第二章 2-2
朝のHRまで後十五分。
一番近い自動販売機まで往復しても十分程度で済むか余裕だな。
自動販売機まで向かう途中。
職員室の近くで何やら人垣ができていた。
「…あ、あのその」
聞き覚えがある声に足を止め、近くによる。
中心では無数のプリントが散らばり、プライドが高そうな少年とその取り巻きが
一人の少女を威嚇?しているみたいだ。…てか。
「何やってんだ星野」
「えっ…あ、黛君」
「何だい君は」
思わず声をかけると突っかかってくる。
こういう“ザ・金持ち”って感じのようなやつは正直相手するのは面倒だ。
「そいつのクラスメイトだ。あんまし状況わかんえけど、もうすぐHR始まるし、一端お開きにしようぜ」
「いきなりしゃしゃり出て何を言うかと思えば、これだから庶民は」
「いやいや、温室育ちのボンボンよりはマシだ。それとも、ここで取り巻き連れて固まってたら邪魔だってわざわざ言わないとわかんねえのか?」
「ボクを挑発するとはいい度胸だ。身の程を教えてあげようか」
つい癖で挑発してしまったが、ワリと相手の神経逆なでしてるな。
星野が慌てて「わわわ」となってるが、気にしている暇はない。
「入学して一週間弱でもう痺れを切らして、今年の一年は活きがいいわね」
職員室辺りで騒動を起こしてたら教師が駆け付けるのは普通だが、煽って何がしたいんだこの女。
「あんた誰だ?」
「無礼者。この方はアトラス学園 学園長〈春日 椿〉さんだぞ」
先ほどまで偉そうにしていたこいつが敬服している辺りこの女はかなりの権力者なのだろう。…ん?学園長。
「高等部一年A組黛終夜、星野千歳。高等部一年C組〈藤堂 陸斗〉。三人とも私とお茶しない?」
それと同時にHRの始まりを告げるチャイムが鳴る。
人垣は蜘蛛の子を散らすように各々の教室に向かい。
残された俺と星野と金持ちはHRをサボらされ学園長のお誘いを受けるしかなかった。