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三十と一夜の短篇

奇跡の輝き(三十と一夜の短篇第3回)

作者: ひなた

 大空に輝いている星々よりも あの大きな月よりも

 僕にとっては君のほうが ずっと美しく見えますよ

 甘く囁くように言うけれど 答えは返ってこないようです

 わかってはいたことですが これはかなり辛いものがありますね


 君がどこへ行ってしまったのか 探すつもりはありません

 それを君が望まないことを 僕は知っていますから


 だけど君に会えない日が続くと どうしても君が恋しくなってしまいます

 今までは 君から僕に会いに来てくれました

 毎日 毎日 飽きもせずに

 毎日 毎日 鬱陶しいとすら思えるくらいに

 たまには一人にさせて下さいと そう言ったこともありましたね

 それでもめげずに君は 僕のところへとやって来ました


 それなのに 君と最後にあってから もう何日が過ぎたことでしょう

 いつも見ていたけれど こうして一向に現れないでいると

 君がどんな顔をしていたのかさえ 忘れてしまいそうですよ


 君はどうやって笑っていたんだろう

 君はどうやって僕を呼んでいたんだろう

 君はどうやって僕を愛していたんだろう

 君はどうやって僕に触れていたんだろう

 君はどうやって泣いていたんだろう

 君はどうやって僕に呼ばれていたんだろう

 君はどうやって僕に愛されていたんだろう

 君はどうやって僕に触れられていたんだろう


 全部 君と過ごした日の思いでさえ 忘れてしまいそうですよ



 大空に輝いている星々よりも あの大きな月よりも

 僕にとっては君のほうが ずっと美しく見えますよ

 初めてですよね こんなに甘い囁きを僕が漏らしたのは

 せっかくのサービスなんですから 受け取って下さいよ

 このままでは 僕が恥ずかしいだけで終わってしまうではありませんか


 君が今どこにいるのか 知るつもりはありません

 そのことも君はよく理解しているでしょう?

 僕から君のところを訪ねたことなんて 過去に一度でもありました?

 どうせ間を空けても 焦らされるのは僕ではなく君だけですよ

 期待していても無駄ですから 早く出ていらっしゃい


 しかし 答えは返ってこないのでした

 わかってはいたことですが 僕の心にはかなり辛いものがありますよ


 君はいつも この辛さに耐えて笑っていたのですか?

 その愚かさが 今ばかりは羨ましく思えますね

 僕も君みたいに素直に無邪気に 愛せたなら良かったのに 愛のために戦えたなら良かったのに

 残念ながら 僕にそのような強さはないようですよ



 大空に輝いている星々よりも あの大きな月よりも

 一つ零れた流れ星よりも 霞の掛かる暗月よりも

 僕にとっては君のほうが ずっと美しく見えますよ


 だれも見えない場所で 一生懸命に輝いているのです

 そう例えば 雲に隠れた遙か天空の星空のように

 美しいと見惚れられるのではなく 純粋無垢な心のままに輝きを放つのでしょう

 そう例えば 太陽の光に隠された下弦の月のように

 美しいなんて思われなくても良いと 陰のものとして咲くのでしょう


 それが君の美しさであると 僕は知っていたはずなのに

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― 新着の感想 ―
[一言] とても奇麗で、情熱的でした。おばちゃんなので、ストレートな愛の言葉はちょっと照れてしまいます。笑。読んでいてこの二人は彦星と織り姫なのかな〜?と想像を巡らしておりました。
[一言] とても綺麗で幻想的な雰囲気ですね。 影絵で作ったメリーゴーランドを見ているような気持ちになりました。 半ばまで読んで、勘違い系ストーカーの独白かと思った自分の心の汚さに、恥ずかしくなりました…
[一言] 美しいです。
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