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仕掛けられた罠と逆算

罠は、派手じゃなかった。


むしろ、地味で、卑怯で、

「気づかなければ失敗に見える」タイプのものだった。


「……ここ」


俺は、結界図を指でなぞる。


「この接合部、微妙に角度が変えられてる」


「一見、誤差」


「でも」


アルトが、すぐ理解する。

「長期運用で、歪みが出る」


「最終的に」


「改修者の責任に、なる」


「そう」


ため息をつく。


「壊す気はない」


「ぼくを、信用できない存在にしたい」


辺境で“失敗した人族”。


そうなれば、

王都が再び「保護」の名目で手を出す。

――よくできてる。


「で?」


アルトが、腕を組む。


「どう逆算する?」


俺は、少しだけ笑った。


「もう、逆算してる」


まず。


結界に触れた人間を、洗い出す。


補修担当。

資材管理。

巡回記録。

「……ヴァルドの派閥」


アルトが、低く言う。


「ほぼ、独占だ」


「でも」


俺は、首を振る。


「直接じゃない」


「彼は、もっと賢い」


「下を使う」


そして――。


「使われた側は」

「自分が罠だと、気づいてない」


夜。


俺は、あえて一人で、結界を再調整した。


見張りもつけず。

報告も、最小限。


――餌を、撒く。


案の定。


翌日、動きがあった。


「……結界、再調整された?」


「誰が?」


「人族、だろ?」

「また、勝手に?」


噂が、広がる。


「不安定だって、聞いたぞ」


「やっぱり、危険なんじゃ――」


その裏で。


俺は、魔力記録を保存していた。


触れた痕跡。

流れの変化。

刻まれた“癖”。


「……これ」


アルトが、記録を見て言う。

「三人」


「同じ手つきだ」


「同じ派閥」


「でも」


「命令書は、ない」


「だよね」


俺は、静かに続ける。


「命令は、口頭」


「しかも」


「“善意”を装ってる」


「『危険だから、微調整しておけ』」

「『人族に任せるのは、不安だろう?』」


アルトが、歯を食いしばる。


「……最低だ」


「でも」


俺は、顔を上げた。


「ここからが、本番」


三日後。


再度の、結界公開検証。


辺境貴族、全員出席。


ヴァルドも、当然、いる。

「……不安が残るとの声があり」


老獅子が言う。


「再検証とする」


「レオン」


「説明を」


俺は、前に出た。


「はい」


「まず」


「結界は、問題ありません」


「むしろ」


「“意図的に、手を加えられなければ”」

ざわっ。


「次に」


「改修後に、触れた記録を」


魔力記録を、開示する。


光の線が、浮かび上がる。


「……これは」


「触れた順番まで、出てる」


「三名」


「ここに、います」


指を向ける。


顔色が、変わる。

「彼らは」


「善意で、微調整を行った」


「……つもりだった」


「でも」


「その結果」


「結界は、長期的に不安定化する」


「つまり」


「失敗を、ぼくに被せる罠です」


沈黙。


「待て!」


ヴァルドが、声を荒げる。

「証拠が、弱い!」


「命令書も、ない!」


俺は、落ち着いて言う。


「はい」


「だから」


「彼らは、罰せられるべきではありません」


ざわっ……?


「え?」


「……どういうことだ」


俺は、ヴァルドを見る。


まっすぐに。

「彼らは」


「“使われた側”です」


「問題は」


「誰が、この状況を作ったか」


老獅子が、ゆっくりヴァルドを見る。


「……説明せよ」


ヴァルドの、喉が鳴った。


逃げ場は、ない。


怒鳴らない。

責めない。


ただ。

“構造”を、全部、可視化した。


これが。


俺のやり方。


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