表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

あなたが知ってるようで知らないおとぎ話

カエル王子

作者: シャム吉
掲載日:2026/06/06

ーー――これは、あなたが知っているようで知らないおとぎ話。


挿絵(By みてみん)


 ひょんな理由から、ランプの精霊のジンをお供に、料理修行に旅立った木こりの娘アンは、近くに綺麗な川が流れる小さなお城を見つけました。


「可愛いお城だね」


「小さいな……」


 アンは川のほとりで、腰を下ろして休憩しました。ランプの中から声がします。


「やっぱ、一人旅とか無理じゃないか?」


「一人じゃないでしょ。ジンがいるでしょ? 私の身に何かあったら、ジンも危険だからね。お願いしなくても、助けてくれるでしょう?」


「お前、それを狙ったな……?」


「ねえ、もし願い事を叶え終えたら、ジンはどうするの?」


「ランプを他の人に渡してもらう。そしたら、俺はまた次の人に願い事を叶える。だから、良い人に渡してくれよ」


「わかった」


 アンは頷きました。



「ちょっと、そこの娘さん」


 突然、足元から声が聞こえ、見ると一匹のカエルがいました。


「……ジン、カエルがいるよ」


「地域によっては、カエルを食べるところもあるらしい」


「カエルを? ……。今度やってみようかな」


「物騒なことを言わないでくれませんか?」


 カエルは慌てて言いました。

 アンは、カエルを見下ろします。


「私に、何か用?」


「カエルが喋ってもあまり驚かないんですね?」


「ランプの精がいるくらいだし……。それで、どうしたの?」


「あなたにお願いがあります。私をあの城の中に入れてもらえませんか?」


「無理です」


 アンは即答すると、カエルは悲しそうに硬直します。

 すると、ジンがランプから呆れた顔を出しました。


「訳くらい聞いてやれよ」


「ランプの精さん、ありがとうございます。聞いて下さい!

 私は元々、この国の隣国の王子だったのです。それで、あの城の姫に一目惚れしました。そしてある日、川で足を滑らせて溺れている姫を助けました。しかし、私は恥ずかしがり屋なので、遠くから姫が目を覚ますのを見守っていたのですが……。そこに魔法使いのおばあさんが来て、姫に気づき介抱したのです。そしたら、目を覚ました姫は助けてくれたのはおばあさんだと言い、私の存在に気付かずお城に戻ってしまいました。私は、自分の恥ずかしがり屋を後悔し、川の中に住む魔女に相談しました。すると、魔女は私の恥ずかしがり屋を直す代わりにこんな姿にしたのです。魔女が言うには、本日中にその姫と両想いにならないと、私は藻屑になってしまうのです! どうか、助けて下さい!!」


