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吸血塾2ブラッドサッカー  作者: クオン
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リタの潜伏先を推定

蓮夏は吸血鬼二人の会話を聞き流しながら若生のことを考えていた。

若生は恐らく遠からず欧州に渡るつもりなのだろう。

高校を中退してまでマルリックの元で外国語を学んでいるのもその準備のためなのだ。

若生が渡欧する時、当然自分だって付いていきたいと思う蓮夏だった。

同じく聞き流しながらエディーを見つめている早紀はどうなのだろう。

エディーは日本に骨を埋めるつもりなのだろう。

早紀はエディーのスレイブとなったら常に付き従うつもりだろう。

桐蔭寺家の追求は、頭首がスレイブいや崇血者となった本庄家より厳しいものがあるはずだ。

となると、早紀とエディーは程なくしてこの地を離れ、どこかに隠棲することになるのかも知れない。

つまり若生の渡欧は早紀との別離を意味する。

それはそれで忸怩たるものがあった。

蓮夏は若生のスレイブとなったことで自分は変わってしまったという自覚はある。

コレクション的に同性愛関係を続けていた時とは違い、若生には命を救ってもらった恩義に報いると言う事以上の執着心がある。

レズビアンの相手達が他(男)の恋人を作ったりしても、さほど気にせず他の子猫ちゃんたちをとっかえひっかえしていた蓮夏でも早紀だけは未だに特別な存在である。

コレクション的に同性愛関係を結んできた蓮夏にとって最も愛情を注ぎ、信頼もできる相手が早紀だった。

他の肉体関係対象とは違って家庭の境遇が似通っていた早紀とならシチュエイションを十分共有できると思ったから、吸血鬼の若生を紹介したのだ。

まさか、時間差で自分共々スレイブ化してしまうとは想定外だったが。

想定外と言えば早紀がエディーになびいて行ってしまったきっかけはその時からだったのかも知れない。

あれから二人は確かに家庭事情の心的な呪縛から解放されたのは良かったのだが、蓮夏は若生に傾倒し、早紀は蓮夏と若生に等しい距離を置き接するようになってしまった。

いつの間にか壁際で早紀が本庄家の茶道具で茶を点てはじめていた。



丸一日後の夜明け、つまり時間は進んで緋波若生がコンビナートで眷属と一戦した後の午前である。

繁華街のオフィス、篠原健司のアジトに3人は入った。

場末の探偵事務所と言った感じの内装だったが屋内は6坪ほどと狭くは無かった。

応接セットのソファには戒田誠也と宝神小瑠璃が向い合せに座っており、誠也は立上がり、宝神はソファに座ったまま首を回して入り口に顔を向けただけだった。

事務所に入るなり健司はソファに倒れ込んだ。

健司のスレイブである船田幹乃は準吸血鬼の目で、すでに自分の主が発熱していることは気づいていたため冷蔵庫のフリーザーから軟質容器に入った保冷剤を出して額に押し当てた。

「水分補給と吸血で治まるだろ」

と言う若生も戦闘後は50℃近い高体温だった。

髪の毛から熱を発散させたり皮膚を針状に突起せて強制冷却できるので今は人の平熱よりやや高い程度であるが消耗という点では健司より深刻かも知れなかった。

「やられたのは腕か?」

誠也が察したのは当然で健司の左腕のスーツは肩から破れて袖が無かったからだ。

「リタ様にやられたの?」

宝神が向かいのソファから座ったままで訊く。

「やったのはリタの眷属だ」

答えたのは若生だった。

「待て、何と言った? あれが眷属だと言うのか?」

慌てたように問いただす健司に一昨日の襲撃はグールだと若生は説明していたのだ。

「グールは最初にリタが火を放って捨て駒にした奴らだ。3体目からのは動きが違ったし連携の取り方が全然うまかったよ」

答えてから若生はキッチンと言うより給湯室のような仕切りの中に入って勝手にコップから水道水をがぶ飲みした。

「つまり、相手はリタ様そして眷属が?」

船田がまとめようとするのは健司のためだろう。

出来たスレイブだと若生は思いながら若生が答える。

「眷属が3体? グールは6体。つまり犠牲者は9人ということになる。これは無理だわ」

「無理とは何がだい?」

訊いたのは誠也だった。

「リタ様だけで、これだけの数の人間をばらばらに眷族にしたりグールを作ったり出来ると思う?」

「別の協力者がいるとでも?」

疑問を呈した誠也にしても、その線は考えにくかった。

「と言うより、どこか一所で眷属とグールを作ってるって線じゃない?」

宝神が健司を見ながら訊く。

「スレイブも作っている可能性を考えると15人、いや、それ以上をまとめて吸血できる環境をリタは得ている訳か」

若生も宝神の言わんとしている事は察することが出来た。

「まさか・・・槙野荘か?」

健司が顔を上げて呻くような声を出す。

「心当たりがあるのか?」

飲み干したコップの水を何度目か補充しながら若生は続きを促した。

「マーベラスホスピタルの介護施設の別邸だ。金持ち専用の老人ホームに特化した施設で、10人程度の要介護人に専属看護師が一人ずつプラスアルファでついている。スレイブの勧誘のためにリタと訪問したことがあった」

「隔離に近い場にまとまった数の人が生活していたと? つまりコミュニティーを強制的に作るには最適かもしれない環境だったというわけか」

そこで若生は思案する。

もし、リタが索敵中だったら吸血鬼が近づいた時点で施設を放棄してしまうかもしれない。

攻めるなら間髪を入れず一気に攻め入り、逃げる暇を与えず瞬殺しなければならない。

「乗り込みたいところだが・・・」

健司も同じ考えに至っていてジレンマを持っているようだ。

「夜まで時間がある。付け焼刃でもいいから何か策を練ってみよう」

「何処へ行く?」

振り向きざまにそう言う若生を問い止める。

「スレイブと合流するよ」

「血なら間接採血でよければ、こいつらから供給するが?」

「マルリックがどうなっているか心配だからね。スレイブが警察に監視されているようなら直ぐに戻るよ。その時はよろしくたのむ」

若生はオフィスのあったビルから離れたところから携帯で七緒を呼んでみた。




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