第二章 2-7
「で?」
「窮地に追い込まれればあなたは能力を絶対に使うと言っているんです」
「ま、この世に絶対はほとんどないからな。もしかしたら使うかもな」
「かもなって。あなたは本当の本当に自分の立場を理解しているんですか…」
怒りが一切ない心配する声音。
それは監視対象ではなく、一人の異能者として見てくれている証。
なんで、こんな奴が監視役何だろうな。
「そうなったらそうなったで。豚箱なり処刑台なり連れて行けばいい。俺は逃げも隠れもしない」
だが、そんな優しさは逆に罪を認識させる。
自分がどういう存在かということを。
この世界で唯一許されない存在だということを。
「そろそろ戻ろうぜ」
「…はい」
彼女は監視役として失格だ。
対象者に深入りすれば辛くなるということをわかっていない。
かつてのあいつのように。
そして、教室に戻った後。
男子の嫉妬の視線を浴びたことは言うまでもない。
そして、待ちに待った放課後。
メインアリーナの西側控え室では一人を除いていつもの面々が見送りに来ていた。
「やっぱり、代わらない?」
「クドい。もうその話は朝のうちで終わってるはずだ」
結局、諦めの悪い秋本は休み時間や昼休みもこの調子で『代われ、代われ』とうるさかった。
「しかし、終夜。勝算はあるのか?」
「勝負は時の運だからな。何とも言えないが、まぁ勝つんじゃね?」
「お気楽だね。相手はゴミクズでも学内トップテンに入る実力者だよ」
神崎もそうだったが、妙にあの藤堂とかいうやつの前評判が高く思える。
あっちは初等部から入学して数多くの試合を見せてきて、こっちが初試合のもあるが、それでも異常な程だ。
「事前に相手のこと調べたのか?」