表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色の瞳  作者: 柊 響華
6/6

第三章第二節

 ひつぎが運び出されるのを見届けた後、帰ろうときびすを返した、その時ーー。

「あら。帰っちゃうの?」

 後ろから聞き覚えのある声がした。

 ゆっくりと振り返れば、シンプルな喪服に身を包んだ少女リデアの姿があった。

「お前、何でここに……?」

 僕の問いかけにリデアはくすりと笑った。

「葬式よ。あの子、私と同室だったのよ。少しは仲が良かったから、お別れくらいしようと思って」

 彼女は僕の隣まで近付く。

 僕は彼女から目が離せずにいた。

「ねぇ? 少し病院まで着いてきてくれないかしら? 話をしましょう?」

 リデアは愛らしく微笑んだ。

 僕は断ることも出来た。

 それなのに、そうしなかった。

 何故か、彼女から目が離せなかったんだーー。




 * * * * *



 リデアは話をしようと言った割には、鼻歌を歌いながら歩くだけで、何も話さなかった。

 僕の前をご機嫌そうに歩く彼女にイライラが募る。

 仲が良かった人間が死んだっていうのに、何故そんなに陽気なんだ?

「お前、何とも思わないのか?」

 僕がそう尋ねると、

「何が?」

 彼女は、こちらを振り返りもせずにそう聞き返す。

 その態度にますます苛立ちが募る。

「……っ。仲が良かったやつが死んだんだろ! 何か思わないのかよ……」

 何で……?

 死んだらもう二度と会えないんだぞ。

 寂しくないのか?

 悲しくないのか?

 仲良かったんだろ?

 友達だったんじゃないのか?

 頭の中でぐるぐると感情が回る。

「私は悲しくないわ」

 リデアは急に立ち止まってそう言った。

 急に立ち止まったので、危うくぶつかりそうになる。

「皆いつかは死ぬもの。それが早いか遅いかそれだけの違いよ」

 淡々とそう言って、彼女は再び歩き出した。

 慌ててその後を追いながらも、僕にはリデアの言うことが理解出来なかった。

 いつか死ぬから悲しくないのか?

 その気持ちが僕には理屈出来ない。

「……死んだらもう会えないだろ」

 たとえ、いつか死んで会えなくなるのだとしても、それが早くきたら悲しい。

 早くきた分だけ一緒にいれる時間は短くなる。

 それはとても寂しい。

 少なくとも僕はそう思う。

「ねぇ、聞いて」

 彼女は突然振り返ってそう言う。

 そして、そのまま後ろ向きに歩きながら話す。

「この世界は死に満ちているのよ。今こうして私達が話しているこの瞬間にも、何処かで誰かが死んでいるわ」

 リデアは真っ直ぐに僕の瞳を見つめていた。

 灰色の瞳が僕を捉えて離さない。

「けれどね」

 リデアは立ち止まり、両手を広げる。

 僕もそれと同時に立ち止まる。

「この世界はそれと同時に生も満ちているのよ」

 そう言って笑うリデア。

「どういう意味……?」

 彼女の言っていることは正直意味不明だ。

 僕の問いかけに彼女は柔らかな微笑みを浮かべて、つまりこういうこと、と説明する。

「何処かで誰かが死んでも、また別の何処かで新しい命が生まれる。彼女は死んでしまったけれど、また別の何処かで新しく生まれ変わるのよ。そうして、世界は回っていくの」

 だから、悲しくないと彼女は続けた。

「これから生まれ変わって、この世界の何処かで彼女は生きている。消えてしまったわけではないから、それでいいのよ」

 彼女はきびすを返しまた歩き出した。

 その後を追いながら、僕は思った。

 やはり、僕にはリデアの気持ちが分からない。

 生まれ変わりだとか、この世界の何処かにいるとか、そういうのを僕は信じられなかった。

 やはり、人が死んだら悲しい。

 仮に生まれ変わりがあったとしても、その人と同じ人物なわけじゃないだろう。

 その人が死んだらもう二度と会えないんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