宿屋
短いですが
顔に細かい傷を負った下卑ちゃんを見ながら近くの箱に腰を掛ける。
「でさ、聞きたいのはさらった人たちどうしてるのさ?」
ぎょっとした顔になる下卑ちゃん。いやさっき心読んでるからね。
『コイツまさかギルドの裏方か?だからおりゃあダルカンの旦那に言ったんだそろそろやばいんじゃ?って!』
うん、勝手な勘違いどうもどうもまあ勘違いは利用させてもらうよ。
「な、何のことだ?」
「だからダルカンと組んでなにやってるのか?って聞いてるんだけど?」
『なっ、ダルカンさんとの関係までばれてんのか…もうだめだ…』
「ギルドや街に来た新人をいちゃもんつけたり逆に仲良くなったフリしてダルカン商会に売り飛ばしてた。この街じゃ奴隷は御法度だから街から出るときはダルカン商会の息のかかった門番のゲートから他の町にだして売りさばいてるみたいだ。」
力無くへたり込んだまま下卑ちゃんが答える。ふんふん馬鹿は門番の二次候補だったらしい。
「じゃあまぁギルドに行って自首してくれるかな?ソコのマッチョ君と一緒にさ。ちなみに逃げないほうがいいよ?」
気がついたらしいマッチョハゲがよろよろ立ち上がるのに手を貸しながら下卑ちゃんは去っていった。
え?奴隷商退治?しないよ?別に官憲じゃないし?しかししまったね、神に治安のいい街って条件付け忘れてた…。次があったら注意しとこう。
チョイ遅れたけど宿の部屋空き残ってるといいけど…。『地形把握』で裏道を急ぎながら出てきた強盗二人を蹴り飛ばしぶつかってきたスリ一人は効き指をぽきっとしてあげた。溜息を三つ程。
「すいません部屋空いてますか?」
宿『憩い屋』の扉を潜りながら声を掛けると食事客に料理を運んでいたいかにもな女将が振り向いた。
「一晩銀貨3枚、朝飯つけるなら銅貨5枚増しでお湯が要るならそれも銅貨五枚」
「じゃあ込みこみで銀貨4枚ですね」(約4000円ってとこか)
お湯の桶と鍵を受け取り部屋に入ると閂を下ろす。荷物を寝台に放り出し服を脱ぐと濡らした布で身体を拭う。ちょっとさっぱりしたところで『収納空間』に手を突っ込み一本の鍵を取り出す。
(さて使えるかな?)
何も無い空間に鍵を突き出すと目の前に扉が現れて開く。
『隠れ家の鍵』や『収納空間』が使えるということはここでも他世界の『魔法具』は使用可能らしい。
『隠れ家』の中に入って裏庭に造った練習場に行き呪文を試してみる。『光源』と唱えると光球が手先に浮かび上がる。次に『無詠唱』や『同時詠唱』、『複数詠唱』も次々と試す。一通り可能なのを確認して寝なれた隠れ家のベットに横になる。さて、明日は何しようか…?
いや~台風すごかったですね