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クラス全員異世界転移したのに俺だけ遅刻した〜腹黒王女からクラスメイトを取り戻せ!〜  作者: 大橋 仰
第3章 決戦のとき、来たり来なかったり!

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内戦を回避せよ! 後編

 委員長と蹴人が密談を始めた。


 しばらくして、ニンマリと笑った蹴人が、舞に向かって大声で叫ぶ。


「大変だ舞! 中華の達人チェンさんが、和風ボンゴレビアンコを作って、チョモランマにあるモホロビチッチ不連続面を探索に行ったぞ!」


「なに! それは一大事だ!」

 がばっと身を起こした舞。


 流石、お近所さん。舞の好みをよく押さえている…… ということでいいのか?


「こっちに来て!」

 委員長が叫ぶ。


 委員長の求めに応じ、舞は自分とジユージン公爵を乗せた透明ボードを、委員長の元へと進ませる。

 ただ、舞は、『ついにチェンさんにも、旅立ちのときが来たんだね!』と叫んでいるのだが……

 それはさておき。


 セイレーンやコダチたちの背に守られながら、委員長がコソコソと公爵に話しかけた。

「えっと、偉そうな言い方をしますが、許して下さいね」


「いや…… 謝るぐらいなら、最初からやめておいた方が……」

 笑顔を引きつらせながら、公爵が応える。


「公爵に命じます。私が合図したらこう言いなさい——」



 ♢♢♢♢♢♢



 再び透明ボードの上に乗った、舞とジユージン公爵。


 二人の身を守るように、セイレーンとコダチも同乗している。


 5mぐらいの高さまで透明ボードが浮かび上がったとき——


「さん、はい!!!」

 地上から、委員長の合図が聞こえた。


「『ワタシは王女を、絶対に許さない!!!』 うぉーーーん! ワタシ、言っちゃったよーーー!!! えらいこと言っちゃったよーーー!!!」

 公爵号泣……


 それを聞いた帝国軍の兵士たちが歓喜の声を上げた。


「おお! 王弟殿下が、ついに立たれるのだ!」

「なんと、泣いておられるではないか!」

「泣を拭って自分の姪にやいばを向けられるのか!」

 ……いや、それも違うから。



「「「「「 王弟殿下、バンザーーーイ!!!」」」」」

 涙を流して、帝国兵たちは声が枯れるほど叫んだ。



 帝国兵の様子を確認したセイレーンが、先ほど委員長と打ち合わせした通り、隣にいるジユージン公爵の手を取り、そして——


「ともにー、この国にー、平和を築きましょおおおー」

 と、棒読み丸出しで叫んだ。


 演技の質はともかくとして……


「「「「「 水の聖女様、ばんざーーーい!!! 」」」」」


 市民たちからも歓声が上がった。



 その様子を見た伯爵軍。

 参謀らしき男が、ダイスキー伯爵に向かって口を開く。


「は、伯爵。このままでは手を組んだ帝国軍と市民たちから、挟み討ちにされますぞ!」


「わ、わかっておるわ! ええい、仕方ない! 皆の者、王弟殿下、並びに水の聖女殿に敬礼!!! 我々は、これよりお二人の指示に従います!!!」

 ジブン・ダイスキー伯爵も大声で叫んだ。


 こうして、三者の戦闘は、無事回避されたのであった。


 ただ、戦闘回避の立役者、王弟ジユージン公爵は浮かない顔をしていた……


「委員長殿、ヒドイ……」

 公爵の声は、兵士や市民たちの歓声にかき消された。



 ♢♢♢♢♢♢



「みなさーん、ちゃんと並んで下さいねー!」

 そう言いながら、ゴキンジョーの街にある大井戸に向かって、スキル『水成すいせい』で発現させた水をぶち込んでいく聖女サマ。



 ここはゴキンジョーの街の中。

 無事、街の中に入れた帝国兵たちに、聖女サマは水を供給しているのだ。

 これで当面、帝国兵が喉の渇きに悩まされることはないだろう。


 あの後、王弟ジユージン公爵の名代(もちろん自称)として、委員長と蹴人が、ジブン・ダイスキー伯爵、イキオイー将軍、市民の代表と話し合い、次の約束を取り付けた。


 イキオイー将軍率いる帝国第三師団はゴキンジョーの街に入り、食料の供給を受ける。


 ジブン・ダイスキー伯爵は出来るだけ早く、ゴキンジョーの街に食料を提供する。


 伯爵領が領外から暴徒や他の貴族から攻撃を受けた場合、帝国第三師団は伯爵軍と共に戦う。


 と、まあこんな感じだ。



「ふう、水の供給はだいたい終わりました。さあ、西の国境に向かいましょう!」

 カケルに向かって、聖女サマは笑顔で声をかけた。


「お疲れではないんですか? なんなら、西の国境地帯へは、俺たちだけで行きますけど?」


「いいえ、大丈夫です。それに、私はカケル様に約束したではありませんか。勇者様たちをお助けするお手伝いをしますと」


「それは、そうですが……」


 セイレーンは感慨深げな表情を浮かべ、カケルに向けて語り始める。

「ここまで、いろいろなことがありましたね。なんだか私、物語のヒロインになった気分でした。もし、これまでの冒険が物語だと言うのなら、この物語を始めたのは、カケル様と私ですよ? 私だけ途中で物語から退場するのは、ちょっと寂しいです」


「そうですね。間違いなく、セイレーンさんはこの物語のヒロインですよ。俺はヒーローにはなれなかったけど……」


「いいえ! 私にとって、カケル様はヒーローですよ!」


「あわわわ…… えっと…… じゃあ、い、行きましょうか!」


「あややや…… えっと、そうですね! い、行きましょう!」


 頬を赤く染めたカケルとセイレーンが、二人並んでゴキンジョーの街の出口へと向かった。



 二人から少し離れた場所に、両名を見つめる人影があった。


 その人物は人知れず、次の言葉を漏らした。


「リア充、爆発しろ……」


 コダチさん、どんまい!

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