第三章 3-6
たぶん、こいつは殺しとかとは縁遠い生活をしてきて、初めて恐怖している。
可哀そうだがこれも一つの教訓ということで
「これでゲームセットだ」
ボレーシュートの要領で藤堂を蹴り飛ばそうとした瞬間。
藤堂の体が黄金に輝く、帯電したわけでもない。
ましてや相手は放心状態。
それなのに上空に手を上げ、また雷を落とそうとしている。
(マスター!)
頼もしい使い魔も焦っている。
あの雷に当たってはいけない。
蹴りの態勢に入っているため、避けることも出来ない。
否、例え万全な態勢でもこの一撃は避けることは出来ない。
刹那の時間。
たどり着いた答えに腹を括るしかなかった。
気づいても、もう遅い。
藤堂さんの能力の名は【武甕の加護】。
窮地に陥った時、次に放つ一撃を必殺必中の技に変える能力。
自動発動型の一日一回しか発動しないが、その効果は絶対。
そのことを感覚的に悟ったのか、彼は覚悟を決めた目をしていた。
(負けるのは初めてでしょうけど、仕方ありませんよ。逆立ちしながら全裸で島一周するのは可哀そうですが、使った後のことを考えたら些細なことですしね)
これで試合も終わり。
さすがに可哀想なのでお説教の時間は一時間だけ…に。
私は自分の目を疑った。
彼の動く速度が徐々に早くなり、雷が着弾する前に蹴り飛ばした。
主を失った雷は敵を見失い。
彼のすぐ横に落ちる。
って、あの人は何を考えているんですか!
『勝者 黛終夜!』
まさかのどんでん返しに会場が沸く。
中には藤堂さんを心配する声が聞こえるが、そんなことを気にしている場合ではありません。
「お、ギリギリ間に合ったか。運がいいな終夜は」