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クラス全員異世界転移したのに俺だけ遅刻した〜腹黒王女からクラスメイトを取り戻せ!〜  作者: 大橋 仰
第3章 決戦のとき、来たり来なかったり!

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本当に、決戦のとき来たれり! 後編

 高速化スキル『疾風』と、透明化スキル『隠蔽(本当は姑息こそく)』を使ったカケルは、コダチと剛田の手を握り、敵本陣目指して疾走を続ける。


 カケルの目の前には約2mの高さがある雑草が生い茂っている。

 一部はミサオが放った水流によって倒されたとはいえ、いまだ見通しが良いとは言い難い。

 それでもカケルの足下には、一本の『道』が出来ているはすだ。


『道』の両側には、先程操のスキル『水操』で弾き飛ばされた敵兵たちが、唖然とした表情を浮かべている。


『道』の上にいた敵はすべて排除された。

 敵には透明化されたカケル、コダチ、剛田の姿は見えないため、カケルたちに攻撃を仕掛ける者はいない。



『カケル、もう少し右』

 カケルの耳に付けた聖道具を通して、進路の微調整を指示する蹴人シュウトの声が届く。


 この先も、『道』の上には誰一人として敵はいないはずだ。

 カケルは蹴人を信じて、コダチ、剛田と共に全力で走った。



 ♢♢♢♢♢



 ついにカケルは、丘の上から続く雑草で覆われた『道』を走り抜けた。


 カケルの目の前には、ジユージン公爵が鎮座する本陣が見えた。

 幕や旗は流されたようだが、敵の大将だと思われる人物を取り巻くように、兵士たちが守備を固めている。


『カケル、よくやってくれたね! さあ、ここからがカケルたちの見せ場だよ!』


「よし! じゃあ早速、“任務”開始といこうじゃネエか!!!」

 そう言ったカケルは歩みを止め、コダチ、剛田の手を離した。



「な、何者だお前たち!」

「ど、どこから来たのだ!」

「公爵をお守りせよ!」

 突然目の前に現れたカケルたちの姿を目にした本陣を守る兵士たちが、次々と驚きの声を上げた。


「おりゃあああ!!!」


 スキル『怪力』を持つ剛田が、ここまで左手に握っていた長さ約3mほどある長い棒を振り回し、敵兵の足を薙ぎ払っていく。


 この長い棒は蹴人が用意した聖道具…… ではなく、どこにでもあるただの棒だ。

 それでも剛田が振り回すと、敵の兵士は面白いように足をとられスッ転ぶ。


「フッ、流石は蹴人が用意した武器だ」

 いや、剛田サン、それはどこにでもある棒だから……


「私が活躍する場面がないではないか……」

 不満げにつぶやきながら、ジユージン公爵に近づくコダチ。

 コダチの後ろに隠れて、カケルも公爵の元へと身をよせる。

 まあ、カケルのスキルは戦闘系ではないので仕方ないのだが……

 それでもカケル、ちょっとカッコ悪い。


 コダチは公爵のそばにいた兵士数人に軽く太刀を振るった。


「峰打ちってやつだな」

 何気なくカケルがつぶやくと、


「おい! 先に言うんじゃない! あーあ、せっかく私が『フッ、安心しろ。峰打ちだ』ってカッコよく言おうと思ってたのに!」

 と、プリプリ怒り出したコダチ。


「……ハイハイ。お前はカッコいいよ。これでいいだろ? じゃあ、早いとこ“任務”を完了させようぜ」

 そう言ったカケルの目の前には、味方が全員やられてしまい一人でうろたえているジユージン公爵の姿があった。


 歳の頃は40代ぐらいだろうか。

 ぱっと見は、公爵サマというより、どこにでもいる気のいいおじさんという感じの、ごく平凡な顔つきをしている。


 慌てた様子の公爵サマであったが、それでも、逃げ出すような素ぶりは見せていない。

 流石に、敵に背中を見せるなどという行為は、王族としての矜持が許さないのだろうか。


 公爵が口を開いた。

「や、やあ、初めまして。ワタシ、降伏しますので…… 酷いことしないでね?」

 ……なんだよ。もう降伏するのかよ。だから逃げなかったのかよ。矜持とか言っちゃって、ちょっと恥ずかしいよ……


 コダチが太刀…… を使わず直接、公爵に軽く腹パンをいれる。


「ぐふっ! ひ、ひどい…… 降伏するって言ったのに……」

 泣き言を残して、公爵は意識を失った。


「……お前、剣士をやめて、ボクサーにでもなったのか?」

 カケルがつぶやく。


