心配性の笑わない男
翌朝。
全員でルーナの部屋で朝食を取ることにした。
ベル爺も一緒だ。
「タケゾウ。
アレースが同行を許してくれたから。
これでとりあえず旅の道中は安心だね。」
「ほんとかアレース。助かるよ。
二人で頼んでくれたんだよな?
二人ともありがとう。」
「よかったのうタケゾウ。
しかし、まさかタケゾウたちが来ているとはのう。
しかもアレース様を味方にするとはタケゾウやりおるわい。
まさかとは思うがもう口説き落……サドゥンス!!」
久しぶりに血に染まるじじい。
「タケゾウはほんと人たらしなんだね。」
「サクヤさんもそう思います?
やっぱりそうですよね。」
「私のところに来た時にルーナとベル爺を早くも仲間にしていたもんね。」
「そうなんです。ほんと何事にも真剣で変に真面目なところがいいとこではありますけど
その思ったことそのまま言っちゃうとこがもう…。」
「確かにそうですね。
わたくしにも素直に思ったこと言ってましたし…。」
「「「天性の人たらし。」」」
「いやいやいや。
みなさんハモることじゃないですよ。
昨日の今日でこんなに仲良くなれてよかったです。
いや違う。
共通の敵見つけたみたいな感じか。
誰が敵やねん。」
ノリツッコミを会得したタケゾウであった。
昨晩、ルーナとサクヤが正式にアレースにタケゾウの同行をお願いし、アレースは快諾してくれたため
食事を済ませた後、タケゾウはアレースとともに龍人族の国に行くため荷造りをすることにした。
が、街での買い物はさすがに危険かと考えていると
「タケゾウ。
旅の荷造りをするんでしょ?
あたしも手伝うよ!」
「ルーナが行ったら目立ってしまうんじゃない?
とはいえ私も今は隠れていないと騒動になりかねないし…
アレースと行った方がいいんじゃない?」
「確かにそうですね。
わたくしとなら特に問題もないですね。
タケゾウ。一緒に行きましょう。」
「待って。
きっとアレースじゃ時間がかかりすぎるわ。
あたしもローブをかぶって目立たなくしていけば大丈夫。」
「そんなこと言ったら私も目立たなくしていれば大丈夫じゃない。
やっぱりタケゾウ。私が行くわ。」
「わたくしも今日はタケゾウのためにしっかりと断りながら行くです。
とてもタケゾウは面白そうなので話もしてみたいです。
タケゾウ。
わたくしと行くです。」
「「「タケゾウ!」」」
ふむ。と腕を組んで考えるタケゾウ。
誰か一人と行けば後でめんどくさいことになるような気もするが大所帯で行けば目立ってしまう。
「ベル爺さえ良ければベル爺と行こうかな?」
「そうじゃのう。男の買い物は男同士の方が…」
「「「タケゾウ!!!」」」
こりゃダメだと額に手を当てるタケゾウ。
「うーん。
じゃみんなで行くか、じゃんけんとかで決めるか?」
「じゃんけんとはなんです?」
「じゃんけんっていうのはこうやって…。」
サクヤがアレースたちに説明する。
「いいわよ。じゃんけんで決めようじゃない。」
「面白そうですね。やりましょうです。」
「私もいいわよ。
じゃ行くよ。
最初はグー、じゃんけん……」
『タケゾウと二人で……負けたくない!!』
『タケゾウ…面白そうです。行きたいです!』
『この二人に任せたら…私が行かなきゃ!』
…。
「じゃんけんは初めてしましたが中々面白い物ですね。」
「あいこが続くと白熱するよな。
さて、じゃみんな行くか。」
結局全員で行くことになった。
じゃんけんはあいこが続き全く決着がつかなかった。
フェイントにつぐフェイントの応酬。
動体視力が良すぎるため中々あいこが終わらず
また三人でじゃんけんをしたのが原因だったのではないかと思う。
そんなこんなでベル爺も含め全員で買い物に出かけた。
「タケゾウ。
何か欲しいものはある?」
ルーナが楽しそうに話かける。
「んー?
そうだな。
薬なんてのがあれば欲しいな。
あとは鞄か。」
「確かにそれは全部必要ね。
じゃまずは鞄を買いに行きましょう!」
タケゾウの手を引っ張りルーナが小走りに進む。
メインの通りに出るとたくさんの店が立ち並んでおり露天のようなものを店先に出している。
「おいタケゾウ。
この店なんてどうじゃろう?
