恋する乙女は
席についた四人は今後について話し始めた。
「んー。確かにタケゾウ一人じゃなーとは思っていたけどルーナと一緒に行かせるわけにはね…。」
「そうじゃな…何と言ってもルーナは魔族の王。
できれば一緒い行かせてやりたいが…。」
「そりゃそうだよな。
気持ちはすごく嬉しいけどルーナは一国の王。
さすがにそれはまずいんじゃないかと思うぞ。」
「なんて言われようとあたしはタケゾウについて行くもん!」
恋する乙女は止まらない。
「国はまたベル爺ちゃんが王やればいいしここの門番も他を選出すればいい。
簡単なことじゃない。」
「ではお前を慕っている国民はどうでもいいというのか?」
「あ、いやそれは…。」
沈黙。
「なんか悪かったなみんな。
気を遣わせちまった。
ルーナ。
とりあえず飯食おう。」
「そうじゃな。
とりあえず飯を食ってから話すとしよう。」
「そうね。ほらルーナ。ご飯にしよう。」
「うん…。」
全員でルーナが作ってくれたご飯を食べる。
味はとてもよかったが少しというかなんというか重苦しい雰囲気でご飯を食べるタケゾウたちだった。
食事が終わりサクヤがタケゾウに声をかける。
「タケゾウ。
言っていた渡したい物よ。
よかったら使って。」
それはまさに刀だった。
「それは私が世界を平和にするために使っていたものよ。
とあるドワーフに形を伝えて作ってもらったの。
刃こぼれもしたことがないの。」
「すげー名刀だな。
名前はあんのか?」
「ないよ。
つけたかったらつけていいよ。」
「じゃ名刀 朔夜にすっかな。
もらった人にちなんでな。」
「なんでよ。
恥ずかしいからやめて。」
「あはは。
もう決めたからダメ。」
サクヤが照れる。
スっとタケゾウは鞘から抜く。
反りはほぼなく長さは六十センチから七十センチくらいだろうか。
とても抜きやすく長さを感じさせない物だった。
鍔は白く丸い。
柄は赤と黒、鞘も黒い。
鞘から抜いた鋼のそれは美しく切っ先まで洗練されている。
「なんかほんとなんでも切れそうだな。」
「うん。その刀は魔力によってさらに強化されるように出来ているの。
試しに魔力を込めてその辺の岩の上に置いてみて。」
「ん?振るんじゃなくて?」
「そう。置くだけ。」
「わかった。やって見るよ。」
そういうとタケゾウとサクヤは岩まで行き
タケゾウは刀に魔力を流した。
「うお、なんか刀の波紋が無くなったぞ。」
「そうなの。魔力流すと消えるんだよね。
まったく切れそうに見えないけどその切れ味はすごいよ。」
タケゾウは岩の上にそっと刀を置く。
豆腐のように岩が二つになった。
まるで二つに割れた岩は元から繋がってなどいなかったかのうに。
「うわ!力入れてないのに!
すげーなこれ!」
「ふふ。タケゾウは魔力量が多いから相性も良さそうね。」
「ほんと何から何までありがとなサクヤ。」
「いいの。むしろこんなことしかできなくてごめん。
ところでルーナの件どうするの?
確かに一人で行かせるのはなと思っていたけどさ…。」
「俺もさすがにバカじゃない。
この世界の魔物にもまだ勝てないやつがたくさんいるだろうし
一人じゃみんな助ける前に死ぬなって思っている。
いくらサクヤたちに鍛えてもらったとは言ってもな。
ただな…
今のメンツ以外といきなり仲間になるのは無理そうだしさ。
まあ死なないよう気長に探すさ。」
「うーん。
ここはタケゾウに頼ってばかりの私が行くべきなんだけど…
ここを離れてしまったら魔族の加護が薄く、最悪無くなってしまう。
パワーバランスが崩れたらきっと人族が攻めてくる。」
「そうだよな。
そこにルーナがいないのはさらにまずいし。
サクヤを守るベル爺の重要性もかなりのもんだし…
よし!一人で行くよ!」
「うーん。
良いとは言えないけど…
今の所それしかないね。
あとはルーナをどう説得するかだね…。」
「「うーん」」
とりあえず席に戻ってきた二人。
ルーナはやはり悩んでいた。
「ルーナ。」
ルーナは顔を上げタケゾウを見る。
その表情は悲痛そのもの。
自分を慕ってくれる国民を見捨てたくない。
タケゾウと一緒に行って力になりたい。
それは一人の人か大勢か。
どちらを選んでも正解で間違い。
そんな自問自答をしたのだろう。
「悩ませてごめんな。
俺一人で行こうと思…」
「あたし行くからタケゾウ。」
「「「え」」」
「王様やめてくる。」
「「「は?」」」
ルーナはすごい勢いで飛んで行った。
「おいベル爺。
王ってそんな簡単に辞めれるのか?」
「んなわけあるかい!
