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白髪オールバックと乙女の決断

あの襲撃事件より早一ヶ月。



今日もタケゾウは修練をしていた。

その周りには真っ二つに

割れた岩がゴロゴロ転がっている。

折れてしまったタケゾウ製木刀は

その何十倍も積み上がっている。

風を切る音とともに

木刀で岩に痛烈な斬撃を打ち込んでいる。






「ふう。

もう結構割れるようになったな。」

「何を休んでおる。

こんなもん割れて当たり前じゃ。

次はワシとじゃ。

いくぞい。」

ベル爺が一瞬で間合いを詰める。

タケゾウは迎撃に一撃、木刀を振り下ろす。

「甘いわ!」

タケゾウの一撃をかわしタケゾウのみぞおちに拳がめり込む。

「ぐはっ!!」

勢いよく吹っ飛ぶタケゾウ。

だがすぐに空中で

体制を立て直し反撃に移る。

タケゾウが間合いを詰め

木刀を突き出す。

その木刀を掴むと

ベル爺はヒョイっと突きの方向に投げ飛ばす。

その後飛んでいったタケゾウの

真上にすぐさまベル爺が行き蹴り飛ばし

地面に強烈にタケゾウがめり込む。

立ち上がるがダメージが大きくフラつくタケゾウ。

「再生を…」

「遅いわい。」

後ろに拳を突きつけられ、またタケゾウの負け。

もう何度負けたかわからない。

「ちきしょう。

頭で考えてたらやっぱり追いつかない。」

尻餅をつき空を見上げ言うタケゾウ。

「愚痴なんぞ言ってないで瞑想せい。」












体の再生をおこなう。

『くそ。

まだまだこんなんじゃダメだ。

早くみんなの所に行かなきゃならないのに。』

苛立ちとは別に体はすぐに治っていく。

その間十分程度。

「治ったぞベル爺!」

「まずまずじゃな。

だがまだ遅い。

もっと体のことを隅々まだ意識せい。

じゃ二回戦いくぞい!!!」

そんなこんなで今日も全戦全敗。

あっという間に日が暮れた。



日が暮れた後

サクヤのところにタケゾウは向かった。

「お邪魔しまーす。」

魔の泉を岩を飛びながら渡り、岩を開く。

「いらっしゃいタケゾウ。

じゃ今日もやりましょう。」

タケゾウは加護の魔法の練習を始めていた。

月の魔法『再生 』を極めた者のみが

届く加護魔法ではあるが

タケゾウはサクヤに

直接もらっている為すでに少し使える。が……。

「そんなじゃダメ。

全然ダメ。」

魔の泉の光を割ろうとするが

少ししか道はできない。








「くそ。

イメージはできてるんだけどな。」

「もっともっと明確にイメージしないと。」

「わかってるよ。

もう一回!」

月の魔法の上位、加護魔法『反射』。

読んで字のごとく

反射できる能力である。

物理攻撃や魔法攻撃をも

反射出来る。

だがその代償に

たくさんの魔力を消費する。

魔族は他の種族よりも魔力が多い。

『再生』は魔力を多く消費するが

魔族なら特に問題なく使用出来る。

だが加護魔法の『反射』は『再生』を

極めた者たちでも一、二度の使用でほぼ魔力枯渇する。

ルーナたち吸血鬼は他の魔族より

魔力量が多いが

それでも五、六回程度の使用が限界のようだ。

だが吸血鬼にはその魔力をさらに強く

多くすることができる方法があるようだが

サクヤはそこまで言うと

「あとはルーナに聞いてみて。」

と少しニヤニヤして言った。

ちなみにタケゾウは

「くそ。

もう一回!」

今ので十回目。

タケゾウは魔力量がかなり多いようだ。

枯渇する気配がない。

「う〜ん…魔力はびっくりするくらい

多いのに使い方が下手なのかな?

もう少し形になってもいいんだけど…。」

「くっそ!

まだまだ!」










その後もあまり形にならず修練は終了。

風呂に入り、タケゾウは聖域を後にする。









『くそ…

今日もダメだったか……。

何がいけないんだ…。

うーん…反射ねぇ……。』









空を見上げると月が出ていた。

ボーっと月を眺めるタケゾウ。

『月が綺麗だな…。

そういえば月はなんで光ってるんだっけ?