結構品数も豊富で丈夫なものが多いぞい。」
「あ…ベル爺…大切なことを忘れていた。
俺、金持ってないわ。」
「そんなこと知っとるわい。
貸しといてやるから好きなのを選べ。」
「ベル爺。
すまん。助かる。
必ず返す。」
「じゃまずはしっかりと装備を整えて
必ず生きて帰って来るんじゃぞ。」
「ベル爺…。」
内心号泣のタケゾウ。
そこにルーナが来た。
「ねぇねぇタケゾウ!
こんな鞄がいいんじゃない?」
ルーナは斜めがけの少し大きめな白っぽい革の鞄を持って来た。
「うーん。
タケゾウ。わたくしはこっちがいいと思うのですがどうです?」
アレースはリュックのような背負うタイプのカーキ色の大きな布製の鞄を持って来た。
「タケゾウ。
これなんてどう?
鞄とは少し違うけど便利そうよ。」
サクヤはベルトにたくさんのポーチのようなものがついた茶色の革製の物を持って来た。
「うーん。どれも便利そうだな。」
「ベルトの小さい小分け鞄がいいじゃろう。
あとの鞄は背負うものがいいんじゃないかの?
仮に戦闘になった時に背後を守れるし
両腕も開く。
もう少し小さいのが好ましいの。」
「えーー。
タケゾウに似合うと思うんだけどなこの鞄。」
ルーナが頬を膨らまして拗ねる。
「なるほどです。
探してきます。」
アレースがもう少し小さい物を探しに店内に戻る。
ルーナも慌てて後を追う。
「ふ。
ここは私の勝ちね。」
サクヤがほくそ笑む。
その表情にはしてやったりと書いているようだ。
そこに二人が戻ってくる。
「今回は二人で選んだんだけどどうかなタケゾウ?」
「お、いいじゃん。
これにするよ。
ありがとう二人とも。」
そしてサクヤを見る二人。
三人の視線の間には何かがスパークしている。
そんな三人はさておき
小さい小分け用ベルトに衣類が三日から四日分くらい入りそうな革製の茶色のリュック型鞄を購入した。
「次は薬に服かの?
せっかく人数がおるしワシは薬を買って来るわい。
服はルーナたちに任せるぞ。」
薬はベル爺に任せ
タケゾウ一行は洋服があるお店に入る。
「タケゾウ!これなんてどう?」
「タケゾウ。わたくしはこれが良いと思うです!」
「私はこれがいいと思うわ。どう?」
三人が思い思いの服と靴を持ってくる。
『うーん。これは一人のを選べばめんどくさいことになりそうだな。』
きっと一人のを選べば何か起こる。
そんな予感がしたタケゾウは
「じゃ上はこれで下はこれ。靴はこれにするかな。」
うまいこと間を取った。
上はルーナが持って来た黒のラグランスリーブロングTシャツ風の茶色の肘当て付きの物。
下はアレースが持って来た黒の膝当て付きのパンツ。
靴はサクヤが持って来た茶色のブーツ。
無難コーデの出来上がり。
この色が好きなんだよねの言い訳付きである。
「「「黒と茶色ばっかり」」」
みんな差し色のことや動きやすさなどを考え持って来たのに台無しである。
「こういう色合いが好きなんだよね。
選んでくれてありがとう。」
なんとかうまいことやり過ごし同じものを数日分購入した。
そこにベル爺が戻ってきた。
「薬は買って来たぞい。
買い物が終わったなら飯にでもせんか?」
「「「賛成」」」
「いいとは思うんだが…
俺たち結構目立っているし
買い物も終わったから街を離れないか?」
「確かに。
じゃ一旦あたしとタケゾウは街を出ましょう。」
「待ってルーナ。
ルーナは一旦城に戻らなきゃダメでしょ。」
サクヤが冷静にいう。
「そうです。
ルーナはちゃんと城に戻らなきゃいけないです。」
アレースも冷静に言う。
「やだ。
タケゾウとご飯食べたいもん…。」
昨日から見た目の年齢通りの素直な子になっているルーナ。
魔王としての立ち振る舞いなど皆無である。
そこに空から一つの影が降りてきた。
「あ…ヤバイ…。」
ルーナは咄嗟にタケゾウの後ろに隠れる。
「王。
時間です。
早く城にお戻りください。」
あの出来る使用人だ。
「セ、セバス!
