第一章
遅くなりましたが、ようやく次話投稿です!!
僕が住んでいるのは、ラヴーンという小さな街だ。
僕は街の隅っこの貧困層の奴らが住む区域でおんぼろの廃墟を自分の住処にしていた。
僕に両親はいない。
父親は何処の誰とも知れず、母親は娼婦で僕が8才の頃に酔っぱらいの喧嘩に巻き込まれて死んだ。
この辺じゃ珍しくもないよくある話だ。
僕はこの辺りじゃ泥棒と名高い。
なぜなら僕の髪は赤毛だから。
それがどうしたって?
これはとっても重要なことだ。
赤毛は不吉の象徴。
僕は多分父親似でーー母親は茶髪だったーー血のように真っ赤な髪をしていた。
そのせいで僕はろくに仕事をもらえないばかりか、ろくに物を買うことすら出来やしない。
仕事がない。
つまり金がない。
すると食べ物が買えない。
となれば盗むしかないのは必然だ。
生きる為、食う為に盗む。
何度も繰り返すうちに僕はいつの間にか巷じゃちょっとした有名人だ。
泥棒として──。
でも僕だって好きで盗みなんかしてるわけじゃない。
僕だって好きでこんなゴミにまみれて生きているわけじゃない。
これは僻みかもしれないけれど、金持ちを見ていると思う。
こいつらのせいで僕たちはいつまでもゴミのままなんだと。
「ねぇ。君の名前はなんて言うのかしら?」
少女が僕に尋ねる。
きっとこの女も金持ちの令嬢だろう。
身なりが僕らとは違いすぎる。
「なんだっていいだろ。あんたには関係ない」
僕がそうやって突き放すと少女は嫌そうな顔をする。
なんでお前に嫌そうな顔をされなくちゃいけないんだよ。
思わず舌打ちしそうになって堪える。
「嫌な言葉ね。私、嫌いよ。関係ないって言葉」
少女はそう言った。
だから、何だって言うんだ。
「お前が嫌いだろうが何だろうが、それこそ僕には関係ない話だ。あっちに行けよ」
僕が彼女を追い払おうとそう言うと少女は急に僕の隣にしゃがみこんだ。
「私。あなたの名前を聞くまでここを離れないわ」
「なら僕はここを離れる。そうすればお前と話さなくてすむしな」
僕がそう言うと少女はムッとした表情をする。
「あなたってとっても意地悪ね」
そう言って膝を立てそこに肘をつき頬杖をつく。
僕は立ち上がり、彼女を見下ろし言った。
「人に名前を尋ねる前にまず、自分から名乗ったらどうなんだ」
僕はそう言い放ちその場を歩き去ろうとした。
その時ーー。
「ああ。私の名前ね。自分から名乗るなんて思い付かなかったわ」
一瞬踏み出しかけた足が止まったが、その言葉にさすがお嬢様と思う。
庶民に名乗る名前なんてないって言うのか。
僕は振り向かず歩き出す。
「もう何年も名前を聞かれたことなんてなかったから──」
え?
僕は振り返り、少女の顔を見る。
言葉を発しようと口を開きかけるが、彼女がそれよりも先に言葉を発する。
「私はリデアっていうのよ。待っているから明日もここに来てよね」
そう言って笑う。
その笑顔の美しさに僕は思わず見惚れてしまった。
「あら? 行かないの? ああ。私に見惚れているの?」
そう言って少女は意地悪く笑った。
僕はその言葉にハッとなる。
「そんな訳ないだろ」
捨て台詞を吐いてその場を去った。
なんだか。
格好悪い。
明日ここには絶対に来ない。
来てやるもんか。
そう固く決意した。
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