ありのまま
最近、急激に信者数を伸ばしている宗教がありまして…
ありのまま それを真理とする宗教が勢いを伸ばしていた。
「おい、お前もあの教団に入ったのか」
「おう、あれはいいぞ。だって一番大切なのが【ありのまま】なん
だから」
「どういうこと?」
「馬鹿だな、ありのままってのは、今の自分でいいってことさ」
「今の自分か。でも、今の自分を少しでも良くしたいから宗教に入
るんだろ?」
「おお、俺もそう思ったさ。でもよ、自分を否定してどうするよ。
自分の意のままにわが道を進む。それが唯一の真理なり。これが教
祖様のお言葉なんだ」
「なるほど。オレも一度集会に行ってみようかな」
これまで宗教には関心が無かった若者の間にも、ありのまま教は
広がって行った。
そしてその数が10万人を越えそうなところで、新しい展開があっ
た。
ある無人島をありのまま島として、信者を移住させ、パラダイス
を築こうとしたのだ。
ありのまま教のパラダイス。ありのままの貴方のままで、わが道
を行く。それが唯一の真理なり。
このキャッチフレーズと共に、人々は続々と島へと移住して行っ
た。
ところが、三月もしないうちに、ありのまま教団は破綻した。
そりゃ、そうだ、自分の欲望がありのまま、の人たちだけでは、
何一つまとまらなかったのだ。
【普通の社会の中にいて 助けられての ありのまま】
暫くは、こんな【うた】が流行したという。
現在、元ありのまま島は、【略奪島】【暴行島】【破廉恥島】
と呼ばれている。
ありのまま…とりようによっては都合のいい言葉ですね…