるかよ。」
「まあまあ。
聞くだけなら問題ないだろう。」
『ちっ、刀は奴の後ろか…なら制限解除を…』
「無駄だよ。」
「ぐ!」
突如声が後ろから聞こえ刃物のような感触が背中にあった。
「て、てめぇ…。」
「まあ聞きなよ少年。
人族の話だよ。
ここ二、三ヶ月のうちにねどうやら龍人の国に攻め込む予定みたいなんだよ。
君の仲間たちもその作戦に何人か加わるようだよ。
魔王を討伐するのに龍人の国は必要不可欠みたいだからね。
それと小人族のドワーフを仲間に引き入れたみたいだよ。」
「な!?
そんなこと誰が信じるかよ!!」
「信じても信じなくても少年の勝手だよ。
私は面白くなればいいだけだからね。
少年の仲間には結構戦争に乗り気の人がいるみたいだし
その子が来ればいいね少年。
少年が仲間をどう止めるかとても楽しみだよ。
では楽しみにしているよ。」
ふっと気配が消える。
「く、くそ…。また逃げられた…。
いや生かされたのか…。
あのまま背後から攻撃されたら…。
それにしても誰が…。
みんな……。」
タケゾウは椅子に座り考え込んだ。
この情報が仮に正しいとすれば厄介である。
『まずは情報を整理しよう。
月のような形の国の配列は上から
魔族、龍人族、小人族、獣人族、人族、空に天人族、海とその孤島に魚人族という配置。
その小人族と手を結び龍人族まで落ちた場合、魔族がかなり劣勢になる。
魚人族とまで手を結ばれたら完全に孤立しまう。
何としても龍人族の国は守らなければならない。
それに魚人族にも先に手を打っておく必要がある。
あとニ、三ヶ月って言ったなあいつは…。
時間がない…。
あとは…俺が…仲間をどう止めるかか…。
刃を向け合うことになったら俺は…。
あいつは一体何を考えているんだ…。
とりあえずこのことはみんなにすぐ話さないと。』
タケゾウは考えをまとめ、サクヤの部屋に行き、部屋での出来事を話す。
そしてサクヤとタケゾウはアレース、ルーナとベル爺にこのことを話した。
「ふむ。この情報が正しいのであればまずいことになるのう。」
「そうですね。急ぎ国に戻り対策を立てなければなりませんね。」
「そうね。あたしたちもすぐに対策を立てなければならないわね。」
「うむ。双方の国より魚人族に使者を出し状況の説明が必要じゃな。
それと小人族と人族の同行を探る必要がある。」
「そうね。すぐにセバスにお願いするわ。」
「わたくしも急ぎ国に知らせます。
フォボスに先に国に戻ってもらいます。」
「では各自行動を始めるとするかのう。」
一斉に行動を開始した三人。
魔族側は早急に会議を始めた。
「フォボス。」
「はい。ここに。」
「話は聞いていたですね。」
「はい。」
「では急ぎ国に戻り父にこの話をしてください。」
「承知致しました。」
フォボスは風のように消えていった。
「姉様。私はどうしますか?」
「ルーナ達の会議が終わり次第対応をどのようにするか決めてから
わたくしたちも戻ります。
と言ってももう夜になりました。
マルースはしっかりと疲れをとりなさい。」
「姉様。このような時にそんなことはしていられません。」
「マルース。このような時だからこそです。
休めるうちに休みなさい。これは命令ですよ。」
「う…。承知致しました。」
「ということですタケゾウ。
遅くても明日のうちには出発することになりそうです。
一緒に来てくれるのなら準備をしておいて欲しいです。」
「わかった。
準備をしておくよ。」
タケゾウは再び部屋に戻った。
「色々ありすぎだ…。」
ボソっと声を出すとベットダイブをしたタケゾウ。
『今日は何かほんとに色々ありすぎだな…。
濃すぎる。』
目を閉じ考えを巡らせる。
「うし!」
掛け声とともに立ち上がり部屋を出るタケゾウ。
とりあえず素振りでもと思い開けたところを探す。
歩くこと五分。
『ほんと無駄に広い…。
何キロあるんだこの廊下…。
お、突き当たりなんだろ?』
ようやく廊下が終わりその先は中庭になっていた。
「ようやく見つけた。
これなら部屋でやればよかったかな…。
ん?誰かいる…。
やべ!カツラ忘れた!」
咄嗟に廊下の突き当たりの手すりのある塀に身を隠す。
そもそも今は限界体制なのだから見回りがいるのは当然である。
そこをノコノコよく誰にも会わなかったものである。
『ぐ…見つかったら騒ぎになっちまう…。』
「こっちです。早く。」
別の通路から小さい手が出て手招きしている。
その廊下に身をかがめ向かう。
『あぶねー。』
間一髪タケゾウは見つからなかった。
その廊下を呼んでくれた者と走る。
走って逃げ客間のある場所まで戻る。
「危なかったですね。」
「はぁはぁ…ほんと危なかった。ありがとうマルース。」
その小さい手の主はマルースだった。
「ところで何をしてたんだ?
