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クラス全員異世界転移したのに俺だけ遅刻した〜腹黒王女からクラスメイトを取り戻せ!〜  作者: 大橋 仰
第3章 決戦のとき、来たり来なかったり!

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企みの全貌 後編

「さて、おおよその情報は聞き出せたと思うんだけど…… どうする、委員長?」

 蹴人が再び口を開いた。


「え? なんで私に聞くの?」


「だって委員長は委員長だろ?」


「なによ、それ……」

 そう言って、委員長が周囲を見渡すと、同級生たちだけでなく、セイレーン、将軍、兵士たちも、委員長を見つめていた。


「じゃあまず、話を整理するわね。もし、早瀬君を中心にした私たち日本から来たメンバーがここから逃げ出したとしても、明後日には伯爵軍が攻めて来るってことでいいわね?」

 委員長が蹴人を見つめる。


「ああ。カケル捜索っていうのはあくまで口実だからね。『どこかにかくまっているはずだ』とか言いながら、攻め込んでくるだろうね」

 と、蹴人が答えた。


「明日、私たちがワルダークミ伯爵の元へ奇襲を仕掛けるというのはどうかなと思ったんだけど…… おそらく明日は兵士が伯爵の元へ続々と集まって来ると思うの。だから兵士が密集していて、伯爵に近づくのは難しいと思うのよね」


「私と剛田で突撃すれば、敵の兵士を蹴散らすことなど容易いぞ?」

 コダチはそう言ったのだが……


「それだと怪我人…… いいえ、死人が出るかも知れないわ」


「そうか…… それはダメだな」

 そう言ってうつむいたコダチ。


「もし、伯爵に…… 早瀬君風に言うところの『お仕置き』をするのなら、こちらに攻めて来る明後日の方が、兵が分散してるから都合が良いと思うの」


「なるほど。では決戦は明後日と言うことだな!」

鶴木つるぎさん、気が早いよ」

 委員長がたしなめる。


「発言していいかい?」

 また蹴人が口を開いた。そして——


「そういうことなら、僕に作戦があるんだけど」

 なにやら蹴人に考えがあるようだ。


「実は、戦争を止めるために西の国境に行った場合、どうしても国軍との戦闘は避けられないと思って少し作戦を考えていたんだ。ほら、西の国境付近には、すでに万を超える兵士が集結しているだろ? きっと僕たちが級友たちに親愛の情をもって会いに行ったとしても、彼らは兵士たちの後ろに隠れて、きっと会いに来てくれないと思うんだ。みんな、彼らのことをよく知ってるだろ? 彼らはシャイだからね」

 本当はコダチや剛田にビビって出てこないんだろう。

 こういう言い方をするところに、蹴人の優しさを見て取ることが出来る。


「だから、兵士を殺さない程度に排除して、クラスメートたちの元まで行く必要があるだろうな、と思っていろいろ作戦を考えてたんだ。それから少し準備もしてたんだよ」


「準備って…… ひょっとして、蹴人君が自宅から持ち出した、あの箱の中身のことなの?」

 ミサオが問いかけると、


「正解。いやぁ、やっぱりいろいろ持ってきてよかったよ」

 と言って、ニッコリ笑う蹴人。


「面白い。じゃあ、西の戦いの前哨戦のつもりでやってみるか」

 そう言ったコダチを始め、他の同級生たちからも同様に、蹴人が考えた作戦ならきっと大丈夫だろう、という意見が次々に聞かれた。



 みんなの様子を確認した委員長が、蹴人に向けて言葉を発する。

「私はしつこい性格なの。もう一度だけ確認させて。もちろん、兵士を殺すつもりはないのよね?」


「あたり前さ。僕たち勇者は、この世界の人を守るのが仕事なんだろ? その勇者がこの世界の人を殺してどうするんだよ。本末転倒じゃないか。まあ、多少の怪我人は出るかも知れないけど、それは許してもらうしかないね」


 その言葉を聞いた聖女サマが、勢いよく叫んだ。

「それでいいと思います! カケル様は、帝国の兵士に思い切りカンチョーを食らわされたこともありますから!」


 カケルの出番がやっと来たと思ったら、カンチョーの話だった……


「やれやれ…… 下半身はイヤラシイおっさんになってしまったのに、頭の中は小学生のままなカケルよ。お前はいったい何をやっているのだ」

 あきれ顔のコダチがため息混じりに言葉を漏らしたが——


「ウッセーな! 殴ったり蹴ったりしたら、後々喧嘩になるかなって思ったんだよ! カンチョーぐらいなら、ちょっとしたイタズラとして許してもらえるだろ?」

 なんだそれ? そんな訳ないだろ?


「なるほど…… それも一理あるか」


「「「「「 ないよ! 」」」」」

 コダチに向かって、クラスメイトが一斉にツッコんだ。


「え? ないのですか?」

 聖女サマには…… 誰もツッコめなかった。



「ちょっといい? 私たちはそれでいいんだけど…… 砦の兵士のみなさんに危険はないの?」

 心配顔の育栄イクエが発言した。


「我々も戦います!」

「勇者様たちだけに、危険なことをしていただく訳には参りません!」

「決して足手まといにはなりません!」

 兵士たちは口々に勇ましい言葉を叫んでいる。


「でも……」

 育栄が聖女セイレーンの顔をうかがうと——


「勇者様の仕事は魔王と戦っていただくこと。今回の戦いは、本来この世界の人間がやるべきものです。兵士のみなさんにも頑張ってもらいましょう。もちろん、私も頑張りますよ!」

 聖女サマも、やる気満々のようだ。


「聖女様は、ほどほどにされた方がいいと思うの……」

 超巨大モンスターを一撃で倒す聖女サマを目の当たりにしたミサオは、違う意味で心配していた。


 そんな二人の様子を見た委員長が再度口を開く。

「セイレーンさんが一緒だと、とても心強いと思わない? もし、本当に危険な事態が生じた場合には、セイレーンさんに助けてもらいましょう。そうならないよう、私たちは全力を尽くしましょう」


「よし、ではワシらも全力を尽くすことにするぞ!」

 ガンコロジン将軍が兵士たちに向かいげきを飛ばすと、


「オオオーーー!!!」

 兵士たちの力強い雄叫びが、部屋の中に響き渡った。


 さあ、いよいよ決戦のときが近づいてきたようだ。

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