通常運転の桐谷先輩そして蓮夏と若生の打ち合わせ
「なー若生」
「何ですか? 桐谷先輩」
「世の中にはランクってあるよな」
「まあ、比較して選ばないと損しますから」
「下着にもランクがあるだろ?」
「素材やブランドですか?」
「それは些細なことだ」
「では何を基準に?」
「俺の基準では――」
「止めません? 嫌な予感がするんですが」
「まあ聞け! 俺の見立ての基準では新品の下着はレベル1なんだ」
「レベル? つまりは下位に位置するんですか?」
「そして洗濯後がレベル2」
「待て!」
「タンスの中の下着がレベル3」
「……その違いは何なんです? 一応聞いときますけど」
「この違いが分からなけりゃ目利きはできねー。いいか箪笥の中はある程度持ち主の匂いが反映される。部屋の匂いだったり、箪笥の中の芳香剤だったり、これはこれでフェチズムをくすぐるもんなんだぜー」
「それは目利きじゃなくて匂い利きです。鼻利きです! てか下着って女物ですか?」
「たりめーじゃねーか! 男物の下着の臭いなんぞ単に排気ガスだろーが! でな、品質は嗅覚によって判別される。そして洗濯籠の中の使用済み下着こそはレベル4なんだ」
「なんだか著しい犯罪臭がするんですが?」
「確かにそれを盗めば犯罪だ。そういう意味じゃレベル4獲得は難易度がたけー」
「レベルに関係なく手を出さなきゃ単に無防備無害な日常品なんだが」
「しかし、レベル5となりゃー話は別だ」
「まだあるんですか?」
「レベル5パンツそれはな――」
「おおいっ! いつの間にか下着がパンツに限定されてるぞ!」
若生がタメ口になった。
「脱ぎ立ての手渡しパンツのことだ!」
「ありえねえよ!」
「確かにレア物だ。しかし、自ら脱いで渡してくれんのなら、そこに犯罪性はありえねー」
「そのシチュエーションもありえねえよ!」
「いや、ありえる! 若生――」
「断る!」
「待て、よく考えろ!」
「考えるまでもねえよ!」
「たかがパンツだ。同じ屋根の下に暮らす者同士洗濯カゴに運ぶだけだと説得するんだ。わざわざ放置しておいてレベルダウンさせるのはナンセンスだ。脱ぎ立てのぬくもりと共にある芳香にこそ価値がある。その僅かな時間に至福があるとは思わねーか?」
「至福もお多福もねえよ! だいたい、着替える時は風呂場だろうし、それもここじゃ男女別になってるだろ!」
「そこをクリアーさせるためのオメーの命令だ! 女子には朝必ず着替えさせ、毎日二回の下着交換を要求するんだ。そして朝の運搬係、いやさ洗濯係は俺だ! さあ、若生、命ずるんだ! 待て! どこへ行く? 若生! わこおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーっ」
「と、言うような会話だ」
今度は対屋で桐谷と何を話しているのか?という蓮夏の問いに対する若生の回想である。
風馬がクレナイを監視してくれるようになって、若生も対屋の自室に戻れるようになったので、桐谷とリビングで対話する機会も生ずるのだ。
「あんのヤロー! やっぱ脳ミソ腐ってやがったな!」
「むしろフレッシュ過ぎるんだろ」
「なんとか老化させることはできねーか?」
「あると言えば、ある」
「吸血鬼絡みか?」
「ああ、一度眷属化させておいて、牙を抜くんだ。その歯茎に銀の義歯を詰めれば爺になり、能力もスレイブに逆戻りだ」
「それって、すっげー嫌そうだな。吸血鬼的に」
「しかし、吸血行為を大幅に減らせるというメリットはある」
「オイ! オメーは真似すんなよ! 血が欲しけりゃいくらでも飲んでいーんだからよ」
「分かってる。やる時は蓮夏たちが眷属になった時だ」
「おーよ、桐谷のヤローの血もガンガン吸っちまったらいーんだ」
「しかし、まだ先輩の眷属化は無理だろうな」
ちっと舌打ちして蓮夏は道場の床に寝転んだ。
「で、明日からリタのヤローを探しに行くのかよ?」
「いや、明日は蓮夏に手伝って欲しいことがある。土曜だから朝から大丈夫だろ?」
「え? お? おー、いーぜー。OKだぜ。俺を囮にリタを探すのか?」
「ンな、危ない真似はしねえよ。ちょっとした清掃作業さ」