あたしはもう少し皆で買い物をしなければなりません。
仕事はセバスに任せます。」
「王。
そのようなことはできかねます。
ただでさえここ二ヶ月、城を抜け出しては聖域に通っていたので
仕事が山のように溜まっております。
早く城に戻りますよ。」
「うぅぅ…
すぐ終わらせてくるからみんな待ってて。」
ルーナは城に飛んで行った。
セバスはタケゾウを少し見た後、城に戻っていった。
「最後…あのセバスって人に見られていたけど…
バレたかな?」
「多分最初からバレておるぞ?」
「え?!
そうなの?!」
「多分じゃがの。
セバスに嘘や誤魔化しの類は基本通用せん。」
「じゃなんで城に入れてくれたんだろう…。」
「そりゃ神様と一緒だからじゃ。
自分たちの信仰する神が連れてきた者を疑うアホはおらん。
それにアレースとも一緒だからのう。」
「なるほどな。
ほんと周りに助けてもらってばかりだな。」
「それがタケゾウのいいとこじゃて。
セバスも一応自分の眼で確認したようじゃし。」
「ちなみにあの人強いのか?」
「ワシより強いぞ?」
「「うそ?!!」」
アレースとタケゾウは驚いた。
サクヤはどうやら知っているようだ。
「おそらくはルーナより強い。
元々次の魔王はあやつがやるはずじゃったが
『ルーナ様ほど私は強くありません』とスッパリ辞退しよった。
『王になるのはルーナ様以外ない』と他のものを説得したのもセバスじゃ。
それでまだ若いルーナが王となったのじゃ。」
「まあセバスは昔からそうだもんね。
子供の頃からあんな感じだし。」
「そうですのう。
昔から堅物のような責任感を背負って生まれたような子供のでしたのう。」
「そうそう。何やってもクスっとも笑わないクソガキだったよね。
思い出すと面白い…ぷぷ。」
「そんな責任感の塊みたいな人がなんで歳の若いルーナを王にしたのかな?」
「それはきっとルーナの父に何かあったらルーナを頼むと言われておったからじゃろう。
会談の場にセバスは行かなかったからなおの事
その約束だけは違えないと誓っておるんじゃろう。
ルーナが王になれば大っぴらに迫害や殺害とはならんじゃろうしの。」
「ああ。なるほど。」
タケゾウは納得しアレースも頷いていた。
「セバスは…その怒らななかったのかな?
ルーナが王やめるって言ったときにさ…」
「それがのう…それはもちろんダメだとセバスにも軍の隊長達にも政治をまとめている者達にも言われた
のじゃ。
そこまでは、まあありきたりな展開だったのじゃがその後、セバスがワシのところに来てのう。
なぜこんなことになったのかと聞かれたのでな。
ある人物について行きたいがために辞めると言っておると答えたのじゃ。
そしたらセバスははじめキョトンとしておったのじゃが、その後盛大に笑いよった。
あの男があんなに笑うのをワシは初めて見たわい。」
「ええ?!
セバスがそんな笑ったの?!
見たかったー。」
「そうなんですじゃ。
ワシも驚きましたが…きっと娘のような子の成長が嬉しかったのではないかと
ワシは思っておりますじゃ。」
「そうなのかもね…。
ルーナは確かにあまり感情を表に出すタイプじゃないものね。」
「そうです。
親しいわたくしにもそこまで感情豊かに接してくれることはありませんでした。」
「あの子は生まれた頃より母親たちに忌み嫌われておったからのう…。
そのあの子があれだけ自分を押し通そうとするのがやはりワシも嬉しくはある。
セバスもきっと同じ考えではないかと思うのじゃ。」
「へぇ。
ルーナってそんなに感情出さない人だったのか。
俺と会った時はもう普通の女の子だったけど…
何がルーナをそこまで変えたんだろうな。」
『『『お前だ、お・ま・え!!!』』』
三人は心の中で思い切りツッコミを入れた。
そんなこんなで四人はとりあえず聖域に帰ることにした。
「うわーたけーー!」
ベル爺はタケゾウを運んでいる。
サクヤはアレースが運んでいる。
「確かにこれならすぐ聖域に着きそうだな。」
「そうじゃのう。ただゆっくり飛んでおるからまだ少しかかるぞ。」
「え?なんだって?」
タケゾウには風切り音であまりしっかり聞こえていない。
「口閉じとれ。舌噛むぞ!」
「え?なんて…アイタっ!!」
「言わんこっちゃない。」
そんなこんなで聖域到着。
「ここが聖域なんですね。
のどかなところです。」
「そういえばアレースの国には聖域はあるのか?」
「ありますよ。
神様が住んでいます。
ただ…あれを聖域と呼べるかどうか…。」
「ん?それはどういう…?」
「二人ともご飯作るの手伝ってー。」
サクヤが二人に声をかける。
「さて今日は何が良いかのう。
保存食はあるがたまには魚でも捕まえに行くかのう。」
「お、釣りでもするのか?