ああ。

太陽の光を反射してるのか。

反射……。』

何かを思いつきそうな

タケゾウは座り瞑想を始めた。










『月の加護魔法の反射。

月の反射……。

何かヒントがある気がする。』

目を開き月を見上げるタケゾウ。

『イメージがもしかしたら間違っているのかな?

月のようにあの太陽の強い光を柔らかくする。

そんなイメージで……』

目を閉じイメージを固めて行く。

『よっし!

もう一回やってみよう!』

タケゾウは聖域に戻り

泉の光を見つめ

瞑想を始め先のイメージをさらに強いものとする。

『よし!行くぞ!』

目を開け光に手を伸ばす。

すると…







光は真っ二つになった。

人が二人くらい通れるくらいの道筋が出来た。






「おっしゃー!」







その場にバタっと倒れガッツポーズをする。

『ようやくできた!

サクヤもびっくりすんだろうな

見せてやんなきゃ…

あー何か眠いな…

少し…休む…か…。』

そのままその場で

眠りについてしまったタケゾウだった。






「う……ん?

ここはどこだ?」








「ここは君の夢の中だよ。」

そこには眼鏡をかけた

白髪のオールバックの

50歳くらいの男が立っていた。

「あんた、誰だ?」

「人は神と呼ぶね。」

「え?!!

神が俺に何の用だ?!」

「君とサクヤが何か楽しいことを

してるようだったのでね。

少し気になって見に来てみたんだよ。

もう加護魔法は使えるようだね?」

「ああ。

そんなことよりお前が

みんなを召喚した主犯だろ!

みんなを返せ!」

「力は貸したが私がやったわけではない。」

白髪オールバックは

肩をすくめ両の手の平を上に上げる。

「な?!

じゃお前は一体何がしたいんだ!」

「退屈だったんだよ。

すごく。

ものすごくね。」

タケゾウはそんな言葉を

真剣に話す白髪オールバックに

さらに苛立ちを覚える。

「は?お前ふざけてんのか!!

そんなことのためにみんなを使うなよ!!

早くみんなを返せ!!」

タケゾウは勢いよく飛びかかった。

白髪オールバックは

幻影のように揺れてタケゾウはすり抜けてしまう。

「え?!」

タケゾウは慌てて体制を立て直す。

「無駄だよ。

私の実体はここにはない。

正確には実態で

来なかったというのが正しいかな。

しかし君は本当に『良い』ね。

君が魔族側にいるのがさらに良い。

これからの君たちは

とても面白いことになりそうだ。

期待しているよ。

そういえば君の名前はなんていうのかな?」

「お前に教える義理なんてない!

さっさとみんなを返せ!」

「おやおや。

これは随分嫌われているね。

じゃ一つ教えておいてあげるよ。

今の所、君のいう

『みんな』は無事だよ。

待遇もとてもいいのではないかな?」

「誰がお前のいうことなんぞ信じるか!

さっさとみんなを返せ!」

「やれやれ。

では自己紹介はまたの機会にしようか。

きっと君とはまた会うだろうし。

ではいずれ…また…。」

「おい!

待…て…お…い!」











ガバっと勢いよく起き上がるタケゾウ。

「はぁ、はぁ、はぁ……ちきしょう。

あいつが…神か……

どうやって夢になんて…

くそ。」

唇を噛みしめるタケゾウ。

「あれ?起きてたの?」

後ろから声をかけられ

振り返るとサクヤがいた。

「ああ。

少し寝ちまったんだが…

夢の中で神に会ったよ。」

「え?!

そう…バレないとは思ってなかったけど

こんなに早くバレるなんてね…。」

「あの野郎…

次会ったらタダじゃおかねぇ。」

「ぷぷ。

タケゾウ。

そんなセリフ初めてリアルで聞いたよ。

けど神と喧嘩しようって

いうんだからそのくらいじゃないとね。

よしよし。

おねーさん頑張ってタケゾウを鍛えてあげる。」

髪の毛をぐっしゃぐっしゃっとされるタケゾウ。

「な?!!

