第一章 1-2
「了解。さっさと行こうぜ」
詮索するのは後回しでいいだろう。
とりあえず、ご厚意に甘えるとするか。
新年度前ということもあり校内にはほとんど人影はない。
たまにすれ違うのは委員会に所属している生徒や教職員とのことだ。
「ここがメインアリーナです」
校内の案内が終わった後、最初に案内されたのが学内で最も大きいと思われるドーム状の白い建物だ。
「正式名称は第一模擬演習場。施設内にある試合会場と観客席は特殊なガラスで隔てられ、試合会場内での怪我やダメージは現実に反映されない造りとなっています」
「島の説明受けてた時も思ったがここって一々規模がデカ過ぎねえか」
「観光地は地域活性化を目的としていますが、学内は安全性の問題ですね。異能者の能力に対応するために様々な仕掛けを施しているそうです。他にも模擬演習場はありますが、規模的にはここが一番大きくて主にランキング戦のために使われています」
確か、学年内で順位付けをしているシステムで、上位者には学期末テストの免除とかの報酬が与えられるとかいうやつだな。
そんなことより
「なるほどな。耐久性にはさぞかし自身があるんだろうな」
瞬時に手から緑色の粒子を放出。バレーボールぐらいの大きさまで増幅し、野球選手よろしく。振りかぶりぶち当てたが建物には傷一つつかなかった。
「何してるんですか!?」
「いや、どんなものかと思ってな。結構自信あったんだがビクともしねえとは驚いたな」
「驚いたな、じゃありません!普通、壊そうとする馬鹿がいますか!?」
「壊れなかったんだからいいじゃねえか」
「いや、よくねえよ」
何時からそこに立っていたのか。
気が付くと横には欠伸をかみ殺す上級生がいた。
「やっと寝れると思ったらこの有様だ」
「そりゃ災難だったな」
「お前のせいだよ。それとあんまし言いたくはないが、俺、上級生で生徒会長で偉いから一応敬語使ってくんない?…まぁ、いいか。今度からはやらないように」
いきなり現れたその上級生はすぐに去っていった。