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アルトの見ている背中

――アルト視点――


最初に思ったのは、

「れおんは、ちいさい」

だった。


背も、体も、声も。


でも、それは弱いという意味じゃなかった。


学院に入ってから、俺は何度もそれを思い知らされている。


周りは、うるさい。


家の名前だとか、魔力の量だとか、血統だとか。

正直、どうでもいい。


俺が見るのは、いつも一つだけだ。


――れおんが、どうしてるか。


実技で失敗した日、

れおんは、なにも言わなかった。


顔色も変えなかった。

泣きもしなかった。


それが、いちばん、怖かった。


「だいじょうぶ?」


そう聞いたとき、

「うん」

って言った声が、少しだけ固かった。

ああ、これは――

一人で抱えるやつだ。


俺は、強い方だ。


耳も尾もあって、魔力も平均以上。

家も、それなりに名がある。


だから、思った。


――俺が、そばに立てばいい。


れおんの評価が戻った日、

教室の空気が変わった。


あからさまに、だ。


さっきまで見下してたやつが、距離を測るようになる。

露骨に近づいてくるやつもいる。


それを見て、正直、腹が立った。


でも、れおんは違った。


誰にも、態度を変えない。


褒められても、驕らない。

謝られても、踏み込まない。


――すごいな、って思った。


同時に、少しだけ、胸がざわついた。


俺が守らなくても、

れおんは、ちゃんと立っている。


それが誇らしくて、

でも、なぜか――少し、さみしい。


放課後、並んで歩きながら、俺は言った。


「れおん」


「なに?」


「……つらいとき、いえ」


れおんは、少し驚いた顔をしてから、笑った。


「うん」


その笑い方が、

俺の胸を、きゅっと掴む。


――これ、なんだ?

友情?

それとも、別のなにか?


まだ、名前は分からない。


でも、一つだけはっきりしている。


俺は、れおんの隣に立つ。


後ろじゃない。

前でもない。


同じ高さで。


それを、選ぶ。


学院の空は、今日も高い。


この先、なにが起きても。

れおんが進むなら、俺も進く。

それが、今の俺の答えだった。

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