やめっやめろ!」

手を振り払うタケゾウ。









「ま、全く何がおねーさんだよ。

見た目は

俺のが上に見えるだろうが!

そういや岩から出て何してたんだ?」

「部屋の光晶石の光が

弱くなってきたから

交換しようかなーって探してたの。

そしたらタケゾウが寝てた。

死んでるんじゃないかって

少し焦ったんだからね。

そういえばタケゾウは

何でこんなとこで寝てたの?

まさか…私に夜這い…」

被せ気味にタケゾウが言う。

「しねーわ!

反射の練習に戻ってきたんだよ!」

「へぇ。…。

そうだったの。

それで?少しは成果出たの?」

なぜかサクヤは怒り気味だった。

「まぁ見とけ。

いくぞ。」

タケゾウは光に手を向ける。

「おら!」

光が人一人通れるくらいに割れる。

「おお。

すごいじゃんタケゾウ!

よくできま…!?

タケゾウ!!」

タケゾウは意識を失った。

ついに魔力が枯渇したようだ。














「ん、うぅ……。

ここは…どこだ?」

そこは見たことのない天井だった。

「ん……タケゾウ?

気が付いた?」

声のした方を見るタケゾウ。

「あ、ああ。えーと………。」

状況を確認するタケゾウ。

広い部屋。

大きめな布団。

寝横になっている自分。

声の主はおそらくサクヤだが

布団の中から聞こえる。

勢いよく布団をめくるタケゾウ。

「サ、サクヤ!

お前何してんだよ!!!」

そこには可愛らしいパジャマ姿の

サクヤがいた。









「もう。

倒れたタケゾウを必死に運んで

介抱してあげた恩人に言うセリフそれ?

おかげで魔力結構消費したんだからね。」

少し頬を膨らませ拗ねるサクヤ。

「あ、そうか……

俺魔力枯渇したんだ……。

悪かったサクヤ。

ありがとな。」

寝る前のお返しも兼ねて

髪をぐしゃぐしゃっと撫でる。








「うん。

いいよ。

それと正式に付与しておいたから。

ようやく仮の付与も終わったから

存分に使えると思うよ。」

少し照れながら頭を撫でられるサクヤ。

そこに……

「サクヤさん!

タケゾウが昨日から帰ってないってベル爺ちゃんが!」

部屋の扉が開く。







…………………………。

………………………………………。

…………………………………………………。








ルーナが来た。

心配になって探しに来たのだろう。

息を切らしながら部屋に入った

ルーナと他二人は目を合わせ沈黙。








「タケゾウ。

サクヤさん。

な、な、何をしているの?」

「お、俺魔力枯渇しちゃって倒れてしまいまして…

サクヤが助けてくれたんです!!」

「そ、そうよルーナ。

何か変なことしたとかじゃないから!」

「へ、ヘぇ〜…

タケゾウ。

心配…心配したんだからね!

これからはサクヤさんのとこ

泊まるならそう言ってから行ってね。

じゃお邪魔しました。」

バンっと盛大な音をたてて閉まる扉。








「あちゃー。

ルーナ多分泣いてたわね。

タケゾウ。

体の調子戻ったなら追いかけなさい。」

頭をポリポリと掻きながら言うサクヤ。

「ああ。

誤解を解かなきゃな。」

「あら?

誤解かはわからないよ?

昨日のタケゾウ凄かったから……ポっ。」

「おい。

何がポっだ。

魔力枯渇してたんだろ?

むしろ生命の危機じゃねーかよ!

じゃ行ってくるわ。

ありがとなサクヤ。」

「いってらっしゃいタケゾウ。

仲直りしたら戻って来て。

渡したい物があるの。」

「ん??

ああ。わかった。」

タケゾウは部屋を出て行く。

「う〜ん。

青春だね〜。

ルーナの気持ちはわかるけど……

タケゾウはどう思ってるのかな?」

部屋に残ったサクヤは独り言を呟いた。









「おーい。

ルーナさーん。

待ってくれよー。」

聖域を走って出て丘を下るタケゾウ。

「……………。」

スタスタスタスタと

無言で歩くルーナ。

「ルーナさんって!」

スタスタスタスタと

止まらないルーナ。








無言で歩くルーナにタケゾウが追いつく。

「あの、ルーナさん?」

「……………。」

「おーい?