「いや。なんとなく公爵の物言いにイラッとしただけだ」

 それでも、ちゃんと太刀を使ってあげろよ……

 なんとなく失礼だよ。


「公爵は仕留めたのか!?」


 カケルたちの元へ剛田が駆け寄って来た。

 本陣の周囲にいた兵士は皆、剛田によって足をすくわれひっくり返っていた。


「ああ。じゃあ剛田、打ち合わせ通り頼むよ」

 カケルがそう言うと、剛田は名残惜しそうに長い棒を手放し、気を失っている公爵を左手で抱え上げた。


「蹴人にもらったこの長い棒。戦いが終わったら、必ず取りに戻るからな」

 いや、だからそれ、どこにでもあるただの棒だって。



 カケルは空へ向かって発煙弾のようなものを上げた。

 これは紛れもなく、蹴人がカケルに渡した聖道具だ。



 カケルは“任務”という言葉を口にしていた。

 では、その“任務”とは何なのか。それは——


 ジユージン公爵を捕縛することだった。


 当初、委員長をはじめとしたカケルたちの級友は、洗脳された剛田たちを利用して、コダチやカケルを始末させようと考えていた諸悪の根源ワルダークミ伯爵へのお仕置きを計画していた。


 しかし、王弟ジユージン公爵がこの戦いに参戦するという情報が入ったとき、蹴人はこの作戦の目標を、公爵の身柄確保に切り替えようと提案した。


 総大将が敵に囚われれば、敵軍は撤退せざるを得ない。


「ワルダークミ伯爵のお仕置きは、また対案を考えるからさ」

 と言った蹴人。

 どんな対案があるのか、ちょっと気になるところだが……


 それに加え蹴人は、

「王弟には、いろいろ利用価値があると思うんだ」

 と言い、それを聞いた委員長も、

「そうね。後々役に立つかも」

 と言って、ふふふ、と…… 悪い顔をして笑った。


 委員長の黒い微笑みを見たクラスメイトたちは、皆、委員長に同意した。


 会議終了後、セイレーンはこう漏らした。

「委員長様の笑顔、かなり怖かったです……」



 カケルが放った発煙弾を砦から確認した蹴人は、聖道具『通信のイヤリング』を通してカケルにメッセージを送る。


『カケル、お疲れ。“任務”は上手くいったようだね。じゃあ、これからもう一度、操の『水操』を放つから、本陣から少し離れてね』


「おい、蹴人がここから離れろってさ。じゃあ、また手を繋ぐぞ」

 カケルがコダチ、剛田に蹴人の言葉を伝えた。


 カケルが耳につけている『通信のイヤリング』は、装着者1名にしか蹴人の声が届かない仕様だ。

 それから着信専用のようで、カケルの声は蹴人に届かないのだ。



 カケルの言葉を聞いた剛田が、カケルに向けて言葉を放つ。

「おいカケル。本当に蹴人が手を繋げと言ったのか? お前、まさかあたしと手を繋ぎたいばかりに嘘をついて……」


「……以前の俺なら、『誰がお前なんかと手を繋ぎたいもんか、バーカ!』って叫んでいたかも知れないな。でも今、俺の心はセイレーンさんで埋め尽くされているのだよ。だから女子からどんな悪態をつかれても、まったく心が動じない男になったのだよ。他の女子など、どうでもいいんだよ」


「じゃあ、あたしの蹴人への思いと一緒だな! お互い頑張ろうな!」


「ああ! 剛田にそう言われると、『一緒にすんじゃねえよ』と思わなくもないのだが、セイレーンさんのおかげで、俺は心の広い男になったんだ。笑って許してやるとも!」


「……嗚呼ああ、私も会話に混ざりたい」

 元恋愛経験ゼロ仲間だったコダチの嘆きが、哀しく周囲の草原に響いた。



 あのー…… お楽しみのところ悪いんだけど、みんな早く本陣から離れた方がいいと思うぞ?

 もうすぐ本陣目掛けて激流が襲って来るんじゃないのか?



 ——ゴオオオーーー!!!



 本陣から離れたカケルたちのすぐ横を、ミサオのスキル『水操』によって放たれた激流が、再び敵本陣を襲った。


「あ、あぶねえ…… もうちょっと本陣から離れるのが遅かったら、俺たちも巻きこれれてたな」


 ほら言わんこっちゃない。

 おしゃべりしてるからこうなるんだよ。


 丘を下ってきた激しい水の流れにより、再び『道』の上には誰もいなくなった。


「剛田、ちゃんと公爵サンを抱えてろよ」


「おう! 任せとけ!」


 こうして、カケル、コダチ、そして公爵を左脇に抱えた剛田の3人は、今度は丘の頂上目指して走り出した。

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