とりあえずワシもちょっと行ってくる。」
ルーナを追いかけベル爺も飛んで行く。
「うーん。
恋する乙女は止まらないようね。
あの悲痛な表情は今から起こることに対してだったのかもね。
タケゾウと別れるより辛いことなんて今のルーナにはないのかもね。
で、どうすんのタケゾウ?」
「恋する乙女?
んー…
止めた方がいいよなやっぱり。
サクヤ。
聖域を離れたらどのくらいのとこまでは行けるんだ?」
「国にいるならそこまで影響はないはず。
まあ一、二週間ってとこかな?」
「そんなに出れるのか。
じゃ決まりだな。今から説得に行くの手伝ってくれないか?」
「行くの?
今人族に対して魔族がどう思っているのか知っているでしょう?」
「そうだな…
姿を変える魔法はないの?」
「私の魔法ではできないよ。
ローブで頭隠して行くしかないかもね。」
「変装は?」
「できるほど物が無いと思うよ。
ベル爺が変装が趣味なら別だけど。」
「確かに。
じゃローブで顔隠して隠れて行くか。
早速準備しよう。」
サクヤとともに準備を開始するタケゾウ。
ローブをまとい下山を開始する。
「サクヤ。
あとどのくらいあるんだ?」
「もうすぐよ。
あとほんの二時間くらい。」
「まぢか。
結構遠いじゃねーか。
よくルーナは毎回来てたな。」
「そんだけ誰かさんに会いたかったのよ。
モテる男は大変ね。」
「はいはい。」
『もう勘違い野郎になるのはごめんだからな。
けどサクヤにもそう見えていたのか…。』
考え込むタケゾウ。
がやはり二度と人の好意にゲスの勘ぐりをしないと決めてしまったタケゾウは
残念系勘違い鈍感野郎まっしぐらになっている。
サクヤが続ける。
「誰かのために努力している人は魅力的に見えるものよ。
それに自分が嫌っているところを褒められたらキュンとしちゃうものよ。」
「そんなもんなのか?
まあ確かに努力してる人は魅力的だもんな。
ま、俺には女心はわかわん。」
「そんなもんよ。
私も男心わからないもん。」
「そんなもんか。
ところでサクヤは好きなやついたりしたのか?」
「内緒。
いつか教えてあげるよ。
タケゾウはいなかったの?」
「内緒かよ。
俺は好きな人ってのはいなかったけど気になる子くらいはいたよ。」
「その子はもしかして召喚されたの?」
「そうだ。
ただ恋愛ってしたことないし好きってのもよくわかねーからな。
何とも言えん。」
「そう。
じゃまだルーナも勝ち目はあるのね。
よかった。」
「いやそもそもさ。
ルーナは俺のこと何とも思ってないってさっき言ったろ。
それに魔族の王だぞ?
根本的にダメだろ?
人族好きになりました。
うん。よかったね。とはならないでしょ。」
「それはそうかもね。
けどルーナはそうなれば国を捨てるんじゃない?
今まさにそうだし。」
「そりゃそうだけど…。」
タケゾウは悩んでいた。
自分の勘違いは置いておいても
ルーナは一緒に来てくれると言ってくれた。
それに対しては素直に嬉しい。
だがルーナは一国の王。
国民のここでの生活に欠かせない人物であるのは間違いない。
それに人族について行って国を捨てますなんてなったら反逆者なんて言われてしまうかもしれない。
何故ならルーナの父、魔王を
この国の象徴を手にかけたのは人族なのだから。
一人で行けるくらい強ければ…
結局これも自分が弱いことが招いたのではと思っている。
そんなことを考えているとようやく国の中心地にたどり着いた。
魔族の国『ツキヨミ』。
その中でも人口も多く栄えているのがこの王都。
商業、農業が盛んで他国との貿易、流通も盛んな場所である。
入るには門をくぐる必要があった。
もちろん門兵がいる。
「あちゃー。
サクヤ。どうやって入る?
