第二章 2-3
思った通りまともな人間じゃないのは確かだな。
学園長室に通され、客人用のソファに座らされた俺ら三人。
横に座る星野と対面側に座る藤堂双方の話を聞き終えた学園長はさっそく結論を出した。
「つまり、星野ちゃんがプリントを持って教室に戻ろうとしたとき、藤堂君にぶつかってばら撒き、前方不注意をしていたところに黛君が来たってことね。なら、これでおしまいでいいでしょ」
「は、はぁ…」
想像をいい意味で超えた結論に少し拍子抜けだが、顔には出していないが藤堂は少し不服そうだ。
「君はどう思う黛君」
「何で俺?勝手に首突っ込んだだけで直接関係はないだろ」
「君は敬語を知らないのか」
「それぐらい知ってるが、使うのは面倒だ」
何でこいつは一々突っかかってくるんだ。
庶民だからという感じではないのは確かだ。
「ふむふむ。星野ちゃん、先に戻っておいてくれる?」
「で、ですが」
「いいからいいから」
半ば無理矢理退席させられた星野。
星野が出て行った瞬間、場の空気が一気に変わる。
肌にチクりと刺さる殺気。
それを出す張本人は表情を全く変えていない。
「さぁ、ガキ共。どう決着をつけたい。話し合いで解決する?」
訂正。これは殺気などではない。
刺さるほどの好奇心だ。
「それともこの学園の生徒らしく解決する?」
この学園には生徒同士の大規模抗争を防ぐために十一の校則がある。
その中で唯一、一つだけ例外が存在する。
【アトラス学園 校則 第十一条】
・学生同士で問題が起きた場合。
双方の合意の上、決闘システムの使用を許可する。