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吸血塾2ブラッドサッカー  作者: クオン
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襲撃に失敗する若生と風馬

若生と風馬は山腹の農道が広がっている箇所で槙野荘を見張りながら、突撃パターンを相談することにした。

途中、七緒からの連絡で施設内の大まかな間取りの情報を加えながら話を詰めた。

「臭いセンサーでの結果はほぼ間違いなく死体があるそうだよ」

追加連絡である。

「警察も包囲を増やすようでござるな。あれが落ち着けば時間待たずに仕掛けるかな?」

「待って、七緒先生に連絡してみる」


若生のSMSを見た七緒はマルリックに確認を取る。

「若生君から、警察の包囲が終わったら時間を待たずに仕掛けると言ってるのだけれど?」

「悪くはない。苅田殿、構わないな?」

「現場には時間が早まると伝えましょう」

「我々は移動車で控えようか。若生は忍者から銀針を受け取っているはずだ。気にせず使えるだけ使えと伝えてくれ」

「以後、私は貴方の指示に従うわ」

七緒は人間と連携するのは初めてなのでマルリックの指示で動くことは事前に取り決めていた。

マルリックは七緒の携帯に義手を添えて篠原健司にもSMSを入れるように促す。


「あちらの準備はできたようだ。暗くなってきたし、行くかな?」

「闇深くなると、奴ら動き出すかも知れませぬ故」

若生は運動靴を脱ぎ棄てた。

どうせ衝撃波を発生させる時に破損してしまうのだ。

「あの木を天足の術に使おうか」

「良い枝ぶり、先ずは某から」

若生が目をつけていたのは大きなクヌギだった。

風馬は上に伸びた上端近くまで登り、枝がたわんだ処で足をかけ跳躍した。

若生は一緒に登り、揺れる枝をつかんで、枝が横になった瞬間に足をかけ風馬と同様に跳躍した。

「風馬さん早っ!」

ヒムササビを使った風馬の滑空は早かった。

若生は足に衝撃波を作って空中を「蹴って」風馬を追う。


警察隊が道路封鎖を終えた時だった。

空に炸裂音が響き渡る。

「銃声か?」

「何処の班だ?」

「空だ!」

空に四角い影が現れ槙野荘の屋根に取り付く処だった。

更に銃声のような音が空に響き渡り、今度は人影が上空を通り過ぎて行く。

「風馬さんは左の屋根か」

若生は更に衝撃波で右の屋根に軌道を変えておいて着地寸前に下に向かって衝撃波を放つ。

屋根瓦が吹き飛び粉塵が巻き起こる。

屋根にできた穴を広げてもぐりこみ天井を踏み抜き飛び降りたのは2階の病室だった。

直ぐに風馬が続いて降りてくる。

幅の広い引戸をスライドさせると廊下から異臭を感じた。

「こっちか?」

「外れにござる」

風馬は臭いのする方向とは逆に走り、突き当り階段手前の部屋の扉の隙間に、「くろがね」という魔剣を突き入れ引き開いた。

「若生殿! 任せて良いか? 某、階下へ!」

つまりは中にリタは居なかったのであろう。

若生は飛び出そうとする獣化眷属の首に横からブレードを突き入れ、拳に戻しながら衝撃波を放ち頭部を粉砕する。

頭部のない体は部屋の中に押し込んでおく。

廊下に出て次の部屋を探すか? 階下に降りるか? と、逡巡しながら廊下に出ると同時に別部屋から狒々のような顔面を持つ獣化眷属が飛び出てきた。

獣は若生を目でとらえようとした。

しかし、それは誤りだった。

獣は逃げるにしても攻撃するにしても、まず動かねばならなかったのだ。

先に動いたのは若生だった。

準備していた衝撃波を放って廊下奥に吹き飛ばされていく獣。

放った衝撃波を追いかけるように肉薄し、ブレードからの衝撃波で頭部を粉砕し2体目を仕留める。

「手間だが仕方がないか」

若生は一部屋ずつ扉を吹き飛ばして中を確認していくことにした。

次は今獣がいた隣のドアだ。

引戸は身体強化の体当たりだけで簡単に内側に吹き飛んだ。

「いない、こういう時はクリアーっていうんだっけ?」

次の部屋に向かおうとして若生の耳が階下での気配を拾った。

「戦闘音? 風馬さん!」

若生は1階に降りることにした。

一階には事務所・多目的室・大浴場・共同トイレ・食堂厨房などの共有スペースとなっていることは把握していた。

