表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血塾2ブラッドサッカー  作者: クオン
45/62

緋波家宅で待ち伏せる若生

日付が変わった1時半。

若生は自宅、昼間蓮夏と過ごしたソファに一人で座っていた。

そしてそこは過去に、この家の二階で姉弥生が父隆に犯されていた時、若生が一人でたたずんでいた場所だった。

いつも飢えながら、このテレビを見て気を紛らわせていた。

今でも鮮明にこの場所での記憶が蘇る。

いや、蓮夏と共にいた時は一切思い出さなかったか。

やはり、蓮夏は今の若生の心の多くの部分を占拠してしまっているのだろう。

例え、クロスブラッドし、記憶の多くがロードフィルの物にすり替わってしまったとしても、心や性格は浸食されたりはしていないという事だろう。

蓮夏はそれを確認させてくれる、ありがたい存在だった。

若生は緋波家の外を取り巻く気配に気づいていた。

複数の吸血鬼!

リタ・ギオレンティーノではないのか?

それともリタの眷属なのか?

判ったことは数が数えられないほど多くの吸血鬼に囲まれているか、数が把握できないほどのスピードで周囲を動き回っているということだ。

後者だと厄介だなと若生は思った。

それほどのスピードという事は、かなり強力な眷属を相手にする事になる。

若生は複数の眷属を相手に闘うのはリタと乗松綸子の共闘以来だったが、あの時は戦闘前に二人を引き離すことが出来た。

本格的な複数攻撃を受けるのは初めてということになる。

「2体入ってきたか・・・」

玄関と勝手口はあえて鍵をかけていなかった。

両方とも、みしみしと歩く音を消さずにこちらに進んでくる。

外にはまだ複数いるという事は少なくとも眷属は4体以上。



リビングのドアを開けて異形の獣が顔を覗かした。

狼!?

いや、ヒヒか?

どちらからも大きく外れているのは鼻と口回りだった。

鼻から下の唇が左右に大きく裂けてめくり上がり鼻骨回りの肉と歯茎と牙がむき出しになっていた。

おそらく無理に発達した顎に口回りの皮膚が追いつかなかったのだろう。

ドアの隙間から見える顔も首も胸も体毛で覆われていた。

狼や狼男と違うのは耳がほぼ人の形をとどめているところだろうか。

「話が出来るか? 話が分かる――」

声を掛けようとした若生の背後の壁が吹き飛び隣部屋から、もう一体の獣が飛び出した。

あらかじめ若生の位置が分かっていたのか獣はソファにもたれたままの若生の飛びかかってきた。

人間の首が丸ごと挟まれるような大きさの顎が若生に迫る。

若生は左に体を傾けた。

そうすると右肩から首が無防備にさらされる。

獣は当然そこをねらって噛みついた。

ボガッ!!

牙が若生の肉を抉った直後、獣の首から上が吹き飛んだ。

噛まれるタイミングを読んでいた若生が、損傷直後の箇所を瞬間変化で塞ぎ且つ衝撃波を発したのだ。

前からも迫るもう一体に若生は左手をブレードに変形させてその口に突きこむ。

「ハガッ」

声も獣のそれに近いものが発せられる口からブレードが後頭部に突き抜けた瞬間、元の手に変形させて衝撃波をつくる。

ボゴッ!!

獣の頭は風船のようにはじけ飛んだ。

しかし、首なしの状態でも獣は腕を振り回して暴れたが、若生のいる場所に関係なく室内の備品を壊しただけだった。

先に首を飛ばしたもう一体もフロアで意味なくうごめいている。

「挨拶はなしかよ」

若生は普通の手に戻した左手で右肩を触ってみた。

「あの一瞬で鎖骨と肩甲骨をやられたか・・・」

若生はすぐに傷を治せるわけではない。

瞬間的に別組織に変形させて応急措置をしているだけだ。

しかも骨の再生には10分近くかかってしまう。

その間は筋肉を変形させた異型の組織のままで敵に対応しなければならない。

衝撃波の威力は増すが、自然に動かすには制約ができてしまう。

特に今回のように効率よく戦わなければならない時にはハンデが大きかった。

「来る!」

若生は壊されていない側の壁に向けて、動きにくい右手を突き出し衝撃波を放つ。

リビングの固定されていない家具や備品が吹き飛び、サッシのガラスが粉砕し、壁面に大穴が開く。

しかし、その横の壁から新しい穴を開けて獣が飛び出てきた。

「ちっ!?」

若生は瞬時に左ブレードを変形させながら振るう。

それは迎撃というよりも回避するための牽制のようなものだったが、すれ違いの手応えは相手の左腕のようだった。

振り向いた時には、すでに獣は外に逃げてしまっていた。

それよりも・・・

その前の衝撃波を外したのは、右の鼓膜の破損を考慮に入れてなかったからだ。

最初の肩口で衝撃波を作った時に咄嗟だったため自分の鼓膜を破いてしまっていた。

左右の聴覚のアンバランスで壁の向こうの敵の動きを見当つけることができなかったのだ。

「まだまだ経験値が足りてねぇってか?」

独りごちつつ若生は2階の屋根の上に眷属がいる気配を聞き逃さなかった。

両手を添えて狙いをつけ連続で衝撃波を撃つ。

二階の床を破壊し、屋根を破壊し、眷属に直撃を与える三連射である。

「ヒットした!」

若生は無くなった天井を抜け、半壊した屋根を足掛かりに弾き飛ばされた眷属に向かって更に跳躍した。

同時に下方から3体が若生を追って跳躍する。

若生は先に弾き飛ばした獣を飛び越え、上空で勢いを殺し落下しながら背中をブレードで突き刺した。

すぐ近くまで他の3体が迫るが、若生はブレードから拳に変形させる衝撃を使った反動で四散する眷族の体から弾け跳んだ。

獣3体から距離を取りながら若生は上空に向けて衝撃波を使う。

これで落下加速がついて若生が先に着地できる。

空中では曲りなりにでも制御しながら移動できる若生の方が優位だった。

着地した若生はまだ自由落下しか出来ない獣の一体に向けて跳躍する。

左腕の無い、先にリビングで仕留めそこなった獣を脇の下から首を逆袈裟切りに切り上げる。

落下する獣と飛び上がる若生の相乗効果で斬撃は相手の体を切り裂き分断した。

若生は次に攻撃してくるであろう残りの二体に備え、伸ばした髪の毛を振るうべく左手で握りながら着地した。

半壊した家屋への落下のため両足の衝撃波で障害物を吹き飛ばしながらの着地である。

緋波家の2階部分は殆ど全壊したことになる。

この方が周囲を見渡すため、そしてヘアビュートを使うのに都合がいい。

若生は気配を感じ取ろうと感覚を鋭く研ぎ澄ませた。

しかし、聞こえてくるのは遠方のパトロールカーのサイレンだけである。

「逃げた気配はしなかったが、それ以上に周囲に潜んだ気配もない・・・」

あるのは断末魔の動きをいまだに続けている頭部と切り離された吸血鬼のボディだけである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