塀を超えるには高すぎるしな…。」
タケゾウが辺りを見渡しながら言う。
「抜け道があるからそこに行こう。
都合が良いことにもうすぐ日が暮れるわ。」
「 じゃ夜まで待とう。」
日が暮れ夜になる。
二人の人影が王都の塀に近ずく。
「どうやって入るんだ?」
「ここからよ。」
サクヤが塀を指差すとそこはとても小さな扉のような物があった。
大人一人がしゃがんだくらいの大きさだ。
その扉を開けると下に向かう階段があった。
サクヤはいつも通りといった感じで入って行く。
タケゾウは足から入り上半身をねじ込む。
階段はすぐに終わり人二人分くらいが通れる通路になっていた。
「これは昔作ってもらった抜け道の一つよ。
これは王城に繋がっているの。」
「他はどこに繋がってるんだ?」
「他の抜け道は街に繋がっているものが数本。
王城に行く他の抜け道もあるの。
何かあった時の脱出用に作ったのよ。
まぁ最近は私の買い物用に使ってるだけね。」
「神なのに買い物来るんだな。
意外に庶民的なんだな。」
「神と呼ばれている普通の女の子だもん。
たまたまこっちに来て少し活躍しただけのね。」
そんな話をしていると行き止まりになった。
上を見上げるとそこには木の両開きの扉があった。
「あれ?王城行くのこんな扉だったかな?」
「とりあえず開けてみるしかなくね?」
ゆっくりと開け辺りの様子を伺うように出る二人。
「ここ、どこ?」
「サクヤが知らないと俺もわからないな。」
そこは街の裏路地のようなところだった。
特に人影もなく静かだ。
「とりあえず、間違えた。」
「お前な。
えっへんってポーズして言うことじゃないだろ。
でもとりあえず入れたようだしこのまま人目につかないように
王城を目指すか。」
「うん。」
二人は人目を避けるため裏路地を進む。
が、位置がはっきりしないためまずはどこにいるのかの確認が必要だった。
進んでいると賑わう声が聞こえて来る。
「少し声が聞こえてきたな。
どうする?」
「ローブを深くかぶって様子を見に行きましょう。
まずは王城がどこにあるかの確認が必要よ。」
「わかった。」
二人は賑わいの声がする方に進む。
通りの先が明るくなっている。
ゆっくりと覗くように顔を出す。
「すげー賑わいだな。
こんなにたくさん店があって人もたくさんいて。」
「そうね。
魔国は色々と盛んなとこだから人口も多くなったのよ。
そして見えたわよ。
あれがルーナのいる王城ね。」
「すげーでかいな。あれだと門も塀もしっかり警備されていそうだな。」
「そうね。間違いなく警備は厳重だと思うわ。
件の事件もあるからね。」
「そりゃそうだよな。どっか抜け道はあるのか?」
「確かあったはずだけど見てみないと思い出せないかも。」
「そうだよな。じゃ向かうとするか。」
「はい。わたくしも参ります。」
「行こう。ルーナを説得しに。
ん?わたくし?」
「どうしたんですか?
わたくしも参りますよ?」
「「ん?」」
「「んん!?」」
二人は即座に飛び退いた。
「ちっ。
お前は誰だ?何の用だ?」
『私が気配を感じれないなんて…
一体何者?
何にしてもここで騒ぎをお起こすのはまずい…。』
「わたくしも王城に行きたいのです。
王城はあそこに見えているのですが…どう歩いてもたどり着かなくて。
一緒に来た者ともはぐれてしまったようですし困っていたです。
そこに王城に行くと言っているあなた方を見つけました。
行き先が一緒なのでついて行かせてほしいなと思いまして。」
「俺たちにはお前と行く理由がない。
残念だが他を……ウソ…。」
何と今にも泣きそうだ。
「あ、いやそのごめん。
サクヤ。
一緒に行くくらい、いいよな?」
「ダメに決まってるでしょ…え…あ…」
今にもダムが決壊しそうなそんな表情。
「なんてね。良いに決まってるじゃない。
一緒に行きましょう。」
途端に笑顔になった女。
「よかったですー。
ほんと一時はどうなるかと思っていたんです。」
真っ赤な髪に色白の肌。
目はくりっと大きく、その瞳は金色に光って見える。
綺麗に揃えられた前髪が余計にそのくりっとした目を強調する。
服装は赤と黒の丈の長い西洋風の服に黒のスカート、タイツを履いており足元は茶色のニーハイブーツ。
腰にはベルトと剣やポーチなどがつけられている。
タイトではないはずの服が胸元のみタイトに見え、巻かれたベルトはそのくびれを強調している。
そして腕や足に鱗のような物がチラホラとまばらに見える。
スタイル抜群の超美人お姉さんといった印象を受ける外見とは別にさっきの子供のような泣きそうな表情。年齢は二十歳くらいに見えるがもしかしたらもっと若いのかもしれない。
ということで急遽三人で王城に行くことになったタケゾウたち。
道中、なぜこの超美人がたどり着けないのかがわかった。
「そこの美人なおねーさん。
よかったらオマケつけるから買ってかない?」
「超美人なお姉さん。
これ揚げたてよ。食べって。」
「そこのお姉さん。よかったら僕とお食事でも?」
「うわまぢキレーじゃんあんた。
よかったら一緒にあぞばね?」
と歩くたびにそこら中から声をかけられた。
そしてこの女、びっくりするほどの善人だった。
「美味しそう。いいのですか?