音のしているのは事務所だった。

コンビナートにいた2m級の眷属が、事務所の机や椅子等の備品を廊下にいる風馬に投げつけていた。

「こ奴は時間稼ぎをしているのでござる! 本命は奥西の倉庫!」

なるほど、そちらをふさぐように障害物を投げつけたり廊下に出入りしたりしているのか。

若生は散らばっている備品から椅子を拾い上げ、眷属に向けた。

両手パスのように衝撃波を使って椅子を発射した。

その方がモーションがないので不意打ちになると思ったのだ。

その隙に風馬が廊下の奥へと進む。

眷属の気が風馬に一瞬それた隙に若生はデスクを盾にしながら眷属に突っ込んだ。

眷属は直ぐに反応し向けられたデスクの盤を右腕で突き破る。

若生はデスクから乗り出して眷属の首にブレードを突き立て衝撃波に変える。

眷属は反応して躱そうとするがデスクに突き立ってた自分の右腕が邪魔になって首を振ることしかできず、首の左から下あごを吹き飛ばされた。

若生はもう一度ブレードで筋力の弱まった首を薙ぎ払った。

眷属の巨体がデスクにのしかかるように倒れるところを更にフリーな右腕を切り落としておく。

その胴体がまだ動くかどうか確認する暇を惜しんで若生は廊下に出て風馬を追って倉庫に向かった。

風馬は倉庫の扉を切り裂いて中に侵入していた。

若生は想定外の現状に固まりかけたが内部を見回し確認する。

倉庫の中は土と瓦礫で足場が埋もれていた。

窓際の下に人が屈んで通れるほどの穴が掘られていた。

横の壁にはつるはしとスコップが立てかけられている。

「地面を掘って逃げたのか」

「してやられた。地中を避難口に使ったのでござろう」

何処につながっている?

若生は窓の外を見渡すと、民家が見えた。

侵入した扉を引きちぎり、穴をふさぐように充てる。

ブレードを突き入れ、衝撃波を扉の向こうの穴に放つ。

窓の外から見える民家が明らかに振動してる。

若生と風馬は顔を見合わせて、窓から外に出て民家縁側のサッシに、取り付く若生の衝撃波で窓ガラスはひび割れていたので簡単にガラス破片を取り払って、内側のロックを外し侵入する。

「死臭! こちらからか」

ダイニングから台所に入ると首のない遺体が二つ転がっていた。

腐乱こそしていないがそこそこ時間経過しているのが臭気で判る。

「すでに2、3日前よりここから逃げる算段をしていたようでござる」

「逃げた後だったのか?」

「足跡の乾き具合から逃げたのは半日前、恐らくは昨夜の襲撃後」

風馬は勝手口の床と外を見比べながら見分の結果を述べた。

「一度は介護所に戻っていたはずにござる」

「追跡は・・・追跡方法はある?」

「あるにはあり、しかしながら心許なき案にて、一度本庄家に戻るがよろし」

風馬は勝手口から外を伺いながら出て、式神らしき白い紙を懐から取り出した。

「逃げたのは2体、片方はリタでござろう」

ひらひらと式神は地面に近い空を泳ぎ民家の脇を通っていき、それを風馬は追い始める。

「七緒先生に連絡しても?」

「むしろ、早急に」

民家は槙野荘よりわずかに高い位置にあり、その裏は登り斜面となっていた。

けもの道のような藪をかき分けた跡を進むと広い空き地に出た。

若生は起動させたスマホで七緒に連絡する。

『若生君、無事?』

「すまない逃げられた跡だった」

『戦闘中だと警察からは連絡があったけれど?』

「あいつらは時間稼ぎだ。殿だったんだ。今、風馬さんと追跡してるけど」

「ここで途切れてござる。踏み込んで跳躍した後舗装路にでたのでござろう」

若生は風馬に頷きつつ話を続ける。

隣家の住人が犠牲になったことや、槙野荘に未確認の部屋があることなどを伝えて通話を切った。

道路に出ると警察官に見つかる。

むしろ今まで警察に見つからなかったのが不思議だった。

「事情の説明は七緒殿にお任せしよ」

風馬は指を組んで跳躍するよう若生に促す。

若生は組んだ掌を踏んで天足の術の踏み込みを使う。

宙に舞った若生を確認してから風馬は電柱の天辺に飛び上がり、そこからヒムササビを展開して滑空したのだった。

警察官が下で何か叫んでいた。

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