聞こえてますかー?」

「……………。」

ピタっと歩くのを止めたルーナ。

そしてタケゾウを

キっと涙目で睨む。

「サクヤには魔力枯渇したのを

助けてもらったんだよ!

何かやましいことしたとか

じゃ本当にないからさ。

あの?

ルーナさん?」








「………サクヤさんのことは

呼び捨てしてる……。」

「ふぇい?」

変なところから声が出たタケゾウ。

「サクヤさんのことは

呼び捨てしてるのに

あたしはしてくれない!」

ちょっと涙目で

頬を膨らまし言うルーナ。

タケゾウは心の中で

『そっちかーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!』

と盛大に突っ込んだ。



「…………… 。

えっと………。

ル、ルーナ?」

途端にルーナの表情が

パアっと明るくなるが

また頬を膨らまし拗ねる。








「あたしも修練たくっさん

付き合ったのに

頭ナデナデされたことない。」

上目遣い美少女の

頬膨らませて頭を

ナデナデして欲しいという要求。

タケゾウは目の前の

可愛すぎる光景に

心臓が打ち上げロケットに

乗ってどこかに

行ってしまうんじゃと思った。

ソっと手を差し出し

ルーナの髪をぐしゃぐしゃっと

無造作に優しく撫でる。

そして顔をそらしボソっと言う。







「その…なんだ。

いつも感謝してる。

手伝ってくれてありがとなルーナ。」

そう言うと手を離し

自分の頭をポリポリと掻く。

恐る恐るルーナを見ると

真っ赤になっているだろうルーナ。

その表情は下を向いていて

しっかりとは見えないが

満足そうな表情をしているようだった。






なんとも言えない沈黙が少し続いた。







ルーナが意を決して顔上げた。

「あの…タケゾウ!!」

タケゾウはルーナの方を向く。

その表情はさっきとは別人のように

真剣な表情をしていた。

タケゾウはゴクリと息を飲む。







「あ、あのね。

あ、あたし…」

「おーい二人ともー!

タケゾウ無事じゃったんじゃなー!」

ベル爺が小走りに駆け寄って来た。

なんというタイミング。







「あ、ああベル爺。

加護の練習してたら

魔力枯渇しちまってさ。

心配かけたな。」

「気にすることじゃないわい。

ところでなんじゃが……

この空気。

ワシ変なタイミングで来てしまったかの?」

「そそそそそそそっんなことにゃいよ!!!!」

盛大に噛んだルーナ。

「あ、いやそのルーナよ。

すまんかったの……

孫の恋路を邪魔など

爺ちゃんとして失格じゃ……」

「ほんとその通りよベル爺。」

そこには聖域から出て来た

サクヤがいた。

心配になり居ても立っても

居られなかったのだろう。

「こ、こ、こ恋路なんて

別にあたしはタケゾウのこと

なんとも思ってないんだから!!

タケゾウも勘違いしないでよね!!!」

『『まさか気付かれてないと思ってるのか』』

二人は心の中で同じことを思った。

もう一人は

『やっぱり…やっぱり俺の勘違いか。

そりゃそうだよな…まあそりゃな。

そんなもんだよな人生…。トホホ』

真に受けて

がっくりと肩を落とした残念系。

「ま、まぁ何はともあれ

タケゾウが反射を

まだ全然だけど昨日形にしたの。

これはルーナとベル爺が

タケゾウを鍛えてくれたからよ。

二人ともありがとう。」

サクヤは礼を言うと深々と頭を下げた。

「いやいや。

ここにいる者

全員の努力の賜物ですじゃ。

みんなよう頑張った。」

「そ、そうよ。

みんなで頑張ったからよ。

タケゾウおめでとう。」

「ありがとうなみんな。

とは言ってもまだまだだけど。」

「そうじゃな。

まだまだじゃ。」

「そうだね。

まだまだまだまだね。」

サクヤとベル爺が

腕を組みながら言う。

「ププっ。

そうだねタケゾウ。

まだまだ頑張らなきゃね。」

ルーナが微笑みながら言う。

「わ、わーってるよ!!!」

タケゾウは自分にも

言い聞かせながら言った。








「と言うことで今日は少し休もうタケゾウ。

昨日魔力枯渇したばかりだしね。

ルーナ。

ご飯たくさん作ってお祝いしない?」

「いいですね!やりましょう!」

「あとは今後のことについても話そう。

と言うことで今日は

ゆっくりお休みしてねタケゾウ。」

「わかった……。」

素振りと瞑想くらいはしておこう。

そう思うタケゾウに。

「タケゾウ。お・や・す・み!

