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クラス全員異世界転移したのに俺だけ遅刻した〜腹黒王女からクラスメイトを取り戻せ!〜  作者: 大橋 仰
第4章 ハーレムにつられた男子たちの末路

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カケルの物語の行方〈 最終話 〉

 ここは王宮の奥深くにある召喚の間。

 床には大きな魔法陣が描かれている。

 カケルが始めてこの世界にやって来たあの場所だ。


 カケルたち日本から来た19人は、魔法陣が描かれた床の上に立っている。

 王弟、いや、新しいこの国の王ジユージンが、魔法陣の外からカケルたちを見つめている。



 虚ろな目をした王女が兵士に連れられ、召喚の間に姿を現した。


「国民には王女は死んだと発表しましたが、この後は北の離宮に入れて、反省を促します」

 新国王ジユージンがカケルたちにそう告げた。


 これは、王女をあわれんでの措置ではない。現在スキル『召喚』を持つ者は、この世界において王女ただ一人である。コダチに万が一のことがあった場合を考えて、新しいこの国の重臣たちは、王女を生かしておく選択をしたようだ。



 この世界に残るカケルの幼なじみ、鶴木ツルギ心立コダチが、新国王ジユージンの隣で、聖剣を握りしめ仁王立ちしている。


「後のことは任せろ。私が責任を持って魔王を討伐してやる」

 コダチは決意に満ちた表情で、カケルたち同級生19人に向かって別れの言葉をかけた。


 カケルたちは大きな魔法陣の中で、コダチの言葉を受け止めた。


 いよいよ、これからコダチを除く、カケルたち19人の高校生たちは日本に帰るのだ。


「じゃあ、みんなもう心残りはない?」


 委員長が、クラスメイトたちの顔を見渡す。


 昨夜、コダチやジユージン新国王たちとの別れは済ませている。

 結局、未だ西の治安維持に努めるセイレーンとは会えなかったが……


「じゃあ、スキル『説教』を使うわよ」


 そう言って王女を見た委員長は、少し哀しげな表情を見せた。

 その感情を振り払うように、頭を二度、三度と揺らしたあと——


「王女よ、スキルを使って、私たちを日本に『送還』しなさい」


 委員長が命じると、虚ろな目をした王女の両手が、カケルたち19人に向けられた。


 すると——


 カケルたちの足もとにある魔法陣の外縁から、白い光が浮かび上がってきた。


「委員長、これ、成功なのか?」

 カケルが委員長に尋ねる。


「わからないけど…… たぶん成功だと思う」


 委員長の言葉を聞いたカケルが、何を思ったのか——




 魔法陣から飛び出した!




「ちょ、ちょっと早瀬君! 何やってるの!?」

 委員長が驚きの声を上げるがもう遅い。


 魔法陣からダッシュで飛び出したカケルの姿が忽然と消えた。

『疾風』と『隠蔽(本当は姑息こそく)』が発動しているようだ。


「なに!?」

 コダチが叫んだ。

 コダチが手に持っていた聖剣が、突然消えたのだ。


 その直後——


「うわっ!」

 コダチが前にツンのめるように、魔法陣の中に転がり込んだ。


「カケルの仕業だな! お前、いったいなんのつもりだ!」


 態勢を立て直し、急いで魔法陣から出ようとしたコダチが、今度は尻餅をついて倒れた。

 透明化したカケルに押されたようだ。


「ゲエエエエ!!! イテエエエエ!!! 肩を押すつもりだったのに、誤ってコダチの胸を押しちゃったよ…… わ、わざとじゃないからな!」

 激痛に襲われながらも、なんとか走り続けるカケル。


「早瀬君、こんなときまで、いったい何やってんのよ……」

 あきれ顔の委員長。


「カケル、お前いい加減に…… な、なんだ? 動けないぞ? い、委員長、どうなっているのだ?」


 よく見ると、魔法陣から浮かび上がった白い光が、クラメイトたちの膝辺りまで立ち昇っていた。

 膝の下が透明化している?

 いや違う。どうやらコダチたちの膝から下は、もうこの世界に存在しないようだ。


「たぶん…… 足だけ日本に行っちゃってるんじゃないの? これはもう、どうやっても魔法陣からは出られないみたいね」

 委員長が、そうつぶやくと——


「そ、そんな…… カケル! お前、やって良いことと悪いことの区別もつかないのか!」


 コダチの声が召喚の間に響いたそのとき、カケルは走るのをやめ、透明化を解除した。


「ウッセエんだよ! お前ら半年もこの世界にいたんだろ! 俺はこの世界に来てまだ半月なんだ! 俺はまだ帰らないからな! コダチの代わりに、俺が魔王を討伐しといてやるよ!」


「ヘナチョコのお前に、魔王が倒せる訳ないだろ!」


「フフフ…… ハハハ…… アーーーハッハッハ!!! この聖剣さえあれば、俺だって魔王を倒すことぐらい出来るさ!!!」


「なんて姑息こそくなことをするヤツだ! だいたいお前は昔から——」


「ああ、そうだよ。俺は昔から姑息こそくなことが大好きなんだよ! 最後に一つ教えてやろう、俺のプライベートスキルの本当の名前をな。俺のスキルは『隠蔽』じゃない。本当の名前は『姑息こそく』なんだよ! 俺はプライベートスキル『姑息こそく』を使って、これから不意打やら待ち伏せやら、いろいろ姑息こそくな手を使って、魔王を討伐してやるさ!」


 そう言って、カケルはコダチからふんだくった聖剣を、高々と掲げ、そして叫んだ。



「俺の名前は早瀬ハヤセカケル! この世界で勇者となる者だ!」


 召喚の間にカケルの声が高々と響きわたる。

 カケルは大きく息を吸い込み、そしてもう一度叫んだ!


