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クラス全員異世界転移したのに俺だけ遅刻した〜腹黒王女からクラスメイトを取り戻せ!〜  作者: 大橋 仰
第4章 ハーレムにつられた男子たちの末路

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内戦を回避せよ! 前編

 帝国の北の端から、遥か西の国境地帯目出して飛行中のカケルたち一行。

 ジユージン公爵が御する——といっても口で命令するだけなのだが——ドラゴンの背にくくり付けた飛行船に乗って、早7日が経った。


 飛行船に乗っているのは、カケル、聖女セイレーンの他に、ここまで途中の街や村で仲間に加わった委員長、マイミサオ育栄イクエ蹴人シュウトに加え、キタノ砦で合流したコダチ、剛田、遠投3人娘の計12人。

 それからもちろん、ジユージン公爵を含めた飛行船スタッフも数名同乗している。



 ここに来るまで、多くの街や村の上空を通過してきた。

 ある街では暴動が起こっていた。

 またある村では暴動を避けるため、村を捨てて逃げる人々の姿があった。

 街の一部が焼かれ、黒煙が立ち上っている場所もあった。


 ドラゴンの背に乗っていた7日の間に、帝国内はもはや手のつけられないような内乱状態になってしまったようだ。


 眼下に広がる惨状を目にしたカケルたちは、住民たちを助けるべきか先を急ぐべきか、船内で盛んに議論を交わしたが、結論としては一刻も早くニッシーノ国との戦争を止めることが優先された。


 他国との戦争など始めてしまえば、更に多くの悲劇が起こると考えたからだ。



 ♢♢♢♢♢



 カケルたち一行は、ようやく西の国境付近に到着。


 国境地帯は、切り立った山岳地帯が続いているため、ドラゴンの背に乗ったままその地に降り立つことは出来ないらしい。


 そのため、国境地帯から少し離れたなだらかな丘の上に、着陸することになった。

 ここからは、舞の透明ボードに乗り換え、国境地帯まで移動する予定だ。


 丘の上からは、国境地帯に最も近い街、街並みが美しいことで有名なゴキンジョーの街がよく見える…… はずだった。


 しかし、カケルたちの視線はゴキンジョーの街並みに向かうことはなく、その手前の平原にいる大群衆へと釘付けになった。


「なんだあの大軍。人数が多すぎて、全部で何人いるのかわからないけど…… 東京ドームが満員になったより、もっと人の数が多いんじゃないか?」

 と、カケルがつぶやくと、それに対して蹴人が応える。


「あの旗は…… 右に見えるのが帝国軍の旗。左に見えるのは、ここからもう少し東の地を治める伯爵家の旗だね」


「その奥には、住民の一団……いえ、大集団がいるようね」

 と、委員長が言葉を添える。


「今は三すくみになって、睨み合ってるのか? いや、なんだか怒鳴り合ってるみたいだぞ? これ…… ヤバくないか?」

 というカケルのつぶやきを受け、蹴人が躊躇ためらいいがちに応える。


「ヤバイなんてもんじゃないよ…… もし戦いになったら……こんなのもう戦争だよ」


 止めに行こう! という声が、級友たちの口から次々と聞こえてきた。


「よろしいのですか? 皆様にはやらなければならないことがあるのでは……」

 躊躇した様子のセイレーンが口を開いたが、ぐいっとカケルが胸を張り、セイレーンに一歩近づき言葉を放つ。


「何言ってるんですか。俺たちは勇者なんでしょ? 勇者が人々を守るのは当たり前デ、ジュ、うっ!」

 慣れないことを言おうとしたため、舌を噛んだようだ……


「もう、早瀬君はさがって!」

 今度は委員長が一歩前に出た。


「こんなの、これまでの小競り合いとは、規模が違いすぎるわ! これを放っておいたら内戦が始まっちゃうじゃない! ここはなんとしても止めなきゃ!」


「委員長の言う通りだと僕も思うよ。それに、あの帝国兵たちは、おそらく国境地帯から引き返してきた兵士たちだと思うんだ」

 事実、今も国境の山岳地帯からゴキンジョーの街を目指して後退している帝国兵が確認できる。


「前線から帝国兵が引き上げて来たんなら、ニッシーノ国との戦争は、おそらく中止か延期になったんだと思う。だから、今、急ぐべきは、目の前の戦いを止めることだ!」


 珍しく、蹴人が語気を強めた。



 ♢♢♢♢♢♢



 カケルたちスポーツ科の生徒11人と、水の聖女セイレーンは、舞が生成した透明ボードに乗り込んだ。


 カケルたちを笑顔で見つめ、手を振りながらジユージン公爵が口を開く。

「それでは、みなさん、頑張って下さいね。ワタシはここから、みなさんを応援してますよ。ファイトです!」


 それを聞いた委員長が透明ボードから飛び降り、ジユージン公爵の元へと歩みを進める。


 そして公爵の襟首をむんずと掴むと、

「あなたにも来てもらいます」

 と言って、公爵を無理やり透明ボードの上に乗せた。


「ななな、なぜワタシが一緒に!? や、やめて下さいよ! 最近引いたおみくじには『ゴキンジョーの街に近寄らぬが吉』と書いてあったのです! 」


「そんなピンポイントの助言が書いてあるおみくじなんて、あるわけないでしょ! あなたも王族なら、きっと何かの役に立つこともあるでしょうから」


「ワタシはなんの実力もない、単なるお飾りなんですって! たとえお飾りでも、ワタシは今の平穏な暮らしに満足しているのです。あっ、そうだ、ドラゴンは? ドラゴンはどうするのです? 流石にここに置いていくわけには——」


「このドラゴンは、あなたの言うことならなんでも聞くんでしょ? ならブユーデン公爵に命じます。あのドラゴンに『ここでおとなしく待っていろ』と言いなさい」

 委員長のスキル『説教』が発動した。


 こうして、おとなしく公爵の帰りを待つドラゴンに見送られたカケルたち一行は、睨み合いを続ける三者の元へと向かった。

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