第三章 3-3
秋本さんの感想でまた、彼は能力を使ったとわかる。
「よかった…」
星野さんは安堵しているが、それは意味のないこと。
例え避けなくても彼が本気を出せば傷一つつかない。
そういう存在なのだ。
だからこそ、私は監視役に選ばれたのだ。
彼を唯一止めることが出来る者として。
それよりも今は帰ってきたとき、どう説教しましょうか。
「仕留めきれなかったか」
完全に反応が遅れたが、避けらないことはない。
注意が散漫そうだったから、使ったが誰か余計なこと絶対言ったな。
神崎のやつさっきよりも睨んでるぞ。
「ま、そう焦んなよ。楽しいのはこれからだろ」
気付かれないように空気中にマナを散布。
これぐらい防いでくれよ。でないと、ストレスが余計に溜まっちまう。
「ボクは楽しむつもりなどない。貴様の性根を叩きのめすだ…!」
話の途中で仕掛けていたマナを水→氷へと変える。
八方から出現した氷柱は容赦なく藤堂を狙う。
「っく…!」
藤堂は咄嗟に体中マナを纏わせるが、完全に防ぐことは出来ず苦悶の表情を浮かべた。
「これは試合だぜ。一緒に仲良しこよし戦いましょうなわけないだろ」
こちらの誘いに乗ってくる辺り、まだまだ未熟。
相手が仕掛けてくることを見越して、探知ように多めにマナを散布したが、無駄だったようだな。
「貴様の言う通りだ」
「やけに素直じゃねえか」
「あぁ、なんせ同じことをしようとしていたんだからな」
藤堂が腕を振り上げると同時に雷鳴が轟く。
その音は探知範囲の外である上空。
初撃に使った雷雲は圧縮されて残っており、今にも落ちてきそうだ。
「砕け散れ!」
落ちてきた雷は一直線にこちらに向かってくる。
光の速度に近い。…これ避けるの無理だな。