第一章 1-1
ここアトラスは異能者と呼ばれる不思議な力を持った者たちを保護する目的として作られた無人島を開拓した島である。
総面積は二百二十平方キロメートル。
総人口700万人越え。
自然はほとんどなくなり、南の港町はレンガ造りを基調とした建造物が立ち並び。
中央のメインストリートは観光客で賑わい、合法カジノの明かりは消えることはない。
東には異能者の力の源である〈マナ〉を使った最先端の医療技術を誇る医療区。
西には今や世界のIT産業の要となる工場区。
南東の都市開発予定地には大規模アミューズメントパークが今年オープンするらしい。
そんなリゾート地の象徴とも言えるのが、北にある〈アトラス学園〉である。
「と、簡単な説明はこんなところです。わかりましたか?」
「まだ、この状況に理解できてねえのにわかると思ってんのか?」
先に自己紹介。
俺の名は黛 終夜。歳は今年で十六。一人も肉親がいない天涯孤独の身だ。
中学までは孤児院で暮らしていたが、さすがに出なくてはならないと思ったその日に一人暮らしを始めた。金銭的問題から高校入試を受けずに就職活動をしていた時に届いた封筒を無視していると昨日突如現れた目の前で教師のように島の説明をし出す、〈神崎 恵〉に連れてこられ、今に至る。
「それは私に言われても困ります。私は学園長にあなたを連れて来いと言われただけですから」
「だからって拉致紛いのことをするか、普通?」
「ちゃんと、『断れば強制的に連行します』という書類が入った封筒は届いているはずです」
中身も見ていないから『知るか、帰る』と言って帰れる感じではなさそうだ。
「もう諦めてる。で、その学園長はいつ来るんだ」
連れてこられて約一時間。
学園長が遅れてくるということで神崎にご高説してもらっていたが現れる気配がない。
「もうすぐだと思いま…失礼、はい、もしもし」
チラっと見えたがどうやら電話をかけてきたのは学園長。
てか、同い年だと思うこいつは一体何者なんだ。
服装から考えてここの生徒であることは間違いない。
しかし、一介の生徒に拉致紛いなことをさせるとは思えない。となると、何らかの関係者とみるのが妥当だな。
「どうやら、学園長はもう少し時間がかかるそうなので先に学園内の施設を案内させていただきます」