 アンとジンは口を開けて呆れていました。


「ジン、何か今の聞いて助けたいと思う?」


「いや。それに、何で姫が川で溺れているんだよ」


「残念だけど、自業自得ね……。両想いにするなんて、できるわけないわ」


「そう言わずに!!」


 カエルは泣いてアンに飛びつきました。アンはため息をつきます。


「まあ、聞いてしまった以上、できる限りのことは協力しましょう」



 アンは、カエルを鞄に入れ、王宮料理人見習いとして城に入り込みました。

 ですが、アンは当初の目的を忘れて、城の厨房に感激していました。


「新入り、皿洗え!」


「はい!」


「新入り、これ混ぜてろ!」


「はい!」


 アンは雑用をやりながら、料理の作り方を盗み見ます。


「あっ、それ入れるのもう少し待った方が良いと思います。先にこっちを入れて……」


 アンは勝手に料理人に口出しし、調味料などを入れて味見用を渡します。怒った顔をしていた料理人もそれを食べてうなります。


「おい、新入り! こっちの掃除をしろ!」


「はい!」


 アンは呼ばれた方に行く途中、あるコンロの火を止めました。そして、近くの料理人に声をかけます。

「これ以上火にかけると、柔らか過ぎになっちゃいますよ。丁度、今の硬さが良いはずです」


料理人は鍋の中を確認して驚いていました。


「おい、新入り」


 アンは料理長に呼ばれます。アンは緊張して振り返ると、料理長はニヤリとします。


「一品、作ってみるか?」


「はい!!」


 アンは目を輝かせて頷きました。

 料理長は、アンが作った一品を食べて頷きます。


「やっぱり、お前は才能あるな。どうだ、本格的に弟子入りしないか?」


 その言葉に、アンは興奮しました。


「えっ、え!? 料理長の弟子に! えっ、やりたい! ……でも、何かやらなきゃいけないことがあったような」


 その頃、鞄の中でカエルとジンは待たされていました。


「娘さん、私のこと忘れてますよね?」


「あいつ、料理が本当に好きだからな。終わるまで、何もできないぞ」



 アンが厨房の掃除を終わらせた頃には、もう夜の11時を回っていました。

 アンはカエルとジンに頭を下げました。


「ごめんなさい! うっかりしてた」


「もう時間ないぞ。こんな少しの時間で両想いになるなんて無理だろう。諦めて、藻屑になるんだな」


「そんな薄情な!」


 アンは急いで姫の部屋を探します。すると、偶然姫とすれ違いました。


「姫様!?」


「あら? ひょっとして、あなたが噂の新人料理人さん? 私と同い年なのに、とても料理が上手と聞きました」


 姫に笑顔で言われ、アンは真っ赤になります。


「めっ、めっそうもありません……。あの、お時間ありますか? 良ければ、お話しなんかしませんか?」


「良いわですね。私、あまり若い女の子と一緒におしゃべりしたことないんですの」


 姫は、アンを部屋に招き入れてくれました。

 イスに向かい合わせで座ったものの、どう切り出せばよいのか、アンは迷いました。

 沈黙の中、刻々と時間は過ぎていきます。0時まで、後15分。


「あなたは、好きな男性とかいらっしゃいますか?」


「へっ!?」


 姫から話し始め、アンは驚きます。


「いいえ、今はいません。……姫様にはいるんですか?」


「……はい。」


 恥ずかしそうに、姫は顔を赤らめて頷きました。

 アンは、もうカエルは助からないと思いました。


(カエルスープ作って、供養しようかな……)


「彼はとても恥ずかしがり屋で、いつも5メートルくらい離れてお話しするんですの。ですが、声が小さいので、何を言っているのか聞き取れなくて……、そこが可愛らしいんですの」


 姫は顔を赤らめましたが、アンは顔をひきつらせました。


「はあ……」


「この間も、遠くにいる彼に近づいてきて欲しくて、川で溺れるフリをしたら、本当に助けてくれて……。ですが、すぐ離れてしまって、横になって待っていても一向に来てくれなくて、悔しくて、嫉妬して欲しくて、たまたま近くを通りかかったおばあさんに協力してもらって、私を介抱するフリをして恩人役になってもらったんですよ」


「それって!?」


 アンが言う前に、鞄からカエルがピョンと飛び出しました。


「姫! その話は本当ですか!?」


「…その声は、王子? どうしてそんな姿に?」


「あなたときちんとお話ししたくて、魔女に恥ずかしがり屋を直してもらったら、代わりにこんな姿に……。こんな姿の方がよっぽど恥ずかしいのに……」


「まあ! 王子はどんな姿をしていても、素敵ですよ」


 姫はカエルを手のひらにのせ、キスをしました。

 0時の鐘がなります。すると、カエルが光り出し、なんと人間の姿になりました。


「姫! 人間に戻れました!」


「私の愛が届いたのですね!」


 二人は手を取り合い、涙ぐんでいました。



 アンとジンは、たくさんお礼を言われましたが、上の空でした。


「何か……、疲れたね」


「めちゃめちゃ、遠回りをしていた気分だ」


「さあ、気を取り直して、次の国へ行こう!」


アンとジンは、また旅を続け始めました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