撃退
主人公は別に殺人狂とかではありませんが暴力にためらいはありません。
門扉を潜ると何人かの値踏みするかの様な視線(恐らく『鑑定』も含まれる)、それを『偽装』を発動させてかわし溜息一つ。
受付らしい制服を着たカウンターの女性の方へ足を向ける。
「冒険者ギルドタージェ支部へようこそ。御依頼ですか?」
「いえ、登録をお願いします」
作り笑顔で『こんな女の子が?』と思いつつも用紙を差し出してくる(植物紙は有るようだ)受付嬢。うんその職業意識好感度UPですね。女じゃないけど。
必要事項を書き込みよくある水晶玉に手をかざしてMPを測られ(当然『偽装』でごまかしますとも)血を一滴カードに垂らして、禁則事項の小冊子を貰って登録御仕舞い。
受付嬢にお勧めの宿を聞いて(ショックだ、お風呂の習慣がココにはない、どおりで冒険者達がほのかに匂う訳だ。)溜息一つ。
まあいいやベッドとご飯だと振り返りながら身を捩る。すぐ後ろに当る気満々で突っ立ってた下卑た兄ちゃんをかわし、とっとと街に出る。(おきまりに付き合うのがめんどくさい)後ろで何か言っていたがムシムシ。
とりあえず宿に向かう途中で晩御飯を買い込み、宿と反対側に食べながら足を進める。適当な袋小路に入って振り返ると3人ほどの追跡者…。さっきのギルドの下卑た兄ちゃんと門に居た馬鹿、あと知らないマッチョハゲ。
「お前のせいで仕事クビになったじゃねぇか!責任とってもらうからな!」
本当にクビにしたんだ。爺さんグッジョブ。惜しむらくは御友人達と世間に迷惑掛けないよう拘束しといて欲しかった…。
「自業自得だと思うけど?さらにソコの二人はどなたですよね?」
「衛兵は友人でな。アンタへのオシオキに協力しようと思ってよ」
『…。』うぁ…いらないですそうゆう18禁的思考。こういうときはカット出来ないのがウザすぎる。溜息一つ。
とりあえず路地裏に転がっている空き瓶をつま先で蹴り飛ばし、下卑た兄ちゃんの顔面に炸裂させる。破片が顔に刺さった上に残っていたらしい安酒が放つ腐ったすえた匂い…。そりゃ沁みるだろうね。目を押さえゲーゲーやってる、口とかにも入ったかね?ご愁傷様。
意外と素早かったマッチョハゲが掴みかかってくるのをワザと捕まってみる。その瞬間『拘束無効』が効果を発揮し、するりと身をかわす。ふ~む「常動型」か…。コレはオンオフできるのかしらん?
マッチョハゲの下にもぐりこんで地に手を突き天を衝く様に靴底を股間に叩きつける。自分の全体重+蹴りの衝撃を急所にくらいハゲマッチョの瞳がぐるんとひっくり返り泡を吹く。気絶したぽい。
頼みの綱を瞬殺され馬鹿は抜剣をした。
心を読むまでも無く剣がカタカチャいって震えてる。まあ一見、少女に秒殺とか想像もしてなかったんだろうケド…。
震える刃を指二本で挟み瞬時に捻って剣を折ってやる。(う~んナマクラだ)
折れた剣の柄を握り締めたまま馬鹿がへたり込む。その股間に折り取った剣先をぎりぎりの場所に撃ち込んでやるとズボンに盛大な染みが広がっていく。無意識にボロボロ涙を零している。
うん、実に上出来に実力差と心的外傷を刷り込みできたかな?
「コレに懲りたらおやっさんのトコに帰って土下座してでも許してもらってマジメになりな?」
壊れた人形みたいにカクカクうなずいて脱兎のごとく走っていった。あの状態のままおやっさんの処に行く気かね?溜息一つ。
「さてと…残ったお二人さんには聞きたいことがあるんだよね」
にこやかにようやく盲目状態から立ち直った下卑ちゃんに微笑んであげると絶望的な顔になっていた。
ちなみにハゲマッチョは未だ失神中。
暑い日が続きますね。皆様ご自愛下さい。