では頂きます。いくらですか?」
「うん。美味しい。
揚げたてがこんなに美味しいとは知らなかったです。
良い仕事ですね。」
「わたくしとお食事は高くつきますよ。
そんなことよりもっと有意義なことをしたほうがいいのではないですか?。
きっと今よりモテるようになるですよ?」
「あなたは話し方がなってないですね。
よろしければわたくしが教えてあげますよ?。」
こんなことが続き、気が付いた時には目的地を外れ別の場所にいる。
そんな調子だ。
そもそもこの超美人から出ている徳の様なオーラが問題なのかもしれない。
「あのな。
こうポンポン引き受けたら着くもんもつかないだろ。」
「そうよ。
王城に行かなきゃいけないんでしょ?
次からは必ず断るのよ。」
「ですがせっかくわたくしに声をかけてくれるんですよ?。
何かしてあげたいって思いませんか?」
「「思ってもダメ!!」」
途端に泣きそうになる。
「あ、いや強く言いすぎたよごめん。
そのなんだ。
王城に行かなきゃいけない理由があるんだろ?
その約束のために頑張ろう。
その後、みんなに応えてあげたらいいよ。」
「そ、そうね。
きっとあなたのこと待ってるわよ。」
「そ、そうですね…
よし。頑張って王城を目指すことにするです。」
単純明快。良いことなのか悪いことなのか…。
そんなこんなで王城の門に到着。
「よかったな無事着いて。
じゃ俺たちはここで。」
「じゃまた今度どこかで会ったらよろしくね。」
「え?みなさんは入らないんですか?」
「俺たちは入れないんだ。
けど中にいる友達に用があってな。
サクっと忍び込んで話を…」
「それならそうと言ってくれれば良いのです。
せっかくここまで来たのです。
わたくしについて来てください。」
そういうと超美人な女は門兵に声をかけた。
少しした後、門が開いた。
「なんかあのすごい善人ぶりと徳の様なオーラと少し間違ってるけど丁寧に話そうとするとことかで
もしかしたらどっかの偉い人かなとか思ったけど…」
「どうやらそのようね。
けどチャンスだわ。
これで中に入れる。」
そこに超美人な女が駆け寄ってくる。
「みなさーん。入れますー。」
「手間かけさせてすまん。
けどさ…もっとなんていうか…
疑うってことも覚えたほうがいいよ。」
「なんでです?
あなた方のどこを疑えばいいというのです?」
「ほら…何つうかローブで顔を隠してるとかさ。」
「ふふっ。面白いですね。
そんなことくらいで疑うくらいわたくしは弱くないです。
疑うのは自信がないからだと父に教わりました。
ですのでわたくしは疑わなくて済むくらい強くなりました。
いざとなれば消し炭にしてあげますから
たくさんわたくしを騙すといいです。
ふふふ。」
にこやかに笑った超美人。
釣られてタケゾウとサクヤも笑う。
「あははは。
そんなに強いならいっか!
あははは。」
「あーもう腹痛い。あなた本当に強いのね。
あなたのその考え、好きよ。」
「ああ。俺も好きだ。」
超美人が慌てて話す。
「にゃななにがすきですか!