俺も行くよ!」
「じゃタケゾウとワシで行くかの。」
「ではわたくしたちは他の料理をしています。」
「二人とも気を付けてね。」
「はいよ!」
タケゾウが森に走り出す。
ベル爺も走りながらついてくる。
「タケゾウ。遅いぞ。もっと速く走らんか!」
「くっ!速い!」
速度を上げるタケゾウ。
ベル爺も速度を上げる。
「中々速くなったのう。
お、間も無く川じゃ。
気配を消せ。」
「わかった。」
山での二ヶ月、タケゾウの狩りもようやく板についてきた。
「うむ。珍しくでかいのがおるのう。」
透き通る川は美しく少し深い。
その川に体長三メートル程の影が動いている。
「ベル爺。あれはデカすぎじゃないか?」
「ふむ。」
そう言うと川に飛び込むベル爺。
「おい!っくそ!」
タケゾウも続き川に飛び込む。
『やっぱでけーな!』
すでに川の中ではベル爺と巨大魚が戦闘を始めていた。
さすがのベル爺でも水の中ではいつものような動きはできないようだ。
と思った途端。
『ベル爺!!』
なんとベル爺が魚に飲まれてしまった。
『くっ!この!』
タケゾウは一瞬で川を出て岸に上がり刀を抜いた。
刀に魔力を込め飛び上がり巨大魚目掛けて突きを放つ。
その突きは見事巨大魚に刺さるがそのまま川の中に引きずり込まれる。
『くっ!!
ベル爺を吐き出せ!
この!!』
タケゾウは刺さった刀を捻ると巨大魚がさらに暴れ出す。
その反動で刀が抜けてしまう。
そしてタケゾウに向かって巨大魚が突進してきた。
タケゾウも構え魔力を込める。
開いた口に目掛け横一線。
巨大魚はスパっと半分に切れた。
中からベル爺が出てくる。
びっくりするほど飄々として魚の半分を持って浮上して行く。
タケゾウも魚の半分を持って浮上して行く。
「ぷはっ!
おいベル爺!まさかわざと飲まれたな?!」
「そうじゃ。
タケゾウならなんとかなると思ったからの。
見事に勝ったのう。」
「あ、ああ。
まあ刀に助けてもらったようなもんだ。」
「それでも良い。
助けてもらうことはいいことじゃ。
はははははは!
さてこの魚を運ぶとしよう。」
ベル爺は魚を手に掴むと飛び上がった。
「頂きます。
さてと…ぐ!…結構…重い!」
タケゾウは魚に手を合わせた後、肩に乗せ走り始める。
「ふう。
二人とも帰ったよ。」
そこではすでにほぼご飯の準備ができていた。
ベル爺は先に戻り魚をさばいて調理していたようだ。
「タケゾウ遅かったのう。
どれその魚はワシがさばいとくからみなは先に飯にしていてくだされ。」
「じゃ先にいただくね。」
「ありがとうございます 。」
「「「いただきまーす。」」」
三人は先に食べ始めた。
「ん!!