わかった?」

「は、はい。」

ルーナが笑顔で言った。

とても怖い笑顔で。

「ふふ。

ルーナはタケゾウのこと

なんでもお見通しなのね。」

冷やかすようにサクヤが言うと

ルーナはまたも頬を真っ赤にし

「そそそそんなことないです!

料理の準備してきまーす!!!」

手でオーバーリアクションの

イヤイヤイヤをして

すごい速さで家に戻っていった。







「さてタケゾウ。

一応魔法は形になったのだけど

これからどうする?」

「そうじゃの。

タケゾウの仲間のことも気にかかる。

すぐに人族のところに行くのかの?」

「いや。

まだまだ力が足りないのは

わかっているつもりだよ。

だからサクヤからもらった

器ってのを満たしながら向かおうと思う。

あと六個を

神にもらってくればいんだよな?」

「そう。

そうすればタケゾウの

世界に帰るヒントが

もしかしたら得られるかもしれない。

私たちは七人全員は

初めから器を満たしていたけど

結局帰ることはできなかった。

理由はおそらく紋様の形だと思う。

だから一から集めたら

もしかしたらとは思っている。

神の能力を話せたら早いんだけど…。」

「それは言えないんだろ?。

大丈夫。

俺がそれをなんとかしてみせるよ。

そしたらサクヤも帰れるだろ?」

「タケゾウ……。

ありがとう。

無理に召喚させて

私の事情まで背負わせてしまって…

ごめんね…。」

「そんなことねーよ。

俺は俺の事情で

こっちに来たかったんだ。

それに俺に力までくれたじゃないか。

おかげでみんなを助けられる。

ついでにサクヤの事情も

解決してやるからさ。

お前は何も気にすんな。」

「タケゾウ。

もう。

じゃついでによろしくね。」

タケゾウは笑顔で

サクヤは少し泣きそうに微笑んだ。








サクヤの事情。

それは太陽の神を

助けてほしいということだった。

理由はわからないが

おそらくは人の命を

対価にして召喚をしたり

ルーナの父の命を奪ったり

戦争をしようとしたりと

そんなことをするような人

ではなかったのだとか。

確かにここ百年ほどは

様子が少し変だったが

彼の本質では

やはりあり得ないことのようだ。

誰かに頼むこともできない。

ルーナたちに頼むなんて

もってのほかだ。

家族を奪われたのだから。

誰に話すこともできない。

ゲートも使えない。

この地を長い時間

離れるわけにもいかない。

月夜の晩にタケゾウを見つけ

すがる思いで助けを求めた。

他人を巻き込む罪悪感。

サクヤは自問自答しながら

タケゾウが望んでいると

言い聞かせ召喚をしたのだという。

実に身勝手なこと極まりない。

けれど先のタケゾウの

言いっぷりに心が救われるとともに

希望とさらなる

罪悪感に苛まれ複雑な表情をした。

そんなサクヤの事情だった。









そんなこんなで

サクヤは渡したい物があると言って

一旦聖域に戻り

タケゾウとベル爺は

ルーナの手伝いをすることにした。

天気もよく外で食べようということになったので

外にテーブルとイスを並べ準備する。








「これはこっちでいいのか?」

「いいんじゃないかの?