ささしゃあ行くです!」
照れてるだろう顔を隠して前を向き歩く赤髪。
『なななんてこというのですこの男…
初めて男に好きと言われたです…』
ボっと前を歩く赤髪から煙が出る。
さらに早足になった。
こうして王城潜入に成功したタケゾウとサクヤ。
『さて、ここまではうまくいったがこの先どうするか。』
「そういえばあなた方は誰を探してここに来たのです?」
「魔王と元魔王。」
「そうですか。
じゃすぐ会えますね。わたくしも魔王に会いに来たのです。」
「アレース様ですね。こちらへどうぞ。」
門から入り少し歩くと使用人のような男が声をかけてきた。
「そちらのお二人は…?」
「心配ないです。
わたくしの護衛です。」
「そうでしたか。ではこちらへ。
魔王様は少々事情があり今はお部屋にいらっしゃいますのでお部屋までご案内致します。」
「はい。よろしくお願いいたします。」
歩くこと十分くらい…。どんだけ広いんだとタケゾウが心の中で呟く。
「ルーナ様。
アレース様がいらっしゃいました。」
「…わかった。
通して。」
冷たい声だった。
それだけで何があったか想像がつく。
ギイっと大きな扉が開く。
「ではごゆっくりどうぞ。」
使用人のような男が退室する。
「アレース…
久しぶり。」
「久しぶりですルーナ。
どうしたのですその目は。
まるでたくさん泣いた後のようです。」
「ううん。
何でもない。何でもないもん。」
両の目に涙が溜まり一粒、一粒と落ちた。
枕をぎゅっと抱き寄せすすり泣くルーナ。
「そんなに泣くなよルーナ。」
頭に手を置き優しく撫でるタケゾウ。
その聞こえるはずのない声がルーナに聞こえた。
「タケゾウ。タ、タケゾウタケゾー!!!」
抱きつき泣き出すルーナ。
「どうじてもうまぐいかなにの。
タケゾウのじからになりたいのに。」
「いーよルーナ。
もう力になってくれてるじゃないか。
だから俺は一人で…」
「い・や・だ!!」
「いやあの一人だけど一人じゃないっていうか…
だから一人でも…」
「い・や・だ!!」
「あのルーナ?聞いてる?
とりあえず一人で…」
「い・や・だ!!」
「ふふふふ。
あの堅物のルーナがこんな子供のような姿を他人に
しかも人目もはばからず見せるなんて
余程嫌なのですね。
どういう事情なのですか?」
「あのね、これはあの、かくかくしかじかなの。
ということでルーナは多分王をやめさせてもらえなかったのよね…。」
「なるほど。
ところであなたはどこに行くつもりなんです?」
「うーん。
しっかりは決めてなかったがけど次は龍人族の国に行こうと思っている。
魔国から一番近いと聞いてるからな。」
「そうなんですか。
ルーナ。
では王として龍人族の国に来たらどうです?」
「「「え」」」
「…!
それだわアレース!
タケゾウ!あたしそうする!
すぐみんなを説得してくる!」
「待つんです。
そうすぐにとはいかないですよ。
あなたは聞いたところ急いでいるようですが龍人族の国には何の用で来るのですか?」
「サクヤ。話してもいいのか?」
「いいわ。誰かに協力してもらわないといけないし
それに見たところあなたは龍人のようだしね。」
「わかった。
俺は仲間を助けるために、その他諸々をついでに解決するために今、神を探している。」
「神に会ってどうするのです?」
「力をもらって器を完成させる。」
「器を完成させる?
ふむ。そうなのですか。
では仲間を助ける。諸々の解決にその力を使うということですか?」
「そうだ。」
「ではその者たちのために障害になる者をあなたは殺せるです?」
アレースのくりっとした金色の目を鋭い眼光に変え、タケゾウに向ける。
部屋の空気が凍っていくのがわかる。
あからさまな殺意。
「うーん。」
タケゾウは腕を組んで考えた。
いつかのサクヤの言葉を思い出す。
沈黙。
「わかんねーな。」
「「「はい?」」」
タケゾウの以外な言葉にみんな言葉を詰まらせた。
「わからないと言ったんだ。
こっちに来て食うために魔物を殺した。
けどそれとは違う意味で聞いてるんだろ?
