第三章 3-2
ドーム状分厚い水壁で防ぎながら、鋭い水滴をお見舞いする。
こちらと違って雷の雨は自動攻撃のため、藤堂は難なく避ける。
藤堂有利と思っていた会場の雰囲気がガラリと変わった瞬間だった。
「どうやら、ボクらは相性が悪いみたいだ。ボクは雷、君は水。今はマナがまだ十分だが、どれだけ持つかな」
「おいおい、ここはポケ〇ンの世界じゃないぜ。それに工夫すれば済む話だ」
炎は水に弱いならあるが、水は雷に弱いという明確な事実はないが、蒸発させられるのもまた事実だ。
「お互い品定めはもういいだろ。そろそろ、能力を使ったらどうだ」
「貴様如き、能力を使うまでもない」
「なら、引きずり出してやるよ。俺の能力でな」
能力とは正しくは異能者自身ではなく、異能者の中にいる使い魔の能力だ。
属性も使い魔に関係している部分が大きく、基本的には属性と相性がいい能力が備わる。
先程と同じ大津波を作り出し、マナを送り込む。
津波は一瞬で氷塊へと変わり、多数の氷塊が藤堂を襲う。
「大量の水を一瞬で氷へと変える。それが君の能力か」
「あぁ、そうだ」
ここまでハッタリかましとけば、神崎も納得…。
してねえな。めっさ睨んでるよ。
「なら、期待外れだな」
槍を構え直すと先程と同様に雷を纏わせる。
違ったのは槍だけでなく、自身にも纏わせ電光石火の速さで氷塊の隙間を潜ってきたことだった。
「もらった!」
反応するのが少し遅れたが…。
まぁ、これぐらいなら使っても大丈夫だろ。
全く、あの人は本当に私の話を聞いていたのですか。
開始してから一分弱で一端を使用し、水を氷へと変えている。
前任者がいたらしいが、大方彼の素行の悪さに呆れたに違いない。
「おっ、今のを避けるのか。終夜すげぇな」
少し注意が散漫になってしまい風間さんの声で目を向ける。
電光石火の速さで距離を詰めた藤堂さんの攻撃を彼が避けてみせた。
「私、完全に当たると思ったのに。すごい反射神経だね」