これはうまいな!少しピリっとするけど癖になる味だな。」
「ふふ。
これはですね。
ヨンラヤに伝わる調味料を使ったのです。
お口にあってよかったです。」
「ほんとだ。なんか癖になるね。
ついつい食べたくなる。」
それはあの巨大魚の身と緑のシャキシャキ食感の野菜を炒めたものだったのだが
その上に振りかけられているオレンジの粉がこの味の決め手のようだ。
そこにベル爺が戻ってくる。
「ふむ。
これはうまいのう。
魚の淡白な味と野菜の食感に合わせて良い隠し味になっておる。」
「ところで龍人の国、ヨンヤラはどんなとこなんだ?」
「素晴らしいところです。
人が皆暖かく、自然が豊かで料理も美味しくてあとは神様が活発な方でよく大会というのをやります。」
「それは面白そうだな。」
「あー。ニチカそういうの好きだもんね。」
「へぇ。活発な神様なんだなきっと。
アレースさえよければ暇なときにでも国を案内してくれよ。」
「もちろんです。」
「あーでも、 一国の姫にそんなことさせるわけにはいかないか。」
「いえ、タケゾウ達には城に連れて行ってもらった恩があります。
その程度のことはさせて頂きます。」
そんな会話をしていると
「失礼致します。」
とまさかの客人が来た。
「おおセバス。
お前も飯食いたくなったのか?」
「ベルス様。
ご冗談を。
ルーナ様がどうしても行きたいと言うのでここで仕事をするという条件で参りました。」
ドサっという音とともに鞄を置くセバス。
「みんなただいまー。」
疲れ果てたルーナが到着した。
「ねぇセバス?
もう帰っても構わないのよ?」
「いえ。
私も王の書類に目を通す必要がありますので。
ご一緒します。」
「うぅうぅ。
せめてご飯くらいは食べてもいいかしら?」
「それは構いません。
しっかり食べて、すぐ仕事に入りましょう。」
「うぅううぅう。
鬼!悪魔!。」
「魔族ですので。」
セバスとルーナがショートコントをしたあとルーナはすぐご飯を食べ始めたがすぐさまセバスに
『もう充分ですね』と腕を引っ張られ奥の部屋に連れてかれた。
もぐもぐしながら涙目で引きずられていったルーナ。
一同は可哀想にと心で呟いた。
「さて準備もある程度終わったし
アレース。
いつ頃国に戻る予定なんだ?」
「一応わたくしも公務で来ておりますのであと三日程はこちらにいる予定です。
それとわたくしと一緒に来た者も探さなくてはなりません。」
「なるほど。
その一緒に来た人探すの手伝うよ。」
「そうね。
探すのか探されてるのかは置いておいて私も手伝うわ。」
「神様が行くのであればワシも行くかのう。」
「ありがとうございますみなさん。
わたくしどうしても普通に道を進めないので…」
「あれじゃね。
けど私はそこがアレースのいいとこだと思うよ。」
「サクヤ。
ありがとうです。」
『なんかほんと仲良くなったなこいつら』
心の中で思うタケゾウだった。
「じゃ夕方くらいに戻ろう。
日があると俺とサクヤは目立つからな。」
三人は頷いた。
タケゾウは夕方まで素振りをすることにした。
ベル爺には程々にと忠告をされたので瞑想を挟みつつ素振りというローテーションで時間を過ごす。
そこにセバスが来た。
「あ、ど、どうも。」
タケゾウが緊張気味に挨拶をする。
「失礼致します。
私はセバスと申します。
あなた様は見たところ人族のようですが…」
「俺はタケゾウ。
異世界人です。
ここにはサク…月の神に召喚されて来ました。」
「そうですか。
もしよろしければ手合わせなどいかがでしょうか?」
「え?いいですけど…」
「では参ります。」
突如この世のものとは思えない程の殺意がタケゾウに向けられる。
たまらずタケゾウは後ろに目一杯飛ぶ。
「遅い。」
先に動いたはずのタケゾウの頭上にはセバスが先回りしている。
「なっ!!がは!!」
ものすごい轟音と共にタケゾウが地面に一直線に吹き飛ぶ。
地面は陥没しタケゾウがめり込む。
「やばい…再生…」
「おい。待ってやるから早く立て。」
口調も人相もさっきとは別人のセバス。
憎悪というのが一番しっくりくるようなそんな表情だ。
「く…手合わせなんて気は無いみたいだな。」
「ん?この程度防げないとは思いませんでしたので。
弱すぎて話になりません。」
タケゾウは唇を噛み締める。
『制限解除』
迷わず解除を使い刀を抜き魔力を込める。
「行くぞ!」
タケゾウが間合いを詰めると同時に斬撃を放つ。
が、そこにセバスはいなかった。
途端に背中を激痛が襲う。
タケゾウは吹っ飛んでしまう。
地面に叩きつけられそのままピンポン球のように跳ねて木を倒しながら森に入る。
「ぐ…強…い…。」
再生を使い傷を治す。
なんとか立てるくらいに再生し森を出る。
そこにはセバスが立っていた。
「どうしました?こんなものなのですか?
