第三章 3-9
鍵を開け中に入っていく。
「着替えたら一階に下りてきてくださいね」
「…あ、はい」
どうやら、お説教は確定らしい。
二階の自室に戻る階段が十三階段に思えるのは気のせいではなかった。
「全く、あなたは何を聞いていたんですか!」
下りてきて目が合った瞬間『そこに正座してください』と言われ、座った途端これだ。
だいぶ、鬱憤が溜まっていたのか、普段の大人しさが皆無である。
「さすがの俺もアレは受けやらヤバいと思って腹くくったが、周りの様子見るに約一名を除いてバレない自信があった。まぁ、いいかと思って」
「気づかれることをわかってて使ったんですか!?あなたはバカなんですか?死ぬんですか?」
酷い罵詈雑言だ。
これが学年で彼女にしたい人ランキング一位とは思えないな。
いや、特殊な趣味を持つ一部の男子には人気出るか。
「また、人の話を聞いてませんね。いい機会です。幸い明日は休みですから、お話ししましょうか」
これはあれか『今夜は寝かせないぜマイハニー』的なやつだな。
こいつの場合は『今夜は寝かせませんよマイダーリン』か。
「それもいいが、その前に飯にしようぜ。腹が減っては何とやらだ」
「戦なら先程終わりました。というか、食べれると思ってたとはどこまでお気楽何ですか?」
微塵も思ってないが、どうやら話を逸らすのは無理のようだ。
今日中に飯を食うのも寝るのも諦めるしかないか。
「てかさ、ここって唯一能力の自由が認められてるんだろ?何で俺だけ制限あるんだよ」
「…一つ確認したいのですが、ちゃんと契約書には目を通されたんですよね?」
「…トウシマシタヨ」
「こっちを見てください」
「…イヤ、ソンナ、ハズカシイジャナイデスカ」
「それなら、似合わない敬語はやめたらどうですか?」
酷い言われようだ。
ま、実際敬語何て使わないがな。
「普通、あんな面倒くさいもん読むか?断言してやるほとんどの奴は読まない!」