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遠い未来、砂漠の惑星で  作者: 石江京子


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1/3

1.どこにもなくなってしまったお話

 金曜日の国語の時間に、『物語をつくる』という授業がありました。


 こよみは、先生のお話を聞きながらも、ちょっぴり優越感(ゆうえつかん)を持ったのです。


 これって、わざわざ学校で習うことなのかな。


 小学四年生のこよみには、自由にお話をつくって書く、ということは、家でいつもやっていることでした。

「授業時間内にできなかった人は宿題です」と、先生は話しました。でも、こよみは家でじっくり考えたかったので、宿題として持ち帰ることにしたのです。


 週末に家でよく()って、しっかり書いてから月曜日に提出(ていしゅつ)する。そのほうが絶対にいいお話になる。


 そう思っていたからです。




 まずは、どんな物語にしようかな。

 

 家に帰ると、こよみは頭をひねって、いろいろ考えてみました。けれど、なかなかよいアイデアは浮かんできません。いいお話にしようと力を入れすぎているせいでしょうか。

 結局、夜がけても何も思いつきませんでした。


 もう遅いから、明日にしよう。


 あきらめて、布団(ふとん)に入ることにしました。


 明日の朝のほうがいいストーリーを思いつくかもしれないし。でも、早く書くことを決めたいなあ。


 そう思いながら電気を消します。部屋は真っ暗になりました。


 ここは、うさぎの赤ちゃんが眠っている洞穴(ほらあな)なんだ。鳥の巣箱(すばこ)のなか、というのもいいかも。深海(しんかい)にすんでいる魚も、こんな暗いところにいるんじゃないかな。


 いつも心のおもむくままに想像しながら、こよみは目を閉じるのです。


 眠りに誘われつつも、さまざまなお話のかけらがひとつふたつ、と思い浮かびます。やがて胸のなかに、何かきらめくものが生まれたような気がしました。


 こよみははっとします。

 素敵(すてき)な物語を思いついたのです。


 これ、いいかも。きっとみんなもおもしろいって言ってくれる。


 わくわくどきどきしました。


 明日の朝、書こう。




 ところが、朝起きたとき、こよみは「あれ?」と気づきました。


 昨日の夜、何かお話を思いついたんじゃなかったっけ。どんなものだったかな。忘れてしまったみたい……。

 でも。もしかしたら、何かのきっかけで思い出すかもしれない。


 そう思って一日を過ごしましたが、何ひとつ思い起こせないのです。まるで何ひとつ。


 夜、布団に入ってみて、昨日と同じことを考えてみました。


 ……だめでした。

 いくら考えても考えても、そのストーリーのほんのひとかけらさえ、記憶から呼びもどすことはできなかったのです。


 日曜日の朝、こよみは気持ちを切りかえるしかありませんでした。


 あの物語は、もうなくなってしまったんだ……。


 仕方なく、宿題をすることにします。思うような筋立(すじだ)てが出てこなかったので、教科書に載っているようなお話を書きました。

 どこにでもありそうな物語でした。




 月曜日の授業で、そのお話を提出しました。

 上手な子のお話は読まれましたが、こよみのお話は読まれることはありませんでした。けれども、別にそれでよかったのです。

 失われてしまったお話のことで、頭のなかはいっぱいだったのですから。


 もうどこにもなくなってしまったお話。あれこそ、わたしの語りたい物語じゃなかったのかな。

 あのお話は、どこへ行ってしまったんだろう。

 そんなにすごいものじゃなかったかもしれない。だけど、ひらめいたときは心がわくわくした。もう消えてしまったなんて、思いたくないなあ。


 胸もとがひどく重くなり、気持ちが沈んだまま、こよみは学校から帰ってきました。




 自分の部屋にランドセルを置くと、こよみはふと窓から庭をのぞいてみました。

 春にはまだ遠い季節、家の前の小さな庭にはたいして植えられているものがありません。くすんだ緑色の植木がいくつかあって、パンジーの黄色や紫の花だけが色鮮(いろあざ)やかに目立っているはずでした。

 それなのに、何かいつもと違うものが目に入ったのです。


 見覚えのないダンボールの箱が、庭のすみに置いてありました。


「何の箱?」


 みかん箱のようなありふれたものです。こよみは(くつ)をはいて玄関を出ました。庭を進んで、ダンボールのなかをのぞき込みます。


 真っ暗でした。ダンボール箱の底は見えなくて、果てしない(やみ)

 よく見ると、無数の小さな星が(かがや)きを放っています。


「星空、なのかな」


 もっと顔を近づけると、こよみはなかへ引っ張られるように入ってしまいました。


「わあっ」


 あわてて箱の(はし)を手でつかもうとしますが、うまくいきません。なぜか反対側に出られたと思った途端(とたん)、いきなり砂の上に(しり)もちをついていました。


「何これ……」


 辺りは、いつもの見慣れた庭ではありませんでした。一面こまかな砂の地面で、他には何もないのです。さっきまで昼間だったのに、夜になっています。

 ダンボール箱のなかにあった、きらきらと星の(またた)く夜が頭上に広がっていました。


 一体ここはどこなのでしょう。


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― 新着の感想 ―
学校の宿題で、物語を…いいお話を思いついたと思って、でも思い出せないことも、ありますよね。そしてそこからの展開に惹きこまれました。 こよみが目にしているもの、気になりますね。続きも楽しみにこの後も読…
こよみちゃん、一体どこに行っちゃったんでしょう!? 「失われたお話って気になるよね」と共感しているうちに、物語に引き込まれていました。続きが気になります!!
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