だからわかんねーわ。
それが答えだ。」
「あ、あのでっすね。
じゃ例をあげましょう。
大切な人、仲間たちが殺されそうだとします。
それを止めるには殺すしかないという場面です。
それであなたは殺せるかと聞いたんです。」
「わかんねーって言ったろう。」
「はい?じゃもう一回言い…」
「だーかーら、わかんねーっつーの。
おい赤髪。
お前さっき俺に自分が強いって言ったな。」
「え?ええ。言いました。」
「はっきり言おう。
俺は今は弱い。
だが強くなる。ものすごくな。
そしてお前の言う状況になった時の俺はものすごく強い。
まあ弱いうちにその場面になるってものありえるが。
それでも俺はわからんと言う。
俺は敵も味方もどっちの命も平等だと思っている。
悪いやつってのは俺にとって都合の悪いやつなだけで
そんな奴にも帰るところ、待っている人、例え誰もいなくてもそいつ自身が死を望んでいないのなら最後
の最後まで命を奪う決意なんぞしてやらん。
だが今は弱い。
お前のいう自信ってのがない。
だから答えはわからないだ。
わかったか?」
「くふふ…
ふふふふ…
あははっっははは!」
盛大に笑うアレース。
「ぷーふふふ。」
笑いをこらえるサクヤ。
「あははは。
ほんとタケゾウはタケゾウね。」
笑いながら褒める?ルーナ。
「あなたは…ぷはは。
面白い人ですね。本当に面白いです。
気に入りました。
素直というかひねくれているというか…ふふふ。
良い答えですね。嘘偽り無い良い答えです。
よし。わたくしも協力します。
そういえば自己紹介がまだですね。
わたくしはアレース。龍人族の国『ヨンラヤ』の者です。」
「アレースは龍人の王の娘なの。
一応、龍人の姫なんて呼ばれているのよ。」
「え…えぇ!?」
「タケゾウ気づいてなかったの?私は薄々そういう人かなと思ってたけど?」
「街で迷子になる姫がどこにいんだよ?!
大体、こっちに来てから俺は神やら魔王やら元魔王やら姫やらと出会う人濃すぎんだろ!
…
はぁ。お前らほんっと自覚が足りなすぎるわ。
あ、自己紹介がまだか。
俺はタケゾウ。異世界人。
こっちはサクヤ。神だ。」
「どうも神です。」
偉そうにいうサクヤ。
「は、ひあい!?
異世界人に神ですか?!
タケゾウ。あなたも人のこと言えないのです…。」
「「「「ぷ。」」」」
「「「「あーははは」」」」
四人は顔を見合わせ盛大に笑った。
盛大に笑った四人は話し合い
タケゾウ、アレースが先に龍人族の国に行き、ルーナは王として行く。
サクヤはベル爺とともに国の留守を守るということとなった。
今日はもう遅いので出発は明日とし睡眠を取ることとなったのだが…
「あのー。
さすがにこのメンツに囲まれて寝るのはちょっと…。」
「いいじゃないタケゾウ。
私とはもう一緒に寝てるんだし。」
「え!?やっぱり何かあったんですねサクヤさん…!
あ、あのタケゾウ。
これからほんの少し会えなくなるしもしよかったらあた、あたた、あたしのベットで……。」
「タケゾウとサクヤはそんな関係だったんですね…
さっきわたくしに好きって言ってくれたのに…。」
「タ・ケ・ゾ・ウ。
何か今、幻聴のような言葉が聞こえて来たけど気のせいかな?」
「あ、いやこれはそのなんだ。
アレースさんがすごくいいことを言ったことに対して言った言葉であって…。」
「ふーーん。」
「あの、ルーナ。お、落ち着いて。」
コンコン。
「扉の外から失礼致します。
男性の方がいらっしゃったようにお見受けいたしましたので
もう一室ご用意いたしました。
隣の部屋ですのでご自由にお使いください。
では失礼致しました。」
ナイス使用人さんと心の中で叫ぶタケゾウ。
「あ、そうだよな。
じゃ俺は隣に行くわ。
みんなまた明日なー。」
風のように素早く消え去るタケゾウ。
走るったら走る。
「あ、タケゾウ!こら!
待って…」
「行ってしまったのです。
もう少し話たかったのに…また明日にしようです。」
「ん?
ちょっと待ってアレース。
なんかちょっと気になるんだけど…?」
「何がですか?」
「まさかタケゾウに手を出すつもりじゃないよね?」
「ななにゃにを言ってるんです!
わたくしは少しタケゾウが気になるだけです!
それに気に入ったから興味があるだけで決してやましいことをしようなどとは…」
「「やましいことしちゃダメ(よ)!」」
なぜかサクヤまでハモってきた。
「「ん?サクヤ(さん)?」」
サクヤはしーらないとばかりに布団に潜る。
「もー二人ともー!!」
楽しい?ガールズトークで夜が更けていった。
読んでいただきありがとうございます。コツコツ投稿しますのでまたよろしくお願い致します。