こっちはいいから

料理の方を手伝ってきたらどうじゃ?」

「わかった。

ベル爺は少しゆっくりしとくといいよ。

あとで飲み物でも持ってくるよ。」

「すまんのう。

じゃ料理の手伝い頼むぞ。」

「ああ。

行ってくる。」

タケゾウは台所に向かった。



「何か手伝うよ。」

「あ、タケゾウ。

じゃこっちの

野菜を盛り付けてくれない?」

「わかった。任しといて。」

タケゾウはそう言うと

切って水につけてある

野菜を皿に並べていく。

皿は木の皿で

ベル爺が作ったらしい。

食器に使っているものや

桶などほぼベル爺手作りなのだとか。

意外にも器用な爺さんである。







紫のレタスのような

野菜を敷き詰め

スライスして透き通った赤さの

玉ねぎのような野菜を散りばめる。

「こんな感じでいいかな?」

「ありがとタケゾウ。

それでこの煮込みを上に…」

そう言うとルーナは

木のおたまで

煮込んだ肉や野菜をすくい乗せて行く。

煮詰まってダシが出ているだろう

スープも少しかける。

最後に薄黄色と黄緑色のような

豆を二種類ふりかけて完成。

色合いという点では結構奇抜な物だが

その匂いからはすでに

うまいのだと感じ取ることができる。







「あとは飲み物とご飯と…

食器も持って行って欲しいかな。」

「わかった。

じゃこれを…!」

たまたま取ろうとした物が

同じで手が触れてしまう。

ベタな展開だ。

実は二人とも意識しないようにしてはいたが

さっきのことをものすごく意識していた。

ルーナにとって

初めての呼び捨て。

頭を撫でられたこと。

そして意を決して言おうとした言葉。

どれも意識するなと言うほうが無理である。







対してタケゾウは

自分に好意を寄せているのでは

などと思い上がり甚だしい。

単純に困ってる自分に

いつも優しくしてくれていただけなのに。

ルーナの好意を

ゲスな気持ちでの勘ぐりで

勘違いした自分を責めるタケゾウ。

少しづつすれ違い始めた二人。






やることがあるとこんな二人でも

表面上はいつも通り振舞うことができていた。

固さはあったが…。

それが手が触れたことによって表面化する。






「…。」

「…。」

照れているルーナ。

タケゾウは複雑な顔をしている。






「あ、あのさルーナ。」

「な、何タケゾウ?」

先に口を開いたのはタケゾウだった







「俺ようやく加護の魔法が

少し形になってさ。

そんで少しここを離れようと思うんだ。」

「え、あ、そそうだよね。」

いきなりの別れの宣言に

戸惑うルーナ。

わかってはいたことだが

動揺してしまう。

そして残念系勘違い野郎は続ける。







「それでルーナとベル爺と

サクヤにはすげー世話に

なったから何かお礼をしたいんだけど…

何かできることはねーかな?

今の俺にできることなんて

ほとんどないだろうけど…

ぶっちゃけ次ここに

無事にこれるかも

わかんないから

今できる何かはみんなにしたいんだ。」

笑いながら冗談っぽく言うタケゾウ。








「タケゾウに

してほしいことなんてないよ…。」

少し泣きそうな顔で言うルーナ。

何か考えているようである。

「そっか。

まあ今の俺にできることなんて

特にないもんな…。

じゃいつになるかわかんないけど

待っててくれ。

必ずお礼に戻ってくるから。」

そう言うとタケゾウは

盛り付けた料理を運ぼうとする。

「決めた。」

「ん?何か出来そうな…

あれ?ルーナ。」

振り返るとルーナがいなかった。

「あれ?あれ?

ルーナ?」

周りを見渡すが台所にはいない。

何が起こったのかわからず

外のベル爺の元に行く。








「あたし行くから!」

「まあ待てルーナ。

お前は王なんじゃ。

そんな簡単に国を離れるわけには

いかんじゃろ。」

「それでも行く。

絶対行く。」

ベル爺の元に着くと

すでにルーナがベル爺と話していた。

「落ち着けルーナ。

いきなりどうしたんだよ。」

「タケゾウ。

してほしいことがあるの。

……。

あたしも…あたしも連れてって!!」

ものすごい勢いでタケゾウに迫るルーナ。

いきなりの宣言に戸惑うタケゾウ。

そこにサクヤもやって来た。

「なんの騒ぎ?

どうしたの?」

「とりあえず落ち着くのじゃルーナ。

一旦席について考えよう。な?」


四人は席に着き今後について話すことにした。

コメント頂き本当にありがとうございます。これからもコツコツ投稿しますのでよろしくお願い致します。

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