「そして俺は、セイレーンさんを世界一愛する男だ! 言っとくけど、イヤラシイことなんて考えてないからな!」

 自分で弁解するなよ……



 カケルの言葉を聞いたクラスメイトたちは——



「まったく、カケルは本当に奇想天外だよ。それじゃあ、カケル、この世界で頑張るんだよ!」

 と、蹴人シュウトが応援の言葉を贈り——


「チェ、カケルが残るんなら、アタシも残ればよかったな。まあいいや、また遊びに来るからな!」

 いや、近所の家までちょっと遊びに行ってくる、みたいに言われても……

 まあいい。舞もカケルに別れを告げ——


「カケル君、もうキョドル君に戻っちゃダメだよ!」

 と、ミサオからは操なりのエールが贈られ——


「あたしの名前はトテキじゃなくて、戸瀬木トセキだからな! 忘れんなよ!」

 いや、それは舞に言えよ……


「流石は俺の親友カケルだ! 最後までお前らしいバカっぷりだったよ! これからも、お前はバカなままでいろよな!」

 と、親友ヒサシからは、バカを賞賛する励ましの言葉が添えられ——


「ここまでコダチにやられっぱなしだったけど、最後にスカッとしたぜ。ありがとうよ、カケル! 案外、お前みたいなヤツが、勇者に向いてるのかもしれネエな!」

 と、ケンイチからも心のこもった言葉が届き——


 他のクラスメイトからも、口々にカケルへの別れの言葉が伝えられた。


 コダチだけは、イヤダイヤダと言って地団駄を踏んで…… いるのかな?

 足が消えているのでよくわからない。



 魔法陣から浮かび上がった白い光は、クラスで一番背が低い綾士きょうだいの口のあたりにまで達した。二人の声は、もうカケルには届かない。


 白い光が委員長の首の辺りにまで達したとき、スポーツ科19人を代表するように、委員長こと、真締マジメ聖羅セイラが、カケルに向け大きな声を放った。


「早瀬君! セイレーンさんと、幸せになりなさいよ!!!」


「ありがとう! みんな元気でな!!!」


 カケルの言葉を聞いて、満足そうな表情を浮かべたクラスメイトたちと、悔しそうな顔をしたコダチの姿は……


 ゆっくりと消えていった。





 いやぁ、なんだかいい最終回だったよ。ふざけた話の割には、最後ちょっと感動しちゃったよ…… って、あれ? なんか変な声が聞こえるんだけど、どうしたんだ?


「な…… な…… な……」

 声の発生源はジユージン新国王みたいだけど?


「なんてこと、やっちゃってくれたんですか!!!」

 あ、新国王が怒った……


「カケル殿の卑怯なスキルで、魔王を倒せる訳ないでしょ! コダチ殿が勇者として残ってくれるっていうから、ワタシたち、大喜びしてたんですよ!!!」


「い、いや…… ほら、聖剣があれば、俺も魔王と戦えるかなって、思ったっていうか……」

 笑顔を引きつらせながら、カケルが全力で言い訳しているが……



「とにかく! カケル殿を真の勇者と認めた訳ではありませんので、聖剣は返して下さい!!!」


「嫌だ! 俺はセイレーンさんと一緒に、魔王を倒すんだ!!!」


 そう言うと、カケルは王宮の出口目指してダッシュした。


「ああっ! 待て、聖剣泥棒! あっ、また姿を隠したぞ。なんと姑息こそくな……」


 カケルは走った。

 姑息こそくにも、姿を隠したまま走った。



 セイレーンはカケルに、これから自分の果たすべき役割を見つけて欲しいと言っていた。

 でも、カケルは自分が果たすべき役割を、もう見つけていたのだ。

 それはこの世界の平和のため、魔王と戦うという役割だった。

 もちろん、セイレーンと一緒に。


 でもそれって自分勝手にも、ほどがあると思うのだが……


「俺の新しい物語は、もう始まってるんだ。俺の物語のヒロインはセイレーンさん以外、ありえないんだよ!今度こそ、俺は物語のヒーローになってやるからな!待ってて下さいよ、セイレーンさん!!!」

 そう叫んだカケルは、王宮を飛び出しガムシャラに走った。

 もうこうなったら、自分の本懐をげてこい!



 走れカケル。


 西を目指して走れ。


 セイレーンのもとまで走れ、カケル!



〈了〉

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