この程度で我らが王を連れ去ろうとしているのですか?
…。
おい。
聞こえているだろう。
答えろ!!!」
禍々しさが増した殺意がタケゾウを襲う。
「ぐ……。」
『そうか…この人…ルーナが心配なのか…。』
どんな言葉を発してもおそらくこの人は納得しないだろうと思ったタケゾウ。
この勝負に勝つしかこの人は納得しないだろうと。
「おい…。」
「なんだ?」
「ルーナが…心配なら…うぅ…そう言えば…っしょ!いいんじゃねーか?」
タケゾウが立ち上がりつつ言った。
「お前のようなやつがわかった風に口を聞くな。
お前が強ければ少しは考えられたかもしれないがお前は弱い。
話にならんな。」
「そうか。
じゃここで俺が強いと証明すればいいんだな?」
「くふふ。
できるものならしてみろ。
せいぜい死んでくれるなよ?」
タケゾウとセバスが一気に間合いを詰める。
激突。
ものすごい衝撃と共に二人とも後ろに吹っ飛ぶ。
が、セバスがいち早く体制を立て直しタケゾウに襲いかかる。
タケゾウも遅れて体制を立て直し迎撃に移る。
「おら!」
タケゾウの斬撃。
なんなくかわされ手刀でタケゾウの腕を折るセバス。
「ぐが!」
たまらず刀を落とすタケゾウ。
後退し、すぐさま再生で折れた骨を治すがすでにセバスが間合いを詰めている。
腹に強烈な一撃をもらいまたも後ろに吹っ飛んでいく。
岩にめりこみ止まったタケゾウ。
ゆっくりとタケゾウの元に向かうセバス。
『あ、ああぁ。
こりゃ死ぬな。
けど一発くらい入れたい…な。
それにルーナのためにも少しは力を………。』
自然と瞑想を始めるタケゾウ。
素早く体が治って行く。
「んん?
これはどういう??ことですか??」
タケゾウの元に着いたセバス。
タケゾウの体からは具現化するほどの魔力が出ており魔力がタケゾウを覆っている。
『んん?すごい魔力?ですか…ね。
体から溢れて…いや集まってきている?
体内に入っていっているようにも見えますね。
気を付けなければ…』
『あれ?もう体治ったな…なんか軽いし。
まだ諦めちゃダメだな。』
「んじゃま…
行くぞ!!」
『制限解除』
途端に体の外に具現化するほどあった魔力はタケゾウの体に入り爆発的な力を産む。
一瞬で間合いを詰めてセバスの腹に一撃。
「何!?
ぐは!!」
たまらずセバスは後ろに飛び退く。
そこにタケゾウがさらに間合いを詰める。
「ぐ!舐めるな小僧が!!」
超近距離戦闘。
殴り合いである。
『お、おかしい!さっきとは別人のようだ!』
『ぐ!体が軋む!けどまだ上がる!けどまだイケる!!!!』
さらに制限解除を行い、ギアを上げれるだけ上げ
速度を増したタケゾウの拳がセバスの顔にクリーンヒットする。
「グハっ!!!!」
セバスは吹っ飛ばされてしまい、家の方まで飛んで行く。
体制を立て直して足と手を地面に突き立て止まる。
「ちょ、ちょっと!!何してるの二人とも!!!」
ルーナが気づき家から出る。
他の皆もルーナのあとに出てきた。
「王、これには…。」
その瞬間セバスの顔は地面にめり込む。
タケゾウが飛び蹴りをしたのである。
「ざまあ!!」
「ぐ!!卑怯な!!!」
「戦いの最中気を抜いたのはお前だろ?」
「ぐ………。
はあ。確かにお前の言う通りだ。
俺の負けだ。」
「くはは。
俺の勝ちだな……。」
バタンっとタケゾウは倒れた。
「タケゾウ!!!」
「「タケゾウ!!!」」
「しっかりしてタケゾウ!」
タケゾウの全身は今まで見たことのないレベルで壊れていた。
「ベル爺ちゃん!サクヤさん!手伝だって!!」
「任せい!!」
「わかってる!!」
三人で一斉に再生をかける。
瞬く間に治っていくがそれでも五分程はかかった。
ルーナがセバスに近づく。
「説明しなさいセバス。
これは一体どういうこと!!」
憤怒。
ルーナは今にもセバスを殺しそうな勢いでセバスに迫った。
「これは私がタケゾウ様に一方的に攻撃を仕掛けたことから始まりました。
