逢瀬は若生の実家
風馬が来たことによって、リタは更に本庄家に襲撃をかけることが難しくなったはずだった。
若生としては、と言うよりスレイブ達にとって、この小康状態は好ましくなかった。
共同生活が慣れるに従って、緊張感が無くなってきていることが明白だからだ。
特に本庄家の外では高校生として3人ともが行動パターンが一定であるため、隙を突かれたりトラップを張られたりする可能性が高い。
だから、こちらから動いてみようと若生は思い立つ。
翌土曜日、若生と蓮夏は朝から連れだって久しぶりの外出をした。
桐谷が『ついて来る』とごねるかと思ったが不思議とそういうことも無く二人を見送った。
若生が蓮夏を連れてきた場所は、緋波家。
今は誰もいない空き家状態の若生の実家だった。
「スリッパを履いてくれ。ほこってるから静かに歩いてくれ」
若生は階段の下の扉を開け掃除機と幅の50㎝程ある乾式モップを取り出して、掃除機の方を蓮夏に渡した。
「何だよ、ホントーに掃除させんのかよ?」
「まあ、頼むよ。玄関からリビングまででいいからさ」
「情事じゃなくて掃除かよ?」
「掃除しないと情事になんねえだろ?」
「そっかー、情事すんのか。おーし! やるぜー!」
俄然やる気を出した蓮夏を見て、そんなに溜まってるのか? とは思ったが若生は口にはしなかった。
玄関とリビングの間の廊下を蓮夏が掃除機をかけている間に若生はソファーとテーブルの拭き掃除をして、蓮夏がリビングに取り掛かり始めたら若生がモップで廊下を拭いていく。
最後に風呂と隣りのトイレを掃除するまで20分もかからなかった。
二人は並んでソファーにもたれて一息ついた。
「テレビつけるか?」
と、訊いてみた若生の正面には43型のテレビがある。
「いや、ホテルみたくAVが映る訳じゃねーだろ?」
「きわどい昼ドラならやってるかも」
「土曜はやってねーって」
「そうか。ならバラエティの再放送とか」
「今は興味ねー。俺が今興味があるのは!」
蓮夏がソファにもたれた若生の膝にまたがった。
「若生だ」
膝立ちで前かがみになって若生と唇を合わせる。
若生は前歯を隠すため舌を上唇の下側に上げようとすると、蓮夏が唇を離した。
「そんなに牙が心配かよ?」
「まあ」
「それで傷ついたって、もう俺はスレイブなんだからカンケーねーって」
「いや、月に一回と週一とじゃ不便さが全然違うぜ」
「じゃー、オメーが舌伸ばしてキスしてくれ」
「ああ、やってみる」
若生は軽く蓮夏に唇を触れておいて、長く変形させた舌を蓮夏の舌に絡めた。
もどかしげに動く蓮夏の舌に蛇のように巻きつきながら更に奥に侵入する。
「は・・・あ・・・ああ・・・はあ・・・あん」
声を出したくても出せないもどかしさに耐えながら蓮夏は息継ぎをしている。
若生は蓮夏の口内を確かめながら舌を伸ばしたり引いたりして動かした。
蓮夏は若生の舌を喉の奥に飲み込もうと喉をならす。
若生も応えて舌先を食道の手前まで伸ばした。
「かはっ!」
蓮夏が体を預けて全身を痙攣させた。
若生は慌てて舌を引いて元の形に戻した。
蓮夏は若生の肩に顎を乗せて息をするごとに小さく身を震わせていた。
「オイ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫・・・軽くいっちゃった・・・こんなに早くいったの初めてだぜ」
「呼吸困難で苦しんだのかと思ったぜ」
「息が苦しいほど気持ち良かった。これヤベーかも・・・」
そう言いながら若生の首筋や頬に軽いキスを浴びせる蓮夏が主導権を握りリードしつつあった。
いつしか蓮夏は息を震わせながら声をとぎれとぎれにさせて若生に懇願してやっと若生は蓮夏から口を離した。
若生は上体を寄せて蓮夏の頭に腕を回し顔を寄せて頬ずりした。
「この、甘えんぼーが・・・」
蓮夏の横顔が微笑んでいるように見えた。
情事に近い高位に疲れた蓮夏の横で若生は冷静に周囲の状況に注意をはらっていた。
これだけ隙を見せて襲撃がなかったのは、やはり時間帯が日中だったからだろう。
リタ・ギオレンティーノ、やはり夜しか動けないのか。
今宵は今少し風馬に甘えなければなるまい。