探検でもしてたの?」
「子供扱いしないでください。
姉様に休めと言われたのですがどうも寝付ける気がしなくて…。
皆さんが頑張っている時に一人だけ寝ているのは気が引けるというか…。
なので少し体を動かしてから寝ようと思ったので中庭に向かうとタケゾウさんが
塀に張り付いていたのでお呼びしました。」
「いやーほんと助かったよ。
一時はどうなることかと思ったし。」
歩きながら話す二人。
「ところで龍神の国までどうやって帰るんだ?」
「一応飛んで帰るとは思いますがタケゾウさんもいるのでそこは要相談となると
思います。
タケゾウさんは飛べませんよね?」
「は、はい…。
俺、お荷物になっちまうな…。」
「そうですね。
今は早く戻り対策を立てなければならない状況ですのではっきり言えばそうなります。」
タケゾウに厳しい口調となるマルース。
「う…。
ごめんな…。
俺別で……げ!見回りが!」
タケゾウとマルースは咄嗟に部屋に入る。
「危なかったー。」
「タ、タケゾウっさん…。
手を離してい、いただけますか?」
「あ、ごめん。
そもそもマルースは隠れる必要ないのに…。
手、痛かったか?」
「い、いえ…。大丈夫です…。」
タケゾウは咄嗟にマルースの手を握りドアを開け部屋に入った。
マルースは部屋が暗く表情が見えないがどうやら照れているようだ。
マルースは先の会話でタケゾウとアレースを別で行動させようとしていた。
タケゾウに少しキツく言えば一緒に行動するのを諦めるのではと思ったからだ。
おそらく女たらしのこの男をアレースに近づけたくないという妹心だったのだろう。
うまく行きかけたところでまさかの反撃を受けたマルースだった。
とりあえず二人は見回りをやり過ごすため部屋で息を潜める。
タケゾウはドアに耳を当て、マルースはタケゾウと少し距離をおいて立っている。
足音が部屋に近ずく。
『頼む…バレていませんように……。』
足音が部屋の前で止まる。
『げ、ヤバイ…。』
身振りで足が止まったことを告げるタケゾウ。
ドアノブが回る。
『まずいまずいまずい!』
急ぎマルースとともにクローゼットに隠れる。
「タ、タ、タケゾウっさん!
なんで二人ともクローゼットなんですか!」
「い、急いでたんだ。
シー!入ってくる!」
ガチャとドアが開く。
『こ、こ、こんな近くにお、お、男の人が!
ああダメ…き、き、緊張する!
…あれこの服は…。』
「そうね。あたしもそれがいいと思う。」
「では明日の朝にマルースとタケゾウに話すです。」
部屋に来たのはどうやら二人のようだ。
タケゾウのよく知る声が聞こえる。
『ここ…もしかして…もしかするのか…
そんなアニメや漫画じゃあるまいし、このままクローゼット開けられてバレるなんてないよな。
うん。ないない。
あー二人とも早く部屋から出てかないかなー。』
現実から逃げ始めたタケゾウ。
バレた場合の言い訳も思いつかない。
部屋が光晶石により明るくなる。
おそらくこの光晶石を廊下で見たのだろう。
『あー頼む。神様サクヤ様…。
どうか奇跡を…。』
『あーダメ…心臓が爆発しそう。』
二人の心臓は爆発寸前である。
そこにコンコンとドアをノックする音が聞こえる。
「アレース。
まだ起きている?」
「はいです。
今開けますね。」
神様サクヤ様の登場である。
『ちっがーう!!