処分は如何様にもお受けいたします。」
「そう。
わかった。」
ルーナが手を振りかぶる。
その手には異常な程の魔力が込められているのがわかる。
「ま、待て…ルーナ…。」
「タ、タケゾウ!」
「気がつきよったのう。」
アレースとサクヤに起こしてもらい立ち上がるタケゾウ。
「待てって。
俺はセバスと手合わせしていただけだ。
セバスも何で嘘付くかな…。
そもそもこの手合わせが白熱したのはルーナのせいだぞ。
セバスのせいでもあるか。
セバスはルーナが心配なんだと。
どこにも行かないでルーナ様ーって泣いてたぞ。」
「き、貴様!作り話などしよって!!」
「あ、あたしのせい…?」
「そうだぞルーナ。
ルーナがいきなりいなくなったら寂しいって人がいるんだからそいつらの話も聞いてやれ。
セバスも素直にやだーーって言えばいーだろ。
ちゃんと話さないと後悔するぞ。」
「き、貴様…。」
「セバス?どういうこと?」
「王、いえルーナ様…心配しているのは本当ですがあの様な言い方はしていない…」
「セバスごめん!」
「ルーナ様…。」
「あたしどうしても行きたくてわがまま言って。
まさかそのことでこんなことになるなんて。
けどセバス。
こんなに心配してくれてありがとう。」
「勿体無いお言葉。
私のただの心配性が招いたものですので気にな…」
「あのな…。
心配性で命一つ奪おうとするなんてそりゃもう心配性じゃないだろ。
勘弁してくれ。」
「ぐ…元は貴様が強ければ問題なかったことなのだ小僧。」
「んだと?また地面の味が知りてーのか?」
「貴様こそまた岩に貼り付けにしてやるぞ?」
「上等だ!やれるもんならやってみろ!」
「何度でもやってやるわ…タケゾウ!」
「「く、くく、ぷははっはははは」」
タケゾウとセバスは豪快に笑った。
他の四人はポカンと口を開いている。
特にベル爺、サクヤ、ルーナである。
それもそうだセバスが笑っている。
「…。
タケゾウよ。
王はお前に…」
「セバス。
そのことなんだが、俺はルーナを連れて行かないぞ。」
「何??手合わせの時と話が違うではないか。」
「俺は連れて行くとは言ってないぞ。
何でもルーナは外交に出たいらしくそんな暇は無いようだ。
行く先でたまたま会うことはあるかもな
「ぐ、貴様というやつは…くはははは。
わかった。
王が外交に出たいと言うならばその必要があると判断する。
人族の件もあるので近隣国とは密に連絡を取るべきだしな。
タケゾウ。
すまん。
恩に着る。」
セバスは深々と頭を下げた。
「謝んなよ。
大切なもん守りたいならこんなことにもなるさ。
そんなことよりまた手合わせしてくれ。
どうせ手加減してたんだろ?」
目が合いまた笑う二人。
「し、信じられん。セバスがこう何度も笑うなど…。」
「ほんと信じられない。
タケゾウ一体どうやったの?」
ベル爺とサクヤは開いた口が塞がらない様子だ。
「あのセバスがこんなに笑うなんて……明日国は滅ぶかもね…。
あ、そうだ!」
「「「ん?」」」
三人は頭にはてなを浮かべ、二人の男に近寄って行くルーナを見る。
「アイテっ!!」
「ぐはっ!!」
二人の男に拳骨が落ちる。
「「ルーナ (様)?」」
「セバス。
もう二度と嘘はつかないで!
タケゾウもこんなに無理をして…
ここにみんながいたから良かったけど
そうでなければ死んでいたかもしれない…。」
ルーナは言いながら泣き始めた。
「「あ、あのルーナ (様)」」
男二人はなだめようとしたが
「みんなに言うことがあるでしょ!」
ルーナが泣きながら言う。
きっと大切なものを二つとも失わなくて済んだからだろう。
「「お騒がせしてすいませんでした。」」
二人は慌てて謝る。
「よし。これで一件落着ね。」
泣き笑いしながらルーナは腕組みをしている。
「「「「「「あははははあはーははは」」」」」」
六人は顔を見合わせ盛大に笑った。
毎日投稿できたらいいなと思っています。読んで頂ければ幸いです。




