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吸血塾2ブラッドサッカー  作者: クオン
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後輩には事情を隠すことにする桐谷翔太

若生と桐谷が部屋の外に出ると、階段にエディーともう一人中央高校の学生服を着た少年が並んで座っていた。

「一之瀬?」

桐谷が少年を見て言ったが無反応のまま座っている。

「乱入しそうな勢いでしたのでね。ちょっと 縛らせて もらいました」

そう言ってエディーは一之瀬少年の目の前でぱちりと指を鳴らした。

ハッとして我に返り立上がって、周りを見て若生と一緒に立っている人物を確認した。

立ち上がってから若生は気づいたが、一之瀬は若生や桐谷より頭ひとつ背の低い少年だった。

「先輩! 大丈夫っすか?」

「あ、ああ、大丈夫だ」

エディーの縛ると言った意味は催眠術か何かだったのだろう。

「おめーは大丈夫なんか?」

「はっ? 自分に何しやがった? てめえら!」

「待って もらっていただけですよ」

涼しい顔でエディーが言った。

「出よう」

そう言って若生は先に外に出て塾の門の前で二人を待った。

二人が門の外に出てから若生はついて行く。

「先輩、ホント大丈夫すっか? 何かされてませんか?」

「されたって言いやーされちまったが・・・」

桐谷はちらりと後ろの若生の方を見た。

「他に言わないって口止め出来るんなら言ってもいいよ」

「言ってもしょーがねー、自業自得だからなー」

「な、なんすか? 何があったんすか?」

「君、名前は?」

後ろから若生が声をかけた。

「ああ? んでてめえに名乗らなきゃ――」

元々背の低い一之瀬は背をまるめた低い姿勢から睨みあげながら若生に突っかかろうとした。

「一之瀬直人」

切り上げるために桐谷は最小限の紹介をした。



「他のはどした? 3年は?」

「それは、その・・・」

「おめーはどうして俺達追いかけてきた?」

「そりゃ、自分が先輩の服持ってたし」

「すまねーな」

桐谷は一之瀬の持っていた服を取り上げるように受け取って肩掛けにした。

「蓮夏は君達とどういう関係だったの?」

「どういう関係に見えた?」

「蓮夏が紅一点の不良グループ」

「誰が不良だ? こら?」

やはり一之瀬が突っかかる。

「不良つっても大したこたーしてねーよ。本庄が他人にめーわく掛けんの嫌がってたからなー」

「やっぱ、蓮夏がリーダーだったんだ」

「てめーはなんで本庄を呼び捨てなんだ?」

「そう呼ばないと蓮夏が怒るからさ」

「大体本庄はなんでおめーなんかと関わるようになったんだ?」

「二度ほど命を助けてね。岡田って先輩に何か聞いてなかったの?」

「ちっ、そーゆーことかよ。『緋波に関わるな』っつってたか」

「忠告は本当だったろ?」

「まさかこんな馬鹿げた事になるなんて思うかよ?」

「蓮夏と一緒に岡田さんは見たはずなんだ。俺が一番怖かった時の暴走をね。半端な口止めのせいでこんな事になったのなら関わった人にはある程度知っててもらった方がいいのかな?」

「いや、ダサくて話せるもんじゃねー。ここで口止めしとくぜ」

「まあ、関わってくる奴はどんな手使ってでも関わってくるんだけどね。絶交するくらいの覚悟が無いと難しいよ」

「ゼッコーだとよ。一之瀬、今から俺からゼッコー宣言されたらどーする?」

「絶交って、『絶交なんか両方から宣言しない限り事実上無効だ』って先輩言ってたじゃないすか?」

一之瀬にしてみれば蚊帳の外に置かれても不思議のない雰囲気で桐谷が話を振ってくれたのは嬉しかった。

「ええー? 俺、んなクッセー事言ってた?」

「格好いいセリフだね」



若生はちらっと一之瀬を見てから桐谷に目を向けた。

「ところで、廃ビルで使ってたあの格闘技は空手なの?」

「空手半分、キックボクシングが半分か」

「すごかったね。鍛えてるとあんなに動けるもんなんだ」

「けっ、余裕かましてたのは、てめーの方じゃねーか」

とは言ってみた桐谷だが、若生の目の輝きが皮肉などではないことが分る。

「習いたいとか、教わりたいとか言うなよ。テメーなんかがかじった日にゃ洒落になんねーよ」

「見学も駄目かな?」

「テレビでも見とけ」

つれなく桐谷は言った。

「テレビは好きじゃないな・・・」

過去に姉弥生が父親に性的な虐待されていた時、その声や音を聞くのが嫌で、テレビの前でずっと座り込んでいた。

面白くも何ともなかったように思うし、そもそも若生は自分がどんな番組を見ていたのかまったく覚えていなかった。

そのまま話題が途切れたまま、大型マンションが建ち並ぶ場所に来た。

「まだ心配かよ?」

「君んちはこの辺なの?」

「あのC棟だ」

10階建ての敷地面積にかなり余裕のあるマンションは3棟あり非常階段部分のせり出した壁にABCの大きな表示があった。

一つのフロアに20軒近くはあるだろうか?

「へえ、大きいんだね?」

「けっ、全体だけはな。一軒一軒はセコイもんだ。でー? 家ん中までついてくんのかー?」

「いや、ここまでにしておくよ。特にヤバいのはいないみたいだから。じゃ、また」

若生は桐谷と一之瀬に背を向けてきた道を戻り始めた。

若生には桐谷の脳波が感知できるようになっていた。

離れながらどこまでそれを維持できるのか確認していた。

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