第三章 3-5
可能性は0に等しい。
しかも、公衆の面前でより高度な言霊無しの部分顕現までやっている。
頭が痛くなるばかりです。
「あれ?終夜君ってこっち来たのは数週間前って言ってたよね?何で使い魔を顕現出来てるの?しかも、あれ部分顕現だよね」
映画気分から現実に引き戻った秋本さんが疑問を覚え始める。
「いや、あれは単純に技の一つだろ。第一、部分顕現みたいな高度な技は会長ぐらいしか使えないはずだ」
「あ、なるほど。何だ、真面目になって損した。というか、早くぼろ雑巾みたいになんないかな」
風間さんが無自覚のフォローで、秋本さんの注意が逸れる。よかった。
「…」
しかし、星野さんは違った。
同じことが出来る彼女には五感以外で感覚的にそれが使い魔であると理解できる。
幸いなことに黙っているようだったので、私は再度試合を眺める。
本当に3年間やっていけるのだろうかという不安しかない。
それと、説教は+三時間追加です。
「今からは手を抜けない。無様な姿を晒す前に降参しろ」
絶対的自信。
先程までまともに槍を使わなかったやつが、使い魔まで顕現し、初めてこちらを敵として見ている。
「言葉はもういいだろう。男らしく、拳で語ろうぜ。…お前は槍だけどな」
仕方ない少しだけ本気を出すか。
ビビッて腰抜かすなよ成金。
シミュレーションのときは機械しか相手してなかったから、あんまり実感わかなかったが。
「…っ!」
殺気ってこれ程までに効果があるだな。
少し魅せただけでこの様か。
ま、腰抜かさなかっただけマシか。
「来ねえのか?ならこっちから行くぜ」
夥しい量のマナを全身に纏い、地を蹴って距離を詰める。
先程まで立っていた場所にはクレーター。雷の速度には及ばないが、怖気づいている相手に近づくには十分だ。