そういうことじゃないですよ神様!
あーベル爺…。頼むベル爺来てくれ!!』
ベル爺に念を送る。
その途端、
星になったベル爺が頭をよぎる…。
『あーこれあかんやつ…。』
タケゾウの意識が一瞬薄れよろめいてしまう。
ガタン!とクローゼットから音がなる。
『うわ!何してんだ俺!』
時すでに遅し。
「クローゼットで何か音がしたです。
倒れるような物入れたでしょうか?」
「変ね…私が見るわ。」
「サクヤさんは下がっていてください。
何者かが潜んでいた場合危険です。
皆さん攻撃の体制をとっておいてください。」
「「わかった(です)」」
『あーヤバイ。
これちょーヤバくね。』
もはや人格すら危険な領域である。
ガチャっとクローゼットが開く。
クローゼットの中の光景を見た三人。
幼気な可愛い少女が顔を真っ赤にし男にしがみついていた。
「あー姉様。もうダメですー。」
少女はクローゼットからフラフラと出てアレースの腕の中で気を失う。
お風呂でのぼせてしまったような表情である。
「あ、、、みんな今日は色々お疲れ様。
疲れただろうから早く休むんだぞ。」
クローゼットからよろよろと男が出る。
そのままドアに向かい脱出を試みるも…。
「「「タ・ケ・ゾ・ウ」」」
ビクっとした男はゆっくりとそれはもうぎこちないくらいゆっくりと後ろを振り返る。
そこにあった光景は
夜叉、魔王、龍が睨んでいた。
恐らくこの世が終わる。
そんなことを男に悟らせるのには充分な光景だった。
「この緊急時に何をしているの?
ふざけているの?」
「あ、いやこれには深い深い訳が…
「「「問答無用!!!」」」
「問答じまびょーーーー!!」
この夜、男は星になった。
『ほんとに!』
『ほんっっとに!』
『はぁぁぁぁ…ほんと』
「「「あの男はーーー!!!」」」
夜叉と魔王と龍の怒りの咆哮がこだましたのであった。
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おまけ
「マルース!しっかりして」
「アレース。今濡れた布持ってくるから!」
「ルーナ。これ使って!」
濡れた布をおでこに乗せると瞬く間に水分が蒸発。
何度か繰り返すうちにようやく体温は下がったようでマルースが気がつく。
「あれ?ここは…。」
「もう大丈夫です。あの男は星にしたです。
でもどうして二人でクローゼットになんて入っていたのです?」
「あの男が復活してもまた星に返すから正直に話していいよマルース。」
「えっと…タケゾウさんと廊下で会って…そして…手、手を掴まれて
部屋に連れ込まれて…その後……。」
マルースは起きた出来事を脳内再生した。
初めて男性と手を繋ぎ強引にクローゼットに入り見上げるととても近くにタケゾウがいた。
立っていられないくらい心臓がうるさくて服を掴んでいる自分。
途端。
「ふぁぁあ!ダメですぅー。」
ボフンっと白い煙がマルースから出てまた目を回して気絶してしまう。
「マルース!しっかりするです!」
「ルーナ!布濡らしておでこに乗せてあげて!」
「わ、わかりました!」
『『『部屋に連れ込まれての後……。
気、気になる……。』』』
「い、一応落ち着いたようです。」
マルースの顔から赤みが取れスヤスヤと寝息を立てている。
「け、けど一体何をしてたのかな。」
「わからないです。部屋に連れ込まれた後で気絶してしまったので…。」
「それにしてもこんな幼い子にまで手を出すとは…タケゾウめ…。」
「ほんとです。あの天然女たらしなんとかならないですかね。」
「そうね…。あたしもそこはタケゾウの悪いとこだと思う。 」
「なんとか直すしかないね。次の被害者が出る前に…。」
「「「はぁああぁあああ」」」
「「「ほんとあの男は……。」」」
星になった男のせいで少女は初めてのトキメキ?を経験してしまったのであった。
そして女たちはため息とともに残念天然系女たらしの被害者を減らすことを
心に誓い合うのであった。
異世界に来てからタケゾウのあだ名はどんどん不本意なほうへ進化を遂げるのであった。
読んでいただきありがとうございます。毎日投稿できたらと思っております。




