第三章 3-1
シミュレーションなら何度もやったが実践は初めてだ。
舞台は超満員のアトラス学園メインアリーナ。
役者は二人。
この俺、黛終夜と学年で指折りの高ランカー藤堂陸斗。
「身分の違いを教えてやろう」
相手は腕に付けた銀色のブレスレットから槍を生成し構える。
「そいつは楽しみだ」
はてさて、どうやって教えてくれるのやら。
カウントダウンが始まり、まもなく試合は始まる。
あいつ等は…っと、あそこか。
神崎は凝視しているし、その横で星野は懸命に祈っている。
対して、空牙と秋本は…何かポップコーンとか食ってる。
おいこら、映画じゃねえぞ。
「先手は譲ってやろう庶民」
「大盤振る舞いは結構だが、後で痛い目見るぜ成金」
開始直後の一発目はなるべく派手なのがいい。
体内で圧縮したマナを外へ放出。
体外に出たマナは一気に膨れ上がり、その性質を変える。
「災害級の大津波。防げるもんなら防いでみろや!」
緑色の粒子は水に変わり、人工的な大津波となり藤堂を防ぐ。
これは能力ではない。
異能者は能力を含め、マナ・能力(この呼び方は西洋人が多く、東洋人は『のうりょく』と呼んでいる)・属性・使い魔を持っている。
属性は一人に一つ。俺の属性は言わずもがな【水】。
マナを水に変え操れるため、この程度の津波など御茶の子さいさい。
「この程度防ぐ必要すらない」
雷を帯びた槍の一閃は津波を真っ二つに割り、水滴が蒸発する。
案外やるもんだな。
一閃は津波を貫通し数センチ横を通過していった。
「今度はこちらからだ。雷の雨に撃たれたことはあるか?」
藤堂が上空に手を掲げると雷雲が拡がる。
降り注ぐは雷の剣。
「昔もこれからもねえよ。お前こそ横から雨に撃たれたことはあるか?」